King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
たった今。
崩れるようにして倒れたクラウドを見ていたソラは、場所は違えど、同じくして驚いているミッキーのように唖然としていた。
「クラウドが……」
さっきまで平然としていたクラウド。
まだ、これからだと思っていた。
困惑気味のミッキーの表情が、たった今のソラ自身の感情を映し出すかのようだった。
しかし、その後ソラはクラウドの側にいるミッキーの表情を見て驚いた。
(ミッキーが笑った……)
その表情は、穏やかで優しく、そして威厳さえ満ち溢れるような――。
ソラ自身には考えられないような何かがあった。
☆
「ソラ」
呼び止められた声にソラは期待半分緊張半分で振り向いた。
連戦のせいでミッキーの服は少し汗ばんでいた。
「その服、暑くないか?」
何気なく行ったソラだがミッキーの顔が少し引きつったように見えた。
「それ、試合中に僕がクラウドに言った言葉と一緒だよ」
「あ、そう言われてみれば。クラウド暑そうだな」
「だろ?」
和気会々と笑いあう二人。
「ところでなんで呼んだの?」
ソラがミッキーに聞いた。
「これに勝てば今度は僕と試合になるね」
微笑しながらも緊張した面持ちのミッキーにソラは少し驚いた。ミッキーはソラの表情になおも困ったように笑いかける。
「試合中に話す事じゃないと思ったから始めに言っておきたかったんだ」
「なにを?」
「何があっても迷わないでほしい」
微笑とも緊張ともいえない彼の表情にソラは言葉が出なかった。
「それだけだよ」
そう言ってミッキーはソラの横を通り過ぎた。
「な、なんだよ? よくわかんないって!」
ソラがミッキーに叫ぶが彼は何も言ってくれなかった。
今のミッキーの表情。
次の試合で何か……ある、のか?
☆
「なぁ! なんだよ迷うなって?」
試合寸前。
壇上の上でミッキーを目の前にしても、ソラはミッキーの言ったナゾの言葉について聞き返す。
「ソラ、もう始まるよ!」
ドナルドの声とともに試合が始まった。
「それじゃ、三人ともいっぺんに相手するよ!」
まだ言いたそうなソラに向かってミッキーは走り出す。
横にいたドナルド、グーフィ―は回避しないソラを思わず引っぱり出そうとしたが二人とも逆方向にソラを引っ張る。
結果。
(ガツン!)
三人は吹っ飛んだ。完全な三つどもえだ。
ミッキーは次の攻撃はしなかった。
ただミッキーは起き上がる三人を見ている。
いや、ソラを見ていた。
「いたた……大丈夫二人とも?」
グーフィ―が始めに起き上がる。
「三人一緒に吹っ飛ばすなんて……さっきのは魔法じゃないようだなぁ」
ドナルドが起き上がりつつ分析を始める。
「ソラ?」
「大丈夫? ソラ」
無言のソラに二人は声をかける。
しばらくぼーっとしていたが、やがて勢いよく首を振るソラ。
「うん全然。けど、やっぱスッゲーなミッキーは」
ソラの様子にミッキーは少し戸惑っていた。
(記憶が戻ってない?)
リクはロックセプターで叩いたら私の事を思い出した。
あれは、偶然? もしかしてこれはセプターじゃなくってロックブレードだから?
戸惑いを隠すようにミッキーは起き上がるソラに向かって走り出す。
「!」
驚くソラの前にグーフィ―がソラをかばうように割り込む。
「幅が大きい武器はクラウドで攻略済みだよ!」
ミッキーはグーフィ―の盾を踏み台にして飛び上がる。
「ファイナルブレイクか!」
ソラが叫ぶ。
「じゃあ魔法だ!」
ドナルドが空中で落下し始めるミッキーに向かってファイアを唱え放たれた魔法が確実にミッキーを捉える。
「フリーズブレード!」
冷気のバリアでファイアが一瞬にして霧と化す!
そしてミッキーはロックブレードをドナルドに向かって振り下ろした。
(ガツン!)
ロックブレードがドナルドの杖に触れると、たった今、真上に発生した霧の中からなんと、雪の塊が振ってきた。
(ドサドサッ!)
「グワワァ~~ッ!」
「ドナルド!」
ソラとグーフィ―が叫ぶ。
「う、うごけない……」
雪だるまと化したドナルドは動けない。
「今助けにいくっ!」
ソラがドナルドに向かって走る。
ソラを止めに入ろうとしたがミッキーに向かってグーフィ―が回転しながら迫り来る。
「回転、か……」
そうつぶやいたミッキーはグーフィ―の回転攻撃をガードしつつ、ロックブレードの柄についている鍵をある方向へ切り替えた。
ロックオン。
属性切り替えを施すことにより武器自身に魔法のような様々な属性を付ける事が出来る。
このロックオンした武器を振り回したり叩いたりして武器になにか衝撃を与えることで魔法のような力を繰り出している。
「タイフーン・ブレード!」
ミッキーはグーフィ―に向かって投げつける。円を描くロックブレード。その軌跡にはいくつもの竜巻の渦が連なる。
「この攻撃、ソラがよくやる技だよ」
そう言ってグーフィ―はロックブレードを弾く。
(ガツッ!)
用意に弾かれたロックブレードはグーフィ―の回りをぐるりと旋回してミッキーへ帰還した。
ミッキーは自分の武器を見事にキャッチしてグーフィ―に言った。
「もう逃げられないよ、グーフィ―」
「アッヒョ?」
気がつくとグーフィ―の回りはいくつもの竜巻が完全に包囲している!
「ハリケーンラッシュ!」
ミッキーが武器をグーフィ―に向ける合図とともに竜巻は中心で合体した!
