King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~武器強化~

 

 

「ヒカリさん、メダルありがとうございます。そこで、助けてくれたお礼に私の彫金術でヒカリさんの武器の強化をさせてください!」

「え?」

「武器も彫刻をすることで新しい力を作り出すことが出来るのです」

「そうなんだ」

「もしリクエストがあったら言って下さい!」

「う~ん」

 マフにヒカリはしばし考える。

「本来の形じゃないと、ダメ?」

「いいえ同等の質量だったら構いませんよ」

 マフは銀のハンマーを取り出して言った。

「見ていてください」

 そのハンマーがゆっくりと大きくなる。

「このハンマーが大きくなるのにも限界があるのです」

 そう言っているうちにハンマーの動きが止まった。むしろそれはハンマーではない。丸太のような大きさで円柱状の銀の塊と化している。

「質量が間に合わなくなるとこうなってしまうのです、形状の変化は彫金術師しか出来ませんが」

「あ、是非やって欲しいことが!」

「なんでしょう?」

 さっきまで考えていたヒカリがロックセプターを取り出した。セプターについている小さな鍵が傾けるごとに金属音を奏でる。

「ハートレスを叩く時、ここについている鍵がうるさくって、なんとかならないかなぁ?」

「それは、杖を物理攻撃用に変化させて欲しいと言うことですね」

「ま、そーいうことかな?」

「分かりました、では少しこの杖をお借りします」

 ヒカリはマフにセプターを渡す。

「どこに彫刻しようかな~

 マフはハシゴを登ってモーグリたちの居る二階へ上がっていった。

「なんだかスゴイ子だねマフって」

 ミッキーが言った。

「なんかマフの言ってることが難しいよ」

 ヒカリが頭を押さえてうなだれる。

「彫金術ってモン事態がオレにはさっぱりだ!」

 シドが上を見上げて言う。

「見に行かなくって言いのかい? ヒカリ」

「へっ?」

「セプターがどうなるのか気にならないのかい?」

「そういうミッキーが気になってるね」

「ばれたか。ぼくは彼女に嫌われているから」

「じゃぁミッキーのために見に言ってくる」

 

 ヒカリがハシゴを登っていくと、マフの周りをモーグリたちが囲んでいた。

 なにやら悩んでいるようだ。

 突然、大きくハンマーを振り上げるマフ。

 それを見てヒカリがびっくりして叫んだ。

「まっ、マフ――⁉」

(ガツン!)

 ロックセプターが跡形も無く消え去り、ヒカリの手の中に突如やってきた。

「やっぱり直接彫るのはダメですね」

 マフがヒカリを見ていった。

「その杖は新たな傷をつけることは出来ません」

「おそらくキーブレードもそうだクポ」

 がっかりしたヒカリ。

 ふとセプターを振り上げ、壁を叩いた。

(ガキン!)

「やっ、八つ当たりはやめるクポ!」

 モーグリがヒカリを止める。

 ヒカリはセプターを眺めた。

「私だったら傷は付けられそうだね」

 

 モーグリ一同が、ヒカリの行動にため息を漏らした。

 

  ☆

 

「ヒカリ、前に言ったけれどセプターはキーブレード動揺、自分自身の心で具現しているものだから物理的な傷はつかないんだよ」

 アクセサリーショップ一階のソファーでみんなが武器の強化について考える。

「やっぱり強化は、ダメか~」

「お役に立てなくて申し訳ありません」

 ヒカリのつぶやきにマフがしゅんとする。

 ふとヒカリがロックセプターの先端付近の飾りを見る。ぶらぶらしていて外れそうだ。

 手に取ると。

(カシャン☆)

 外れた。

「ねぇ……これ外れたんだけど?」

「え?」

 一同がヒカリを見つめる。

「これは……ロケット?」

 ヒカリがロックセプターから取り出した丸い耳の形をしている同じ形の金属が二枚合わさったコンパクトケース、いわゆるロケットと言われるアクセサリーをマフに見せる。

「これに彫刻とはいえないけど、これぐらいの大きさのロケットを作ってみたらもしかして……」

 ヒカリのアドバイスにマフの顔が次第に高揚してくる。

「カスタマイズですね! 分かりました! デザインの参考にセプターもお借りしますっ!」

 勢いよくマフがハシゴを登っていった。モーグリもそれに続く。

「……いっちゃった」

「さて、ボクは買出しに行ってくるよ」

 ミッキーがソファーから立ち上がってヒカリに言った。

「オレもお前さんたちのグミシップのメンテにいってくる。ヒカリ、わりぃが店番しててくれぃ」

 シドが道具箱を持ってきて扉を開けた。

 

「……って私が一番ヒマじゃん!」

 ヒカリが叫ぶが二人はもう消えていた。

 

 ☆

 

「暇だぁ~~」

 ヒカリがカウンターに突っ伏して言った。

 その情景といったら、某有名アニメ映画に出てくるパン屋の店番さながらだ。

 

(カランカラン)

 ヒカリはミッキーかシドが帰ってきたと思ったのだが……。

「あら? ここアクセサリーショップよね?」

 女の人がやってきた。

「い、いらっしゃいませっ!」

 今、自分は店番をしていることに気づき、ヒカリは姿勢を正す。

「シドはどこにいるの?」

 そう言って女の人がカウンターにいるヒカリに近づく。

 淡いピンクのワンピースに赤い羽織。茶髪の長い髪を後ろに束ねているがヒカリのように先端がはねていない綺麗な巻き毛。

 年齢的にまだ若いと見えるが、物腰がおしとやかで、とにかく見れば見るほど綺麗な人だった。

 

(こんな綺麗な人がシドに用事?)

