King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
~窓を眺めて~
「ん……っ」
「あ、目が覚めたかいヒカリ」
頭が重い。
声をかけられた方に首だけを動かすヒカリ。
ここはグミシップ、カレイドスターの船室だった。
「ワートは?」
かすれた声でミッキーに聞く。
「彼ならもう大丈夫だよ、今のヒカリよりもね」
「私よりって、そんなに頼りないですか、あだだっ!」
ベッドから身を乗り出そうと起き上がるヒカリ。しかし、思うように体が動かない。
「うっ~!」
体の節々が後を追うように悲鳴を上げる。
「ほら、無茶しないで……」
ミッキーが起き上がるのを助けた。
「傷の痛みは、傷をつけた時よりも、傷を直す時のほうが、何倍も痛いんだよ」
「なんか今。それ、とぉーっても身にしみるんだけど」
「その傷かい?この言葉かい?」
ミッキーが微笑んで聞いた。
「どっちも」
見事に図星でヒカリは投げ出すようにそう言い捨てた。
「なら、今度からはもう少し慎重に行動してくれよ」
やはり優しく言い放つミッキーがヒカリのかんしゃくに触った。
「……足手まといで悪かったわね」
低く、ヒカリが言った。
「そんなことは思っていないよ――もう、休んで」
「やだ!せっかく起きたんだからまだ眠くない!」
船室に居るなんて息が詰まる、ほとんど家で寝たきりだった頃を思い出す。
窓を眺めて、それだけだった自分を――。
「僕は忙しいといっただろ?」
ミッキーの顔がきつくなる。困っていてもヒカリはお構い無しだ。
「私は忙しくない!」
キッパリとそう言うヒカリにミッキーは無言で後ろを見せる。
「キミは、自分勝手だ」
「……」
ミッキーは怒っているのだろうか?
それとも――。悲しそう?
それでもヒカリは彼に言う言葉をすでに決めていた。
「2人でやれば、忙しくなくなるよ」
「え?」
さっきまでの憤りを感じさせない声にミッキーは不意を突かれる。
勢いよく振り返るミッキー。その顔はヒカリに始めてみせる顔。彼の少し弱いところ。
「私に、手伝わせて?」
にっこりと満面の笑みを作るヒカリ。顔に付けられた傷がとても痛かったけれどそれでも笑った。
「僕の負けだ」
そう言ってミッキーはヒカリに向かって軽く手を向けた。
『ケアル』
ミッキーの手から木漏れ日のような輝きが現れ、真上からヒカリに降り注いだ。不思議そうに眺めていた輝きが消えたと同時に体が思うように動かせるのがわかった。
「あ、直った」
「本当は使いたくなかったんだけど。あれじゃ、ろくに体も動かないだろ?」
おどけたようにしゃべる彼。もう、いつものミッキーだ。
「ありがとう」
ヒカリは勢いよくベッドから起き上がる。
さっきまでの傷のなごりか、起き上がる寸前少し体がきしんだがそれだけだった。
「もうすぐ次の星に着く、本当はヒカリを置いて1人で行く予定だったけど」
「えーっ! ここワールドの外⁉ ワートにお別れ言ってない!」
「さよならと言っていないのならまた来ればいいってことさ」
「……」
向こうが折れてくれたのが嬉しいけどなんか立場上、私が負けたような気がする。
「いくよヒカリ」
「……うん!」
カレイドスターが次のワールドへと飛び立った。
☆
「とりあえず、そのワールドに行くのは“鍵穴”を見つけて鍵をかけるってことなんだよね?」
カレイドスター運転中のミッキーにヒカリが声をかける。ミッキーの運転も前よりは危なっかしくは無いことに少なからず安堵する。
「結論から言えばそうだね、ワートとマーリン様のいたワールドで鍵をかけたときこのグミが出てきたんだ」
どこからともなくミッキーの手から現れる小さなグミ。
「それって?」
「ナビグミのようだ、かけらだけど」
「ナビ?」
「僕もコレについてはよく分からないけど、特殊な力を持っているグミだね」
「ふぅ~ん、でもさ、ミッキー」
むふふ、と含んだような笑みをするヒカリ
「なんだい?」
その笑みが少しばかり恐くて運転に集中するミッキー。
「あそこで鍵穴見つけたの私だし!」
「そうだね」
ヒカリの言葉を聞き流しているようにしか思えない。口を尖らせて操縦席に乗り出すヒカリ。
「私がいないと、もしかしてはかどらないんじゃない?」
乗り出すヒカリ。
気にも留めずに操縦するミッキー。
「あれはマグレじゃないのかい?」
「違いますっ! ほんとにそう思ったのです」
「分かった、そうしとくよ」
「あーまだ疑ってる!」
ヒカリは操縦席の彼しか見ていなかったから分からなかったが、ちょうどそのとき目の前に敵船が突っ込んできた!
