King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~目覚めるカイリ〜

 

 

 大広間にたどり着いたヒカリ達。

 一番初めに気が付いたのは六人のプリンセス達。

 広間の両側でそれぞれ美しい彫像のように眠らされていた。

 アリス、白雪姫、オーロラ姫、ジャスミン姫、シンデレラ、そして――。

「ベル!」

 ビーストが黄色いドレスの女性を見つけ駆け寄った。魔法で時が止まったように眠っている。

 ソラは六人のプリンセス達を見回す。

「カイリの姿がない!」

「あそこ、奥がある!」

 ヒカリが奥を見ると大きなパイプが集中している装置が目に入った。

「あの大きな機械、嫌な予感がする」

「グワ、変な力を感じる」

 ヒカリの考察にドナルドが相槌を打つ。

 ヒカリはさっきのドラゴンに変身したマレフィセントのようなとてつもない大きな力を感じた。

 でもさっきとはなんだか違う。

 プリンセスの光の心とハートレスの持つ闇の心。二つの力が不安定な形で揺らめいているようだ。

 心地よい風と生暖かい風が嵐の前触れの気流となっているような――大きな波のような力の渦に軽いめまいをおこしヒカリは乗り物酔いにでもあったような不快感を覚える。

「プリンセス達も心配だけど先に進むしかないかな?」

 一番背の高いグーフィがジャンプして奥を眺めてみたがここではわからなかったようだ。

「きっとこの奥にリクとカイリがいる……奥に行こう!」

 ソラは一気に駆けていった。

「グワ! ソラ~一人で行かないで!』

「二人とも置いてかないでよ~」

ドナルドとグーフィがそれに続く。

 

 ヒカリは自分の両手の手錠を恨めしそうに見つめ

 先を行く三人を見てため息を漏らした。

「ビーストはここにいて、わたし達、奥に行ってくる!」

 ヒカリはベルを心配するビーストに振り返りそう言って前へ一歩踏み出すが――。

「⁉」

 ヒカリの足元の地面が割れた!

 

 

 ヒカリ――向こうへ行っちゃダメ。

 

 

「ヒカリ……ヒカリ、目を覚ますんだ」

「!」

声が聞こえ、思わずビクッと体を震わせ飛び起きた。

(落ちて――無い)

 気付くと足元の地面は割れていない。

 崩れたのは自分の体で、ビーストが横たわるヒカリを助け起こしていた。

「わたし……さっきまで、何を?」

「いきなり倒れた、しばらく呼びかけたんだが、起きなかった。ベル達と関係があるのではないかと……無事でよかった、何が起きたのか?」

 そう言われヒカリは両腕を見る。

 手錠はまだある。

 倒れた記憶もなければ夢を見た覚えもない。

 誰かが語りかけてきたとしか覚えていない。

「どれぐらい……寝ていたの?」

「しばらくだな、奥でソラと誰かの戦いが決着したあたりだ、立てるか?」

「うん……頭、ガンガンするけど」

 金属音が警告のように絶えず頭の中で鳴り響いているようだ。起き上がるとフラついたが、なんとか立てる。攻撃を受けたわけでもないのに体が重くてだるい。

 

「か、鍵穴が~!」

 奥でドナルドとグーフィの大きな声が聞こえた。

「なんだ?」

 大きな装置から溢れ出す闇の扉の片鱗がここからでもよく見える。雷光が絶えず、今にも暴発しそうな勢いだ。

「ううっ……」

 輝くほどに誰かが自分の頭を叩いているような痛みが押し寄せる。

 手錠のされた両腕で頭を押さえると結んだリボンに触れた。一瞬ミッキーの顔を思い出すと痛みがうっすらと治った気がした。

「進まなきゃ、ソラ達が……」

「その体では向こうへ行くのは危険だ、かえって足手まといになる」

「ここまで来たのに前へ行くなって⁉」

 自分の大きな声にもダメージが反響する。

 荒い息遣いにもかかわらず歩み続ける彼女にビーストはヒカリの行手を阻む。

「これ以上は危険だ、この様子では向こうに行っても何もできないぞ!」

「私も――城へ入った時のビーストとソラと思いは一緒だよ! 危険でも、ここまで来たの。今さら、ここで引き返すなんて!」

 懇願と頭痛の中、悲痛な声とふらつく足取りでヒカリが前進する。

 それを見たビーストは大きく咆哮した。

 ヒカリは獣の雄叫びにもう一度意識を失いそうになったが、ビーストの意図は違かった。

「私の背に乗れ!」

 乱暴にヒカリの体を掴んで放り投げた。

「うわっ!」

 投げ出され思わずビーストのマントにしがみつくヒカリ。

 四足で疾走する獅子は一気に高台の階段を駆け上がった!

