King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~影とアリス~

 

 

「おいしい鍵は見つかったよドアノブ君」

「本当かい?」

 ミッキーの言葉にのんびりとした口調で聞いたドアノブ。

「その前にちょっとだけ君の口を大きく開けてもらえないかな?」

 ドアノブはしばらく考えていた。

ヒカリは鍵が見つかったのなら開けるのも同然じゃないのか? と思ったが、あえて何も言わなかった。

「ああ、いいとも。本当はダメだけど鍵を見つけてくれたんだ。今回だけ特別だよ」

 そう言ってドアノブは大きく口(と言うか鍵穴?)を開けた。

 ミッキーはドアノブの口の中を除く。

「見つけた! ほらヒカリ、見てごらん」

 ミッキーがヒカリにドアノブの口(って言ったら変なので鍵穴)の向こうを見せてくれた。

「見えたかい?」

「野原が見える…」

 鍵穴の向こう側は広い野原。

 向こう側には、そこにあるのがおかしいと思えるような、不快な物が何一つ見当たらない。

 

 穏やかで、優しい。

 

「じゃあ、もっと向こうの、お花畑の前の大きな木の根もとを見てごらん」

 ミッキーの言ったその場所はすぐ手前だった。

 

「見た通り、アリスが居るだろ?」

「うん居た。寝てるけど。よかった、向こう側はハートレスとか居ないみたいだし」

 

 アリスの眠っている所はとても穏やかだ。

 さっきまで嫌と言うほど見てきた奇妙な生物が見あたらない。小鳥も花も蝶もとにかくうるさく文句を言わない。ぶしつけなほど降り注ぐ太陽の光もない。ただ自然がそこにあって、草花が無造作に咲き乱れあたたかな日差しの差し込む木陰。

 

「なんか向こう側って、この場所とはまったくちがう所みたい」

 後ろを振り返っては交互に見比べるヒカリ。

「あそこはアリスの唯一迷わない場所だからさ」

「迷わない?」

 ミッキーの言っている意味が分からない。

「そう、アリスの帰るべき所とでも言うのかな?」

「帰るべき所?」

「君とソラで言えば、デスティニーアイランドのことさ」

 

デスティニーアイランド。

私が居た世界はそう呼ばれている。その由来はまったく分からない。いつも居る場所だったから名前なんて必要ないって思ってた。

むしろ無人島だから道を聞かれたこともないし迷ったこともないし。

 

 唯一、迷わない場所?

 

「ってことは……アリスはここの星が――」

「『自分の居るべき世界』ってことだね」

 

 

 唖然。

 

 

 自分と似たような心境のアリスにちょっと親近感を抱いていたヒカリ。

 とっさに向こう側にいるアリスに勘違いしてごめんと短く謝る。

「なんだか信じられないよ、ここで会う人、みんな真面目じゃないから」

 ヒカリは眠っているアリスを眺めながらミッキーに言った。

「それにはちゃんと理由があるよ」

「え?」

「ここはアリスの【夢の中】だからさ」

 

「ちがう」

 

「え?」

 ヒカリのもらした言葉にミッキーは訳が分からない。

「ちがうってヒカリ、ナニが?」

 ヒカリはミッキーではなく鍵穴をずっと除いていた。

「向こうにいるアリスの、横に居る人!」

「アリスの横……彼女のお姉さんじゃないのかい?」

「アリスが言ってたお姉さんじゃない。合ったことはないけどそれだけは分かる!」

 

 

 向こう側はここのような独特の不快感はない

 

 でも、あの人だけなんだか――。

 

「⁉」

 

 うそ、

 今、目が合った⁉

 

(ハックション)

 

「うひゃ!」

 ドアノブのクシャミの勢いにヒカリは後方へ倒れる。

「いたた。何よいきなり」

 ドアノブに文句を言うがいつの間にかドアノブは寝息を立てて眠っている。

大きく開いていた口も普通の鍵穴サイズへ戻ってしまっていた。

「え、ちょっとドアノブ起きなさい! もう一度見せてよ~」

 どんなに大きな声を出してもドアノブは一向に起きる気配がない。

 

「どうしたんだい?」

 ドアノブを叩くヒカリにミッキーは驚いた。

「わかんないけど……さっき向こうの人と目が合ったような気がして」

「確かめるのにもドアノブがこの状態じゃなぁ」

 ミッキーはやれやれとドアノブを見ている。

「ヒカリが見たのは、アリスのお姉さんかい?」

 ヒカリは複雑そうにドアノブを見てからミッキーに口を開いた

「違う、あれはアリスのお姉さんじゃない!」

 

 アリスの話してくれた姉さん。

 きっと私とは正反対なすばらしい人。

 ちょっと厳しいけど、きっと優しい。

 

 その時。パッと周りが明るくなる。

 

「いきなり何?」

「ヒカリ、天井だよ」

 ミッキーの言葉に上を見る。

 照明が付いた場所。

「あ、また付いた……」

 天井の照明に明かりが灯っていた。

 その場所の周辺によく目をこらしてみると動く物がいくつか見受けられる。

 あの大きくてまるっこいのはおそらくハートレスだろう。低空飛行している赤や青に輝く物体が私の苦手な箒で……。あれは何だろう?

