King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~扉の向こう~

 

 

「あーあ、姉ちゃん勝手に行くなよ。しかもオレのボートで」

 ソラはボートを漕いでいるつもりなのだがいっこうに進まない。

(よくこれで折れないで漕げるなぁ)

 姉のオールは細くて長い。

 がむしゃらに漕ぐソラにとってはとてつもなく扱いづらい。しかし、コツさえ分かれば折れないどころか、速いのだが。

 ちなみに、急停止と小回りができないため勢いが残ると島に乗り上げてしまうのが短所(余計)

 

 やっとソラはボートを止めた。

「カイリのボートだ――げっ、リクも居るっ!」

オレ、また怒鳴られるのかよ~

なにもしてないのに(涙)

 

 帰りたかったが、しぶしぶボートから降りる。

空がやけに明るい。

陸地には影がうっすらと見える。

 そう、影が――。

(ユラ……)

「ん?」

 影が、動いた!

 平たい影が一瞬のうちに小動物に変わる。

(いっ、生きてる!)

 考える暇もなくソラに襲いかかった!

「うわっ!」

 可愛いくせにヤバイよ、コイツ!

「丸腰じゃ無理だ、こうなったら」

 自分のボートに乗り込む。しかし、いくら探しても見つからない。

「どこいったんだよ、オレの剣!」

 そう思った矢先からしばらくしてやっと思い出した。

「って、オレの剣、家の中じゃん!」

 

 しまった~(涙)

 

 目の前に黒い動物が!

 ソラはとっさに腕を上げる。

(ガッ!)

「いってぇ~!」

 かすり傷だが結構イタイ。

(ホントやばいって、コレ!)

 どうする―――どうしよう(汗)

 そうしているうちに可愛いくせに危険な小動物が次々と沸いてくる。

 剣なしでどうするか!

 柔道、空手、なんてよくわかんねぇ~

 鉄拳or足技(!)

 あっ! 姉ちゃんのオール……は、死んでも使えない(恐)

「そうだ!」

 ソラは襲いかかる小動物を間一髪でかわし、姉のボートへ飛び乗った。

 確かあったはず!

「……あった!」

 

 キンッ!

 

 ソラがそれを頭上にかざす、小動物の攻撃を受け止めた!

 ソラは夕方までこれを持つ姉と戦っていた。自分の武器とは少しばかり違う。でも、これしか無い!

「姉ちゃん、借りるぞっ!」

 島の何処かにいるはずの姉に大声で宣言した。

 

 ☆

 

 洞窟の中の姉はソラの声など聞こえるはずも無く。

 扉の向こうは普通の洞窟で、薄暗くてヒカリは気がひけたがこの向こうにカイリがいるのならば進まなければ始まらない。

 カイリが行けるんだから私だって!

そんな自己中心的な気持ちを使ってヒカリは洞窟を進んでいくと見慣れた赤茶の髪を見つける事が出来た。

 

「カイリ、何してんの?」

 ヒカリの声は小さかったが意外に響いた。呼ばれた当人はビックリしてこちらを振り向いたが、ヒカリだと分かった所で安堵したようだ。

「ヒカリ姉こそ何でココに……?」

不思議そうにたずねるカイリ。

「――なんでだっけ?」

(ガクッ)

 ヒカリのボケに思わずカイリがリアクション。

『カイリが居る→カイリが行ける→私も行ける=何で探してたっけ?』

 ヒカリの思考はなぜか始めの目的をすっかり忘れてしまうようになっていた。

「あ、思い出した、これ落ちててさ。はい、サラサ貝のペンダント。これまだ出来てないでしょ?」

 ヒカリは手の中にあった、さっき壊れていると思っていたソレを持ち主に返した。(カイリには内緒)

「あ、ありがとう」

 そっ、とガラス細工のように丁寧に受け取る。

「今日はここで野宿のつもりだったの?」

 ヒカリがからかうつもりで聞いた。

「……ばれたか」

 カイリがいたずらっぽく舌を出す。しかし、どことなく浮かない表情だ。

 

(なんで、そんな顔するの?)

 

「カイリは……本当に明日ここを出たいの?」

 自分で言って後から驚く。真剣に尋ねてしまった自分が、自分じゃないようでなんとなく怖い。

「……」

 行き詰ったようにカイリが黙る。

 自分を見つめたままカイリは何も言わない。

 絶えられなくなったヒカリは視線をそらしてしまった。

「ゴメン忘れて。なんかヘンだ私、風邪気味かな」

 ヒカリはそう言って洞窟の周りを見渡した。

 考えてみたら、この中に入ったことなんてなかった。

「カイリは、ここ入ったことあるの?」

 明るく切り出すヒカリ。

「ヒカリ姉、初めてだったの?」

「たぶん、そうだよ。記憶にないから」

 この中には何かあるとは思ってはいたが、自分から入ろうとはしなかった。

 理由は暗いし狭いし、単純に怖いからだ。

 辺りを見て歩く。

 あれなんだ。この、トビラ?

