King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~闇の鍵と狭間の錠〜

 

 

 輝く少女の光のせいで近くのハートレスが現れ、彼女に向かって襲い掛かる!

 

「危ない!」

 武器のないヒカリに隣人が叫ぶ。

 声に反応したヒカリは身をひねって攻撃をかわし、シャドウの背中に触れる。

 

 なんと、それだけで消滅した!

 

 その後、黒い住人は一斉に黒い大群に変わり襲いかかる。

「多勢に無勢、なんてね。動かないでおじさま!」

 彼女の足元に光の魔法陣が描かれると、すべての闇の魔物がかき消された。

 あたりのハートレス達がいなくなると、傍で見ているたった一人の観客に振り返った。

「私、戻れたのはいいけどこの光のせいでハートレスが湧いて出てくるのよね、幽霊のほうが面倒じゃなかったわ。まぁ、今は私の側にいれば大丈夫よ」

 闇の魔物を簡単にあしらう光に包まれている少女を見て側の老人は感心する。

「その力、本当に驚いた。まさか、君がこんなに強い輝きを持っているなんて――」

「さっき、言ったでしょ? 私は普通の人ではないって」

「あ、ああ……すまなかった。この話はもうやめておこう」

 野暮な質問は飲み込む老人にヒカリは不敵な笑顔で答えた。

「さぁて、この調子で体も元に戻って、さらには元の世界に戻れればいいんだけど、さっきみたいなお知恵を下さらないかしら?」

 やや上から目線な物言いにさっきはすまなそうにしていた老人が今度は苦笑していた。

「君という人は……そうだな、あそこの岩に、その魔法を当ててくれないか?」

 指さした所には人の身長よりも大きな岩があった。見落としがちだが不自然に縦に大きな亀裂が入っている。

「また不思議なこと言うわねぇ、まぁ……ご要望にお答えするわ!」

 ヒカリはさっきよりも大きな光をまとい、ありったけの輝きを両手に集中させた。

 輝きが強くなるにつれて周りにはハートレスがまたしても出現する。

「今度のはおっきいから……フルバースト!」

掛け声とともに渾身の光の球が岩に命中。

 すると岩が輝き白い扉へと姿が変わる。

「うそ~~」

「闇の世界にはいくつか出入り口が存在するんだ。予想はしていた。だが、あと一歩何かが足りないと思っていたんだ。君の使うその力のおかげでここから出ることができる」

 やはり、この老人は変な人だ。

 しかし、これはもはや悪い意味ではない。

 この人のことを世間一般ではきっと普通の人ではなく『賢い人』と呼ばれるのだろう。

 その賢い人が片手を広げヒカリに扉を促す。

「さぁ、ここにとどまると危ない、扉の向こう側へ行くとしようか?」

「……私はいけない」

「どうして? 君も外に出たくはないのか? 体の心配ならわたしがなんとか解決策を見つけ出すと誓おう」

「ごめん、違うの。非常に魅力的なお誘いだけど、このまま私は残る。行きたいのは山々なんだけど、まだ探してる人がいるの。だから、もう少しだけ、ここにいるわ」

 驚く賢人にありったけの行けない理由を積み重ねた少女。まるで君のために用意したと言われたプレゼントを親しい友人が手に入れると約束していたので受け取れないと、断るようだった。

 

 私は何度。人の誘いを断ってきたのだろう。

 私の選択には悔いはない。

 それでも、こんな選択をすることには少しだけ不安はよぎる。

 後で振り返るからこそ今のこの選択はとても重要なことなんだって思う。

 だから大切な決め事は私の思ったそのままで決断する。

 

 複雑な笑顔でヒカリは丁重に断った。

 それを汲み取ったように老人は穏やかな笑顔を見せてヒカリを眺めていた。

「そうか……今の君ならば問題ないだろう。無事向こうへ戻ることができたら私の所に来るといい」

「本当にごめんなさい」

「なぁに、誤ることではない。君は私の恩人だ。何があっても全力で力になると約束しよう」

「だったら私、魔法が復活したお礼をしなくちゃいけないから、きっとあなたのこと探すと思う。私はヒカリ。あなたは……そっか言えないのよね」

 腕を組みうーむと考え込むヒカリ。

 そんな彼女に、老人は答えた。

「それならば、私がヒカリに合言葉を尋ねよう。そうしたら君が『全ての光に迷いはない闇の迷宮を照らせ!』わたしはこう続ける『レイディアントの花たちが君を待つ』と」

「……わかった」

 賢者が扉の向こうへ行くとすぐに扉は亀裂の入った岩へと元に戻った。

 

