King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~世界の再生〜

 

 ヒカリはデスティニーアイランドの上空に移動していた。

 彼らができることはやってくれた。だから私にしかできないことを今からするのだ。

「リクとミッキーに悪いことしちゃったかな? でも、こればかりは一刻も早く、私の力でなんとかしないとねぇ〜」

 きっと悲しんでいることだろう。

 しかし、これからもとに戻った世界で再開するために私は頑張るのだ。

 手始めに闇の世界のデスティニーアイランドを回収する。その時、ヒカリはキーブレードを持った女性を見た。

「あの人が、アクアか」

 見慣れない服装だ。別の世界の人のようだ。

 でも、ヒカリにはなぜか懐かしさがあった。

 キーブレードを持つ者に私、もしくは私の宿す心にとって何か思い入れがあるのだろうか?

 穏やかな顔でゆっくりと闇に落ちていく彼女を見てつられてヒカリも微笑む。

「私は――今は世界を直さなきゃいけないから……またどこかで会いましょう」

 ヒカリはデスティニーアイランドのかけらを拾い集め光の世界へ移動した。

 

 

「闇の世界にあった、世界のかけら達を持ってきたよ」

 ヒカリがもう一人の彼女に手の中の輝きを見せた。彼女が振り返る。

「これらを、ロックセプターで空に散りばめれば、あとは流星となってもとに戻っていくわ」

「わかった」

 ヒカリがロックセプターを天へ向かって振り上げると輝く欠片は一気に飛び上がりやがて天から降り注ぐ流星となった。

 銀のロックセプターのリボンから新たなモチーフのイラストが現れた。もとに戻った世界が新たにリボンに描かれたのだろう。

 それは世界の修正を意味する。

 

「これで一件落着ね!」

 ヒカリが一息つく。

「まだよ」

 もう一人の自分が静かに言った。

 両手を腰に当てる彼女の仕草はヒカリにどことなく似ているが自分より幾分か大人びて見える。

「まだなにか復興作業あるの?」

 ヒカリがぼやく。

「これからが大変よ! 世界が再生されていく……私とあなたで、できる事は全てやらなくては」

「ねぇ、それって自動的にもとに戻らないの?」

「ある程度は元に戻るけど、いろんな子が迷子にならなければね?」

「……なるの?」

「迷子になるべくしてなる子なんていないわ、それに、今の私達にはそれを正しい場所へ誘導することは容易にできる」

 自信アリ気な少女にヒカリは触発されるように不敵に笑う。

「ま、私にできることなら、やりますよ!」

「ふふっ、それならば頼りにしてるわよ? 終わったら私はあなたの中で眠るから、会話はこれで最後、せいぜい頑張ることね!」

「ねぇ……なんかそれ、あなたにとっては救われないってことよね?」

 せっかくこうして話ができているのにまた彼女はヒカリの中へと戻ってしまうのだ。

「これでいいのよ、私はお父様が見つけてくれた世界の扉『鍵を待つモノ』あなたはその力を持つ資格のある扉を守るもの『鍵を待つ者』私はあなたであって人ではない……だから私はあなたにすべての力を渡すことができる」

「それで、すべての力が揃った私は、その後はどうすればいいの?」

「……頑張りなさい!」

「それってその後は私だけがんばるってことじゃん! 私、これからどこへいけばいいのよ〜」

 

 その後、彼女の声が聞こえなくなった。

 

「それって、私が迷子同然じゃーん!」

 叫ぶヒカリは次第に景色が変わっていくのを目の当たりにした。

 この現象は容易にわかる。

 私ともうひとりの私が元の体に一緒になった事での世界の間からの強制送還だ。

 これで私は完全に闇の世界へ行けなくなった。

 ミッキーとリクにしばらく会えないのは寂しいけど、私にはこれからやらなくてはいけないことが山ほどある。

 ヒカリは両手を上げて誰もいない空間で叫んだ。

「さぁ、世界の心様はこれからが忙しいのですよ~誰かの悲鳴が聞こえましたら颯爽と登場しますからね〜!」

 

 

 ヒカリに理不尽な仕事を押し付けた彼女はたった今カイリの目の前に現れた。

「あなたは……確か私達の守っていた扉の子?」

「最後に、この島に来たかったの。ほら、あの子の中で私は眠ってたから、実は見たことがないのよ」

「そうだったんだ、とてもきれいな海があるの。あなたのもう一人の子はこっちには来ないの?」

「今すぐは無理だろうけど……あの子はきっと帰ってくるはず。あの子ならすぐにすべての事をやりとげられる。だけどね、今はたぶん、戦いよりもそれは複雑だから。ラスボスを倒したあとの……そうね、ぬか喜びの反対みたいな気分になってると思うけど」