 

 シドには悪いけど直感的に「ありえない」なんて考えてしまう。

「ええと……あなた、シドの娘さん?」

「いっ、いいえ滅相も無い! シドが外出中で頼まれたんです!」

 必要以上に首を横に振るヒカリを見て目の前の綺麗な女性はにっこりと笑った。

「冗談、わたし、シドのことはよく知ってるから」

「?」

 どうやらジョークを言ったようだが、あまりにも冗談が似合わない容姿をしているためか、ヒカリはさっぱり頭に入らなかった。

「わたし、エアリスって言うの。あなたの名前、教えてくれる?」

 首をかしげるエアリスに見とれていたヒカリがはっと我に返る。

「あっ、えと……ヒカリです!」

 明らかに叫んでしまっているヒカリにエアリスはにっこりとする。

「あなたがヒカリね、あなたのことユフィから聞いたよ」

「ユフィ? そうだ、再戦のことすっかり忘れてた!」

 今度会ったらリベンジよ! なんて言っていたライバルのことを今まですっかり忘れていたことにショックを受けるヒカリ。

「大丈夫、今はユフィ、ココにはいない、ワールドの外にいるよ」

「よ、よかったぁ~」

 ユフィのことだ。もしも今、エアリスの変わりに彼女が来ていたとしたら、ロックセプターを持っていようがいまいが問答無用で攻撃を仕掛けてきただろう。

「ユフィ、いつもアナタのことソラみたいだって言ってた」

「そっ……ソラ、って……?」

 弟のことが出てきて叫びそうになったのを飲み込んで『ソラ』のことをエアリスに聞く。

「ソラって言うのはキーブレードって言う武器を持っている男の子、優しくて真っ直ぐで……でも、ちょっと寂しがりやさん」

「へ、へぇ~」

 エアリスの言葉にどう答えればいいのか悩む。

「私、初めてヒカリ見て、すぐにわかったよ。でも私、ソラよりも……」

「ソラ、よりも?」

「……ううん、なんでもない」

「?」

 続きを聞きたかったがエアリスがヒカリのいるカウンターに何かを置いた。

「これ、シドに渡したかったの」

 エアリスが取り出したのは、赤いカバーの表紙のない本。

「あっ! これってあの本じゃん!」

 表紙カバーは新品のようだが中身を見ると所々破れている。まさしく、カレイドスターの格納庫にあった本だ。

「シドに頼まれて私が直したの、本の中身は流石に無理だけど」

「シド、俺が直すとか言ってたのに~」

「いいの、私こういうの好きだから。グミシップとかは無理だけど」

 ヒカリは不服そうだったがエアリスの嬉しそうな顔を見て、なんだか和んだ。

「本については、まぁいっか」

「シドには、ヒミツ、ね」

「まぁ、そうしておこう!」

 にっこりと笑いあう。エアリスが本を仕舞い直すと、ちょうどミッキーとシドが帰ってきた。

「遅い~~二人とも!」

「ヒカリ、取り付けるのに苦労したんだよ」

 ミッキーは少し疲れているようだったがシドは正反対だった。

「今度はちゃんとした部品に変えたんでな、暴れたりはしないだろ」

 シドがヒカリの頭にポンと手を乗せて言った。

「そう言われると、なんか恐くなってきた」

 動かないはずの機械が独りでに変な行動をする……どこかの怪談話のようだ。

「そういわれると僕だって怖くなってくるよ……」

「あ、以外~」

 ミッキーがそんな事を言い出すのはなんだか珍しい。

「僕だってそんなに完璧では無いんだから、恐いのはコワイ」

「恐くならないおまじないがあるぜ」

「教えてシド!」

 得意げに言ったシドにヒカリは反応が早かった。

「自分を信じることだ」

「なにそれ~~」

「例えばだな。目の前に自分よりも強い敵がいるとしよう、その敵に立ち向かっていく自分を想像するんだ」

「うん……それで?」

 初め胡散臭そうだったヒカリは、今度は乗り出すようにシドの言葉を聞き入る。

 シドはどこかの監督のように楽しそうに腕を組んでこう続けた。

「とにかく相手を観察しろ、目をそらしたりすると間違いなく、アウトだ」

「なにそれ? 自分を信じることと観察は何が関係してるの?」

 シドの言っていることのつじつまがまったく分からないヒカリ。

「自分で考えるってことだね」

 ミッキーがシドに言った。

「そうだ」

 満足げにシドが言う。

「考える?」

 まだ分からないヒカリがミッキーに聞いた。

「怖い、と決め付けてはいけない。むしろ今、そこにある何かを、自分で理解するようにしなくてはいけない……ってことさ」

「強い敵の弱点を見つけるように?」

「ま、そういうこった。分かったか?ヒカリ!」

「……うん、分かった!」

 

 結論。恐い物と強い敵は紙一重!

 こんな解釈でもナントカなるだろう

 

「出来ましたっ! ヒカリさん!」

 マフが二階の穴を、ハシゴを使わずにシュタッ! と飛び降りて現れた。

 

「付けてみてください!」

「うん!」

 ヒカリはロックセプターを出現させてマフの持っているロケットを付けた。

「?」

 付けたとたんセプターが消滅する。ふたたびヒカリが念じるとセプターが現れた。

 出現させた時、いままで気になっていた金属音がしなかった。

 これは、ロックセプターではない。

「ロックinロック・ブレードです!」

 ヒカリの持っている武器に満足げにマフが言った。

 

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