「では、進みますか」

 なんだか一段落ついた気分だ。

 帰り道の手がかりが見つかったので、はじめ来たときよりも幾分か気分はいい。

 心の安らぎとともに体の輝きがなくなるとまたヒカリはさっきの幽霊に元通り。周りにざわめいていたハートレスも静まり返った。

 

 そして、ふと思う。

 もしかして、鏡の中の私はこれを期待していたのかもしれない。危険だと言ってあえてあの老人に合わせてくれたことで教えてくれたんだ。

 もう一人の私は私の存在が邪魔で闇の世界に落としたわけではないと。彼女は私と敵対する立場ではなくきっと私が何かをするのを待っているのだ。

「そっか、私はこの場所で何かをするべきなんだ」

 声に出して自分に言い聞かせる。

 思えば私の知らない間、彼女はずっと助けてくれていた。

 前にバーストで目が目えなかった時、私は初めて闇の魔法を使い、結果的に私の視力は元に戻ったんだ。使いたいと願う、だから闇の魔法が発動し、同時に彼女が現れた。

 私には扱いが容易ではない、制御できない力、大きな力、それを無意識ではあれ放ってしまった自分。彼女の持つ闇の力と今の世界の危機では規模が違いすぎるけど取り返しのつかないことは間違いないし、この後の償いは自分でやらなくちゃいけないんだ。

 だったらこの世界で私はやらないといけないことがあるはず。今の私ならその力がある、もうひとりの彼女はきっとそれを待っているのだろう。

 

 私はもう一人のあなたと話はできない。

 だけど答えは決まった。

 私の力で世界を救ってみせる!

 あなたも、きっとそうしてほしいんでしょう?

 だってあなたは私のもう一人なんだもの。

 

 

 海岸沿いに歩いていくと早回しで時がたつようにあたりが明るくなった。

 先ほどの賢者と話していた浜辺とは打って変わって日の光が眩しい。

 そして、瞬きをしたときに気が付く。

 見慣れた浜辺が広がっていた。

 ヒカリはここを知っている。

 本当はずっと何も知らない私はここに居たかった。

 

 私の故郷デスティニーアイランド。

 

 振り返るとあの場所が目に入る。

 暗い洞窟への入口。

 迷わずヒカリは進んでいった。

 島が消える最後の記憶は夜で、しかも嵐がやってくる直前だった。

 正直、この中に入るのは怖かった。あの時はカイリがいると思ってたから入れたんだよね。

 今の気持ちはあのときと何も変わらない。

 この向こうには私の知りたいものがある。

 

 暗がりでもわかる落書きのされた壁に目をやると星型の何かを持った人物が描かれていた。

 誰かが落書きしたものだ。

そんなに日が立ってないはずなのになんでか懐かしく思えた。

 

 奥にある扉を押す。容易に開いた。

 この扉の向こうには私の知らない場所がある。

 ここから先にはきっとーー。

 

 

 扉を開けると広い洞窟だった。

 奥へ進むと輝く物があった。

 さらに近づくとそれが何か分かった。

「これ、私の木刀?」

 リクとソラの物では無いのは傷や色でよく分かる。それにこれを見たのは最近だ。

 ホロウバスティオンでなぜかリクがこれを持っていてキーブレードの無いソラに向かってこれを投げた。その後はソラに返してもらって姿が消えるまで私が身につけていたはず。

 今の私は身一つなので向こうの世界に置いていったはずだ。

 

 ヒカリが木刀に触れると感触があった。

 迷わず掴み取ると木刀が輝き形が変わる。

「これはキーブレード?」

 持ち手が銀色で棒と刃の所が金色だ。

 ソラの使うものとは逆の色。私はこっちの方が見慣れている。

 これはミッキーの使っていたキーブレード。

「ここにミッキーが来た? いいや、ちがう」

 キーブレードを眺めるとヒカリはなぜか一気に理解した。

「このキーブレードはミッキーのじゃない。本物の……闇の世界のキーブレードだ!」

 この前掴んだリクの黒いキーブレードから白いキーブレードに変化したときに感じた想い。そして何度かお互いの武器を交換して使っていた頃のミッキーのキーブレード。

 今になってなんとなくだけど分かる。

 なんて言えばいいのかわからないけどそう、ミッキーの使っていたのと想いが違う。

 別のキーブレード。

 そして、次にこうも思った。

 

