King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~鍵はどこ?~

 

 

「向こうに行きたいのならスマンが探しに行ってくれないかねぇ」

 ドアノブがのんびりとヒカリに言った。見つかろうが見つけまいが扉を閉ざしている張本人のドアノブには関係なさそうだ。

「鍵って言われても、この姿じゃどうしようもないって!」

 ヒカリがドアノブに向かってすべてを否定するように叫んだ。いくら部屋が一つしかないとはいえ体が小さくなってしまっては、だだっ広いフィールドだ。とてもじゃないが探すには時間がかかる。

「それなら案外見つけやすいのではないのかね? この大きさなら小さい所でも見落とすことがないよ」

 ヒカリの叫んだ問題を肯定するドアノブ。

「おっ、いま私。面白いこと言ったね~」

 【小さい大きさ】と、はからずとも自分がうまいことを言ったと上機嫌。

 探す当人のヒカリはあきれてため息をついたが少し無気力だったドアノブがなんだか楽しそうな様子だったのでやる気は沸いてきた。

「まぁ、面白そうだし探してみるか」

 ヒカリはドアノブに背を向け、トコトコと歩き出した。

「あっ、どうせならおいしそうな鍵がいいねぇ」

 無意味な条件をつけるドアノブを無視しヒカリは鍵の捜索を始めた。

 

 

ヒカリは部屋のあちこちをくまなく探した。途中、テーブルの上にあった大きくなる薬を見つけ、元の大きさに戻って家具を動かしてみると――。

 

「この穴、もしかして向こうへ行けそう?」

 小さくなった際に通り抜けられそうな隙間があったり、新たな発見があったりしたのだがドアノブの求めている物は見つからなかった。

 

ここのハートレスはトラヴァースタウンとほぼ同じ系統でヒカリ一人でも大きな怪我の心配はない。

 

 ただ、空飛ぶ箒が沢山いるのが面倒だ。

「ああっ! もうっ。ちょこまかと~!」

 大量に出没して倒していくうちに自分がどのあたりに居るのか忘れかけた。

 

「大きかったときは気づかなかったけど、この一室だけでも十分探す場所って沢山あるんだね」

 元の姿では見落としてしまいそうな場所もいくつかありドアノブの言っていた言葉に感心する。

 例えば、ここにある暖炉の中の隅っこに何か、にぶい金色の輝きが――。

 もしかして、鍵かな?

「やったぁ! 小さいと意外と探し物がすぐに見つかるんだね♪」

しかし、そこへ近づくに連れてその輝きの根源が明らかになる。

 

鍵ではなかった。

 

「……ひ、人っ⁉」

 煤に埋もれているのはたしかに人だった。

 輝いていたのは彼女の、金髪。

 

 

「私は姉さんの言ってる理屈ってものが大っ嫌いなの!」

 ヒカリが彼女を助けてからしばらくして、彼女は今までの自分の不満をヒカリにぶつけてきた。

「そのぶんここの世界はかなり無意味なことばかりだわ!」

 自分の近況を肯定する少女。

それが素晴しいことだとは、あえて熱弁はしなかったが。

 

「とにかく、わたしは早くこの世界の事を姉さんに知らせたいの!」

まるで自分が正しかったかのように根拠のない自信に満ち溢れている少女。

 

「あのさ、とりあえず名前教えてよ。私はヒカリ」

「ああ、ごめんなさい。私ったらすっかり忘れていたわ! アリスよ」

 育ちのよいお嬢様っぽくアリスはワンピースのスカートの端をつまんで軽くお辞儀をした。

 

「アリスかぁ、妹にしたいぐらいかわいいな~」

 ソラよりもこんな子が妹だったら……なんて考えてみる。

「ヒカリ、あなたが私の姉さんだったらどんなに良かった物か!」

「いや、そこまでいわれるとは思ってもみなかったなぁ」

 なんだか姉の事を思い出してはすねている彼女に少したじろぐ。

 アリスはさっきから喜怒哀楽が激しい。

 

(私もソラにこんな風に見えたのかな?)

 しかし、アリスはこの世界に着てからおかしなことが多かったせいか唯一平凡で明るい存在のように思えた。

 

(そういえばアリスって……)

思い出しそうで思い出せない記憶がヒカリの周りでぐるぐると踊っていると。

 

「きゃぁ!」

 もう少し。というところで先頭を行くアリスの目の前に大量のハートレスが現れた。

ヒカリはそれに気が付くとアリスへ駆け寄りハートレスとの間に割って入った。

「アリス、向こうの隙間まで逃げて! こいつらは私がなんとかするからっ!」

「う、うん。でもヒカリは?」

 アリスが逃げようか彼女を見捨てまいか迷っている。

(優しいな、アリス)

 そんなアリスを見てヒカリは微笑む。

「だーいじょーぶ♪」

 ヒカリはいつもより大振りに右手をかざす。

 淡く白い輝きがヒカリのかざした手中に集まり、あっというまに杖の形になる。すかさずそれを掴んで横に凪ぐと白い光がいっそう輝き、アリスがまばたきしたときには――。

 ヒカリの右手に杖が握られていた。

 

「ヒカリ、それはいったい、なに?」

「話は後っ! 私に構わず行って!」

 ハートレスの方を向いたまま軽い口調でヒカリがアリスに安全な道を目配せした。

「うん、気をつけてね!」

 アリスは驚いたままヒカリに言ってその後走り出した。

 アリスを背にヒカリは空を飛ぶ色とりどりの箒のハートレスを見渡した。

「さて、面倒な箒を掃除しますか!」

 

【箒を掃除】

 

 なんだか自分で言ってて不思議な言葉だ。

 微笑しながらロックセプターを構える。

(シャリン)

 杖についている小さな鍵が音を立てる。

「あ……」

 箒は魔法でしか攻撃してこないため魔法防御力が高い。

「ブレードの方が良かったかも」

 

 

 アリスはヒカリと離れた後ふと思い出した。

「そういえば私、暖炉の上に鍵を置いていたの忘れてた!」

 もしかして鍵とはあれの事なのかも知れない。

 アリスはそう思ってあたりを見渡す。

「どうしたのかね? お嬢さん」

 ドアノブがアリスに聞いた。

「あの、前みたいに大きくなりたいですけど……」

「それならば。そこのベッドの下にあるクッキーを食べればいい」

「ありがとうドアノブさん」

 アリスは早速ベッドの下にもぐりこんだ。

 すると小さな箱(今のアリスには大きいのだが)を見つけてベッドの中から引き出した。

 箱の中にはアリスの顔ほどの大きさのクッキーが一枚、残ってあった。

「ヒカリも元の大きさに戻ることを考えなくちゃ」

 アリスはそう言って一口、クッキーをかじった。

 しかし、大きくなったような気がしない。

 むしろ……。

「あら、これおいしい!」

 小さくなる薬とは反対に一口で濃厚な甘さが口いっぱいに広がる。

 夢中で食べているうちに知らず知らずのうちに体が大きくなっていた。

 気づいたら大きかったはずのクッキーを半分も食べてしまったアリス。

「あっ、後は、ヒカリの分よね」

 食べているうちに見上げていたテーブルが丁度良い高さになっていた。

 アリスは気づかないうちに元の大きさに戻ってしまっていたのだった。

 小さいヒカリはこの『甘くておいしいクッキー』は食べきれないだろうから……。

 下を見るとヒカリとハートレスが小さなおもちゃのように見える。

 

(あと一口くらいなら……)

 

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