King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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Another04~Magic lesson~

トラヴァースタウン2 短編

Another04~Magic lesson~

 

 トラヴァースタウン三番街。

 ここはハートレスの出現率が非常に高く、もっとも人影が無い場所。

 故障中の送電機と空き地だけのある殺風景な場所なのだが、その三番街の隅に厳重な扉があった。

「ファイア!」

 ミッキーがキーブレードを出現させて炎の魔法を放つと、重そうな音がして扉が真上にせり上がり開いた。

 扉の向こう側はとても薄暗い。

「もしかして、ココって……」

 ヒカリの顔が引きつる。薄暗い洞窟に見覚えがあった。

「水面に動く岩」

 ヒカリのつぶやきに苦笑するミッキー。

 彼女がここを訪れるのは今回で二度目だ。

「どれぐらい深いのよぅ~」

 ほふく前進で湖を覗き見る。ミッキーはヒカリの行動に笑いをこらえるので精一杯だった。

 岩の陰が水面の奥で綺麗に見える。絶対足なんて付かないのだけは分かった。

 水面で歩けない深さなんてぜったいに泳げない!

 ヒカリはどうしても逃げたくなる衝動を抑えることができない。

 

 島の子供で「泳げないなんて珍しい」とみんなに言われてた。

 ソラにはやし立てられようが、

 リクにグチられようが、

 これだけは無理なものは無理だ!

ヒカリは水が嫌いなわけではない。

水中が嫌いなのだ。理由は考え出したらいくらかあるが、一番怖いのは水面に沈む寸前。

 頭の中が一瞬で真っ白になる。その瞬間、恐怖とは言いがたい何かが押し寄せてくる。自分でもそれは、よく分からない。でもそれが、後から考えると――とても怖い。

 そう、後から――。

 

「また担いで行くかい? それともボクが引っ張って泳いでいくかい?」

「……っどっちもいやだぁ!」

 頭を抱えるヒカリ。悲痛な叫び声が洞窟いっぱいに響き渡る。

「ボート、ボートはないの?」

「いや、流石に……」

「あった!」

「えっ、あった?」

「でも、壊れてる……ミッキー。ケアルで直せないの?」

「いや~流石に無理だって(汗)」

 

 ☆

 

「マーリン様~なんとお礼を言っていいやら」

「いや、これぐらいお安い御用じゃ」

 ヒカリとミッキーが外で騒いでいたのを見かねてマーリンが二人を瞬間移動させたのだった。

「さてヒカリ、お前さんの魔法を見せてくれないかの?」

「いいですけど、ハートレスがいないと無理かも」

「その件については心配ご無用」

(ガタン!)

「うわぁっ!」

 いきなりの地面の揺れにヒカリがよろける。ヒカリの立っている床板が浮上し始めた。

「えっ……ちょっと!」

 パニック寸前のヒカリにマーリンが下で穏やかに言った。

「屋根裏に移動するだけじゃ」

「て、ててっ……天井がっ……襲ってきているんですけど!」

「ああ、そこでガコンとかいって外れるはずなんじゃが。はて? 開かんな」

「あ、あの……このままじゃ私。つ、潰れるんですけど?」

「慌てるでない、それでは考える物も考えられなくなってしまうぞい」

「もっともなお言葉を返すようなのですが、本当に潰れる~!」

 ヒカリの声が聞こえなくなった。

「おお、そうじゃった屋根裏に入ることができるのは……」

(ガコン!)

 突如天井と浮上する床板とでサンドイッチだったヒカリがゼェハァ言いつつも生還した!

「魔術具の装備……つまり武器を持っていなかったら入れんかったのを忘れておったわい☆」

「早く言いましょうよ。マーリン様」

 ミッキーが天井を眺めながら言った。

見間違いではない。天井から生還したときヒカリは確実にこちらを見ていた。

そして、間違いなく、その顔が恐かった(汗)

「僕は、天井なんて行きませんよ」

「天井ではない、屋根裏じゃよ☆」

 マーリンがパチンと指を鳴らしミッキーの前から消えた。ほどなくして屋根裏がバタバタと大きな音がした。

 ミッキーはあえて天井での死闘を想像することを考えないようにしながらあたりを見渡した。

 

 マーリンのトランクの前に出ている物に目が止まる。カボチャの形の小さな馬車がそこにあった。

 カバンのそばの水晶玉や薬の入った瓶のような魔法具とはかけ離れている。これだけは明らかに周りの荷物と雰囲気が違う――と、いうか旅の道具には明らかに邪魔だろう。

 触ってみた。すると――。

(シャララン~☆)

「あらここはどこでしょう?」

「!」

 ラベンダー色の頭巾と水色のローブをまとった初老の女性が現れた。

「あら、あなたが王様ね。お噂のとおり、姿が変わっていますね」

「あなたは?」

「私の名前はフェアリーゴットマザー。私の世界のシンデレラが消えてしまいましたの」

 

 ☆

 

「ではヒカリ、順番に魔法を見せてくれないかの?」

「さっき……さんざん放ちましたけど?」

 ヒカリは屋根裏に来たときと比べてかなりげっそりとしている。

この老人、怒り心頭のヒカリの魔法を全て瞬間移動でかわしたのだった。

そしてヒカリの魔力が始めに尽き――今に至る。

 

「あれは八つ当たりではなかったのかね?」

「いきます! バースト!」

 ため息とも言えるように一息ついてヒカリがロックセプターを縦に構えた。

 マーリンが魔法で出現させたタンスに向かって放つとその真後ろにいたテーブルやイスも綺麗に消える。

 

 なぜか二、三言葉を交わすぐらいの時間だけで魔法の力が元に戻っている。おそらく全回復しているのだ。

 この部屋が独特の癒し効果を与えているのだろうか?