『このキーブレードは私が直すんだ』

 

 なぜだか思うんだ。

 ほんの少しの闇の力をこのキーブレードに渡すだけ――それだけでいい。

 でも、今の私は光の力が戻ったが闇の力はもう一人の私のモノだ。

 どうすればいいのか、今の私はわからない。

 キーブレードを眺める。見た目は使ったことがあるから色も形もよくわかる。ミッキーのと全く同じ。

 でもなぜかわからないけど、私は『これ』を知っているみたいだ。

「なんでだろう? なんだか懐かしい……」

 手に馴染む、そんな懐かしさがある。

 島にいた前のホロウバスティオンの記憶も最近まで無かったくらいだ。たぶん小さかった頃に持ったことがあるのかな?

 最近まで持っていた杖のことを思い出す。

ロックセプター。

 トラヴァースタウンで初めて出てきた杖は手にした時、何も思いが伝わらなかった。

 私の魔法の力が未熟だったからだって思うけどこのキーブレードはそれとは違う。さっきこの島を見たときのような感覚で懐かしさがある。

 ロックセプター。

 今はもうなくなってしまった扉の錠前は初めては本当に何もわからないまま使っていた。

「もしかして、コレは私の……ためなの?」

 ふっと、なにかの記憶が流れ込んてきた。

 いろんな謎が次々とパズルのように綺麗にはめ込まれてていく感覚になる。

「分かった。このキーブレード……このこが私をロックセプターに選んでくれたんだ!」

 闇の世界へ行ってしまった島と一緒に、ハートレスの私はこの闇の世界へ来るはずだった。

 私がこの闇の世界へ迷いこまないようにこのキーブレードは『自分』じゃなくて、この世界の狭間である『扉の錠』を私に持たせてくれたんだ。

 ロックセプターは『光と闇の世界の扉の錠前』

 そして、ミッキーの持つ本当の闇の世界のキーブレードは、目の前の、このキーブレード!

 ロックセプターとミッキーの持つ不完全なキーブレードが同時に現れたのは――何を隠そう、私のためだったんだ。

 

「ありがとう、私をこの世界から守ってくれたんだね」

 感謝を込めてキーブレードを眺める。

 

「どうやら、おまえもアイツの策略にはまってしまったようだね?」

 突如、ヒカリに答えるように洞窟に響き渡る声。

 あたりを眺めるが、その姿は見えない。

 ヒカリはキーブレードを構える。

 洞窟は暗くて周りがよく見えない。

「いいや、随分前から、お前がこの闇の世界に来ることになっていた、そういうことか」

 振り返ると黒い思念が人の形に変化した。

 誰だかわかるとヒカリは少し驚き、次に苦笑いの同情の顔を向ける。

「マレフィセント。闇の力に屈したあなたが、まだ姿が消えていなかったなんて」

 最後に見たのはアンセムに乗っ取られたリクによって心を闇に開放された所だった。

 私共々、悪運は強いらしい。

「お前の哀れみなんていらないよ、わたしが欲しいのはその闇のキーブレードさ」

「まだ、なにかするつもり?」

「キングダムハーツを手にするまで、私は諦めないよ。闇の世界に来たのになぜ目当てのものがなかったのか……答えは簡単だったんだ。お前がこの力のすべてだったのだね!」

 地面に揺らめいていた黒い人の影が完全に実体化した。バサリとローブをはためかせ杖を付き出す闇の魔女マレフィセントにヒカリはキーブレードを構える。

「このキーブレードはあなたには使いこなせない」

「すぐに終わるさ。リクにできたことが私にできないとでも? それを使ってお前の心を解き放てばすぐに返してやるよ。そうすれば私の望む力が手に入る――世界の心と言われる大きなモノがね!」

「!」

 ヒカリは良くない未来が浮かんでくる。

「それはだめ! キーブレードで私を……そんなことしたら世界が飲み込まれる。すべての世界が無くなるわよ! 絶対に良くない……島も私も、すべて元の世界に帰るんだからね!」

