King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~氷の魔法~

 

 くそぅ~ロックセプターじゃ意味がないぃ~。

 空中に浮遊する箒に苦戦するヒカリ。

「いやぁ~っ‼ また髪が燃える!」

 一斉射撃してきたファイアの魔法。ヒカリは頭を抱えてうずくまる。

 

 そして目の前に迫る炎の玉!

 

「燃えてたまるかっ‼」

 カッと目を見開き、とっさに発動させたクリアーで相殺!

(いや待て、この魔法って前にあったよね?)

「あ、そういえば――バリアがあった!」

 思い出しすぐバリアを発動させるヒカリ。自分の魔法を忘れていたのに少しあきれ、その発動したバリアの範囲の中でほっと一息をつく。

「さて、この危機をどうするか……」

 さすがに自分一人では魔法をすべて回避するのは不可能だった。

「青と黄色は倒せるのに、問題は赤なんだよなぁ」

 赤箒、レッドノクターン。それはヒカリの一番嫌いな魔法を使ってくる。しかも間違ってファイアを使ってしまうと――回復してしまう!

 ヒカリは魔法が人より強いと言われてもレベルは人並み。魔法だけ見ればソラよりは上手に使えるが、レベルの高いミッキーの方がヒカリよりも遥かに威力が強い。

 見た事のない珍しい魔法とありえないと言われている範囲魔法があるので、ヒカリが最強だと思われているだけだ。

(私って、まだまだ経験が浅いってことだよね」

 険しい顔をしてすっくと立ちあがり、何かに崇拝するように杖を掲げるヒカリ。

「水っ! 水の魔法が欲しい!」

ここで言っておくが、杖にすがってもロックセプターは自分自身の心が具現したものであって――。

 

身の丈以上願っても何も出てこない。

 

ようは習得するには経験次第。つまりは実戦で精進あるのみなのだ。

 あきらめかけたその時。

(バシャン!)

 大きな水滴が空から落ちてきて丁度よく赤箒に命中した!

「あれ? もしかして魔法習得⁉」

 なんて考えてしまった瞬間。

「うわ~ん‼」

「なに?」

 低いが、どこかで聞いたような声。

(バシャン!)

「?」

 部屋の天井から大粒の水滴がとめどなく降ってくる。これは間違いなく自分が発動させた魔法ではない。

 

 だったら?

 

 ヒカリはおそるおそる頭上を見る。

 赤箒は消えていたが――。

 はじめそれは大きすぎてよく分からなかった。しかしそれは尺度を除いて見覚えがある。

「あ! あ、あ――」

 思い出したヒカリは壊れたプレーヤーのように『あ』を繰り返した。

 

「アリスぅ~~⁉」

 ヒカリが叫んだ直後。足元から一気に湧き出るように水かさが増していく!

「うわわっ! お願いアリス、泣くのやめて~~」

 小さなヒカリが叫んでも大声で泣くアリスには聞こえない。

 

「こんなに大きくなって、ごめんなさぁーい。クッキー食べた私が悪いのよ~!」

「泣かないで~。じゃないと、溺れる~~」

 

 オマイガーッ! 私、泳げませ~ん!

 

 必死でジェスチャーするヒカリ。

「こうなったら…!」

 セプターを頭上に掲げるヒカリ!

(ええ~っと、おっきくなる魔法……おっきくなる魔法っ~‼)

 だめだ……。

 水が恐くて集中できない(涙)

「アリス。おねがい~気が付いて~」

 必死の思いが通じたのか頭上を見ると。

 

「ヒカリ?」

 アリスが気づいたが――瞳から大粒の雫が滑り落ちた!

 

「!」

 セプターを掲げたまま、無心で見つめるヒカリ!

 次の瞬間。

 

 ――水――うごけない――凍結――!

