King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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Another07~Element material~

トラヴァースタウン3 短編

Another07~Element material~

 

 

 三回目の鐘を鳴らし、広場でソラがオポジェットアーマーと戦っている最中。

 

「ミッキー出発しよう! 早くオリンポスに行って修行したい!」

 ヒカリがカレイドスターの整備をしていたミッキーにそう言っていた。

「構わないけど、わざわざ行かなくとも、できるだろ?」

「練習しようにも三番街のハートレスはもう居ないみたいだし、ソラ達が居ると何かこう動きづらいから……」

 不満のこもった表情をミッキーに向けるヒカリ。

 

 そんなヒカリにミッキーは調整中のモニターから顔を上げた。

「彼らは倒すべくして生まれた物ではないんだよ」

 複雑な表情でヒカリを見つめるミッキー。

「元々は人であった抜け殻が何らかの形で実体化して生き物の心を奪う――それがハートレスなんだ」

 

「それぐらい、私だって分かっているよ」

「抜け殻である彼らは心を求める、それは心の持たない生き物であるがゆえの行いだ」

 

「ハートレスにも、目的があるんだ?」

「おそらく、それが目的であったとしても彼らには選択することは出来ない。肝心の心がないから……という仮説だけど、僕もよくはわからない」

 

「でも人の抜け殻が人を襲うのはなるべく防がないとハートレスが増えちゃうんでしょ?」

「人を襲う生き物だからこそ倒すことになってしまう、だけど元々彼らは光を失った闇の住人なんだ」

 

「闇の――住人」

 ヒカリは思わずリクの姿が頭によぎる。

 

 ――闇を恐れるな――

 

 リクが島から消える直前に言っていた言葉。

 そしてあの時、魔法を使っていた自分の姿。

 

「ねぇ、ミッキーは闇の魔法って使えるの?」

 突拍子の無い質問にミッキーは数秒固まった。

「は、ハートレスの話からいきなり飛んだね」

「それで、使えるの?」

 ミッキーを覗き込むように首をかしげるヒカリ。

「正直に言えば、いままでよく師匠の目を盗んで散々イタズラをして来たけれど……」

「来た、けど?」

 

「う~ん……闇の魔法とおぼしき物には手を出した事が無かったな」

 まるで後少しで全てを制覇する事が出来たような物言いのミッキー。なぜかこういう時の表情はソラみたいに童心に帰っている青年だ。

「もう、いい」

 いつもは柔らかい物腰でとても大人びて見えるのだが、この時だけは弟がそこにいるみたいに思えてヒカリはあきれ返る。

「冗談だよ、闇の魔法は古来より決して触れてはならないものなんだ」

「触れては、ならない……」

「マーリン様が魔法禁止令を出したのも無理もないよ。でもなんで今そんなことを? 何か心配なことでもあるのかい?」

 ミッキーが心配そうな眼差しをヒカリに向け、のぞき込む。やはりこういう時の彼は頼りになるし、なによりその気遣いがとても嬉しい。

 ヒカリはのぞき込む目に答えずゆっくりと歩きだし、ふと止まって口を開いた。

「闇の魔法を使ったときに思ったの。ロックセプターじゃなくって私が危険な存在なんじゃないのかって」

 ヒカリがミッキーの座っている座席の後ろにもたれる。

「だから私は、私自信が災害を招く者になるんじゃないのかって思った」

「ヒカリ、あれは僕が万が一の時って……」

「うっすらだけど、何となく覚えているの、あの時のこと」

 ヒカリがはっきりとミッキーに言った。

 

「あの時って?」

「私が、闇の魔法を使った時の呪文……」

 

 

「ダークネス・バースト」

 光の力が無い、ロックセプター無しのバースト。

 闇の力を有する魔法。

 

(パァン!)

 

 胸元で何かが壊れる音がした。

 マフと共有していた視界が真っ暗になった。

 おそるおそる目を開けると――。

 

 

「目が見えるようになっていた」

「うん……ちょうどマフが私のところに吹っ飛んできたのもこの時だったの」

「ヒカリは自分の放った魔法が完全に見えなかったんだね」

「うん。だから私、とっさに思った変な魔法使っちゃって――」

 

「魔法、とはあらゆる世界を取りまくモノの一部なんだ。それに、光の魔法があれば必ず闇の魔法がある『光の魔法』は普段『ファイア』や『ブリザド』など個々の系統の中に属するモノなんだ。発動した際に輝きを放つモノすべてがね」

 

「魔法のことについてはできたもの『使ってる』ってことしかまだ分からないよ」

「初めて使ってすぐできる人はたまにいるけど。ヒカリのように『光』という輝きの属性を完全な魔法として使う人は珍しい。光の魔法としては回復術を専門とする『白魔導師』という人がそれに近い」

 

「回復魔法どころか、目が見えなくなったよね」

自分の魔法にあきれるヒカリ。ミッキーもつられて苦笑いし、気をとりなおしてご教授に戻った。

 

「でも闇はそれとはまったく違う。闇はあらゆるモノを呑み込むモノ。いにしえより伝わる最も古い魔法だと言われている。しかし、そもそも属性というよりも次元が違う。君の使うハートレスで絶大な効果のある魔法『バースト』も次元が違うと言えるけど、まだまだ魔法の事を知らないヒカリには闇の魔法を使ったなんて偶然としか思えない」

 

「……うん」

「僕はいろいろと師匠にイタズラをしてきたけど、闇の魔法に関しては全く無知な分類だ。光と闇は遠くてもとなり通しの関係なんだ。光はあらゆる者に精通し、闇は全てのものを呑み込むからだ」

 

 教授のような口調から今度は研究者のような口ぶりへと変化した。

 

「その分類は気の遠くなるほど広くて……だけど逆に裏を返したように浅い。なんだか師匠みたいにデタラメに難しいこと言ったけど、わかってくれるかい?」

「うん、なんだかデタラメな事を良いようにくっつけたような言葉だったけれど、頭がいい人ならきっとそれで分かったような気がする」

 

「それじゃ、石頭の師匠には悪いけどおそらくそれでなんとかなるね」

 ぎこちなく笑うミッキー。

(お師匠さまってそんなに固いんだ……)

 

「つまり、すべては二極に別れるモノなんだ。だから一度しでかしてしまった失敗は偶然なんだから、あまり心配するような事じゃないよ」

「ミッキーみたいに?」

ミッキーは驚いたように目を丸くして、やがて満面の笑みを見せた。

 

「今だから言えるけど……僕も、その魔法を使って昔みたいにしかられてみたいよ」

 今まで探し続けていた答えを偶然生徒に言われ、驚いた時の先生のようだ。その先生が、今度はみるみる顔が青くなった。

「あ……ゴメン、僕がそんなこと言ったなんて師匠には内緒にしておいてくれよ」

 さっきの言葉は失語だったとばかりに早口でまくしたてるミッキー。

 

「ヒカリも我流の魔法は師匠の前でむやみに使わない方が良い……後が怖いから」

「ねぇ、それって私の魔法が全否定されてるって意味じゃん!」

「いや、ホントに、怖いから……」

 いつも以上に低い声のミッキーはまさに今、本音を吐露している。

「そんなに怖い人なの?」

「まぁね……後にも先にも僕にとっては世界の中で『王妃の次』に強い存在だからね」

「なにそれっ!」

 

 意中の人の次と言われても、いまいちわからないが、猫背で縮こまる一国の王様よりも強い人を想像してヒカリは少し吹き出した。

 

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