 触れようとしたとき。

「ヒカリ!」

 いきなり後ろから強く押される。

 後を追うように後ろから強い光が輝いた。

 光が輝いた瞬間、ヒカリはバランスを崩し前のめりになる。

 

 グラッ。

 

「?」

 足場が、ない。

壁が、消えている?

 

うそ、落ちる‼

 

 ヒカリはとっさに後ろを向いて手を伸ばした。

(ガッ!)

 かろうじて右手一本で体重を支えることが出来たが、このまま上がることは無理だ。

「いっ、イキナリなんなのよ! こんな所に奈落があるなんてありえない!」

 落ちる寸前なのに罵倒するヒカリ。

混乱するも結構危機一髪で反応できたことに自分でもびっくりする。

 

「ヒカリ、ゴメン。こうしないとヒカリが……」

 カイリの声が上から聞こえる。

「それより、助け、て」

 このさい謝罪はいいからヤバイです! 非常に!

 

「ごめんな、さい」

「?」

 上を見上げてヒカリはやっとカイリの様子がおかしいことに気づいた。

 

 カイリの体が透けている。

 

「ウン、いいよ。私は、大丈夫、だから――」

「ヒカリ!」

「ソラのこと、頼んだよ!」

右手にかかっていた力が――消えた。

 

 こんなシチュエーション、考えたことなかった。

 夢であってほしい、なんて考えてみたり――。

 

 夢で――。

 

 そうだ、この感じ。

 ビーチレースの時落ちたのと、似ている。

 

「?」

 落ちてない?

 不思議なことに体を起こすことが出来る。上を見上げる、さっきまでの場所が見当たらない。

 気を失ったのか? しかし衝撃も何もなかった。

 薄暗い。でも自分が今立ち上がっているのは事実。

「夢?」

 夢でも夢でなくとも、ここにずっと居るのは退屈だ。とりあえず上には行けないので歩き出す。

 

 ヒカリは、いつの間にか島に居た。

「ココっていつものパオプの木の場所じゃん!」

 だったら、さっきまでが夢?じゃあ、今は?

 あ~もうわけがわからない。

 とりあえずカイリの居た所に。と、思った矢先。

「リク?」

 目の前にリクがいることに今気づいた。

 

 海、見ている。

 

「り……」

「リク!」

 後ろを振り返る。ソラがいた。

 リクが振り返った。

「ソラ、扉が開いたんだ。外の世界に行ける」

「リ、リク……?」

「一緒に行こうソラ」

 リクがソラに手を差し伸べる。

 さっきからヒカリを無視して二人は話を進めていく。

「ちょ、ちょっとリク! カイリは?」

 二人の間に割り込むがまったく無視。リクの差し伸べられた手を掴もうとソラは必死で手を伸ばす。

 そこで気が付いた。

「なに、コレ……」

 やっとヒカリは今の状況が分かった。

 二人が、暗闇に埋もれていく。

 ちょっと、これも夢なの?

 でも――夢でも、どちらを助けたらいいの?

 立ち尽くすヒカリ。

 闇で見えなくなる2人。

 

 どうしょう。

 

「闇を恐れるな、ソラ」

リクが言う。

 

その一言でヒカリは決断した。

 

「ナニが『恐れるな』よ!」

 ヒカリはリクの手を掴もうとした、が――

「あっソラ! 私の木刀持ってる!」

 ヒカリはソラの持つ木刀をひったくった!

 それはすっかり二人が闇の中に埋もれてしまった直後。

 

 刹那。

 木刀の間から眩い光が輝く!

「!」

 考えている暇は無い。その光を利用して、ヒカリはリクを探した。

 そしてかろうじて差し伸べられた手が見えた。ヒカリは、その手を掴んだ――ハズだった。

「?」

 ソラが気づくと木刀のあった右手には――。

 

 ―――キーブレード―――

 

「?」

 この世界で一番強い武器。

 

「と、とりあえず、カイリ!」

 ソラは、走り出した。

 

 ヒカリはリクの手を、掴んだはず――だった。

 

 

 

 

第2章 トラヴァースタウンへ続く

 

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