 三つの点にハートレスが群がっている。

 時々箒のように火や冷気の玉を打っている。

 時折輝く武器。

 

 もしかして、あれはソラ⁉

 

「何やってんの? ソラ達」

「さぁ?」

 天井に張り付いて明かりを付けて――。

 一致何をしようとしているのだろうか?

 疑問に思う二人。

「でも、今言えることはこのままじゃソラ達と鉢合わせになる」

「う、うそ~~⁉」

「おそらくあのベッドのあった場所の穴から」

 ソラ達はドアノブのちょうど真上にある扉の留め金を外した所だった。

 

「ど、どうしよう……」

「ヒカリ、あの柱時計を動かせないかい?」

「でも、テーブルまで登る時間が……」

 ヒカリの背後にそびえるテーブルは前まであったはずのイスがなぜか今はない。イスがあったとしても短時間で登ることは困難だ。

「忘れたのかい? キノコのこと」

「あ!」

 ポケットから小さなキノコのかけらを取り出す。

 リクに見せるはずだったキノコ。

 これであの生意気なリクにぎゃふんと言わせてやろうかと思ってとっておいた物。

「おしいけど……ええい!」

 あっという間に大きくなりヒカリは柱時計を動かす。

「こんな所に穴があるなんて…」

 そしてすぐにテーブルにある青い薬を飲みさっき見つけた穴へ駆け出した。

 

「あの部屋ってネズミでも居るのかな?」

「え? 何か言ったかい?」

「いいえ、なにも」

 ヒカリのつぶやきにミッキーは反応した(もちろんネズミに)

 

 

 柱時計の陰に隠れていた穴の向こうはヒカリが見覚えのある場所だった。

 帽子屋と三月ウサギの記憶が新しいティーパーティ会場だ。

ヒカリは悲劇の席をさけて座った。

タルトは出てこなかったがお茶が出てきた。

「せっかく身長のびるかと思ったのにあのキノコ……ところでなんでキノコのこと知ってるの?」

「キミを探しているときに見つけたんだ。ヒカリとアリスがちぎった形跡もあったから――それとヒカリ、あのキノコは身長以外にもすべて総合的に大きくなるんだよ……体重とか」

「うっ……」

 考えてみれば身長以外にリクのツッコミが入りそうな要素が沢山ある(体重とか)

 

「あの三人、何していたんだろ?」

 話を変えるヒカリ。

「見に行ってみようか」

 ミッキーはイスに腰掛けながら気軽に言った。

「そんなこと出来るの?」

 さっきまで逃げ回ってきたのに。

「さっきのソラ達が居た場所へ行くんだよ」

「ど、どうやって?」

 あんな果てしなく遠い、ましてや上へと登る距離をどうやって移動するのか?

「そこの扉をあければすぐだよ」

 ミッキーが指差したのは、さっきヒカリ達が出てきたばかりのバルコニーの扉の真下にあるドア。

 なんだか、理屈が合ってるような~そうでないような?

「行ってみるかい?」

 気軽にさそうミッキーはいたずらな笑みを浮かべている。なんだかチシャ猫のようだ。

「いく! 未踏の地があれば、ぜひとも行ってみたいじゃないの!」

 ヒカリはこれ見よがしな意気込みをミッキーに見せた。

 

 

 ドアを開けると路地裏のような狭い空間だった。

「天井ってもっと広々とした所だと思ったけど~」

 扉を開けるとどこかの路地裏のようだ。ここはアリスと出会った暖炉の接続部なので天井が結構独特なつくりとなっている。

「暖炉の真上だろうからね、煙突がある分頑丈にしないと……」

「構造はいいから広い場所に行きましょ」

 開けた場所に行くと真っ白い壁で覆われていた。

 しばらく行くと広々としたそこそこ真っ平らな場所に出た。明るい照明が二つきらきらと目が痛いほど間近に見える。

「これってスイッチとかないのかしら?」

 ソラ達が明かりを直接ともしてはいたが面倒ではないのか?

