King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「ヒカリは……チーズとバター、どちらを多めに買ってくれば良いとおもう?」
「……はい?」
彼の言葉に、一瞬でヒカリの周りの空気が変わった。
「朝食のパンに何を付けようかと迷っているんだけど」
真剣にヒカリに問いかけるミッキー。
「……ジャムがいいな」
真剣そのもののミッキーにポツリと言うヒカリ。
「……ああ! そうだね、ジャムがいいね! 種類もいっぱいあるし」
「ねぇ、もしかして、それだけ?」
あきれて返す言葉も出ないヒカリ。
「あはは、冗談だよ。本題はこっち」
軽く笑ってミッキーが棚のスミに置いている物をヒカリに見せる。
「これはグミではないけど星そのものなんだよ」
「?」
ミッキーが手にしているのは。
「これって……本?」
「そう、本さ」
赤い表紙、それだけしか分からない。
いや、それ以外何も書かれていないしほとんど文字が読めなくなっている。
「星そのものって……これが、一つの世界?」
「そう言うこと。普通の星みたいに消滅はしていないけど」
「それって私みたいに弾き飛ばされて来た……ってこと?」
顔を上げるヒカリ。さっきの冗談を攻めることも忘れている。
「むしろ本そのものが『星』なのだからヒカリとは反対かな?」
「星が飛ばされた?」
「正確にはグミブロックにならずに流れてきた――ってトコロかな?」
「ねぇ、鍵穴さえ見つかればこの本、元に戻るんだよね⁉」
真剣にミッキーに歩み寄るヒカリ。
「……それは、まだ無理だと思う」
困ったようにミッキーが言った。
さっきとは正反対の展開だ。
「じゃぁ……どうすれば?」
泣きそうな顔の彼女をどう慰めればいいのか分からない。
「ヒカリ、さっきはごめん冗談だって言って……」
肩を落とすミッキーを見て、ヒカリはさっきの表情とは一変してにっこりと笑った。
「えへへ冗談☆今すぐには無理だよね」
「キミって本当に……恐いよ(汗)」
表情が変わったヒカリが恐い。
「少なくても、さっきのは嘘じゃないよ。表情の切り替えが早いだけだから」
にっこり笑って言うヒカリはやはり恐い。
「そんで、この本どうするの? 直るんだよね?」
「それはワシに任せてくれないかのぅ?」
「え?」
白い煙とともにマーリンが現れた。
「ワートの修行も一段落したのでこちらへ着てみたんじゃが、ちょうどいいじゃろ?」
なんとタイミングのいい魔法使いだ。
ヒカリは素直にそう思ったが、ミッキーはそうではなかった。
「マーリン様。実は見ていたんでしょ?」
「えっ?」
ミッキーの言葉にヒカリが固まる。
「ほっほっほっ……」
マーリンは笑っているだけだ。
「おほんっ、ではワシはあの外のグミブロックを片付けるとしようかの」
そう言ってマーリンは消えていった。
「い、いったいなんなの?」
ヒカリはなぜマーリンがここへ来たのかがまだ分からない。
「これで手間が省けたってことさ」
倉庫掃除を一瞬にして(しかも無理に)完結に追い込んだミッキーがヒカリには恐ろしく見えた。
(ガタン!)
「!」
天井でうごめく大きな手――自動整理マシーンが大きな音を立てた。
「ねぇ、ミッキー。あれって本当に自動整理マシーンなの?」
ヒカリが冷や汗をかいてミッキーに聞いた。
「ヒカリが乗る前に頼んでハートレスの腕を付けて見たんだ……」
ミッキーが穏やかに答える。
「それってハードアーマーとか言うヤツ?」
にっこりとヒカリ。
「うん、たしかそんな名前だったかも」
『ガコンッ!』
自動整理マシーンが独りでに天井から外れた。
ヒカリはやっと外れてから分かった。間違いなくガードアーマーの右腕だ。
「なんか、もうっ! 倒さないといけないの~~⁉」
かなり投げやりにヒカリが叫ぶ。
ほぼ乱暴にロックセプターが出現。両脇についている2つの鍵がうるさい。
「それしかないだろ?」
苦笑してミッキーが答えた。
「なんならセプターとキーブレードを交換して戦ってみるかい?」
「こんな状況でそんな余裕は無いっ!」
なんだか、この頃ミッキーに翻弄されっぱなしだ。
ヒカリは心の中で嘆いた。