King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「何言ってるんだよヒカリ。今はそんな場合じゃないだろ?」
二番街の広場でリクが言った。
「もうココは外の世界なんだ。お前とチャンバラして、いったい何の意味があるんだよ」
「私は本気だよ!」
ヒカリはロックセプターのロケットを入れ替えロック・イン・ロックブレードに変化させる。今の時点で魔法が使えないヒカリにはこの武器が唯一の戦力だ。
魔法ではない、自分の力量が試される。
「私がソラと違うことを証明してあげる!」
目の前に掲げるロックブレード。
キーホルダーからシャンと音がする。
「ソラと違うことなんて分かっている。それにヒカリ、俺は――」
正当防衛のために何気なくリクが自分の武器、ソウルイーターを出す。
同時に、ヒカリは駆け出した!
「っ!」
(キンッ!)
第一撃がはじかれた。
ヒカリは武器をすかさず引いてリクの背後に回り込む。
これを見越したリクは前方へ側転してヒカリから間合いをとる。
リクの靴がキユッと音がした。
「まだ俺はやるとは言ってないだろ?」
「問答無用!」
ヒカリは跳躍ざまに体をひねってロックブレードをリクめがけて投げつけた!
リク目掛けて迫り来るロックブレード!
目の前に迫るブレードにリクは……。
(キンッ!)
ヒカリ目掛けて打ち返した!
今度はヒカリに向かって自身の武器が迫り来る。
彼女には今、何も武器が無い!
標的が迫る。
目を見開くヒカリ!
(バシィッ!)
「うっ……」
右腕に鈍い衝撃を覚えつつ、ヒカリはしっかりとロックブレードを掴んだ。
リクは一瞬、険しい表情で彼女をにらみつける。
彼女は自分の武器を避ける事はしなかった。それどころか、避けることも不思議な力で消し去ることもせず。受け止めることしか考えなかったようだ。
彼女の真面目を通り越して体当たりな行動はソラに似ているものがある。これを見てるとつられて熱くなりそうだ。
「なんで避けないんだよ?」
リクが痛みに顔をゆがませる彼女に聞いた。
戦う気がまったく無い素振りの彼にヒカリはまじめに答えた。
「これは、私の武器だから!」
「使いこなせているのか?」
ヒカリの表情にリクが面白く無さそうに言った。
「さあねっ!」
肩幅まで足を開き、膝を曲げ体制を低くしてヒカリが両手でロックブレードを握る。
「っ……!」
ヒカリの面影にソラがかぶる。
「まだまだ、これからっ!」
掛け声と共にヒカリはリク目掛けて迫り来るが、いとも簡単に彼は攻撃を全て見極め、防ぐ。
それでもヒカリは攻撃の勢いを止めることなくリクに向かって攻撃する。
あまりにもまっすぐな攻撃に、リクに向かって挑む彼女の表情がソラの表情にかぶる。
(なんでだよ……。外の世界にこれたのに俺はこいつと戦って、いったい何をしているんだ?)
(ピリッ)
「?」
頬の一点が熱くなる。
しばらくしてツゥ……と何かが流れた。
ウソだろ?
ヒカリの攻撃は全てかわしたはずだ。
「これでも、反撃しないつもり?」
ヒカリが必死で息を整えながらリクに不敵に笑いかける。
(これは、オレが弱いのか……それとも)
リクは、この後の詮索はすぐに打ち切った。
「――後悔するなよ」
リクがソウルイーターを構えた。
「島から出た以上、もう後悔なんてしてないわ!」
ヒカリもロックブレードを構えなおす。
「勝負だ、ヒカリ」
リクが鋭い目つきをヒカリに向ける。
「これからが本領発揮!」
ヒカリも負けじと目を細める。
REDY GO!
二人は相手目掛けて真っ直ぐに迫る!
(ガキィイン!)
金属の鈍い音が響き渡る。
がたがたと武器を交えた後、同時に2人が跳ね、すかさず第二撃を繰り出す!
(ガキイィン!)
力はリクが圧倒的に強い。
ヒカリはリクの小さな隙を突こうとする。
交差させていた武器からヒカリが、退く。
次の攻撃。
「!」
リクが武器を頭上に振りかざすとほぼ同時に、ヒカリが体制を低くした突きを繰り出す!
(キンッ)
リクがとっさの判断で数歩後方へ退いて武器を交える。
「くっ」
リクの表情が固くなる。
(ヒカリに隙を付かれた。ならば!)
隙を作らないまでだ!
「っ……!」
リクが真正面からヒカリの間合いに踏み込み反撃してきた。攻撃を緩めること無くリクが迫る!
力が無い分ヒカリは技で勝負している。
しかしリクの体制を崩そうとしても、隙がなくてこれじゃあ無理だ!
でも、なんかいつも見ていたリクの戦い方じゃない。そんなことは考えている場合ではない。とにかくリクとの距離が欲しい。
さっきのロックブレードを投げる技は不利だとわかった。
投げる?
そうか!
(ガキィイン!)
勢いのままのリクの攻撃を受け止め――。
地面を蹴った!
舞い上がるヒカリ!
「!」
リクが頭上にいるヒカリを見て目を見開く。
暗くてヒカリの影しか見えない。
武器を振り上げるヒカリ!
ロックブレードの切っ先がキラリと輝く!
『ファイナルブレイク!』
「でやぁ――」
自分の体重を一気に真下のリクめがけて武器を振り下ろす!
これならば武器をはじき帰すことは無理。
(ガキイィィン!)
受け止めるリク。
ヒカリはその反動で飛び退き、リクとの距離を伸ばした!