「魔法で灯すのならスイッチはいらないよ。もしくはどこかに仕掛けがあるのかもね」

「なるほど」

 さて、ソラはどこに……。

 ヒカリは真上(さっきまでそこが地面であった場所)を見る。

 

「なっ、何あれ!」

 ソラ達を見つけるより速くヒカリはあり得ないほど大きな物体を見つけた。

 ジャグリングしている缶の山積みしたような顔。

 あーもう! ハートレスの外見なんて説明するのむずかしいっ!

「もしかしてこれを待っていたのかなぁ?」

 のんびりとミッキーが真上を眺める。

「ミッキーはこの状況でよくのんびりできるわね」

「どうやらそうでも無いようだ」

 ミッキーが武器を出してあたりを見渡す。

 ヒカリもロックセプターを取り出すと自分の影がぐにゃりと歪んだ。

「!」

 ヒカリの影からハートレスが現れる。

 大きさはヒカリと同じぐらいの背丈、ソラ達のボスよりは小さい。玉乗りをしながらジャグリングをしている缶詰の顔がたくさん描かれているようなハートレスだった。

「大きくはないわね」

「ソラ達の所は陰が遠い分巨大なんだよ、ここは近いけど影が濃い」

「ってことは……」

「力の大差は……ない!」

 ミッキーが言い切る前に玉乗りハートレスが炎を放った!

「むしろ、こちらが上かもね」

 身体を傾け放たれた炎を見事に避けるミッキーの後ろでは――。

「やだやだ~火怖い~‼」

 ヒカリは炎にびびり、戦闘範囲外に逃げ出す。

「ヒカリ、もしかしてトラウマ⁉」

 ミッキーはファイアでヒカリの髪の毛を焦がしてしまったことを思い出す。

「う、うるさ~い!」

 どうやら、図星らしい。

「そ、そっか……」

 ミッキーは複雑な心境でそれだけ言うと、独りハートレスとの戦闘に専念した。

 

(ああ~もう! 何逃げてんのよヒカリ! シャンとしなさいっ)

 自分で喝を入れるが身体が動かない。

水の中といい、炎の魔法といい、地味に好き嫌いが増えていく自分に少しだけ泣けてくる。

 

「ヒカリ~このハートレスは魔法属性なんだ!」

 ヒカリの後ろではミッキーの声が聞こえた。

「魔法、属性?」

「間合いが広い分物理攻撃が不利! だから魔法で倒すしかない!」

「魔法で、倒す」

「炎の魔法に対抗できるのは何だい⁉」

 ハートレスの玉が炎を放ちミッキーを襲う!

 

 ミッキーは少し取り乱し全速力で逃げ出す。

 あの慌てぶりはヒカリの為にハートレスを引きつけてくれているようにしか見えない。

 

「炎、ほのお。火、ひ……そうか!」

 

 私の覚えている魔法は!

 ヒカリはミッキーの前に走り出て対峙した玉乗りハートレスへとすかさず魔法を放った。

 

『フリーズ』

 

 炎の玉が一瞬にして凍り付く!

「また僕の知らない魔法覚えて……」

 ヒカリの魔法にミッキーは驚き少しあきれる。

 ヒカリの魔法によって一気にあたり一面が薄く氷を張るがハートレスはジャグリングの炎で玉を解凍させた。

 そのあと玉に乗かかったハートレスは滑って玉から転がり落ちた!

「これはこれでよかったじゃん!」

 バランスを崩したハートレスを見てヒカリはミッキーへ笑顔で振り返る。

「フリーズは攻撃魔法じゃないのかい?」

 どうやら大きなダメージは見込めない(逆に敵が怒るかも?)

「対水中用だったからまだ考えてないの」

 ミッキーの影に隠れてヒカリはハートレスの動きを伺った(怒りそうだから)

「今頑張って耐火用魔法を考えてみる」

「その魔法で炎の克服は出来そうかい?」

 ミッキーはファイア事件を今でも気にしている。

「やってみないとわかんない」

「……健闘を祈るよ」

 ミッキーはまたハートレスを引きつける。氷の魔法を使ってみるが炎には力が及ばない。

(魔法はヒカリに頑張ってもらおう!)

 ミッキーは少しでも体力を温存させておくために回避に専念することにした。

 

 

 ヒカリは頭上の巨大ハートレスを眺める。少なくとも玉乗りハートレスよりは安全だ。

(天地逆転してるからゆっくり観察できそう)

 巨大ハートレスがジャグリングの一本を取り逃し真上に居るヒカリの近くへ当たった。ジャグリングが激突し、火の粉が飛び出した。ぶわっと熱気だけがほんの一瞬ヒカリの周囲をまとう。そして湿った空気が後に残る。

 重力が真上と全く逆なのですぐにもとの場所、ヒカリで言う真上の方に引っ張られていった。

 

「今の熱気、それと湿気」

 つぶやくと同時にヒカリは飛び出す!

