King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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20章 闇の世界
~暗い道〜


 

 

 暗い洞窟、夜の海辺、誰もいない場所で目が覚めたとき。小さい頃は怖いと思った。もちろん私にとっては水の中で溺れるのも同じくらい怖い。

でも、何でか、今は闇の中で一人なのに全然怖くなんかない。

 

 なんで?

 ああ、そうだ。

 ココに彼がいるはずなんだ――。

 

 ミッキー。

 

 答えが分かると目の前の景色が豹変した。

 いきなり周りの景色が変わったわけではない。

 私自身が見方を変えただけなのだろう。

 黒いもやが晴れるような、それとも暗い所に目が慣れてくるような、見ている景色がゆっくり認識できる。

 そのおかげで自分が横たわっていることに気が付いた。

「闇の世界でも天地がちゃんとあるんだ」

 水の中のように何もない所だと思ってたせいか、ヒカリは少し安心した。

 起きてみたもののなにか違和感がある。

 両手を動かしてみるが感覚がまるでない。

「これ、もしかして体がないってやつ? いいや、自分の体が見えるから逆かな。心だけってことか」

 声を発しているはずなのだが自分一人なので確認はできない。

 心だけなのに意識がはっきりあるのであらためてこの世界に来る前の事を少し思い出してみる。

 

 アンセムに心を開放しろと言われ、白いキーブレードで体を貫いて真っ暗な場所へ落ちて行った。

 その先にソラの心(?)が見つかったので、私に残る最後の光の力を渡して自分はそのまま落ちていったんだ。

 

 私の最後に残った光の力。

それは手にしていた白いキーブレード。

【セブンプリンセス・ヴァルキュリア】だ。

 ロックセプターの手錠は白いキーブレードに変わったときに悪いものではないのはわかっていた。

 すごく体がだるくて頭も痛かったのに白いキーブレードを掴んだときはなんとなく良くなっていたのは今更だけど気が付いた。

 ホロウバスティオンで手錠に変わったロックセプターは私を拘束していたわけではなく、闇へと続く扉に近づいたせいで変化した。そして、私を光の世界へギリギリつなぎとめていたのだろう。

 リクの使っていた黒いキーブレードは七人のプリンセスの心で作られていた。それと手錠の扉を守っていた力があの白いカギに変化したんだ。

 扉を閉じる力を持つキーブレードは唯一アンセムにとってはとても邪魔な存在。しかも所有者は扉のハートレスである私。それと扉の向こうを導けるのはもう一人の私――だからアンセムはその場から逃げた私の目の前に現れたんだ。

 入れ代わりのきっかけとなるよう私ともう一人の私に名前を付けて――。

 私自身はよくわからないけれどもう一人の私はアンセムの研究対象であり、協力者だったのかもしれない。

もしかしたら彼女はこれを待っていたのか?

 

「いや、彼女とは会ったことないし憶測で考えるのはやめよう」

 闇の世界に来る直前、私の体は金の髪へと変化していた。おそらくもう一人の私は向こうの世界で私の体の主導権を持つことになったと考えられる。

 そして私は体と光の力を失ったおかげでこの闇の世界へ来ることができた。

 何も打つ手なしで追いつめられて思わず鍵を突き立ててしまったが、今考えると取り返しのつかないことをしてしまった。

 

 戻ろうにも――残念だけどカギも杖も無い。

 

 だけど、何も打つ手なしではない。

 相棒がこの世界のどこかにいるのだ。

 

「ミッキーごめん。私、来るなって言われたのに来ちゃったみたい」

 手紙で書いていた。

 扉の前で待っていてくれと。

 扉を見つける前にもう一人と体と心が入れ替わるとは彼は想像できたのだろうか?

 それに、アンセムの側にいるであろうもう一人の私は今何を思っているのだろうか?