 ヒカリがはじめに見たのは大きな装置の下に横たわるカイリ。その近くにいるであろうリクの姿がない。

 それよりソラが持つ物。

 さっきリクがマレフィセントに使っていたキーブレードを持ち眺めている。

 

 ヒカリは一瞬で理解する。

 カイリの心を解き放てば、目の前の不完全な扉――鍵穴は完成する。

 

「人の心の扉を開くキーブレード」

「ソラ、まさか・・・・・待って!」

 ヒカリが叫ぶ。

 頭が痛くてもお構いなしだ。

 

 ソラはにっこりと笑い、

 キーブレードを逆手に取って――突き立てた。

ソラの体が輝き、

そこからこぼれた光がカイリへ――。

 

 カイリが目を覚ました!

 目を覚ましたカイリの向こうでは鍵穴の雷光が止んだ。扉が完成したようだ。

「ソラ、ソラーー!」

 叫び、ソラへ駆け寄るドナルド。

 ソラは輝きながら体が倒れる。

 

 ヒカリはソラの元へ走り出そうとした。

 が、カイリの後ろの完成された鍵穴を見上げた。

 

 その瞳に映るのは。

 今まで知ることのなかった――真実。

 

 

「ソラ!」

 目覚めたカイリは倒れるソラへ駆け出した。

 カイリの手は輝き消えるソラの体に触れられず空を切る。

「ああ……!」

「みんなーソラを消しちゃダメだー‼︎」

 消えていく光を見上げてドナルドが叫んだ。

「ソラ、本当に消えて――ううん! 絶対に消さない!」

 決意を胸にしたカイリはヒカリに気が付いた。

 ヒカリもきっとそう言ってくれる!

 そうに違いない!

 カイリはヒカリに向き直る。

 カイリがヒカリの顔を見ると――。

「ヒカリ……ねぇ……?」

 

 ヒカリは怯えていた。

 

 カイリはヒカリの注目する自分の向こう側、完成した鍵穴へ視線を向ける。

「ようやく目覚めたか。最後のプリンセスよ」

 男の声が聞こえた。

 褐色の肌、白髪の長い髪の男が現れた。

「だが、鍵穴が完成した以上ーーもう用はない、消えてもらうぞ」

 近づく男にドナルドとグーフィがカイリを守る。

「そうはさせないぞ!」

「僕たちだけで大丈夫かな?」

 勇敢なドナルドの声にグーフィが頼りなく聞き返す。

「わかんないよ! でも、ヒカリが居ればなんとか……グワワッ⁉︎」

 ドナルドがヒカリを見ると驚いた。

 彼女の『腕』にあったものがなくなっている!

 足元には鎖に繋がれた金色の腕輪が地面に落ちていた。

「グワ! ヒカリの手錠が外れている!」

「それってどう言う事?」

「僕もよくわかんないけど……自由になったって事?」

「でも様子が変だよ?」

「ヒカリ姉?」

 カイリがヒカリの元へ駆け寄る。

「ヒカリ。ねぇ、どうしたの?」

 カイリがヒカリを覗き込む。ヒカリはカイリではなくずっと男の方を眺めている。

 そしてこう言った。

 

「わた、し……は、誰?」

 

「え?」

 カイリがヒカリの声に驚く。

 

「ヒカリ? どうしたの? 私だよカイリだよ!」

 ヒカリの両肩を掴み揺さぶるとその体が力なく崩れた。

 

「うん……カイリ無事でよかった」

 カイリはホッとしてヒカリへかがむ。

「よかった、私てっきりソラ達みたいに記憶が無くなっているんじゃないかと――」

 

「ううん、そうじゃないの……それよりも」

 

 カイリは気が付いた。

 金色の手錠がキラキラと見える。

 その真下の地面が、

 ポツリ、ポツリと濡れている。

 

 ヒカリは顔を上げカイリの後ろの男に叫んだ。

 涙に濡れる顔は、絶望と不安と怒りが見える。

 

「私は、誰⁉︎ 答えてよ……アンセム‼︎」

 

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