 血相を変えて叫ぶとマレフィセントはさらに楽しそうな表情をする。

「おやまぁ、どこでそんなことが分かるんだい? お前はおかしなことを言うねぇ……」

「えっ……?」

 ヒカリが動揺する。疑いもなく口走った言葉に自分自身が困惑する。

 その顔を見て魔女の口元がさらに釣り上がる。

「お前は気がついていないのかい? その未来の分かる力を。そして、すべてを理解する知識を!」

「……私は、さっきから、独り言を言ってただけ、まだ完全な証拠なんかないんだから!」

 確信に迫りそうなほどの仮説を表明する者はいない。ヒカリはそう主張した。しかし、マレフィセントはさらに定義を乗せていく。

「私にはお前の力がよく見える! お前が杖を使わずに魔法を放っていた時からハートレスがざわついていたから分かるんだよ!」

「ハートレスの私に?……そんな力。だとしても、私はただの半身、ライトハートよ! ダークネスハートの半身は向こうの世界にいる、私は片割れにしか過ぎない!」

 どうしても納得のいかないヒカリが叫ぶ。

 マレフィセントの決定的な言葉を否定するしかできない。

「なあに、向こうのお前は闇の力を使う者、ならば光の力を持つお前こそわたしの求めていた力を有する者。その鍵を使えば、お前が扱えるものが私に移る。そうすれば世界の心を手にしたものと同然さ」

「そんな……この鍵は、まだ不完全よ!」

「構うものか! 最後の地で宝を目の前にして挑まないやつがいるか!」

 口論は中断された。

 マレフィセントが杖を振るって雷を放った。

 雷鳴がとどろき青白いフラッシュで一瞬見えなくなる。

「くっ……バリア!」

 半透明の球体が青白い雷に吸収され彼女の体を守る。ヒカリの持つキーブレードは一瞬にして白いキーブレード【セブンプリンセス・ヴァルキュリア】に姿が変わっていた。

 なんてことはない。キーブレードがヒカリの意思を受けて魔法の力が最大に引き出せる武器に変わったのだ。

 ロックセプターが出てこなかったことに少なからず失望したがプリンセスの力が集うこの武器も同等の力はある。

 ヒカリはキーブレードを振りかざすと光の玉を背後にいくつも発生させる。その直後に放たれたマレフィセントの撃つ雷を残らずすべて受け止め相殺させた。

「こざかしい、先を読まれ詠唱の時間もなしに魔法を使うなんてね……でもいいさ、今のお前には助けてくれる仲間はいない」

「離れていても想いは受け止めている……今の私はみんなの分までここで頑張ればいいんだから」

 キーブレードを構えるヒカリは降り止まない雷をかいくぐりマレフィセントの目の前まで詰め寄った。攻め込むヒカリに魔女は余裕そうな笑顔で彼女を眺めている。

「ここで待っていたら誰かが来るとでも?」

「そうよ! それとも、わたしが早く決着がつくかしらね?」

 突きを繰り出したヒカリが魔女の体をつらぬくと魔女の体は黒い絵の具を濁したようにゆがんだ。

 手応えはなかった。そのかわりヒカリの耳元で余裕そうな声が聞こえる。

「強がりは言うものじゃないよ。闇の世界でお前の扱う光の力が叶うものか」

「!」

 気がつくとマレフィセントは背後の岩石群に移動していた。魔女の足元から沼のように闇が渦巻く。

「闇の世界の者共よ、悪の権化たる私に集うがいい!」

 マレフィセントの声に黒い竜巻のような物体が地面から湧いて出てきた!