 

「フリーズ‼」

 

 ☆

 

「自分の周りを一瞬の冷気で凍結させる――。なるほど~水のせいで自分が動けないから、だね~」

「だれ?」

 むすっとしているヒカリ。その顔ときたら別に誰でも構わないオーラが出ている。

ココはどこかも知れぬ大海原。

どんぶらこ。とばかりに浮かぶ氷の船にヒカリが大人しく座っていた。

 いいや、うかつに動けないのだった……。

 

 数分前――。

 

 とっさに唱えたヒカリの魔法は、アリスの大粒の涙の雫を凍結させた。そして息つく間もなく突然の大波がヒカリを襲う。その際、フリーズのおかげでヒカリの周りの水たまりも凍った。

 結果的にヒカリは自分の周りのみを凍結させて水から身を守ったのだった。

 

「なかなかじゃない、キミ」

 そう言ってどこからともなくやってきた紫色のリボンがヒカリに向かってしゃべっていた。

「とっさに思いついた魔法が自分の身を守るので精一杯な呪文でどこがいいのよ?」

「おやぁ~初対面の僕に向かってもうグチかい?」

 紫リボンがくるくると渦を巻いていく。

「アリスから聞いたわ、チシャ猫って言う変な猫の事」

 もうすべて身動きが取れない死んだ魚のような目でヒカリが言った。

 

「光栄だねぇ~僕の事知ってるなんて」

 しゃべるリボンがスゥと猫の姿になる。その間、ヒカリはノーリアクシションだ。

登場シーンの感想を言ってくれないので猫は親切に答える。

「アリスは大丈夫だよ~自分のポケットにあったキノコを食べて大きさが縮んだから」

 点滅するように現れ浮遊するチシャ猫を厄介もの払いするように睨みヒカリが顔を上げた。

「ご報告、ありがとう」

 パシッっと軽快な音を立ててセプターを出現させたヒカリが立ち上がる。

「ココで流れてても意味がないって事が分かった」

「何をするんだい?」

 とぼけたような表情をするチシャ猫。

ヒカリはそこに誰もいないかのような態度のまま独り言のようにセプターを振り上げた!

 

「何って、探す!」

 

『フリーズ!』

 

 氷の船が止まった。

 魔法で船の周りの海面が凍ったのだった。

 ヒカリが船をまたいで凍った海面に降りる。

 彼女が迷いもなく一歩また一歩と歩くたびに前方の海面が凍っていった。

 

「ヒュゥ~♪すっごい魔法の威力だ」

「チシャ猫分かるの?」

 猫が魔法に興味を示したことが予想外だった。

 

「分かるも何も僕はチシャ猫だよ~そんな事分かっても分からなくても構わない」

「……もういいや」

 聞いた私が間違いだった。

「でも参考にさせてもらうよ」

「?」

 意味がわからなかったが何かひらめいたようだ。

「ところで探すって何を? 誰を?」

 この猫は質問に答えないくせにいろいろと聞いてくる。

「誰でも何でもいいじゃん、もうココに居たくないだけ」

「どこへ行く? どこへ行きたい? どっちへ向かう?」

(……うるさい)

 顔の周りを漂うチシャ猫に怒り寸前のヒカリ。

「あっちに行く? こっちに行く??」

(……まてよ)

「向こうには何がある?」

 ヒカリが前方を指差す。

「さぁ?」

「アリスはいる?」

「いたかな、いるのかな?」

(いるかもしれないってこと?)

「私が見たことある所?」

「同じようでちがうトコ~」

(見覚えはあるんだね)

「……ってことは、アリスと私が行ったことある所なんだ?」

「それはどうかな~?」

「戻ってもしょうがないとは思うけど、もしかしたらさっきの部屋に何かがあるのよね?」

「……」

「あ、図星?」

 にやりとチシャ猫に笑いかけるヒカリ。

 チシャ猫とは違った、不気味な笑顔だ(恐)

「行って見よ~♪」

(やった! 猫に勝った~♪)

 意気揚々と氷の上をヒカリは歩き出した。

「そうそう~」

 ヒカリの行く先を眺めながらニタリと嫌みったらしく笑う猫。

「なに? チシャ……」

 

(ガクンッ)

 

「え?」

 

体が傾く。

これって――。

 

 気づくと、真っ暗。

 

「きゃぁぁー‼」

 ヒカリが穴に落ちた。

「向こうって言っても向こうとは限らないよ~♪」

 チシャ猫は煙に巻かれて消えうせた。

嫌な笑みと共に。

 

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