 

 真円形の窓のない空間。天井が高く、魔女が使うであろう空飛ぶ箒の飛行訓練にも最適だろうと思われるくらいの広さ。

 

「クリアー!」

 今度はロックセプタ――を横に構え唱える。ヒカリ中心に現れた黒い球体が逆爆発するように収縮して部屋全体の標的が消える。

 

(こんな所で魔法のレッスンをするときが来ようとは、夢にも思わなかった)

 なんて思いながら内心ドキドキしている。

 今更だけどすごいことだよ。

 王様と旅してたり、いつの間にか魔法を使えるようになってたり。

 そんで、こうして魔法のレッスンなんて!

 

「フラッシュ!」

 新たに出現した標的に容赦なく瞬間的に放つ光。威力は弱いが発動までの時間がかからず自分の間合いに敵を寄せ付けない。

 

 自分の中ではもうこのこと以前に自分の居た世界が消えてしまったってことで、もうめっちゃくちゃだけど――。

だけど今こうしていることとか、

やっぱりすごいよ。

 

「大魔法! ホーリーバースト!」

 魔法は力だけでなく自分の気持ちにも発動が左右される。

 独学で魔法の理をもう十分かっておる――。

 魔法を唱えるヒカリを見て、マーリンは感心した。

 

 ☆

 

「それではここまでヒカリ、お前さんにコレを授けよう」

 マーリンが炎を出してヒカリにそれを軽く放った。

「えっ?」

 ヒカリは軽く身構えたが炎はヒカリに衝突する直前に無数の赤い輝きに変わりヒカリの頭上に降り注ぐ。

「……あ」

 ヒカリの頭の中で何かがひらめいた。

「これが魔法の伝承じゃ!」

 お茶目に言っているけどマーリン様ってやっぱりスゴイ。

「じゃ早速ファイアを使って見せますね!」

 ヒカリはあたりを見渡す。

「あれ?」

 タンスが見当たらない。

 イスとテーブルもいない。

 浮遊しているティーポットさえ見当たらない。

「マーリン様? 早く壊していい家財道具出してくださいよ」

 よく分からないひとが聞くとヒステリックな中学生のような発言だ。

「ダメじゃ」

「な、何言ってるんですか? このためにレッスンしてくれてるんですよね?」

「もう教えることは何も無い」

「もしかして、怒ってるんですか?」

「いんや」

「じゃぁ嫌がらせですか?」

「そうかもしれんな」

「……ファイア!」

 突如マーリンに向かってファイアを使うヒカリ。

「これ! 何をしておる」

(コツン)

「痛い~だってマーリン様が標的かと思って」

「か弱い老人に向かって何を言う」

「じゃあ、なんでファイア使わせてくれないんですか~?」

 率直に聞くヒカリ。

「これは、お前さんが考えた魔法ではないからじゃよ」

「そ、それだけ?」

「魔法は何においても自分自身の精神が要、であるにして、お前さんは応用を始めに覚えてしまった、よって基礎魔法の転承は禁じる、二度とあのような魔法は使うでないぞ」

「て、テンショウって??」

「転用と伝承の造語じゃ。気にするでない」

「……じゃ、なんで私なんかにファイア渡したんですか?」

「それはな、これ以上摩訶不思議な術をあみ出さないでほしいからじゃ」

「まかふしぎって、魔法使いに言われるとは~」

「禁止はせん。だが、けして生半可な魔法を作ってはイカン。世界の秩序が乱れてしまうからな」

「どんな魔法だったらいいんですか?」

「それはわしにもわからん、自分の力量と必要だと感じたものがそろう。すると魔法となるのじゃ」

「私にはまだわかりません」

「それでは。これは次回までの宿題にするかのぅ」

 

 ☆

 

宿題嫌いと思いつつ屋根裏部屋から降りてきたヒカリ。

ミッキーはかぼちゃの馬車を持ってヒカリを待っていた。

「レッスンはどうだった?」

「なんか、宿題だけ貰いましたってかんじだなぁ」

「また来ないといけないってことだね」

「そう、ね」

ヒカリが降りてくると次にマーリンも降りてきた。一応ご享受してくれたので改めてヒカリがお礼を言う。

 

「マーリン様ありがとうございます」

「今度来るときは期末テストじゃよ」

「嫌な響きですね」

「期待して待っているからそのつもりで」

 ため息をつくヒカリの横でミッキーが引き継ぐ。

「ソラたちのこともよろしくお願いします」

「分かっておるよ王様、ヒカリよりはちゃんとレッスンしていくぞい」

(それってどういう意味よ?)

ヒカリはこの発言はあえて飲み込んだ。

 

 二人は外へ出た。

「この湖を、ファイアで一面干上がらせる事は~」

「まさか、そんな宿題じゃないよね(汗)」

 

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