King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~ヒカリの魔法~

 

 

 広場には騎士のハートレス。アイアンナイト(ヒカリ命名)が待ち構えていた。

 ワートがかばうようにしてヒカリに言った。

「その杖には多分それなりの意味があると僕は思うな」

「意味って?」

「杖を使ったことがないからそこまでは僕には分からない」

 きっぱりと自信を持って言うワート。

「それって、あてずっぽう?」

「違うよ、可能性さ」

 どこまでもサラリと言い訳をする彼にヒカリはなぜか納得する。

「まぁ、そうともいえるとは思えるけどさ~」

 二人の前にアイアンナイトが迫る!

「ただ、戦うだけだとなにも見出せない!考えるんだ、ヒカリ」

「わかった」

 ワートが囮になってアイアンナイトをおびき出す。ワートは武器も何も持っていないがその分、その行動と、とっさの判断が冴えている。

 拾った小石を投げて気を引いたり建物の隙間をかいくぐっては行く手を妨害したり、大きなアイアンナイトに対して小さな体を使いつかず離れず逃げ回っていた。見た目弱そうなワートだが、なぜか今この瞬間でとても頼りになる存在だった。

 そんなワートのおかげでヒカリは考えることに集中できる。

 初めてこれを使ったとき、攻撃した直前かすかに光ってた。ミッキーのキーブレードだってハートレスを叩くと一瞬キラッって――。

 そもそもこのロックセプターって叩いていいものなの?

 木刀にはちゃんと刃がある、キーブレードもその名のとおり刃がある。

 でも、これは……?

 これは杖だ。直接攻撃をするものではない。

 何か別の、力が!

「!」

 ロックセプターが輝きだした!

 初めてコレを手にしたときも輝いて――。

「うわぁ!」

「ワート!」

 身動きが取れなくなったワートの目の前にアイアンナイトが迫る!

 ヒカリは考えるよりも体が動いていた!

 

「光を――撃て!」

 

 もう考えているヒマは無い!

 ヒカリが叫びセプターを勢いよくハートレスの方へ向ける。セプターが輝きを増し、それが杖の先端へ集まった。

 

 その輝く玉を、ヒカリは――勢いよく打った!

 撃つのではなく、野球ボールのようにフルスイングで!

 ヒカリが放った輝く玉は飛距離を追うごとに大きくなり、アイアンナイトは回避距離に間に合わず、ヒカリの放った光に飲み込まれ、黒い影が消えていった。

 輝く玉はハートレスが消えると小さな光へと分散して跡形もなく消えていった。

「あれはなに?」

 アイアンナイトが跡形もなく消え去ると、ワートがヒカリに駆け寄って聞いた。

「この杖の……力?」

 呆然と立ち尽くすヒカリ。弱々しくつぶやくヒカリに生気がなかった。

 ボスハートレス、アイアンナイトがいなくなってから瞬時に、今度は小さいハートレスが次々と広場に現れた!

「ヒカリ、数が多い、ココは逃げよう!」

 ワートが叫んだがヒカリは聞いていないようだ。

 そこへタイミングよくマーリンとミッキーが瞬間移動して現れた。

「ヒカリ、森で見えたけど、今の輝きは?」

 ミッキーが放心状態のヒカリに聞いた。

「杖がひかって、先端に集まれって。そう思ったらこうなって」

 頭の中が真っ白で、いま自分が何をしたのかがハッキリと覚えていない。

 たった今のことなのに、信じられなくて、不安になってくる。

「やはり、ヒカリさんは特殊な力があるようじゃ」

 なにも言わなかったマーリンが口を開いた。

「これは杖の力じゃないの?」

 ヒカリがマーリンに聞いた。

「杖は所有者の意思に従って力を発する道具に過ぎないものじゃよ」

「ウソだ、私にそんな……魔法なんて」

 うつむくヒカリにマーリンが答える。

「あれはまぎれもなくヒカリさんの魔法じゃ。今一度、意識を集中してみてくだされ」

 ヒカリは何も言わずにロックセプターを構える。

「……っ!」

 フワッと純白の輝きがセプターを取り巻いた。

「ひかった!」

 ワートが目を丸くして言った。

「~~っ!」

 セプターの先、六角形の輪の中心に小さな光が生まれる。さっきよりも小さいが確実にこれは自分の意思で作り上げた魔法の力。意識が乱れると光が小さくなってしまう。ヒカリはセプターを握る手に力が入った。

 瞬時に思った言葉が呪文へ変わる!

