King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
~マフの日記~
シドさんのカウンターにはさっきまでレオンさんとユフィさんが愚痴を言いに来ていました。
どうやらこの前のコロシアム予選の話でしょうか、めずらしくレオンさんが楽しそうにたえずシドさんに語っています。
ユフィさんがたびたびヒカリさんの事をしきりに私に聞いてきましたが、私もヒカリさんから連絡が無いので何も言えませんでした。
二人は私にミッキーさんと言う少年の話を聞かせてくれました。
キーブレードに似た武器をふるい、魔法とは違った大技を繰り出し、一人で立ち向かう少年。
おまけに武人のような仏頂面は微塵も無く、笑顔で温厚で微笑みを絶やさない。
「アイツが出るたび『王子様』って叫んでた観客も居たのよ! どう思うマフ⁉」
ユフィさんが私に不機嫌そうにおっしゃるのでどうしていいのか分かりませんでした。
話すべきか話さないでいていいのか私は思わずシドさんを見ました。
シドさんはお二人に気づかれないような位置で
手をピッと垂直に立てて無言で私を見つめています。
私はそれがストップの合図だと数秒経ってから気づきました。
「王子様、ですか。もしかしたらそうだったりするのかもしれませんね」
「なぁーに世の中にはお前らよりも強い奴が居るってこったぁ!」
私とシドさんの表情になにか疑いの目が向けられましたが……私たちは笑顔の一点張りでした。
「あ、ここにいたの? 二人ともすぐに来てくれない?」
エアリスさんが息切れ寸前でアクセサリーショップを訪ねてきました。
「どうした、エアリス」
レオンさんがエアリスさんに聞きました。
「三番街にハートレスがいっぱい居るの! 二人がここを離れていた時からもう大変だったんだから」
「そっれは大変! 今すぐ急行だねっ☆」
「行くぞ、ユフィ」
「アイサ~!」
二人はお話を中断してアクセサリーショップを飛び出していきました。
「ナイスなタイミングだ、エアリス!」
「なんのことシド? とにかく私も行ってくるわ」
エアリスさんは、ほっとしたようにアクセサリーショップを出て行きました。
やはり、一人で戦うよりもみんなと協力して戦うことはとても安心します。この前私はヒカリさんに納得のいく新たな武器を作ることが出来ました。
しかし、自分だけの力ではあのような良い武器は作れなかったと思います。いままで私は良い素材をそろえる事が出来れば最高の武器が出来るのだと思っていました。でも、それは全然違うってこと、よく分かったのです。
使う人の気持ちを考えた上で作らなければ、良い武器は作れないのです。
しばらくして次にやって来たのはソラ、ドナルド、グーフィ―さん達でした。
「なぁ! シド聞いてくれよ~。俺たちすっごく強い奴と試合したんだ!」
「おうおう、ぜひ聞きてぇなぁ~」
「俺たちそいつに結局負けちゃったけどさ、なんだかすっごいっていうか、似ているっていうか……そう、全く同じっていうかさ!」
シドさんはガシッとソラさんの頭をわしづかみにしてわしゃわしゃとかきむしりました。
「なっなんだよシド~」
「まぁ、おちつけやダンナ」
「だ、ダンナ…?」
「で、そいつの名前から聞こうじゃねぇか?」
シドさんの表情が何かイタズラを仕掛けたガキ大将のように見えたのは言うまでもありません。
「えと名前がミッキーって……」
「まてダンナ、なんか来る」
遠くでバタバタと近づいてくる音が聞こえた。
そして、
(バタン!)
「シド! ミッキーが!」
思わず鉛筆を取り落とすマフ。
これはもはや日記を書いている場合ではない
「ひ、ヒカリさん……」
マフがゆっくりとヒカリの視線をソラたちのほうへ誘導させる。
「あっ……!」
やっとソラ、ドナルド、グーフィ―を視界にとらえ目と口を大きく開いて絶句するヒカリ。
「なぁヒカリ、今ミッキーって言ったよな? アイツがどうしたんだ?」
「し、修行のたびに出ちゃって、ここに来たのか聞きに来たんだ……」
『なんだって~~』
三人が同時に叫んだ。
「もしかしてトラヴァースタウンに来ているかも知れないからここに来たんだけど……」
「オレ達もミッキーの事探すよ! 仲間と別行動なんてオレだったら絶対にイヤだ!」
「あ、待ってよソラ~!」
「もうっ、僕たちだって王様を捜しているのに!」
三人トリオはアクセサリーショップを飛び出していった。なんの手がかりも聞かずに飛び出していったのは不幸中の幸いだった。
「で? その『ミッキー』は置いといて、お師匠がどうしたんだ?」
ニヤリとした笑みをヒカリに見せシドが聞いた。
シドはたいてい暇な時にマフの彫金をそばで珍しそうに見ているため、ヒカリのロケットの性能を唯一知っている人物だった。
楽しそうなシドの声とは裏腹にヒカリは消え入りそうな声でこう言った。
「ミッキーが……いきなり倒れた」
「なんだって⁉」
「私、今どうしたらいいのか分かんなくって、さっきなんとか自力でここまでたどり着いて……」
ぺたりと地面に足をつけるヒカリ。
途方に暮れる表情が痛々しい。
「何やってんだ!」
いきなり怒鳴るシドにヒカリはビクリと飛び跳ねる。
おそるおそる見上げるヒカリ。
口を開いては声を発することをためらうヒカリにシドはまいったとばかりに頭をかきむしり側においてある工具を引っ掴む。
「お前がそんなんじゃ何にも始まんねぇ! まずはマーリン様の所に行くんだヒカリ」
「っ……うんっ」
立ち上がり衝動的に目にこみ上げて来た涙をごしごしと拭ってヒカリは走り出した。
さっきまでの戸惑いは無く、彼女の行動はとても素早かった。
シドは安心したようにさっきまでそこにいた彼女にうなずきマフを見る。
「マフはワリィが店番だ。ソラ達には適当に言っといてくれや」
「はい!」
そう言い残しシドが彼女の後を追うように走り出す。
しんと静まり返ったアクセサリーショップ。
マフはふたたび日記を描き始めたが、嵐のように消えて言ったみんなの姿を思い浮かべるたびに手が止まった。
「なんだか、みんな大変そうです……」
マフはついに鉛筆を投げ出して不満そうにカウンターに頬杖をついた
☆
シドは驚くべき速度ですぐにヒカリの後に追いついた。
「おれは船に行ってやれる事はする、だから安心しな!」
「ありがとう、シド!」
シドはカレイドスターの止めてある扉を。
ヒカリはその側の三番街の扉を。
二人はぶち破るように開けた!
(バアァン!)
ヒカリは向こう側のなにかを跳ね飛ばしたような気がしたが、今の自分にとってそれはほんの些細な事にしかすぎなかった。