King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~白いキーブレード〜

 

 ソラの体が輝き消える瞬間。

 カイリが起き上がった。

 思わず駆け出したくなるヒカリは手首の違和感を覚えた。

 鍵穴が完成すると同時に手首の重りが取り払われたのだ。

 下を見ると壊れた手錠。

 さっきまで苦しめられていた頭の痛みが消えて、雲が晴れたように、とある記憶が戻ってくる。

 

 記憶が蘇ってくる。

 断片的な記憶。

 

 顔、声、仕草、私は彼を知っている。

 

 そして、今の私は――本当の私じゃない。

 

 これは確証。

 証拠も何もないのに、

 今、それがわかってしまった。

 

 わた、し……は、誰?

 

 リクじゃないリクの時からたぶん、気が付いていたのに私は恐怖で考えようとしなかった。

 

 さっきまでリクの姿を借りていた誰か。

 その目の前の誰かはヒカリはもう知っていた。

 いいや思い出した。

 私はここを知っていたんだ。

 この世界、この城。

 ここは、ずっと前、私がいたんだ。

 私は今確証した。

 

 私は――。

 

「ヒカリねぇ?」

 カイリがそばに近づいてきても、ヒカリはカイリの後ろの人物から視線が離れなかった。

 せっかくカイリが目覚めてくれたのに。

 二、三度声をかけてくれているのに。

 ソラとリクがいなくなってしまった。

 それと同時に、絶望の波が消えることがない。

 だって、今わかったんだ。

『私はソラのお姉さんなんかじゃない』

 

 涙が溢れていく。体が震えてきた。

 緊張の糸が限界を超えて崩れるように地面に膝がつく。

 歪んだ視界から切り離されるように透明なしずくが床を濡らしていく。

 

「私は、誰? 答えてよ……アンセム‼︎」

 

 勢いよくヒカリは顔を上げる。

 歪んだ視界が揺さぶられしずくが飛び散る。

 今までの偽りの記憶に真実が感情に追いつかない。あまりの理不尽な展開に悲しみから怒りが飛び出した。

「私はいったい、なに?」

「それを知りたければ行くがいい」

 ドナルドとグーフィが歩み寄るアンセムにジリジリと後ずさりする。

 ヒカリは怒りのあまり止まった涙を拭いアンセムの顔を睨む。

「どこへ……?」

「闇の世界」

「⁉︎」

 全員が息を呑む。

 アンセムがまた数歩、歩み寄ると、ドナルド、グーフィがヒカリとカイリのもとへ駆け寄り二人を守る。

「心を解放し闇の扉を開けるのだ扉の……」

「俺の体、好きにさせるか!」

 どこからか声が聞こえた。

「ば、ばかな……⁉︎」

 苦しそうに呟くアンセム。

 その目の前からリクの姿が現れた!

『リク⁉︎』

 ヒカリとカイリが叫ぶ。

「早く逃げろ! ハートレスが来るぞ!」

 両手を広げ後ろにいるアンセムを阻止するリクの姿にヒカリとカイリは頷く。

「ヒカリ、カイリ! リクの言った通り行こう!」

グーフィが盾を構え、顔をそれより前に出してアンセムを睨みうながす。

これでは身を守る盾の意味がないとキョトンとしたカイリは、はっと我に帰り走り出す。

「ヒカリ姉! 今はここから逃げて……⁉︎」

 カイリがそういって振り返ると、ヒカリは反対の方へ駆け出していた!

「ヒカリ⁉︎」

 カイリの声でドナルド、グーフィが驚くが一番驚きを隠せなかったのはアンセムだった。

 ヒカリはアンセムの目の前に飛び出し、彼の横をすり抜ける。そして、そばに転がっていた何かを掴んだ!

 それはマレフィセントをドラゴンへと変え、ついさっきソラが消えた元凶。

 人の心の扉を開くキーブレード。

 右手にはヒカリをさっきまで拘束していた輝く手錠を持ち、手錠をキーブレードの持ち手の真下、キーホルダーと呼ばれる部分へと無理やり取り付ける。

 するとキーブレードが白く変わった!

「ヒカリ⁉」

 ドナルドとグーフィが驚く。隣でカイリは目を丸くしていた。

「ずっと見てきたけどヒカリ姉、本当にキーブレード使えるんだ……」

 一際目立つのが先端の刃の部分が大きなハートの形となり杖のように見える。自由になった両手でアンセムへロックセプターのように片手で武器を構える。そしてアンセムの後ろの三人に目配せする。

 頷いたカイリ、ドナルド、グーフィが階段を駆け降りた。

 

「これでわたしから彼らを守ったと言いたいのだな」

 アンセムがヒカリに向き直る。

「ヒカリも逃げろ! お前がキーブレードを使えてもハートレスが多すぎる……俺も、もう」

 今度はリクが苦しそうな表情を見せている。

「リク、一つだけ答えて!」

 真剣な眼差しで武器を構えるヒカリ。

「今の私は……何に見える?」

 アンセムを睨んだままのヒカリがリクに一瞬だけ微笑んだ。

 いつもの不敵な笑顔が今は弱々しく見える。

 

「ば、バカ! こんな状況で、そんな難しいこと聞くな!」

「ほう、真実を思い出した彼女にしては面白い。見ものだな。少しだけ待ってやろう」

 アンセムが楽しそうに目の前の少年の後ろ姿を吟味するように眺めている。

 リクは苛立つように目をつむって唸り、色々と考える。ヒカリはアンセムの動きを瞬きもせずに睨んでいる。

 

 しばらくしてリクの唸る声が止まり彼が目を開けた。

 ヒカリはリクの顔を見る。

「俺はヒカリをこう思っている――」

 リクは笑顔を見せてヒカリに向かって口を開く。

「無鉄砲で負けず嫌いかと思えば意外と誰かを思って行動してる……あいつそっくりだ」

「そうかもね」

「かと言って、俺よりも強いしなんだか暗い所もある……あいつとは全く違う」

「そうでしょうね」

「もしいるとしたら、こんな奴なんだろ?」

 リクはまっすぐにヒカリを見つめ言った。

 

「お前はソラの姉ちゃんみたいだ!」

 

「わかった! 決まり!」

 さっきまで絶望の淵にいた少女は、泣き顔にも構わず、さっきとは違ったいつもの強気な笑顔をリクに見せる。

 そして少女は慣れないキーブレードで相棒の使っていた技ラグナロクの見よう見真似を放った!

『サンライト・ヴァルキュリア』

 六個の光線がアンセムの周囲へ着弾したところで、透明なリクは――笑顔を見せ消えた。

 それをあえて見ず、ヒカリはアンセムの隙を見て駆け出した。

 

 出口へ!

 

「なるほど、時間稼ぎだったのか、だが……」

 アンセムの周囲にハートレスが現れた。

 

「お前はまだ逃げる事ができるのか? 扉の――」

 

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