「ミッキー! 新しい魔法、やってみるよ」

 そう言ってヒカリは出来るだけ高い所へ駆け登った。ソラが明かりを灯した輝く照明の上だ。

「いっきまーす♪」

自信あり気にヒカリは高々とロックセプターを上へ上げる!

 

(また広範囲魔法か……)

 ミッキーがハートレスの攻撃をかわしつつヒカリを眺める。

 あたり一面熱気が立ち込める。今度は身震いするような冷気が。

「ヒカリ?」

 まだ動いていないので詠唱途中らしい。熱気と冷気は交差するように絶えず発生している。

 しばらくしてヒカリが動いた!

 

『ミストラル・レイン!』

 

 そう叫んでロックセプターを玉乗りハートレスに振り下ろす!

「?」

 次の瞬間。

 

(ザアァア――ーッ)

 ハートレスの周りをバケツの水をひっくり返したような雨が降り注いだ!

 

「ついでにっサンダー!」

 ヒカリが唱えると同時に落雷が落ちる!

「おまけでスノー!」

 フリーズを唱えてあたり一面冷気が覆うとすぐに雨が雪へと変わった。

「これだけやれば炎なんて~」

 爽やかにヒカリがあたりを見渡すと――。

 

 あたり一面。雪で埋まっていた。

 

 ヒートアップしていたテンションがココでしぼんでいった。

「ミッキー⁉ どうしよ、そうだ助けないと!」

「誰を助けるんだい? ヒカリ」

「!」

「ココだよヒカリ、もう一つのあかりの所」

「あっ!」

 後ろを向くと向こう側の照明にミッキーが手を振っていた。

「ハートレスはサンダーあたりで消えたから非難していたんだよ」

「よかった。てっきり雪に埋もれたかと思った」

 雪はみるみる消えていった。発動ポイントに何もなくなるとすぐに魔法の効果は消えるらしい。

「さすがにアレは今後、耐火用には出来ないね」

「そう、みたいね~」

 大げさに出してしまったもののやりすぎだったのに気が付き、はにかみながらヒカリが言った。

 

(ヒカリの前でファイアは使えないようだな)

 

 そして、ミッキーは、少し傷ついていた。

 

「そういえばソラたちは?」

 ヒカリが上を向くと同時に――。

 

 巨大ハートレスが、凍っていた。

 

「あれって、私の⁉」

勢いよくミッキーに訪ねるヒカリ。

慌てるヒカリにミッキーは何も言えなかった。(まだ感傷に浸っている)

 あまりにも強力な魔法だった為だろうか、天地が逆転している場所に雪が届くはずが無い。

 

 しかし、熱気はちゃんと届いていた!

 

 イキナリ凍るのはソラたちで見たら、きっと不自然だろう。

「どうしよう~天井に居るのばれたら……」

 

「ふぁあ~。いったいなんだい? 騒々しい~」

「この声は……ドアノブ!」

 天井を見るヒカリとミッキー。

 そして。

『ガチャリ』

と、音がした――。

 

(パァン!)

 

「!」

 ヒカリの手の中のロックセプターが消滅する。

「なっ……なに?」

おそるおそる出現させると。

 

(シャン)

 

 鍵が、増えた。

 

「よかった~消えたかと思った」

「心配は無いよセプターは君の心の具現だから」

 

 ――どうやら影はいなくなったようだね――

 

「その声はチシャ猫!」

 ヒカリの声が誰かとかぶった。

 距離からしてソラだろう。

 

チシャ猫が現れたのはソラたちの場所にもかかわらず猫の声は天井まではっきりと聞こえる。

 

「なんだよ。アリスなんて居なかったじゃんか!」

 ドナルドが猫に向かって叫ぶ。

「アリスじゃなくって影なら居ただろ?」

「なるほど~」

 グーフィ―がのんびりと言った。

「じゃぁ、アリスはどこにいるんだ?」

「アリスはどこにもいない。影と一緒に闇の中」

「そんな……」

 

 

 ソラ達の会話を聞いてヒカリはミッキーに聞く。

「消えたって……元の世界に無事戻ったの間違いじゃないの?」

「ヒカリ、間違いなくここは彼女が主人公の世界だ、この世界から完全に消える事は不可能だ」

 ミッキーが腕を組みあごに手を添える。

 

