King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「マフ、このハートレスどうしたらいい?」
「マーリン様から聞きました、ヒカリさんの魔法はまだ発展途上なんだって」
「え?」
「コロシアムで優勝して来てほしいと言ったのは魔法以外の能力を高めてほしいとの事だったそうです。それに、だれでも始めからスゴイ強い魔法なんてありえません。まぁ、ヒカリさんの魔法はすこし迫力があるってだけで――」
「見掛け倒しってことよね?」
「え、いいえっ! その、簡単に言ってしまえば、そうなのですけど」
「はっきり言って良いよ、細かい事は関係無し!」
すこしムッとしながらヒカリが薔薇に攻撃する。ロックブレードの先から炎が上がるが、やはり炎はすぐに消えてしまう。
「そうですね……ヒカリさんのファイアは瞬間的で、炎の勢いが弱いのだと思います」
「マフは炎の魔法とか使えない? 援護するから」
「あ、はい、試してみます!」
ちょっと不機嫌なヒカリに逆らえなかったマフ。
ヒカリはロックブレードをセプターに戻しマフの援護へ。セプターを一回転させて唱える!
「ファイアーウォール!」
ヒカリが唱えると、炎の壁がヒカリとマフを覆い茨の侵入を一時防ぐ。しかし――。
「やっぱり見掛け倒しね――」
炎の威力が弱いのか、すり抜けてくる茨。扱う火の力が弱いのだろう。
あきらめてマフに襲いかかろうとする茨をロックセプターで払いのける。
その時、魔法の詠唱に費やしていたマフの目がパッチリと開いた!
「炎を受け継ぎし幾万の星、メテオ・ストーム!」
マフが唱えると、炎をまとった隕石が薔薇ハートレスに直撃した!
ヒカリにはまだとうてい扱えない隕石の力だ!
「ダメです、隕石が小さすぎます……」
「いや、ファイアよりは幾分か効いてるみたい!」
「それでも、もうできません……」
マフがへたり込む。MP不足だ。
「そうだ!」
ヒカリはセプターに着いているロケットを開けて石を入れた。
「ヒカリさん?」
「見てて、マフ!」
ヒカリはバトンのようにロックセプターを振り回し始め、勢いをつけて天高く投げる!
天高く回転するロックセプターの軌跡には陽光が差込み、緑の草花が舞い降りる。
ヒズメの音が軽快なステップと共に響き、その光の中から影が現れた。
子鹿だ。
「バンビお願い!」
バンビはマフのまわりを飛び跳ねる。
「うわぁ~かわいい」
マフが笑顔になる。ⅯPが回復するとなんだか晴れやかな気分になるのはヒカリも同じだ。
「ありがとうバンビ」
ヒカリに撫でられて嬉しそうにバンビが消えた。「ありがとうございます!」
「そんなのお互い様。さて、いきますか!」
ヒカリとマフが茨ハートレスに立ち向かった。
「マフは魔法、どうやって覚えたの?」
「お師匠様からです」
「お師匠様って彫金術の?」
「はい、何事も鍛えるためにはまずは自分の力を自分で試さなければいけないとの師匠なりの教訓がありまして、そのなかで良い武器は使ってみないと効果が分からないとの事で、よく剣術や魔法の特訓をしました」
「すごい師匠ね……」
「いいえ、何もかもが中途半端に良くできる人だったので一応彫金の師匠ですがあまり学ぶ事は出来ませんでした」
すねるように言うマフ。
「でも、考え方は好きだな。何でもやってみないとよくわからない、試す事は必要だよ!」
「師匠がよく言っていました。魔法は感情をコントロールするためには最適な物なんだって」
マフが空を眺める。師匠の言葉を思い出しているのだろう。
「感情はイメージさせる事にも繋がるのです」
ヒカリは動きを止める。
「……マフ、こんどは私の援護、お願い」
「は、はい!」
ヒカリは神経を集中させる。
感情。私の魔法はいつも突然。
それは感情の変化でやってくる。
そう、あの感覚。
(炎よ、もっと熱く、強く!)
