King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「そういえば、キーブレードとロックセプター交換して見るかい?」
「ミッキー。冗談でしょ?」
ヒカリの声が三番街に響く。シドが本を直してくれることをマーリン様に言ってきた帰りだった。
いつ見ても、あの水面に浮かぶ岩が謎だ。
「いいや、僕は興味があっただけさ。で、どうするんだい?」
ミッキーがやけに楽しそうだ。
「いいよ、面白そうだし!」
ヒカリもつられて含みのある笑みを作る。
「使い方は分かるよね?」
ミッキーがキーブレードをヒカリに向かって軽くほうりながら言った。同時にヒカリもミッキーにロックセプターを投げた。
「何を今さら!」
二つの武器は一瞬消えたかと思いきや、その刹那二人の手の中にやってきた。
(うそ~本当に交換できる!)
ヒカリはとても驚いたが、ミッキーは珍しそうにロックセプターを眺めている。
ミッキーがロックセプターを掴んだので、ヒカリもおそるおそるキーブレードを掴んだ。
「!」
なんだろう、この感じ。
ヒカリは、昔、リクに木刀を貰ったときのことが、フラッシュバックのように頭によぎった。
「あ……」
「どうしたん――」
「きゃぁ~っ!」
ミッキーが言いかけた言葉を切り、悲鳴のした方へすぐさま駆け出した。
ヒカリも同様だったが、とっさによぎったリクの面影のせいでわずかに遅れた。
その瞬間。ヒカリはもう、あの頃のリクの姿を思考から消し去ってしまった。
今、考えるのは一つだけ。
(今度こそ、ミッキーより早くハートレスを倒してみせる!)
リクの事よりも、ガードアーマーのことが勝っていたヒカリであった。
ミッキーが広場へ着いたとき、ハートレスが異常なまでに一点に集っていた。
「ミッキー、あの中に子供が居る!」
ヒカリが真っ黒い集団の下に埋まっている小さな体を見つけた。ミッキーはヒカリの言葉が終わらないうちにハートレスに攻撃する。
「あっ、待ってよ! それ私のロックセプター……って聞いてないや」
とりあえず、ヒカリもキーブレードを振り回す!
セプターとなんら変わらない姿であるが、いざ使うとその違いがハッキリと分かる。
(少し重いけど、セプターよりも振りやすい)
叩くだけならこちらの方が強い。
(でも、疲れた……)
なれないせいかヒカリは肩が痛くなってきた。金属のシャベルよりは軽いが、重いには越したことが無い。
(いっつもこれで戦うミッキーってスゴイなぁ)
キーブレードを構え直し、ヒカリは足を軸に体を回転させる。重いから、意外とよく回る。やはり直接攻撃はキーブレードのほうが得意なようだ。
周りのハートレスは吹き飛ばされ、ヒカリの周りだけ視界が晴れる。しかし、それはほんの一瞬だけで新たなシャドウが現れる。
(黒ねずみのくせにっ!)
ヒカリはキーブレードを振り回すがシャドウは陰に隠れてしまう。
明らかにヒカリは初めより勢いが衰えている。
「あ~もうっ! めんどくさいぃ~!」
ヒカリは天高く自分の武器を突き上げて叫んだ。
「バーストーッ!」
金色に輝くキーブレード。
しかし、
「あれ?」
キーブレードが、輝いただけであった(汗)
「あれれ? もしかして、キーブレードじゃ、ダメなんだ……」
ヒカリはじりじりとハートレスから後ずさり、不意を付いて走る!
キーブレードを肩に担ぎ、走る様は、この前、偶然戦っていた所を見た時の弟に似ている。
「ミッキー。セプター返して~」
少女をかばいながらロックセプターで魔法を使うミッキーにヒカリが叫んだ。いつものように直接攻撃をしないミッキーが珍しい。
「どうしたんだい?」
「魔法が使えないの! セプターじゃないとダメみたい!」
「魔法って、バーストのことかい?」
「うん! クリアーもダメみたい」
そう言いながらもキーブレードを振り回すヒカリはなかなか様になっていて、魔法無しでも大丈夫なのでは? とミッキーは思った。
しかし、しばらくしてキーブレードを振り回す気力が無くなったヒカリがシャドウに蹴りを入れるのを見てミッキーは考えをあらためた。
「さっきマーリン様に貰った魔法は使ってみたかい?」
「あっ、まだだった!」
担いでいたキーブレードをぐるりと振り回し、ハートレスを自分の間合いから遠ざける。ヒカリは深呼吸して大きく息を吐いた所でキーブレードをガチャリと構える。キーホルダーが揺らいで、鎖がシャランと音がした。
「僕が使っていたのを見たことがあるから、遣い方はわかるよね?」
ミッキーが集中しているヒカリに言った。
やけに発動が遅い。
「いいや、この魔法はミッキーとは違うよ」
「?」
ヒカリは目の前の塊と化しているシャドウを真っ直ぐに見据える。息を軽く止めてヒカリは両手でキーブレードを真っ直ぐに上へ掲げ叫んだ!