「だったらアリスは――。ちょっと待って、主人公――アリスは、プリンセス?」

「思い出したかい、彼女がプリンセスだって事を」

 ヒカリが雷に打たれたような表情の横でミッキーが今まで気づかなかったのかい? と首をかしげる。

「もしかして私がドアノブの向こうで見たのは外の世界の悪い奴⁉……私がうっかりしていたからこんなことに!」

 過去、見落としていたことに頭を抱える。今のヒカリは後悔でいっぱいだ。

「君のせいじゃ無い、僕があのときソラ達に構わず行動していれば」

 悔しそうなミッキーの声にヒカリは勢い良く立ち上がる。

「ああっもういいわ! カイリの事といいアリスのことといい! 悪いのはミッキーじゃないわ。ハートレスを操る黒幕がいけないの!」

今の発言は大半が責任転換だが、この際それでもかまわない。ヒカリは全力で目の前の相棒を元気づけた。

あまりのヒカリの必至な顔にミッキーはいつものように微笑んでくれた。

「とりあえずこの場所に居る必要はなくなったようだね、ヒカリ」

 

「そう、ね」

 ソラ達が居なくなっていたので二人はこの場所をあとにした。

 

 

 カレイドスターはお茶会会場のすぐ側の森の中にあった。

「ごめんね、ミッキー」

「ん?」

 カレイドスターに乗り込む前、唐突にヒカリがミッキーに言ったのだ。

「私がこのワールドでミッキーを見つけた時、何も考えずに逆切れしちゃって」

 さっきまでいつものような振る舞いをしていたと思ったら珍しくシュンとしていることにミッキーは少し驚く。

「いいや、そのことはまったく気にしていないよ。むしろ、それが普通だよ大切な友達なんだから」

 ミッキーが肩を落として微笑む。

「さ、カレイドスターに乗り込もう」

「うん」

 

久々のカレイドスターは少しだけ懐かしい気がした。それもそのはず。操縦席に行くと座席は前と比べて雑然としていた。

「ご、ごめんよ、いつもより散らかってて……」

 ミッキーはヒカリの席の上にある地図と彼女の男装していたときの衣服を慌てて片付けた。

(必死で、私を捜してくれたんだ……)

 慌てるミッキーにヒカリは笑顔を取り戻した。

 

「私もミッキーにとっては大切な友達になってるのかな?」

「どうだろうね?」

「ええっ⁉」

「君は僕にとってとても大切な仲間だよ。すくなくとも今の時点ではドナルドとグーフィー以上にね」

「ミッキー……」

「君にとってのカイリだってこの船に乗ってからはそうだろう?」

「うん……うん! そうだ!それなのに……」

改めてカイリとアリスが消えたことに責任を感じるヒカリ。ミッキーは彼女の顔をのぞき込んで微笑んだ。

ヒカリはミッキーの笑顔に訳が分からず思わずたじろぐ。

「僕は、君が見つかったときはとてもうれしかったんだ。それは忘れないで」

微笑んだ彼の笑顔に、いつもの無邪気さがなかった。それ以上に熱意のこもるものがある。

ヒカリは思わず泣き出してしまいそうなくらい切ない気持ちになった。

「うん。わかった」

泣いていいのか笑えばいいのか――どういう顔をしていいのかわからず真顔でヒカリは返答した。

それを見たミッキーはいつものどこか可愛らしい笑顔に戻る。

「ちょっとらしくないこと言っちゃったかな?」

そう言って顔をそらして操縦席に座る。

「こうやって一緒にいられるのが僕は一番うれしいってことさ」

独りで何回かうなずくミッキーを見てヒカリはあえてこの質問をしてみた。

 

「ミッキーもさ、ドナルドとグーフィ―が危険な目にあったら……私みたいに怒る?」

 

 エンジンを起動させるミッキーが手を止めた。

「うん、絶対に」

 即答でミッキーが言った。

 

 ヒカリはそれを聞いてなぜかすごくうれしくなった。肩の力を抜いてため息交じりにこう言った。

「え~。そしたら私、止められるかなぁ?」

「どうだろうね。でも、もしそんな事があったら、出来ればヒカリに止めてほしいな」

「えっ? やだよー。私なんだかんだで、あの時本気だったし、止めようとしたら私、絶対本気出しちゃうよ?」

 ソラが私のこと知らないなんて言われた時なんて、本気でアイツに雷落としたからね?

 

「それじゃ、今のヒカリみたいに言ってくれよ『今倒すべき物は目の前の敵じゃない、裏で操っている何かだ』って」

「うっ……できればそんな事がなければいいな」

「僕も、それを願うよ」

 

カレイドスターに乗って、

ヒカリとミッキーの旅は続く。

 

 

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