「それって単純に今の作業にがっかりしてるってこと? なんだかいい状況じゃないね……じゃあ、あなたは?」

「私はあの子とは一緒になれない」

「だったら私の島に行こうよ。私みたいに」

「それも、できない」

「どうして?」

「わたしにはあなたの心の輝きは眩しすぎる。わたしの片割れと同じくらい」

「そんなことない。あなただって私とあの子の心の中にずっといたじゃない」

 カイリが、彼女を見つめる。

 彼女は首を縦には振らなかった。

「私はね……わたしは【存在してはいけないもの】だから」

 彼女はそういった瞬間、消えた。

 そしてカイリの記憶からも文字通り消えてしまった。

 

 流星がカイリの周りに降り注ぎ、

 懐かしい島へと再生が始まる。

 

 その中でカイリはソラを見つけた。

「ソラ!」

「カイリ! オレ、リクと王様を探さないといけないから……まだ島には戻れない!」

「約束だよ! 必ず島に帰ってきてね!」

「うん! 約束だ」

「それと……あなたのお姉さんも一緒じゃなきゃイヤだよ!」

「カイリ……分かってるって!」

 ソラとカイリの伸ばした手が次第に離れていった。すぐにソラの姿は見えなくなっていた。

 

 カイリは振り返ると、

 島が、すべて元通りになっていた。

 

 

「ああ~~なんで追い出されたのかなぁ~~!」

 

 流星を眺めていたヒカリはところどころ迷子になっている輝きを見つけてはロックセプターで拾い集めては空に飛ばしていた。

 それはもう野球の千本ノックの球拾いのような、とても単純な作業だった。

 それも一段落すると、一気に体からどっと疲れが押し寄せてきて地面に身を投げだしたかと思うと、こうして青空が広がっていた。

 

 どうやらまったく知らない世界に飛ばされていたようだ。途中ソラ達がとても楽しそうにプルートを追いかけているのが目に入ったがそのソラ達とは別のどこかの原っぱだ。

 

 ここが光の世界であるのは分かる。

 体は……あるので、おそらくもう一人の自分の力が私の中に戻ってきて彼女は再び私の中で眠っている。

 その証拠に新たな武器がやってきた。

 新しいロックセプターは二つに分かれていた。

 魔法特化の光のセプターと攻撃特化の闇のセプター。

 

 しかもどちらか一方しか持てない仕様。

 光と闇の武器二つあるってことはもう一人の私の力がまたこっちの所に戻ってきたどころか、全部こっちにやってきたのね。

「私、普通の人ではないのね」

 

 思わず口にすると違和感ばかりでしかなかった。

「ちょっと……何言ってるんだかよくわかんない」

 つぶやいてみたら、さらに変な気分になった。

 

 ヒカリは只今、原っぱに寝そべって風のそよぐ爽やかな気分と草のこすれる心地よい音を堪能している。

 

 体が戻ってきて光の世界に感謝している。

 

 程なくしてヒカリは勢いよく起き上がった。

 なにはともあれ、私は進もうと思う。

 リクとミッキーには消えたと思われている。

もちろんソラ達も。

 

 正直それだと気分が悪い。

 

 勝手に消えたのは私のほうだが今すぐにでも姿を現したい。

 

「えーと、闇の世界にはもういけないから……」

 ヒカリはぐるりと風のそよぐ野原を一望する。

「う~む、一面野原! 視界も良好! 何より風があるのが気持ちいい~!」

 ここは闇の世界ではない。

 生きとし生けるものすべてが活気の満ち溢れる光の世界だ。

 ここから、私の物語はまた始まるんだ。

 みんなが私のことを思い出してくれるように私は頑張るしかない。

 

 私の中の力はこのさいどうでもいい。

 たとえ、あらゆるすべての力が備わっていても望みが叶わない力なんてわたしは欲しくない。

 それでも力に頼るしかない時がきっとくる。

 

 そのためにはこの力。もれなく使い倒す!

 

「無限の魔力! 豊富な知識! さぁ私、この世界を攻略しなさい!」

 

 魔王のようなセリフを叫んだ少女。

 ヒカリの冒険は続く――。

 

 

 

 

 実はその時ソラ、ドナルド、グーフィーが時を同じくしてこの野原に居て、さらにはヒカリとは反対方向へ進んでいったのは――誰も知らない(笑)

 

 訂正。うかつな魔王少女の旅は続く!

 

 




私は扉の前で鍵を待つ
 錠で守るだけじゃ
 誰も鍵を見つけてくれない

 だから錠を持って鍵を探す

 開かれた扉の向こうは
 はじめは怖いと思ったけれど
 誰かが向こうに待っているのならば
 私は進んでいけるんだ

 そこが誰もいない空間で
 一人になったとしても
 私はみんなを想い続けて
 前を向いて進んで行ける

 離れていたってだいじょうぶ

 たとえ記憶がなくなっていても
 覚えている誰かが居てくれれば
 きっと物語は前へ進んでいくんだ

 私が知ってるあなたは
 私のことを知らないというけれど
 私を知らない巡り会う誰かのために

 私はその先へ進もうと思います



 King and Hearts〜鍵を待つもの〜   END
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