King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~厚着の彫金術師~

 

 

「メダル?」

 ヒカリが少女に聞き返すがダメだった。

 少女からは寝息だけが聞こえる。

「もうちょっとで危なかったよ……メダルってもしかしてこれのことかい?」

 ミッキーがヒカリのポケットから落ちた銀のメダルを拾って言った。側で落ちていた少女の持ち物であろう長い耳の帽子も拾う。

「ミッキーそのメダル知ってる?」

「見たことないけど、これがどうしたの?」

「そのメダル、さっきグミシップで拾ったの。自動整理マシーンの隙間にあったみたい」

「自動整理マシーンか。グミと一緒に宇宙空間で拾ったのかな?」

「ミッキーも分からないんだ?」

 それにしてもなぜ少女はコレがメダルだとわかったのだろう。

「これは、やっぱりシドに聞いてみないとわからないかもね」

 

 ☆

 

(カランカラン♪)

「へぃ、いらっしゃい……ってまたお前さん達か」

「シド、突然だけど、このメダル知ってる?」

 ミッキーが単刀直入にシドに聞いた。

「んんっ? ちょっくら見せてみ?」

 シドはカウンターの引き出しをあけてルーペを取り出す。見てくれは、どこかの船乗りのようだが、鑑定となると意外とちゃんとしている。

 流石はアクセサリーショップの人!

「これは……」

「どうしたの?」

「すっげーなぁ~この彫刻チョコボだぜ!」

「ちょ……?」

 ヒカリがよくわからない顔をする。

「おおっと。すまねぇ、このメダルの彫り込まれている生き物の名前だ」

「へぇ~これがねぇ」

 ヒカリがメダルを見る。少しくすんで見える銀のメダル。表面はほとんど何も書かれていない様に見えるが、よ~く見てみると、ヒヨコのような生き物が端の方にとても小さく彫り込まれている。

「チョコボは俺たちの暮らしていた星にいた生物だ、陸の移動手段によく使う。飛行船とは比べられないが、それはもう速かった」

「で、それがなんで私たちの船にあったの?」

 回想に入りそうなシドにヒカリは釘を刺した。

「いいや、こんなメダル、俺は知らん。それに船の整備は万全だったからな」

「本当に?」

 ヒカリがいぶかしげに聞く。

「もしも飛行中、船に異物が混入していたら……今頃嬢ちゃんはここには居ないかもな」

 サラリと表情を変えずに言うシドにヒカリは何も言えなくなる。

「シドもメダルについては知らないのか」

「じゃあ、やっぱりこの子に聞くしか無いわよね」

 カウンターの目の前にある赤いソファーに寝ている少女を三人は見る。

 ヒカリとは顔一つ分低い背丈の幼い少女。寒い所から来たのだろうか、首元はきっちりとマフラーを巻いていて、ポンチョのようなワンピースコートを羽織っている。

 とにかく寝顔がかわいいのだが……。

「また暴れたりしないかなぁ」

 ヒカリがおそるおそる少女の寝顔を見ている。

「ヒカリ、あれは暴れると言うよりも寝ぼけていただけだよ」

「本気でど突いたくせに……」

「油断していただけだよ」

 ミッキーが言い訳がましくツンと言った。

「つべこべ言わずに、手っ取り早く俺が起こしてやるっ!」

 二人が止める暇なくシドが少女に怒鳴った。

「いつまで寝てるんだゴルァ~!」

(ひぃぃぃ~)

 シドの叫びに飛びのく二人。

そして少女の目がパッチリと開かれる。

 

 その瞬間――。

 

『ゴンッ!』

 シドの頭上から銀のハンマーが!

「シド!」

 ヒカリとミッキーが叫ぶ。

 

「ちぃーっと痛いなぁ、これは」

「シド……?」

 ハンマーの攻撃をダイレクトにくらい、その直後のはずなのに平然と感想を述べるシドに二人は驚いた。少女が振り下ろした巨大ハンマーが小さくなってからやっとシドが何かで額を守っていたのが分かった。

「あ……」

 ヒカリが思い出したように言葉を漏らす。

 そう、さっきまで鑑定していた、銀のメダルだ。

「!」

 少女がそのメダルを見てハンマーを取り落とした。元の小さな大きさに収縮したハンマーが床にコトリと落ちる。

 大きな目がこの上ないほど大きく見開いている所から少女はまぎれもなく覚醒していた。

「み……」

「み?」

 彼女の第一声にヒカリとミッキーの言葉が重なる。少女はシドの顔(にあるメダル)を見つめて叫んだ。

「見つけた~~!」

 

 ☆

 

「お騒がせしてしまってスイマセン。私、修業の旅をしておりますマフ・リストと申します!」

 ヒカリ、ミッキー、シドに勢いよくぺこりと頭を下げる幼い少女、マフ・リスト。愛らしい顔の長耳帽子が少女の頭に従って前方へ飛び出した。

「メダルを見つけてくださいまして有難うございます、ヒカリさん!」

 ヒカリの手をぎゅっと握ってにっこりと笑うマフ。その笑顔は彼女の頭上の長耳帽子のように、愛らしい。この顔がついさっきハンマーを持って攻撃してきた顔だとは……到底、思えない。