 

 闇の魔法使いと自称する彼女。

 ミッキーは助けてくれると手紙には書いていたがそれは私と彼女が同じ体の中にいたからでアンセムが彼女を利用しようとしているのは確かだ。

 

 最悪なことが起こらなければいいが――。

 

「でもまぁ、ソラ助けられたのなら良いか」

 ソラがあそこにいたのは思わぬ誤算だった。

 だから私の選択には悔いはない。

 結果はどうであれ、あの状況で私のやれるだけのことはすべてできたのだ。

「思えば私の中の光の力が無くなったからミッキーの心配してた事は問題なくなったのよね? ここに来ても大丈夫じゃん!」

 良くも悪くも来てしまったのだから結果オーライ! これなら胸を張ってミッキーに会うことができる。

「よーし、動けるのなら進むしかないよね!」

 独り言はいつものこと。

 周囲を見渡すとヒカリはある一点を見て驚いた。

 

「あれは……お城?」

 

 

「ココって闇の世界よね?」

 お城の方向を目指し歩きながらきょろきょろと周りを見渡す。

 ここは真っ暗な林の中だ。明かり一つないのだが目が暗いところに慣れくると問題なかった。

 それに綺麗に道が舗装されていてヒカリは迷うことなくお城へと進んでいく。今見ているところが闇の世界だなんて誰が思うのだろうか。

「それにしても闇の世界にもこんな場所があるなんて驚いたわ」

 今更だけど身体一つで装備も何もないヒカリにとって暗い夜道はとても危険な場所だ。

 しかし自分一人しかいないわけで、なんにせよ行動を起こすほかない。

 それにそもそも『からだ』がないのだ。

幸いなことに生き物の気配は全く感じないし。いままで冒険した暗い夜道と違って危険も特に感じられなかった。

 

 少し考えてみると答えがわかった。

 生き物の声や自然の物音もまったくしないのだ。

 危険が感じられないどころかこんな気配のしない所は逆に違和感しかない。

 この世界はすべてが眠りについているようだ。

 

「やっぱ、闇の世界なのか」

 思わず声に出してみる。

 すると後ろから動く気配を感じた。

「!」

 振り返るとハートレス、シャドウが現れた。

「え、ちょっと待って! ハートレスはいるの⁉」

 ダメ元でいつものように武器、出てきて~と念じてみたが、壊れた杖、変化した手錠、自分を貫いた白いキーブレードも出てこなかった。

 今の丸腰のヒカリは戦う術がない。

「そうだ、今の私は……」

 少し間合いをとってシャドウを観察するヒカリ。

 そしてゆっくりと距離を縮めてみる。

「やっぱり!」

 大きな声を出してもヒカリのことを全く認識すらしていないようだ。

「まるで妖精の姿の時みたいね。これで戦闘面はまったく心配なし!」

 ハートレスを使って今の自分の状況を確認するのもなんだか寂しいが、それでもいろんな情報はほしいところ。

 いろいろと考えているといつのまにかシャドウは闇の中に消えてしまった。

 本当に今の自分はこの世界には存在しない幽霊のようだ。

「まぁいっか、闇の世界って変なところね」

なぜいきなり現れたのかはこの際、考えないことにしてハートレスに襲われないことだけ知れただけでさっきよりも意気揚々と歩き始める。

 

 いつの間にか林が開けてお城の建物が見えた。

 お城には時計の大きな文字盤が見える。ミッキーと旅をしていた時には訪れたことがないお城だ。

 そしてヒカリの目の前に立派な城下町が――。

「ん? あそこ、なんかありえないくらい空間がねじれてる?」

 お城まで続く街の風景は普通だった、しかし不思議なところがいくつかある。

 建物の一部がまるで宇宙空間のように瓦礫がうねるようなオブジェとなって天高くそびえていた。

 空間がねじれてるなんて、こんなの普通の世界では絶対にお目にかかれない。

「まるで世界が壊れてしまったような……? あ、わかった、まさにそうなのね!」

 ココは闇の世界。

 向こうの世界がなくなるとヒカリのようにこちら側の世界にやってくるわけだ。そしてその途中があのように空間がねじれているのだ。

「これ、ちょっと大発見よね? 闇の世界には簡単にはいけないわけだし、帰ったらレポートに――」

 自分で口走った言葉に驚き足を止めた。

 

「帰れる……のかな?」

 思わず自分自身に聞いてみる。

 今までの事。少し前の事。そして故郷の事。

 いろんな思いがよぎり立ち尽くす。

 そんな中――。

 

(ゴーン、ゴーン)

 城から鐘の音が鳴った。

「もしかして誰かいる⁉」

 寂しかった気分が一変する。

 重かった足取りが一気に軽く感じた。

 ヒカリはお城へ向かって走る。

 そしてふと思った。

「私の身体の感覚がなくて、建物が宇宙空間みたいになってるってことは――」

 ヒカリは助走をつけて空間を蹴った!