――が。
ミッキーはヒカリに邪魔されていたはずなのに全て撃破した。
船に傷一つなく。
この前の操縦とは大違いだ。
「あ、着いたよヒカリ」
ヒカリが何か言いたそうにしていたが、
「あれ? もう着いたんだ」
コロッと表情を変えたヒカリにミッキーは微笑んだ。
☆
お伽話で出てきたものにそっくり。
いいや、そのまんまだ――
ヒカリの目の前には、みどりいっぱいの木々に囲まれた――。
「お城だぁ!」
ヒカリの目が輝いている。
その瞳の輝きは魔法の時以上だ。
「そんなに珍しいのかいヒカリ?」
(僕の住んでいる城はもう少し大きいかな?)
ミッキーはそんなことを思いつつ城の中へ入った。
「黙って入っていいのかな?」
辺りを見回してヒカリもそれに続く。
「それは、ココに人が居ればの話……だよっ!」
ハートレスが城壁の影から現れた!
メイドのような出で立ちのハートレスと、それを取り囲むように甲冑を着けたハートレス数体。
「お城に居るだけあって、ちゃんとした出で立ちだなぁ~」
「褒めている場合じゃないよ、ヒカリ」
苦笑してミッキーが先手で攻撃。今までの敵のように簡単には倒せないようだ。
甲冑はミッキーに任せてヒカリはメイドを攻撃することに。
「あ、まってヒカリ! そのハートレスは――」
ミッキーがヒカリを引きとめようとしたが、彼女にはその声は聞こえなかった。
「やぁっ!」
勢い良く飛び出したヒカリ。
しかし、ヒカリの攻撃をヒラリとかわし、あろうことかぺこりと丁寧にお辞儀をするメイドハートレス。
「?」
ヒカリは攻撃にためらう。
「ヒカリ! そのハートレスから離れるんだ!」
珍しく焦ったようなミッキーの声に、はっと我にかえるヒカリ。
訳もわからず離れようとしたが、もう遅かった。
『インビテーション』
メイドハートレスが機械的な声でそう告げると、その横から扉が現れひとりでに扉が開く。
「ヒカリ!」
ミッキーは数が多すぎてヒカリの所まで一瞬で行けない。
(ガツッ!)
「うっ……」
その場で崩れるミッキー。
「ミッキー⁉」
ヒカリは声を上げるよりも早くその扉へと吸い込まれた。
ヒカリの目には甲冑ハートレスに埋まるミッキーが一瞬見えただけ。
『バタン』
ヒカリを吸い込んだ扉が閉じると、メイドハートレスは誰にするでもなく、またぺこりとお辞儀をして扉ごと闇へ消えた。
ミッキーの言う「本当は使いたくなかった」ケアルの理由は2つ。
ひとつは知らない場所は危険だから、おとなしく待っていて欲しかった事。
もうひとつは、自分の不注意ではぐれた事後悔していたんです。つまり、使いたくなかったのではなく、使う事実を作りたくなかったって意味。
それをふまえて、傷の痛みは~の言葉は彼自身の葛藤であり、その後に言う自分勝手だ……については、ヒカリに怒っていたのではなくミッキー自身がいきどおっていたんです。回復魔法を使わないといけないくらい危険にしてしまった事実にヒカリが目が覚めるまで守れなかった自分に『自分勝手だ』と落ち込んでいたんです。ついでにヒカリも「嫌だ」って結構な連発わがまま発言しますから、思わず君は自分勝手だと言いたくもなるよ。
そんな葛藤の中、その本人が一緒に手伝いたいって言ったので、改めてミッキーはヒカリを守ろうと決心したわけです。
余談ですがその後、神がかったシューティングさばきになるっていう流れになります。
なんで目覚める前に回復魔法使わなかったのって解説終わり。