「ところで、そのメダルって一体なんなんだ?」

 シドがメダルを指差してマフに聞いた。

 シドがマフの攻撃をこれで受け止めたせいで、マフの握り締めている銀のメダルはチョコボの彫刻が少しだけ消えかかっている。

「これは、私の捜し求めていた最っっ高の素材なんです!」

「素材って、キミは何の修行をしているんだい?」

 ミッキーが優しくマフに聞いたのだが。

「……」

 マフは何もしゃべらなかった。と、言うより、ミッキーの居る方向をまったく向こうとはせず、しかも言うこともまったく聞かない。

「マフ、ミッキーのこと嫌い?」

 おそるおそるヒカリが聞いた。

 ヒカリの質問にマフは口ごもる。

「ほら」

 ヒカリがマフを連れてミッキーの居る方に向かう。ミッキーがマフに手を差し出したが、マフはすぐにヒカリの影に隠れてしまった。しかもヒカリの服の裾を掴んで一向に動こうとはしない。

 どうやらマフはミッキーが、苦手らしい。

「マフは、何の修行をしているの?」

 しょうがなくヒカリがマフと一緒に赤いソファーに腰掛けてさっきのミッキーの質問を引き継いだ。

 まいったとばかりにミッキーがカウンターに寄りかかり頭をかいている。

「わたし、アクセサリーを作っているんです!」

 気を取り直してマフがヒカリに言った。

「じゃぁ銀のメダルは合成素材ってこと?」

ヒカリがメダルのことについても聞き出す。

マフが得意げに解説を始めた。

「ううん、ちょっと違います、溶かすけど合成はしないの。この銀のメダルは混ぜる物じゃなくって創る物なのです」

「?」

 マフは慣れた手つきでついさっきから何度も出現させていた銀のハンマーと、服のポケットにきちんと収められている無数の小さなたがねの一本を取り出して言った。

「わたしは錬金術師じゃなくって彫金術師なのです!」

 銀のハンマーをキラリと掲げにっこりと笑いかけるマフ。

「そしてこのメダルは私が探していた最高の銀!シルバーチョコボ!このメダルは伝説の武器を作り出すアクセサリーの素材なのです」

「ちょうきんじゅつし?」

 ヒカリが聞き返す。

「はい! 彫金術師とはアクセサリーに彫刻をする人です。たまにアクセサリーの基盤を作ったりはしますが、他の物質は一切混ぜず、合成と言われる他の金属を混ぜると言う術はほとんど使いません。彫金術者が独自の製法で彫刻をしたアクセサリーは不思議な力が宿るのです! いわば、合成で得られる不思議な力を彫刻だけで作り出す技なのです!なので、すでに創られた物や従来の武器に直接彫刻をすることで、新たな力が宿るんですよ!」

 一気にそう言った少女。説明を聞いた三人は思わず同時に首を傾けた。

 それを見たマフはコインほどのペンダントをシドに渡した。

「まぁ、ご覧になったほうが早いかと……わたしが創った物です。基本的にはアクセサリーに彫っただけですが」

「ほぉ……」

 シドがマフの作品をルーペで眺める。

 マフの作品。銀色のペンダントにはどこかの世界の硬貨のような見事な彫刻が施されている。これが目の前の幼い少女一人で作ったものとはとうてい思えない。

 

 シドがペンダントを眺めていると突然、それが発光した!

「うおっ⁉」

 ペンダントに彫り込まれていた翼が輝き具現化する。そしてパタパタと羽ばたき、浮遊する。

「うわぁ~」

 飛来するペンダントにヒカリの目が輝く。

「なんだこりゃぁ……」

 シドが呆然と羽ばたくペンダントを見る。

 マフの所へ帰ったペンダントはふたたび発光して羽が元のように戻った。

「これはこのペンダントと共鳴するんです」

 マフの手には。さっきのペンダントがはめ込めそうな大きさのリング状のペンダントがあった。飛んできたコインがリングの穴に綺麗に収まる。

「本当に嬢ちゃんが作ったのか? これは普通のアクセサリーショップにはそうそう売ってはいない品だな」

 マフの手の中にあるペンダントを珍しそうに眺めるシド。

「これが彫金術です! それでお願いがあるのですけど」

 背丈が小さいせいか上目ずかいでマフがシドに言う。

「シドさん、私をここにおいてくれませんか! まだまだ修行の身ではありますが、少なからずお店のお手伝いができると思います」

 シドはマフのペンダントを眺めながら言った。

「わりいな。俺はアクセサリーを作っていない、作るんだったら二階の奴等に言ってくれや」

「二階?」

 シド以外の全員が天井を見る。

 今まで気が付かなかったが照明の横に大きな穴がある。

「おーい、おまえらぁ~ちょっくら下に来てくれぃ!」

「そんなに怒鳴らなくても聞こえるクポ」

 その穴から声がして上に居るモーグリの一人、クポが降りてきたパタパタと羽がはためいている。

 さっきのペンダントの翼とどこかしら似ているような気がするが、今はそんな問題ではない。

「話は上で聞いたクポ」

「それって盗み聞きって言うんじゃ……」

「ヒカリ、うるさいクポ」

「マフがここでアクセサリーの彫金をしたいんだと、お前らはどうよ?」

 クポは二階へ戻り、ふたたび一階へやってきた。

「いいクポ合成物の加工は別に気にしないクポ、使いたいなら勝手に使うクポ」

「あ、ありがとうございますっ!」

 マフがクポに勢いよく頭を下げる。狙ったわけではないだろうと思うが、長耳帽子の耳がバシッとクポに当たった。

「クポォォ!」

 勢いよく天井の穴に消えるクポをヒカリたちは唖然と見つめていた。

 




マフはオリジナルキャラです。ヒカリさんの武器がキーブレードじゃないので専用の職人が必要と思い立って登場しました。kh2だとお洋服が変わるのでさらに増えます!
きっと師匠のことについてマスマスと関わりがあると思うけれど今のところ情報開示はしてません。だって喋ってくれる人居ないもん。
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