(バシュッ!)
「グーフィー!」
ドナルドに向かってファイアを唱えたソラが竜巻で舞い上がるグーフィ―を見て叫んだ。
その時、叫んだソラの手元が狂い、ファイアの加減が『いいかげん』になったため一瞬にして雪が解け、ドナルドのしっぽに火がついた。
「グワワ~!」
「あ、ゴメン!」
あわてて火を消そうとするソラ。しかし、ドナルドは行ったり来たりで一向に捕まらない。
そしてドナルドも発動中の竜巻に飲まれた。風の勢いで幸い炎が消えたが今度は回転地獄だ(災難)
竜巻が消えた頃には二人はノックアウト。
「あとはオレしかいない、か――」
ソラがミッキーを見つめる。
何者にも恐れない真っ直ぐな目だ
(やっぱり、私への記憶は戻っていないのか)
落胆があるも逆に『ヒカリ』である戸惑いが消えた。
「これで一対一。クラウドと一緒だ」
楽しそうにソラが言った。
しかし構えているキーブレードが震えている。
「ドナルドとグーフィ―の分まで頑張るぞ!」
そう言ってミッキーに向かって走り出すソラ。
(キィン!)
ソラの攻撃を受けとめ、驚くミッキー。
(攻撃が、さっきよりも強くなっている)
さっきまでの攻撃とは比べ物にならない。
なるほど――。
仲間を思う強さが、ソラの最大の武器。
「まだまだぁ!」
「くっ!」
島がなくなる直前、ソラと戦った事がよみがえる。真っ直ぐに攻撃を仕掛けてきたソラ。その瞳がミッキーを装う『ヒカリ』にはとても眩しい。あまりの迫力に気が引けて思わず魔法に頼りたくなってくる。
「キーブレードの勇者。悔しいけどキミにはぴったりだよ」
「え、今なんて――」
攻撃を止めた隙をミッキーは逃さなかった。
(ガツン!)
吹っ飛ぶソラ。しかし、空中で体制を立て直して綺麗に着地する。
「なんだよ、いきなり何か言いだして!」
「何があっても迷わないでほしい。そう言ったはずだよ」
訳が分からないソラは口をとがらせる。
「これが終わったら、教えてくれるよな?」
「……ああ」
真剣なソラの目にミッキーはこの答えしか言えなかった。
「約束だぞミッキー」
ソラはそう言って晴れやかに笑った。
「それじゃ行くよ、ソラ」
「これでトドメだ、ミッキー」
二人の行動は一緒だった。
「ソニックレイヴ!」
二人の姿が輝き、素早く一直線に移動する。
(キィン、キンッ)
数回澄んだ音が響き渡った。
輝きがぶつかるとともに一瞬だけ二人の姿が見えて息の合った攻撃に二人はまるで剣の舞をしているように見える。
それだけ攻撃の息が合っている。合わせているわけではないのだが、技の攻防と息の合ったコンビネーション、どれをとっても二人の攻撃はウリフタツなのだ。
攻撃はなおも続き――。
「なんだか」
ソラがつぶやく。
「かがみを」
次いでミッキーが言葉を引き継ぐ。
「見ているようだな」
「見ているようだな」
はからずも重なる声に二人はムッとする。
息の合った会話がお互い少し気にさわる。
(こんな時に魔法があったら……)
ミッキーがそう思った時、
(ドン!)
目の前にファイアが!
(考えていることも、ほぼ同じか!)
ファイアを受け止めて思わずグラリとよろけ、思わずロックブレードにもたれる。
「⁉」
気が付かないうちにドナルドとグーフィ―との戦闘で体力が限界寸前になっていた。
(ヤバイ。次で、動けない)
焦りを感じるミッキー。
まて、落ち着くんだ。
私は今『ヒカリ』じゃない。
ミッキーなんだ。
こんな状況下で、
もしミッキーが考えることなら――。
ソラは再びソニックレイヴ。
対するミッキーは――。
(フッ……)
「⁉」
(ミッキーが消えた⁉)
と、思った直後――。
ガツッ。
「えっ……?」
前のめりになるソラ。
そして、ソニックレイヴの勢いがあって……。
ズザザザザザザザザアァ~……(パタリ)
ソラが動かなくなった。
観客席は何が起こったのかがわからずシンとしている。
(今までミッキーになりきろうと思っていたから忘れていたけど)
ミッキーは壇上にいる動かない三人をゆっくりと見つめる。
(私と違う所だけを見てきたけど)
最後に観客席をぐるりと見渡しある場所を見つめニヤリと笑った。
(こういう事も、ありだよね?)
ミッキーの勝利!
分けもわからず勝者をたたえる観客。
その中にはこの勝利を複雑に受け止める人物が。
「ヒカリ……そりゃあ、もしかしたら僕も同じ事をやるかもしれないけどさ~」
観客席にいるミッキーは頭を抱えていた
ついさっき、
ヒカリがソラに何をしたかと言うと。
『ソラの足を引っかけた』
それだけだ。
(別にずるい事ってないよね? ミッキー)
だって実際、ミッキーと一緒に過ごしてきて、なにも彼は『カッコイイ』ばかりじゃなかった。
違う所を演じてきた自分は、
なにか少しだけ人っぽくない所があって、
真っ直ぐな目を見つめる事が出来なかった。
だって実際、純粋な所は私がどうしてもソラには叶わない。
「残念だったね、ソラ」
ある程度見苦しくない程度に笑い、ミッキーは三人を後に壇上を去った。
去り際、観客席にいるであろう彼に向かってヒカリは思わず舌を出していた。
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