King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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Another05~Transformation~

オリンポスコロシアム1 短編

Another05~Transformation~

 

 

 クラウドと名乗った青年に襲われ、逆に返り討ちにしたヒカリ。

このごろ、ミッキーにおいしい所をとられたり自分だけやな役回りにされたり。

全てにおいて負け続け(?)だったせいか、ついさっき強そうなお兄さん(クラウド)を相手に勝利したことで彼女は意気揚々としていた。

 

「あ、あったあった! 大きな門~」

 クラウドに言われたとおりに行くとすぐにコロシアムが見えた。

「よっしゃ……じゃなくて――。よし、僕はこれからミッキーだ」

 気を取り直して、丁寧な口調を取り作る。

「……って言っても、こんなカッコじゃあ、もしかしたら女だってばれそうだな~」

 むしろ口調変えない方が男っぽいのでは?

 いやしかし、声自体低くさせないと……。

 

「お困りのようね」

 どこからともなく声がかかった。

 ヒカリはびっくりしてあたりを見るが周りには誰もいない。

「だれ?」

 突然声を掛けられ、さっきまで男っぽくを心がけていたヒカリは、いつのまにか地に戻ってしまい、さらに慌てる。

「大丈夫よ、ヒカリ」

「なんで私の名前を?」

 名前で呼ばれたので元に戻るヒカリ。

 あたりを見ると白いもやが目の前に現れ、その中からラベンダー色の頭巾と水色のローブをまとった初老の女性が現れた。

「こんにちはヒカリ。私の名前はフェアリーゴットマザー」

「フェアリー、ゴットマザー?」

「ずっとあなたの事を見ていたわ、可愛らしいお嬢さんだってね」

「そ、そんな~。滅相もない」

 見知らぬ魔法使いからかわいいと言われ少し浮かれるヒカリ。

「今日はこれをヒカリに渡してほしいって言われてやってきたのよ。ビビディバビディブゥ!」

「⁉」

 フェアリーゴットマザーが杖を振ると輝く何かが飛び出した。

「小さな可愛らしい子がこれをアナタに渡してほしい、ですって」

 ヒカリが魔法の余韻でまだ輝いているそれを受け取る。真っ赤なリンゴの銀細工――。どこかで見覚えがある。

「これは、ロケット? ……ってことはマフ! すごい、ロケットもうできたんだ~」

 魔女がうなずく。

「今、ここで使ってごらんなさいな」

「はい! 今度はどんなのだろ~?」

 嬉しそうにヒカリが言った。

 ヒカリはロックセプターを取り出して中央にあるロケットを付け替えた。ロケットを取り付けた瞬間、セプターは真っ赤な輝きとともに消えた。

「それでは……!」

 ヒカリは少し緊張する。

 魔法を使うときもそうだったけど、

 初めて自分がやろうとしていることって、

 なんだか今までの自分じゃないような気がしてくる。

 こんなのいつもの自分じゃない!

 なんて考えてしまうと失敗するんだよね~

 だからあえて私はこの瞬間だけは何も考えない事にしている。

 自分の身に任せて、あるがままに、でも少し気取って――。

「出てきて! ロックセプター!」

 ヒカリが叫んだ。

 目の前が赤く染まりすぐにそれはヒカリの目の前ではじけた。はじけた拍子に真っ赤な輝きが純白の粉に変わる。

「?」

 ヒカリの目の前には何も起こらない。

 セプターを見るがロケットはなぜかキングダムロケットのまま、さっき取り付けたのにリンゴの面影はない。

 ロケットはいったい、どこに?

「まぁまぁ!」

 フェアリーゴットマザーはヒカリを眺めながら感嘆した。

「なんと言うか! シンデレラを見てるようね」

 

(あれ? なんだか、いつもと視界が、違う?)

「どうやらこの能力は戦う為の物ではないようね」

「セプターの、ロケットは……?」

「ああ! ロケットはきっと魔法が解ければ戻ってくるはずよ」

「そっかロケット……いや、違くって」

(やっぱりおかしい! 声が……低い)

「その声、まるで男の子のようね」

「!」

(まてよ、もしかして……)

「これがロケットの能力?」

 ヒカリがロックセプターを眺める。

 ロケットを付け替えたのにセプターは変わっていない

 けど、私が――変わってる!

「でも、これだけじゃなんだか心もとないわねぇ。そうだわ、ヴィヴィディ、ヴァビディブー!」

 魔女の渾身のかけ声でヒカリの身体がまばゆいばかりに輝いた。

「ま、こんなものでしょう!」

 満足げにフェアリーゴットマザーがヒカリに向かって言う。

「うわ……ぁ」

 ヒカリは感嘆の声を上げる。

 真っ白い輝きが消えると服装が暖色系から寒色系に変わっていた。

 オレンジ色のジャケットはマットなブラックに。デニムキュロットは膝までまくしたてたハーフパンツに。胸元で光っていた銀のハートは星の形をしている。

 ここまで変わっていてもなお彼女の長い黒髪は健在だった。

「あの~この髪、何とかならないですかね?」

 魔法使いなんだから一時的に短くさせる事だって可能ではないのか?

「いいえ、髪はこのままでもハンサムよっ☆」

 目の前の魔法使いはヒカリの変身した姿に満足そうに微笑んだ。

 短髪、ちょっと期待してたのになぁ~。

 リクのサラサラヘアーはうらやましいけど、ソラの寝癖爆発のような髪型。あの寝癖は、男装するんだったら……少し憧れる。

 うなじから上を切った事がないヒカリはスキンヘットにも憧れていたときもある。でも、髪がないってことは、運動するとすぐ汗が流れてくるって言ってたなぁ(誰が?)

「ではヒカリ。私はこれで帰るとするわ。わたしは魔法使いマーリンの所に居るから、立ち寄る際にはカボチャの馬車を探してごらんなさい」

「ありがとうございます。マザー」

「ええ、トラヴァースタウンに立ちよった時、是非とも彼女にこの姿を見せてあげなさいな」

「はい。でも、ちょっとでも早く、マフにあなたからありがとうと言ってもらえませんか?」

「もちろんですとも、お安いごようよ!」

そう言い残し、フェアリーゴットマザーが輝き消えた。

 

 マフとフェアリーゴットマザーのおかげでヒカリはコロシアムに入る決心をつけた。

 薄暗い道を抜けたコロシアムの横は小さな小川とアスレチックのような多彩な物体が並んでいる。

 なんだか楽しそうだ。

 遊具を見ると心が弾む。子供心に似つかわしいドキドキがヒカリの胸を躍らせた。

「この門を抜ければ、僕はこれからミッキーだ」

 美しいテノールの声が、自分にそう告げた。

 ヒカリはコロシアムの門を開けた。

 大きい門は重そうな音とともに開く。

 その瞬間から、

 ヒカリはミッキーへ――。

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