「思った通り! とべるっ!」

 

 ヒカリはアビリティ【グライド】を手に入れた☆

 

 

 城下町を一気に飛んで鐘の鳴る建物。大きな時計のお城へたどり着いた。

 城と町の間には石造りの大きな一本の橋が架かっている。さすがに橋から落ちる危険があるのでヒカリは空を飛ぶのをやめて街の隅で降り立った。

「誰か居る!」

 ヒカリは城の入り口にたたずむ人を見つけた。

 走って橋を渡ろうとしたが――。

(ガチャン)

「ん?」

 街の建物など幽霊のようにすり抜けてしまう身体でいままで何も触れることができなかったのに、今はなぜか触れることができる機械に右腕が引っかかった。

 ヒカリは振り返る。

「なにこれ、歯車のオブジェ? それになんで魔法の力が……?」

 そう言っている間に歯車がガラガラと崩れ去り魔法のオブジェはおそらくヒカリのグーパンチによって破片残らず跡形もなく粉砕された。

 それだけではない。歯車のオブジェが消えると地響きが聞こえ、お城、街、足元の地面である石作りの橋すべて。周りの建造物が崩れ落ちてゆく。

「え、ええ~~⁉」

 訳が分からずパニック状態になるヒカリ。

 重力が消えたように下へ崩れていく空間。今まで無音の世界でこれほど物が崩れる音を聞くと恐怖しかない。

 しばらくヒカリはぐるぐると建物を見渡すだけで何も考えが浮かばない。

「き、きゃぁ!」

 建物が迫り頭を抱えるヒカリ。

 恐る恐る目を開けると――瓦礫が自分の体をすり抜けていくことに気が付いた。

「あ、そうだった。私、今は身体ないんだっけ」

 夢のような出来事だらけで我に返る。

 そして思い出す。

「ああ~~! 誰かお城の前にいたんだっけ!」

 当然、お城の前にいたであろう人は地面の崩れた空間にはもう見つけることができなかった。

(私、大変なことをしてしまった!)

 失意の念の中ヒカリは粉々になる地面とともにゆっくりと闇に落ちて行った。

 

 

「それにしても、触れられる物と触れられない物があるなんて、まだまだこの世界での経験が必要よ」

 暗闇の中、上も下もわからない空間をゆっくりと落ちていく状況なのに今のヒカリは至って冷静だった。

 困ったときは現状把握。

 さらに次は周りに危険がやってこないか自分の五感を研ぎ澄ます。

 新しい世界を訪れる旅をしていた経験がここで生かされていることに気がつき、次の場でミッキーに出会ったとしたら迷わず感謝するしかない。

「まぁ、この体になっても物に触れられて会話もできればいいんだけど」

 そうこう考えているうちに落ちていたと思ったらまばたき一つで地面に降り立っていました。

 初めて目覚めた時と同じような状況に闇の世界の景色は目まぐるしいなと余裕な感想さえ思い付く。

 それでもなにか不安要素は蓄積する。

「さっき声をかけようとした誰かも無事でいますように」

 少しでもネガティブなことを考えないようにヒカリは声に出して祈った。

 

「さぁて、気をとり直して。今の私は前に進むしかない! いっくぞ~~!」

 地面を蹴って飛び立ったヒカリはいつも以上に気合の入った一声を自分自身にかけた。




最終章突入。
所変わってこちらはKH2.8フラグメンタリーパッセージの原作沿いとなります。原作会話はおろか、主人公アクアもチラ見だけの地形しか出てこない内容なのでプレイしていない方も大丈夫。
KH3直前タイトルなので景色が綺麗。ぜひ遊んでみてね。

個人感想ですが、なんと着せ替えもできる謎すぎるおまけ要素付き。闇の世界でもおしゃれができるとは、女子力高いアクアさん。王様がダークサイドキーブレードについて語るところも必見です。

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