「吹き上がれ~! ファイア‼」
金色に輝くキーブレードがヒカリの言葉に応じていっそう輝く
「っええ~っ⁉」
叫ぶヒカリの横でミッキーがありえないとばかりに叫んだ。
ファイアの範囲攻撃なんて上級魔法にも無い。
ハートレスの立っている地面が赤く盛り上がり、一気に炎が吹き上がった!陰に隠れていたシャドウもこの攻撃には回避するすべが無い。
一気に全ての三番街のハートレスが、燃え上がる炎に跳ね上がり、火の粉のように消えていった。
(ガキンッ!)
勢いよくキーブレードを地面に突きつけ、それにもたれて肩で息をするヒカリ。
「……ヒカリ、大丈夫かい?」
キーブレードであれだけの魔法を発動させたのだMPは空っぽだろう。
「なんでファイアは出せたのかなぁ?」
キーブレードにもたれながらつぶやくヒカリ。
「それは多分ヒカリの魔法ではないからだよ」
「?」
「ファイアと違ってバーストやクリアーはロックセプターを使って身に着けたヒカリの魔法だからこの杖にしか使えないんだよ」
「ファイアは? キーブレードで使えたよ?」
「ファイアはマーリン様に教えてもらったからね。これは基礎魔法とでも言っていい」
「基礎魔法?」
「始めに教わる魔法のことさ、でもさっきのファィアは確実にヒカリが作り出した魔法だった」
「だったらキーブレードで出したんだからセプターでファイアは使えないんじゃない?」
「いいや、バーストとクリアーがトクベツなだけだよ」
ミッキーがセプターをヒカリに渡す。ヒカリがそれを掴むとキーブレードがミッキーの手に移動した。
「ミッキーは使えるの? バースト」
「さぁ? ヒカリが教えてくれるなら出来るかもね?」
「……教え方がわかんないよ」
「あはは、じゃぁダメだね」
「ううん……」
少女が目を覚ました。
「あっ、起きた」
ヒカリが興味津々で少女を覗き込む。
ぼけーっとあたりを見渡す少女。
「気が付いたかい?」
少女にミッキーが声をかける。
「!」
少女の表情が一変し、素早く後ろへ飛びのく。
飛び際、彼女は腰から抜き放った小さな銀のハンマーを振り上げた。上げた瞬間、一瞬で巨大化するハンマーが白刃のような輝きを放つ!
躊躇無く振り下ろしたハンマーにミッキーは表情を変えることなく素早くキーブレードを構える。
(ガキィィン!)
武器と武器のぶつかり合った瞬間。
金と銀の輝きとともに金属の澄んだ音がした。
重さで少女の体が傾きざま、ハンマーが元の小さな大きさに戻る。少女はハンマーの重さとともに前方へ体を傾け空中で前転。見事ミッキーの背後に綺麗に着地。ミッキーが振り向くよりも早く少女がハンマーを振り上げた!
「ミッキー!」
二人よりも早くヒカリが叫んだ。
自分のポケットから何かが落ちても構わない。
(キンッッッ!)
「え?」
その音を聞いて、少女の動きが止まった。
その一瞬にミッキーがキーブレードを抜き放った。
「あっ……」
少女がキーブレードの攻撃を受けて吹っ飛ぶ。
(ズザザァッ!)
地面に叩きつけっれる前に、少女をヒカリが見事キャッチ!
少女がまた暴れないようにヒカリはガッシリと少女を押さえて言った。
「あたた。大丈夫、わたし達はハートレスじゃないから!」
「め……る」
「?」
かすかに少女が何かを言っている。
「メダ……ル」
少女はそれだけはっきりと言って倒れた。