「輝けバースト……フラッシュ!」

 光の玉が一気に大きくなって瞬時に広がり、あたりが一瞬真っ白くなった。

 あちこちに居たハートレスがその光で一気に吹き飛ぶ!

「すごい……ヒカリ⁉」

 カクンと糸が切れたように倒れるヒカリ。ワートが倒れこんだヒカリを助け起こした。

「ごめん……なんかつかれた」

 肩で息をするヒカリ。

 ミッキーが残りのハートレスを全て倒し、ヒカリへ駆け寄った。

「ごめん、ヒカリ。僕が一人でどこかに行ったからこんなになって」

「ホント、探したんだから」

 少し怒ってヒカリが言った。

「僕が守るって言ったのに……」

 ミッキーの言葉にヒカリはフッと吹き出す。

「やめてよ、そのセリフ――。はずかしいなぁ」

 安心したように目を閉じるヒカリ。

 しばらくしてピクリとヒカリの体が動いた。

「ヒカリ?」

 助け起こしていたワートがヒカリの異変に気づいた。ヒカリはある一点に指を差し、ゆっくりと目を開けて言った。

「ワート、あの剣……今のアナタなら抜くことが出来る」

「ヒカリ?」

 不思議そうにミッキーが彼女の指の先を眺める。

「なんだって⁉」

 驚くワート。

 ヒカリの指が差しているのは、広場の象徴。岩に突き刺さっている剣。

「あそこまで、行って」

ヒカリは消え入りそうな声でそう言った。

 

 一行はヒカリの言動に訳がわからず、とりあえず剣の突き刺さっている場所まで移動した。

「この剣は、真の王様だけが抜くことができる。僕には――」

「今のアナタなら、出来る」

 ワートをギンと睨みつけるヒカリ。そのまなざしが恐いのでしぶしぶワートは剣に手をかけた。

「……?」

 剣は前まで自分が使っていたかのようによく手に馴染む。

「アナタなら、今のアナタならこの剣は、使える」

 呪文をつむぐようなヒカリの声。

 それに従うように、

 剣が、スッと抜けた――。

「抜けた――」

 ワートがつぶやくと同時に岩が輝いた!

 剣が刺さっていた場所が鍵穴の形に変わる。

 ミッキーのキーブレードがひとりでに現れ、

 一筋の閃光が鍵穴に吸い込まれた――。

『ガチャリ』と音がして鍵穴がスゥと消える。

「これが、キーブレードの力……」

 ミッキーがつぶやいた。

「おや、ハートレスが居なくなっておる」

 マーリンがおどけたようにあたりを見渡して言う。

「ヒカリ。キミはいったい……?」

 ワートがヒカリに問いかけるが――ヒカリは何も言わなかった。

 近づくと、かすかに寝息が聞こえた。ヒカリの寝顔を見てワートは微笑む。

「ありがとう、ヒカリ」

 キズだらけの彼女をワートが優しく抱きしめた。

 ミッキーとマーリンは二人を見守る。

「ヒカリを連れてきて正解だった」

「ヒカリさんにはなにか特別な力がある。その力こそロックセプターの根源、彼女の魔法もそこから来ていると思うのじゃが――」

「あの杖はキーブレードと何か関係があるのでしょうか?」

「杖、もしくは彼女に何か関係があるのかもしれん」

「ヒカリの血縁がキーブレードを持っていることにも何か意味があるのでしょうか?」

「今は何も言えんな、ただ――」

「ただ?」

 言葉を切ったマーリンにミッキーが不思議そうに聞いた。

「この星はもう大丈夫だということじゃ」

 マーリンがミッキーにお茶目にウインクをした。

 

 剣を抜いた少年は、剣を託した者の遺志を受け継いだ。

 ミッキーはヒカリを見つめる。

 さっきのヒカリの行動はなにか気迫があったように思えたが、いま目の前の彼に比べれば、寝顔が少し間抜けに見えて少しおかしかった。

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