King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
明日、ソラたちはこの島にはいなくなる。
『私がソラたちのいない間この島を守る』
旅立ちを決心した三人に私はそう言った。しかし、その前に私はどうしても確かめたかった。
夕闇のボート乗り場、困惑気味のソラの顔がヒカリを見つめている。ヒカリはその顔を真っ直ぐ見据え緊張ぎみに言った。
「ココからいなくなる前に……ソラ、アンタの強さを知りたい」
そう言ってヒカリはボートから愛用の木刀を取り出した。ヒカリの背丈の半分ほどでソラの武器より少し短い。長いこと使っていたのでずいぶんすり減っていて先が少しだけ丸くなっているものだ。最近、チャンバラはご無沙汰でボートの奥にずっと仕舞い込んでいた。
少し前まではリクに誘われたりして何度もこれで遊んでいたのだが最近は体調が良くないばかりにいつの間にか使うことが無くなったものだった。
手に馴染む久々の木の感触、忘れていた重さ。ヒカリはそれを軽くヒュッと軽い音をさせ薙ぎ、ソラにその切っ先を合わせた。
「今すぐココで勝負して!」
湿った、冷たい風が二人の間を通り過ぎる。風邪の前兆かそれとも緊張のせいなのか、ヒカリの肩が微妙に震えていた。
「どうしても、やらないとダメなんだな」
ソラは愛用の両刃のおもちゃの剣を握り締め緊張と心配の面持ちでヒカリに聞いた。
「うん!」
真っ直ぐな返事をする姉にソラは剣を構えた。
「わかった」
ソラはこのような選択には常に真っ直ぐな答えをくれる。そんな弟が少しヒカリはうらやましいと思った。
「姉ちゃん、行くぞ!」
ソラが先制攻撃。
ヒカリはそれを全て受け流した!
ソラの戦い方はいつも見ていた。ティーダ、ワッカ、セルフィー、そしてリク。ソラはティーダとリクとの間の腕前。
ただ、二人とは違った何かがソラにはあるような気がした。それが知りたかった。
ヒカリは体制を低くして砂を思いっきり蹴りソラに詰め寄った。
ソラの突きが頭上をかすめたが当たらない。すかさずヒカリはソラをなぎ払う。
「うわぁ!」
叫ぶソラ。いとも簡単にソラの体が吹っ飛んだ。
ヒカリの力が強い訳ではない。ソラの重心の方向に少しだけ上から力を入れてやっただけだ。
コレがヒカリの戦法。相手の力の方向を見極め、それを最小限の力で崩し、建て直し、利用する。バックカウンターアタックだ。
攻撃は最大の好機。相手の攻める攻撃時に仕掛ける大胆な回避能力とそれに順応しうるほどの瞬発力が彼女の武器だ。
相手の間合いにあえて攻め混むのでやろうにもあまりのリスクに諸刃な攻撃と言える。しかし、それよりも大胆な行動を一番に選ぶ彼女にとって延々と研ぎ澄まされた技が唯一無二の必勝法となった。
つまりは、意表を突くので楽しい。
リクはよくこの戦法の対処法として必要以上に間合いを取っていた。そして挑発してカウンター。いわばヒカリはリクのまったくの逆。むしろヒカリの戦法の解決策が彼の戦法を生み出したようだ。
久々の感を取り戻したヒカリはきれいに吹っ飛んだソラを見て軽く頷いた。
「いってぇ~」
技のお手本のように意表を突かれ受け身がとれなかったソラは見事に倒れ、お尻をさすっていた。
ソラはリクのようなカウンターなどはまったく使わない。対ワッカ戦のときはいつもボールを打ち返す。セルフィーの時もそうだ。
ティーダのような必殺技も見たことがない。
しかし、ソラには何かがあるような気がする。
「よっしゃ! もう一回!」
ソラが詰め寄った。
ヒカリはソラの攻撃のタイミングを崩し、その隙を突く!
利き手の手の甲に木刀がヒットしたものの、ソラは攻撃を止めずに詰め寄ってきた。
「クッ……!」
押されているがこちらのダメージはさほどではない。それよりも重心が自分の方向なのでさっきみたいに技で飛ばすことが出来ない。
力が、自分の方向――。
「あっ!」
そうか、分かった!
そう思った時には木刀を握る力が抜けて体が宙を舞っていた。
日は沈み辺りはもう真っ暗だった。
(ズザザァッ!)
砂埃が舞って二人の姿を消す。
「どこだ、姉ちゃんは!」
ソラが気配を探すが何処にもない。
そして砂埃が消えると、人影が二つ見えた。辺りはもう真っ暗くてその二人は誰だかわからない。
おそるおそるソラがそこへ行くとその影が動いた。
「リク! どうしてココに?」
「お前らが遅かったから見に着たんだ」
そう言ってその横のもう一人。ヒカリを助け起こす。
「ね、姉ちゃん! どうしたんだ、オレのせい……なのか?」
ヒカリはぐったりしていて息が荒かった。
「ソラがやったんじゃないのはわかる。しかし無茶なことをしたな」
「ど、どういうことなんだ?」
「体が熱い、それもさっきから」
「そんな……姉ちゃん、そんなの一度も――」
「なぜ止めなかった!」
「‼」
リクの一括に、ソラはそのまま立ち尽くした。
遠くの野鳥の鳴き声が間直に聞こえた。
「……とにかく、こいつ送ってく」
「いいよ、おれの――」
「俺の勝手だ」
「っ……ゴメン」
リクはヒカリを背負った。
ヒカリの手から木刀がコトンと落ちた。
リクはそれを拾ってながめる。
コレを見るのはひさびさだな――。
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