King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「ゴメン! ドナルド」
「もう、僕って、いっつもこんな役回り!」
目の前の人物に憤慨するドナルド。
「でもミッキーが見つかってよかった~」
ソラがにっこりとミッキーに笑いかけた。
こうなってしまったのは今からたったの数秒前。
一番街への扉をドナルドが手をかけたその時、
(バアァン!)
向こう側から扉をぶち破るように開けた人物によってドナルドが豪快に飛ばされた。
「グワワァ~!」
ドナルドが飛ばされ、
「え、ちょっと⁉」
ソラがドナルドのヘッドタックルを受け止め。
「アヒョ?」
それを見たグーフィ―がつまずいて、
(ドタッ!)
倒れて今に至る。
「グーフィ―もちゃんとソラを受け止めてよ!」
「ごめんごめん~」
マイペースなグーフィ―にまた憤慨するドナルド。
この二人はさておき、
「ところで、なんでアンタがココにいるのよ?」
ユフィの質問にミッキーが口を開く前にソラが素早く割り込んだ。
「ミッキーはヒカリ達と一緒に旅してるんだ! そうだよな?」
「うん、そうだったよ」
ミッキーは向きなおるソラに過去形で答えた。
「ちょっと待って? ヒカリと一緒にいたミッキーって――」
「そんでさ、ミッキー。なんで一人っきりで行くんだよ! ヒカリが心配して探しているんだぞ!」
ユフィの言葉をさえぎるソラ。
ソラの単刀直入な質問にミッキーはユフィに「ゴメンね」と目配せをしてソラに言った。
「後でヒカリにはごめんって言っておいてくれないかい? 僕、今度は自分だけでどこまで行けるのか試したいんだ」
「なんだよ! それにヒカリだけじゃない、俺たちも心配してるんだぞ!」
「分かっているよ。でも僕はこの前優勝できて自分に自信がついたんだ。だから今度はもっと強くなるために修行して、次の試合でみんなを驚かせたいんだよ」
そっぽを向いてすねるソラ。
「なんか、リクみたいな事言うなよ」
「……」
ミッキーはもの言えぬ表情を隠すようにフッと微笑して、ソラに近付いてこっそり耳打ちする。
『内緒だけど、実を言うと一人じゃ寂しくて、ヒカリ達の後にこっそりついて行くつもりだよ』
そう言ってソラからはなれ、人差し指を唇に持っていく。
「な、黙っていてくれよ?」
イタズラっぽく微笑むミッキー。
しばらくしてソラがプッと少しだけ吹き出して表情が一変する。
「……そーゆーことか! それなら内緒だよな!」
「うん、内緒だよ、ソラ」
ミッキーはソラにそう言って数歩下がり、くるりと回れ右をして走りながら叫んだ
「それじゃ僕は急いでるから! みんな、また合おうね!」
「ああ! またな~」
「あっ! ちょっと待ちなさいって!」
ユフィが何かが引っかかるような表情で叫んだが、どこまでも爽やかな笑顔を振り撒き走り去るミッキーを見ておもわず言葉を失う。
長い髪が走るたびにフワリと上下に揺れるさまが、なんだかやっぱり王子様のようだとユフィは思った。
(な~んて、そんなことダレが言うもんですか!)
勢いよく首を横に振るユフィに実はずっと横にいたレオンが不思議そうに眺めていた。
グーフィ―がまだ手を振っているソラに聞く。
「ねぇソラ、ミッキーはさっき何って言ってたの?」
「んー? 内緒!」
「気になるじゃないか! 教えろよ」
「い・や・だ!」
「もうっ!」
☆
マーリンの館まで走ってきたミッキー。
「フリーズブレード!」
ロックブレードを湖に突き立てると湖面が一気に凍る。
「よし!」
助走で勢いをつけて湖面を滑り抜けた。
「マーリン様! ミッキーが!」
ドアを勢いよく開けて叫んだのはヒカリだ。
ドアを開けた瞬間、変身を解いたヒカリ。変身時の銀色の輝きの余韻がヒカリの周りでキラキラ跳ねる。ちなみに、さっきの三番街での変身は、変身時の輝く光を一番街の扉によってうまくごまかしました(お見事!)
「やはり、来たようじゃな、ヒカリ」
「ミッキーが倒れて、いったいどうしたらいいのか、わからなくって」
息が荒いヒカリ。急いで来た事もあるのだが、さっきまでのソラとの会話でいつユフィにバレるのか緊張でドキドキしていたのだ。
「王様を見たときから察しておったよ、この時がくる事はな」
「じゃあなんで教えてくれなかったのよ⁉」
この時、ヒカリのドキドキが吹っ飛んだ。
(分かっていたのなら事前に言ってくれてもいいじゃない!)
