King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
~おかしな扉~
生まれた時から私とソラはずっと一緒だった。
だから私の事を忘れるなんてあり得ない。
なのに――。
「オレ……君の事よくわかんないや」
きっとソラの身に何かあったんだ――。
それとも、私が?
もう何がなんだかさっぱり意味が分からない。
私っていったいなんだったんだろう?
ゆっくりと気だるそうにヒカリは目を覚ました。自分の存在が無意味であっても体は思考に逆らい活動を始める。
しかし、なぜだろうか。
本当に体の動きが鈍い。
そして、足場がない
「み、水底⁉ いや、息が……出来る?」
体が真下へと引っ張られていく。
不思議だ。
浮かんでいるとは言えない。無重力のような浮遊感。ごくわずかに働く重力に従いゆっくりとヒカリは下へ落ちていく。
これが落ちるんじゃなくて自分が飛んでいたらちょっとは気持ちが晴れると思うのに。
でも、なんでソラは私の事……。
考え出したらまた怒りが込み上げてきた。
とりあえずは、あり得ない事だと思うけど。
「もしかしてソラは私をからかっていた」
なんて思う事にした。
そうしないと――自我が保てない
せっかく合えたのに、あの馬鹿!
「えっ?」
ドテッ。
いきなり重力が元に戻り、着地したにもかかわらず倒れるヒカリ。
「ほんとに、わけ分かんない」
あまりにも不思議な現象に気だるそうにヒカリが言った。
首だけを動かしてあたりをよく見てみると、イスやテーブル、クローゼットまでもがヒカリのように下降し地面へと綺麗に配置される。
そこにあるべき場所と言えるかのように見事に置かれる家財道具にヒカリはただ目を丸くして眺めていた。
「うっわ~~不思議だなぁ。コロシアムにこんなとこがあったなんて……」
少し考えてはっとするヒカリ。
「いや、こんなのいくら何でもオリンポスの世界ではさすがに変だって! そういえばミッキーは? なんで私こんな所にいるの⁉」
あまり思い出したくはなかったがヒカリは目を覚ます前の経緯を記憶から引き出す。
「ソラを叩こうとした瞬間、目の前が真っ白くなって――」
それからは何も記憶がない
つまりは何らかの力で飛ばされてしまった。
「島を出てから、なんだかトリップが多いなぁ」
一人ごちて立ち上がり自分が落下してきた場所を眺める。
薄暗くて自分がどこから浮遊していたのかが全くわからない。ここが地下なのか逆にこの場所自体が地上で、もしかしたらかなり高い所から落ちてきたのか――それさえも分からない。
「ま、いっか。ミッキーがいなくなるのはいつもの事だし、行動あるのみっ!」
物が落下してくる薄暗い部屋で人が降ってくる事を待つよりは先へ進んだ方が無難だ。
幸い、薄暗いが一本道。いざとなれば迷うことなく戻ってこられる。
しばらく進むと道が途切れ行き止まりだった。
しかし、薄暗い部屋でヒカリがよく目をこらしてみると主張しない程度に扉が張り付いていた。
「あ、こんな所にドアノブが!」
ドアを開ける。にも関わらず壁が現れる。
しかし、薄暗い部屋でヒカリがよく目をこらしてみると主張しない程度に扉が張り付いていた。
「またドアノブ……」
ドアを開ける。にも関わらず壁が現れる。
しかし、薄暗い部屋でヒカリがよく目をこらしてみると主張しない程度に扉が張り付いていた。
「えっと……。ドアノブ……」
ドアを開ける。にも関わらず壁が現れる
しかし、薄暗い部屋でヒカリがよく目をこらしてみると主張しない程度に扉が張り付いていた。
「うっわぁ~おもしろ~い! でも意味ない~」
にこにことしながらドアを開けていくヒカリ。
この無意味な繰り返しは、次第に扉が小さくなるにつれてヒカリを不安にさせた。
(このまま小さくなっていって行き止まりだったら引き返すしかないじゃん…)
数回後。
薄暗い部屋でヒカリがよく目をこらしてみると。
「なんとか、なったね」
扉には、壁がなかった。
ヒカリは歩伏前進で小さな扉を突破した。
「しかしまぁ、扉が小さいっていうのはなんだか圧迫感があったなぁ~」
逆に大きすぎる扉も不安だけどね(汗)
ヒカリが這い出た所はごく普通の一室。
ソファーにテーブル、イス、時計、ベッド、暖炉。とにかく人が住むのに必要な日用品がそろっていた。
ヒカリはあたりを見渡した。
さっきの部屋よりは明るい。ただ不自然なのは、なぜか扉が小さい事だけ。
さっき這い出た扉といいもう一つ、向こう側にある扉といいなぜこんなに小さいのだろうか。
「何かお困りかな?」
どこからともなく声が聞こえた。
あたりを見渡すが狭いこの部屋には自分しか見当たらない。
「ここだよお嬢さんの足下」
確かに声は向こうの扉から聞こえる。
と、いうことは、この扉の向こう?
ヒカリが勢いよくドアノブを回すと。
「あいたたっ! やめてくれ壊れるじゃないか!」
「はいぃ! ごめんなさいっ!」
びっくりして叫び声のした、自分の手のひらをおそるおそる引っ込めると。
「えっ⁉ うそぉ~ドアノブがしゃべってる!」
驚き半分好奇心半分で叫ぶヒカリ。
「おっほん。扉が小さいのならお前さんが小さくなればいいんだよ」
はしゃぐヒカリを咳払いで制しドアノブが言った。
「ど、どうやって?」
「テーブルにある薬さ」
ドアノブの後ろには丸テーブルとイスが部屋の中心あたりに置かれている。テーブルの上には小瓶が置かれていた。
「これか」
ぐいっと飲むヒカリ。
「ん、んっ?」
さわやかなミント味。スーッと駆け抜けるように体に染み渡り、それとともに視界がエレベーターで急降下したように小さくなっていく!
いきなり収縮が止まりフラリとよろめいたが、それ以外異常はなかった。
「うっわぁ~。本当にしゃべってる!」
小さくなったヒカリがしゃべるドアノブに向かって率直な答えを述べた。
「悪いのかね?」
「い、いえ別に、よろしいのではないでしょうか?」
小さくなるとさっきよりもドアノブが大きく、少し威厳があって思わず敬語になってしまった。
「うむ、では私はドアノブだ」
「はい、そうですね」(今更何を言う)
「私が痛がっていた理由は分かるかね?」
ノブが金属の裂け目を口にしてしゃべるのがなんだか面白い。もっと見ていたいのでヒカリはなぞなぞに付き合う事にした。
ヒカリは頭を左右に傾けながら考える。
「ノブを回そうとしたから?」
「いいや、私は回らなければ意味がないよ」
「強く握ったから?」
「いやいや、そんなに私はもろくはないさ」
「押すと引くを間違ったから?」
「それ以前の問題さ」
「こ、降参……」
しばらく考えてヒカリが右手を軽く上げて降参した。
それを見て自信たっぷりにドアノブが言った。
「それはだね――。わたしは鍵が掛かっているからさ」