King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
otherWorld 短編
Another03~look like~
グミシップ船室。
カイリをベッドに寝かせた後ヒカリが言った。
「ねえミッキー。いい加減教えてよ」
「?」
「とぼけないで! 私がメイドージに飛ばされたとき何していたのよ!」
「ああ、そのことか」
「そのことって(汗)」
「実は僕、あの後ヒカリが消えたあと倒れていたらしくって。気づいたら夜明けになっていたんだ」
「それって気絶していたってこと?」
「なっ、何言ってるんだいっ! 僕が気絶なんてするわけないだろ⁉」
「……」
(気絶以外のナニを言えば良かったのだろうか?)
今のミッキーは明らかに見栄っ張りだ、としか言いようが無い。もしかして王様ってこういうものなのだろうか?
「それじゃメイドの日記ってどこで見つけたの?」
「……洞窟でヒカリの倒れていた横にあった」
あの日記はメイドージのか。
とにかくこの状況が気まずい。
「と、とりあえず、ハートレスに囲まれていたのによく助かったね」
少しだけ論点をかえてみた。
「あのときは不思議に思ったよ、でも、そのおかげで一つの仮説が浮かんだんだ」
「?」
「ハートレスは心無き者、心とはおおざっぱに言うと精神のことだ、だからそれが途絶えると襲ってこないって」
「それって、ハートレスは昼も夜も関係なく活動しているって訳じゃなくって――」
ヒカリはそこで言葉を切り数秒考えてみる。そして突然思いついたように叫んだ。
「私が起きていたからメイドージがわざわざ向こうまで来たって訳⁉」
「おそらく、そうだろうね」
ミッキーがこうして助かっているのだ。それを考えると彼らは不意打ちなんてしないことが明らかになった
「うそ、それだったら普通に寝てたのにぃ~」
ヒカリのぼやきにミッキーは微笑んだ。やっと機嫌を直したようだ。
「そこで、白雪姫をさらったのはハートレスではないということが分かったんだ」
「そっか~でも、誰が?」
「この星の住人ではないだろう」
「なんでそう言えるの? お妃様だっているよ?」
「仮説だけど、お妃は世界で一番美しいことを欲している、この世界以外のことには興味が無いだろう。もし外の世界に自分の探しているものがあるのなら話は別だけどね」
「白雪姫は何でさらわれたのかな?」
「世界で最も美しい心の持ち主、その七人居るとされる一人が彼女だから」
「じゃぁカイリは? カイリはここに居るんだよ?」
ベッドで眠っているカイリは間違いなくカイリだ。
「カイリは、完全にはここには居ない、心が少し欠けているんだ」
「心が欠けている?」
「完全ではない、としか言えないな」
考え込むヒカリ。
「そういえばミッキー、私が飛ばされた時の話してなかったね」
「あの時はその必要がなかったと思ったから」
そっか、あの時の私。具合悪かったし、とても混乱してたからね。
「私が島から飛ばされる直前にカイリと一緒に居たの。だからソラもリクもカイリのことは知らない」
眠っているカイリを見つめヒカリは苦笑した。
「よくわかんないけど、そのときカイリの体が透けていたのははっきりしている」
「体が……それはカイリの心の方かな?」
「カイリはきっと私をかばってこうなったんだと思う」
きつい表情でヒカリが言った。
これは私のせいだ。
「どうすれば、元のカイリに戻るのかな?」
私が、もっと状況を把握していたら、カイリを守ることができたのかもしれない。
あの時の、無知な自分が――不甲斐ない。
「カイリの心を見つけ出すしかないよ。でもそれは簡単なようでそうじゃない」
「どうやったら見つけられるの? 私、カイリのためなら何でもするよ!」
ミッキーの言葉に反抗するように叫ぶヒカリ。
「落ち着くんだヒカリ、カイリの心を見たと言ってたね」
緊張な面持ちでうなずくヒカリ。
「それを見れたのなら見つけるのは簡単だと思う」
「どういうこと?」
「人の心はその人と関わりのある人に惹かれることがある、つまり、カイリの心はカイリと関わりを持つ人の所にいるはずだ。もちろん君もね」
「私の中に……カイリの心が?」
「全てではないけどあるはずだよ。心だけのカイリを見れたのだから」
「!」
ヒカリはカイリを見る。
心だけのカイリは、私にごめんと言っていた。
私が、助けてくれてありがとうって言わないといけなかったのに。
「問題はその心をどうやって体に戻すのか、なんだけど僕も良くは分からない」
微笑してはいるがその表情はヒカリ以上に落ち込んでいる。
カイリを見つめていたヒカリがミッキーをまっすぐに見つめ言った。
「ありがとう、ミッキー。カイリが私の中にいる、そう言われただけでも安心した」
勢い良くヒカリはベッドから立ち上がった。ベッドで寝ているカイリの体が少し揺れる。
「ほら、ミッキー。そんな顔で運転したらカレイドスターが墜落しちゃうよ!」
ヒカリはこの上ない笑顔でミッキーに言った。
「もうここは出発するんでしょ? じゃあ私、小人達に白雪姫のこと言ってくる!」
扉を勢いよく閉じてヒカリが出て行った。
ヒカリが消えた船室でミッキーはしばらくボーッとしていた。
そしてふと気づいた。
そうだ、初めて出会ったときに僕はこの笑顔が見たかったんだ。
トラヴァースタウンで初めて出会った時のヒカリはとても傷ついていて。
そう、彼女は特に心が一番、傷ついていた。
それは僕がヒカリを見つけた時からじゃなくって、
ずっと、前から――。
でも彼女は傷ついているにも関わらず表情に出さない。
いや、むしろ自分でも気づいていないくらい隠し通しているんだ。
そんな彼女を僕は誰かと似ているような気がしたんだ。
その答えがやっと分かった――。
「今更だけど気づいたよ……ヒカリは君に似ているんだ、王妃」
それはヒカリに恋をしている訳じゃない、でも――。
僕はそんなヒカリが好きなんだ。
前向きな、彼女が――。