「はぁ……慣れない事しないでよ、リク!」
「それは、こっちのセリフだ」
極度の緊張のせいか体力の消耗が激しい。
相手がリクなのが、やりにくい。
「降参か? 選ばれし勇者様?」
「だから私はっ!」
(ガキイィン!)
ヒカリは不意をついたリクの攻撃を瞬時に受け止める。
「私はソラとは違うって言ってるでしょ!」
交差された武器の間からヒカリが叫んだ。
「お前らは、似すぎなんだよ」
「え……?」
(キイィン!)
思わず力を緩めたヒカリから、ロックブレードが離れ、舞い上がる。
ヒカリの武器がカランと金属音を奏でると同時にリクはソウルイーターの切っ先をヒカリに向けた。
「勝負あったな」
「何が、そんなに似てるの?」
すねたようにヒカリが聞いた。
「仕草とか、動きとか、声とか……全て同じだ」
「でも、私はソラじゃない!」
ヒカリが叫ぶ。
「私、女だし……」
真っ直ぐにリクを見つめるヒカリ。
リクのソウルイーターの切っ先が震える。
ヒカリを傷つけないように、喉元のぎりぎりを保つ。
「もしソラの行動が分かっても考えていることとか分かっても、私はソラと同じじゃない」
(あんな、自分のことしか考えてないソラとはちがう)
私のこと忘れてる弟なんて!
「分かったよ。勝負に勝っても俺の負けだ」
脱力したように武器を下げてリクが折れた。
「ソラにはあったのか?」
リクがヒカリに聞いた。出逢った時の言葉の棘はもう無い。
「ううん全然、見てない」
怒ったようにヒカリが言った。
ヒカリは嘘をついた。『リクみたいに私を覚えてなかった』なんて言いたくなかった。誰だってこの状況でそう言えばもっと複雑な事態になる。
この問題は私に秘密がある。だから余計なことは言いたくない。
「こうやって話すの島の人でリクが初めてだよ」
「カイリは? 逢ったんだろ」
「……」
悲しそうに首を横に振るヒカリ。
「安心しろ、俺がカイリを目覚めさせる方法を見つけてやる」
「……うん」
多分、マレフィセントがプリンセスであるカイリの居場所を探しているはず。リクがカイリと会えるのはそう遠くない。
だったら、やっぱり……。
「ねぇリク、昔の事覚えてる? 私がリクに木刀もらった時のこと」
「ああ、忘れもしない、お前に負けた時のことは」
「じゃ、私がどうやってリクと戦ったかは……」
「なんだ? 俺の作った木刀で戦っただろ?」
「……そうだったね」
ヒカリはためらいがちにうなずく。
「それがどうした?」
(ゴーンゴーン♪)
鐘の音が響き渡る
「なんだ?」
リクがヒカリから目を離し鐘つき堂を眺める。
「あれは、ソラか? 何やってるんだ」
これが合図だとヒカリはロックセプターを出現させる!
「ごめんリク!」
「なっ?」
(ガツン!)
ヒカリはリクめがけてロックセプターを振り下ろした!
「い……っ!」
リクが頭を抑えて勢いよくヒカリを見た。
目の前の人物に何か言おうとして、しかし言葉を失い、開けた口が固まる。
「……誰だ、お前?」
リクが不思議そうにヒカリを眺める。
(やっぱり、そうか)
どうやら私に関しての記憶はロックセプターが関係しているんだ。
ヒカリは表情を殺し、納得したようにリクを見つめ、そして彼に指を突きつけて叫んだ。
「私はヒカリ! ライバルの名前ぐらい、もう忘れないでよっ!」
そう言ってヒカリは三番街の曲がり角まで駆けて行った。
リクは頭を抑えながらヒカリの後ろ姿を眺めた
「なんだ、今のは……うっ!」
顔の痛みに気づき頬についた傷をなぞる。
傷は浅いが、頬の皮が見事に切れていた。
これはアイツがやったのか?
あの女、強かった……のか?
「俺はさっき、何をしていたんだ?」
あのヒカリと言う女を見つけて、それから――。
思い出せない憤りと彼女に対しての謎がつのる。
(ゴーンゴーン♪)
「⁉」
鐘の音が聞こえ、リクは二番街を去った。
☆
この際なんでもいい。
リクがマレフィセントについていたほうが、リクが私のことを忘れているほうが――。
きっと、カイリが一番安全だ。
「リクお願い。カイリを、守って…」
私の事忘れていても。
ソラならきっと大丈夫。
なんだって、私の弟だもん!
(ゴーンゴーン♪)
三番街に二回目の鐘の音が聞こえた。
鐘の音を聞きながら三番街の扉を開くヒカリ。
(だったら私に出来ることって?)
ソラみたいに勇者って呼ばれてない。
リクみたいになにかしら前に進む道は無い。
カイリみたいにプリンセスだって決まってない。
けれど、私はもう、待っているだけじゃない。
だから、私は私なりに、この世界を守る。
「島を守るって言ってたくせに、守備範囲がかなり広くなっちゃったな~」
複雑な笑みを浮かべヒカリが空を見上げた。
星の少ない真っ暗な夜空に、ひときわ輝く星がまた一つ消えた。
ぐらりと膝を折るヒカリ。
「もっと、強くならなくちゃ……」
目を細めヒカリが三番街の入り口の横で突っ伏した。
三番街に二番街からの鐘の音が響き渡る。
同時に静かにハートレスが、ヒカリの目の前に出現する。
鐘の音がその余韻を奏でると同時にヒカリは立ち上がり、たった今襲いかかろうとしているハートレスに向かって武器を振り上げた。
数秒で入り口前のハートレスを一掃したヒカリは広場のハートレスに向かって走り出した!
「もっと、強くならなくちゃ!」