よく見るとなにかの集合体だ。

ヒカリはそれを知っている。

「あれはシャドウの群れ⁉」

 マレフィセントがシャドウの集合体と一体になり体が大きくなる。

「これはなんだか……危ない!」

 次第に黒い生き物が洞窟内を圧迫していく。

 ヒカリは狭い通路から脱出した。

「あっ、島が……!」

 転がり込むようにヒカリが洞窟の出口へ脱出すると島の浜辺は夜に変化していた。

 空には雷鳴がとどろき、いつか見た島が消える最後の姿と重なる。

 先程出てきた狭い通路からとめどなく生き物の大群が吹き出し次第に大きな人の形となり、翼の生えた魔人の姿に変化した。

 魔人が地を這うごとに島の外殻が崩れる。

 それを見てヒカリはえもいわぬ憤りがこみ上げてきた。島の悲鳴というのだろうか耳をつんざくような頭痛を感じヒカリは思わず頭を両手で抑える。

「大丈夫……私は、三人と約束してたの……ここにいて待ってるって! だから、この島は絶対に守るんだから!」

 淡く輝くヒカリの体。

 頭痛は次第にひいていき島全体が呼応するようにヒカリの周囲に逆巻く光の渦。

「デスティニーアイランド。私と一緒に戦って!」

 右手に握る白いキーブレードを横に構えるとさらに武器が輝いた。

 ヒカリへと迫りくる魔人の黒い手。

 すぐにヒカリは両手で自身の武器を構え、刀の居合のように体制を低くしてその場で勢いよく横殴りにスイングする。

「ザンテツケン・改!」

 ヒカリが叫ぶ。

 光の軌跡が斬撃となり一閃。魔人の体に光の太刀筋が炸裂した。すかさず第二撃は振り上げた姿勢のまま肩から膝へ振り下ろす!

 光の斬撃が斜めに放たれた。

 攻撃はまだ終わらない。

「でりゃーー‼」

 さらに攻撃を続けるため走り出し助走の勢いを使い重力を無視したように魔人の体を伝い垂直に乗り上げ、魔人の足元から頭へと次々と斬りつけていく。

 猛攻を受けても魔人は倒れない。体から切り離されるシャドウが竜巻となりヒカリを襲う!

 魔人の頭まで到達するとヒカリは空を蹴って上空を飛び回る。黒い竜巻がヒカリの後を追って空に黒い軌跡を作る。

ヒカリはこれを目で捕らえ、周囲を見回し魔法を紡ぐ!

 

「切り裂け! ヴァリアブル・ソニックレイヴ!」

 

 飛行するヒカリはバリアで作り出した光の壁を無数に張り巡らせた。そこへ突進すると壁から壁へ音速ではじき出されるように飛び回り、黒い嵐に光の刃を斬りつけていった!

 彼女に向かう黒い竜巻は彼女の体を傷つけることはなく竜巻が無力化し消えていく。

 

 しばらくの猛攻の末、島へ降り立つヒカリ。

 上空で飛び回るハートレスはほぼ壊滅させたが、散ったハートレスが魔人のもとへ合流していく。

 魔人はまだ大きい。息つく間もなくキーブレードを掲げ、気合を入れ直すヒカリ。

「光よ!」

 叫ぶとヒカリから発せられる白い輝きと地面の魔法陣の力によりヒカリは大きな輝く鎧がまとう。

「まだまだ!」

 声に従うように光の鎧が五つの光へと分解され、レーザーのように彼女の前方を妨げる黒い敵を無数の光が射抜いていった!

 輝く攻撃によって魔人の足元が崩れると、大きなものが分解されるように無数のハートレスとなって散っていく。

「よし……あっ⁉」

 優勢と思いきや、足元が動かなくなる。

 黒い沼がヒカリを捕らえていた!

 光の鎧が吸収される。

「これは、ちょっと厄介ね!」

 苦笑いしながらも前方の大きな敵を眺めると崩れながらも魔人の鉄槌がヒカリの頭上から振り下ろされる!

 バリアを張ろうと手を伸ばしたところ、足元の沼がいきなり深くなった!

 湖の氷が割れたように一気に全身が闇へと落とされる。

「しまった⁉」

 頭上はフェイク!

 とっさの出来事で対処が遅れてしまった!

 今更になって思い出す。

心だけの自分は溺れることがない。

苦しくはない。

 しかし水中に落ちたような感覚がヒカリを襲う。

 次第に意識が遠くなってくる。

 

 ああ……この感覚は、ダメだ。

 ここまできて頑張ったのに。

 やっぱ、一人じゃ……だめ、なのかな?

 

 ずっと前から染み付いている恐怖の対象。

 沈む体、光の力を拒絶する空間。

 その恐怖で体が動かない。

 

「……?」

 

 頑なに目を閉じていたまぶたの裏で一筋の光が差し込んだ

 真っ暗な世界からゆっくりと目を開けると――。

 

――あきらめちゃ、ダメだよ――

 

 だれかの姿が見えた。

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