と、心の中で言うヒカリ。
「予言と言う物は実に曖昧な物、ときには外れる事もあるからじゃ」
マーリン様には心の叫びはちゃんと聞こえているらしい。
「じゃあどうすればミッキーが助かるの⁉」
「まずは、始めから話してくれないと、こちらがわからないのぅ?」
「え……?」
「それと、落ち着いて話してくだされ」
マーリンがポットとティーカップを魔法で出して言った。
「あっ……」
魔法使いはなんでも知っているものだと思い込んでいたヒカリはマーリンの言葉でおもわず顔を赤くした。
☆
「よぉ大将、お加減はどうだ?」
シドが格納庫のドアを開けたのは、ヒカリがドナルドに謝罪していた頃だった。
「見ての……とおりだよ」
ベッドで横になり肩で息をして微笑む。
笑ってはいるがかなり衰弱している事が見て取れる。
「おいおい、いったいどうしちまったんだよ?」
「風邪、かな? ちょっと頑張りすぎたのかもね」
「何言ってやがんだよ! ヒカリが心配するまで頑張ってどうする⁉」
「ゴメン、僕にはもう時間がないんだ」
「……ぶっ倒れている時間があったら早く治せ」
「分かってる、つもりだよ」
シドはため息をついてミッキーに背を向けドアまで歩いていった。
「もう何も話すな、俺はお前さんを治すために来たんじゃねぇ」
そしてミッキーに向かって軽く振り返る。
「お前さんよりも瀕死なこの船を直しに来たんだからな」
「シド……」
「なんせ、時間がないんだろ?」
横顔でニヤリと笑うシドにミッキーは目を閉じてただ片手を上げただけだった。
「船はまかせろ!」
勢いよく飛び出すシドにミッキーは声にならない声で『ありがとう』と言った。
しばらくして、
(ドン、ガン、ガシャァアン!)
「うっ……」
追い討ちをかけるような金属音にカレイドスターよりも自分の身体がとても心配になってきたミッキーだった。
☆
「ミッキー、マーリン様連れて来た!」
まもなくヒカリとマーリンがミッキーの前から瞬間移動してやって来た。二人がやって来てすぐに恐ろしい金属音が聞こえなくなった。うっすらと目を開けるミッキーは、この時マーリン様に神様の後光が見えた。
「うわ、汗びっしょり! 大丈夫ミッキー⁉」
ヒカリも天使に見えた(危ない)
「すいません、わざわざ来てくださって」
肩で息をするミッキーにマーリンはミッキーの額に手を乗せる。
「いいんじゃよ、ワシに出来る事なんてこれくらいじゃ」
「ありがとう…ござい、ます――」
ミッキーはゆっくりと目を閉じた。ほどなくしておだやかな寝息が聞こえる。
「よかった。昨日からミッキーずっと苦しそうだったから……」
「さっきまでと比べればよくなったようにも見えるが、まだ良くなったわけではない」
「でもでも、マーリン様が来てくれたらミッキーなんてすぐ元気になるよね?」
「……これは」
「?」
マーリンがゆっくりと手を離しヒカリにむかってあっさりと言った。
「これは呪いですな」
「……へ?」
今、目の前の魔法使いはなんって言ったの?
ノロい? 鈍い? のろい――。
しばらくしてヒカリはある言葉に行き着いた。
「の、呪い~⁉」
「シィ~王様が起きてしまうぞ」
ヒカリの目の前に迫るマーリン。
マーリンの顔が恐い。
「で、でもなんで呪い? ただの風邪……」
はっとしてミッキーを見つめるヒカリ
風邪?
この場所で私がミッキーと初めて出会ったとき、私は瀕死で。
でも、あのとき自分は風邪ひいたって思ってた。
マーリンはヒカリを見つめたまま何も言わない。
「じゃ、じゃあマーリン様その呪いの解き方は?」
「この手は専門外じゃ」
(何を言うこの人は)
「ねぇ、マーリン様ってなんでも知ってる魔法使いなんじゃ……?」
「何も打つ手無しとは言ってはおらん」
ガクッと体勢を崩すヒカリ。
(あのぅ~この老人は、こんな大変な時に、なんてマイペースな……)
ふと、マーリンを見上げると、マーリンは真剣なまなざしでヒカリを見つめている。
真っ直ぐな目にヒカリはさっきまでのマーリンへの不満を打ち消し真剣なまなざしで魔法使いを見据えた。
「助かる方法を教えてください! 私、なんでも手伝います」
「……それを聞きたかったのじゃよ、ヒカリ」
マーリンの険しい表情が緩んだ。
「ある星の魔法使い達の所へ訪ねて行ってほしい」
「場所はどこです?」
「茨の森、ブライア・フォレスト」
「ブライア・フォレスト?」
「三人の妖精魔女がいる森じゃ――それとプリンセスも」