King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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4章 トラヴァースタウン2
~小さな鍵~


 

 

 

 チャリン。

 ロックセプターを出現させると、グミシップ船内に金属がぶつかり合う澄んだ音が響いた。

「また、増えてる」

 杖の本体ともいえる大きな鍵の飾り、その六角形の輪の両端につながれている二つの鍵。

「コレがワートたちのいたワールドの鍵で、こっちが白雪姫のワールド」

 ヒカリが鍵をつついて言った。

「何で分かるんだい?」

 運転中のミッキーが操縦桿に手をのせたまま二つの鍵をのぞき見た。

 ヒカリは運転中の彼の行動に慌てた様子も無くセプターに付いている鍵を見せる。ミッキーはもはやベテランドライバーそのものだ。

「だってほら、剣の形とりんごの形」

 刃の方は区別がつきにくいが、持ち手の飾りが違っていた。

 なるほど、区別がつきやすい。むしろ『鍵』と言うにしては繊細でひとつの美術品のようである。

「カギを掛けて出てきたんだからなにか意味があるんだよね?」

 小さな鍵を交互に見つめるヒカリ。

「そうだね」

 ヒカリはセプターを振り回してみる。時おりぶつかる鍵が少しうるさい。

 ふと回すのを止めるヒカリ。

「ミッキーのキーブレードはなにも無いよね」

「うん」

 ミッキーが片手で空を切ってキーブレードを出現させる。

「変わったところは無いね」

 そう言ってヒカリにキーブレードを放る。

「え、ええっ⁉」

 慌ててヒカリはキーブレードをキャッチ。

「どうしたんだい? そんなに慌てて」

 面白そうにミッキーが聞く。

「だ、だってキーブレードって他の人に渡せるものなの?」

 だったら消えたり現れたりする理由がよく分からない。

「う~ん、渡すというより、持てるだけだと思う。いや、でもあるいは――試しに使ってみてよ?」

「え……今?」

「いいや、今は無理だろ? トラヴァースに向かっているからそこで使ってみて」

「トラヴァース? なんで?」

 ミッキーの言動はヒカリにとって分からないことばかりだ。

「純粋に物資補給さ。あそこが一番近いし、それに……」

「それに?」

「マーリン様がそこにいるから」

 

 ☆

 

 トラヴァースタウン再び。

 ヒカリはグミシップ、カレイドスターから降りた。

 ここに初めて来たのは私の中では最近のことで、懐かしいとはまだいえない。でも、見たことがある場所へまた来ることができるのは、なんとなく嬉しい。

また島に帰れるかな?

 

「ヒカリ、ちょっと手伝ってよ」

 カレイドスターの中からミッキーが呼んでいる。

「何?」

「格納庫がいっぱいになったんだ、整理するの手伝ってくれないかな?」

「格納庫って、宇宙空間で集めたグミブロックを置いている所のこと?」

「うん、そこがさぁ~あけてみたら閉まらなくって」

「ねぇ、私がこの船に乗ったとき、ミッキーここの部屋見せてくれたよね?」

 あの時はまだその部屋に余裕があったはず。

 なのにナゼ?

「ヒカリが着てからなぜかハートレスの出現率が多くなってきているからかな」

「ちょっとまってよ~私のせいってこと⁉」

 ロックセプターといいハートレスといいなんで私だけ⁉

「冗談さ、でも格納庫の中に何か理由があるね」

「もう、ミッキー! とにかくグミブロックを一度外に出さないとね」

 

 ☆

 

 四角い形から三角のもの、大きくて平べったい板のような形。

「グミって種類が多いのね」

 数と種類がごちゃごちゃあってあきれるヒカリ。

 格納庫は廃品回収で集めた新聞紙のごとくグミが高く積みあがっている。そして天井から吊り下げられている自動整理マシーンと言われる大きな手が。絶えず格納庫内で働いている。

 ヒカリはその大きな手から入り口に運び出されてくるグミをカレイドスターの外へ運んでいた。

 

「なんだかもう一つ船が出来そうね」

 自分が運んできたグミを見上げる。外で積み上げたグミはまだ格納庫の半分も行かない。

 いったいどうやったらこれほどのグミを収納できたのだろうか? 整理マシーン恐るべし。あと、コレを全て入手してきたミッキーもスゴイ。

 なんだか、自分がここに着てからすごいことばかりだ。

「ヒカリ、もうそこらへんでいいよ。格納庫の地面が見えてきたから。とりあえずこっちに来て」

 船の窓からミッキーが外のヒカリを呼ぶ。ミッキーに言われたとおりヒカリは格納庫へやってきた。

「前に見た時よりもスッキリしたね」

 辺りを見てヒカリが言った。

 天井の大きな手も窮屈そうでない。

「?」

 ミッキーは格納庫の片隅にいた。

 なにやら悩んでいる。

「ヒカリちょっと迷っているんだけど」

 ミッキーが険しい表情でヒカリに言った。

「な、なに?」

 ミッキーが珍しく真剣だ。いったいこれから何を言い出すのだろうか。

 もしかして、トラヴァースに来たのは私を置いていくつもりなの? グミブロックだけ置いてさよならなんて……言わないよね?

 ミッキーは腕を組みあごに手を当ててある一点を見つめている。

「ねぇヒカリ」

「な、なぁに?」

 彼の真っ直ぐな表情にどう自分が受け答えればいいのかわからない。むしろ、真剣なミッキーの顔を真っ直ぐに見ることが出来ない。

 

 ミッキーが口をあける瞬間がとても、恐い。

 

 私を置いて行くなんて言われてもいやだよ⁉

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