感情が高ぶる、口から言葉がこぼれてくる。
「プロメテウス・ファイガ!」
天から炎が降り注ぎ茨が真っ赤に燃え上がる。
「聖なる炎に包まれ、滅せよ」
ヒカリは胸に掲げるロックセプターを斬るように凪ぎ払った。
真っ赤なバラが萎れ漆黒に輝くハートが現れ、消え去った。
しばらく動かないヒカリに、マフは声をかけたらいいのか、ためらった。
「ヒカリさん……?」
「うん? なにマフ?」
ヒカリがマフに向き直る。
「あ、いいえ。さっきの魔法すごいです!」
いつものヒカリだとほっとするマフ。
「まぁね」
ヒカリはそう言ってハートレスのいた場所をぼーっと眺めていた。
しばらくして、城門を守る門番が外側から門を開け放った。
怖いもの見たさにヒカリのまわりに人が集まる。そこには王様までやってきた。
「よくやった、メイドよ。オーロラ姫の誕生式典の余興にふさわしい見事な戦いぶりであった」
「……ヒカリさん?」
皆が注目しているにもかかわらずぼーっとしているヒカリ。しばらくしてはっと我にかえり城の中へと走り出す。
「あ、ちょっと待ってくださいヒカリさん。カラスさんは森の方に――」
マフも遅れがちにヒカリの後ろを着いていった。
☆
城の中に入ると三人の妖精がオーロラ姫を探していた。
「ヒカリ、オーロラ姫がマレフィセントの魔法で消えてしまったの!」
フローラがヒカリに言う。ヒカリはある一方へ足を運ぶ。ヒカリが聞いた。
「フローラ、この城で一番高い塔はどっちに行けばいい?」
「西塔よ、この先の階段をずっと上げれば着くわ」
「わかった」
ヒカリは迷わず西塔の方へ駆け出した。
「待ってください、ヒカリさん!」
あわててマフもヒカリを追う。
「なんだかみんなに知らせた方がいいわね?」
フローラが魔法でほかの二人を招集した。
☆
ヒカリが塔へ登ると。
「マレフィセント!」
「ずいぶんと遅かったねぇ小娘」
「オーロラ姫とアリス、白雪姫をどうするつもり!」
「力の無いお前に話す意味も無いよ」
「!」
ヒカリの表情に面白そうに笑うマレフィセント。どうやらカラスはハートレスへおびき出すための囮だったらしい。ヒカリの後からマフと三人の妖精が駆けつけた。
「リクはどこにいるの?」
「あの子ならもう次のプリンセスを探しに行ったよ」
「カイリね! きっとカイリを探して――」
「リクはもうお前には興味が無くなったそうだよ」
「え?」
ヒカリは言葉を失う。
「さっきの茨のハートレス。あの戦いよう……リクは本当にがっかりしていたよ」
「リクが、私を見ていたのね」
やはり、ヒカリを試していたのだろう。
(もう少し速く魔法を覚えていたら!)
悔しい気持ちでいっぱいのヒカリにマレフィセントは思わずほくそ笑む。
「せいぜいあがくがいいさ、お前ごときどうあがいてもワタシは一向に構わないがね」
そう高らかに笑いマレフィセントは消えた。
「大変、オーロラ姫がいなくなってしまった!」
「王様とお后様、おかわいそうに」
「騒ぎが起きる前に時間を止めなくては!」
三人の妖精が城中を駆け回った
「ヒカリさん……」
「マフ、ごめん。今は、何も言わないで……」
ヒカリは西塔の夕日を眺めながら、呆然としていた。
しばらくして――。
「マフ」
「はい」
「ありがとう」
「いいえ、黙って着いて来て少し反省していた所です」
「ううん、それはもういい。私はまだ一人旅なんてできっこないってことが分かったから」
「ヒカリさん……」
「お城の人々は眠りについたわ」
三人の妖精が戻って来た。
「私たちかなりここの世界に干渉しちゃったわね」
ヒカリが気をとりなおして気恥ずかしそうに言った。
「私も、つい飛び出してきてしまいました」
マフも他の世界に干渉してはいけない事は分かっていた。
「二人とも大丈夫よ」
「今、城中が眠りについてる」
「ヒカリたちの活躍はみんな夢の出来事だったって思うわ」
フローラ、フォーナ、メリーウェザーが言った。
「ハートレスはどうなるの?」
「ここにハートレスがやってたのはマレフィセントが引き連れて来た奴らだけよ」
「この城は私たちが守ってみせるわ!」
「幸い鍵穴は閉められているから」
「へっ?」
「私たち、以前あなたの相棒って言う王様を見た事があるの」
「ローズがまだ小さかった頃にね」
「そうだったんだ……」
時間の巡りは星によって違う事は分かった。
「それで、お願いがあるのヒカリ」
「眠りの魔法を維持しないといけないから私たちはここから出る事が出来ないわ」
「それに、私たち良い魔女は幸福にする魔法しか使う事が出来ないの」
「だからお願いマレフィセントを懲らしめてきてちょうだい!」
緑の服のフォーナが悔しそうに言った。
「あの女にはヒカリからのお説教が必要よ!」
じっれたそうに青い服を揺するメリーウェザー。
「でも覚えておいて、憎しみだけでは何かを失うどころか、得る物が何も無いことを」
赤い服のフローラがヒカリをじっと見ていった。
その瞳に戸惑うヒカリ。
(ヒカリさん……?)
マフがヒカリを覗き込むがヒカリは考え込んだままだった。
三人の妖精が横に並ぶ。
「ヒカリお願い」
「私たちのブライア・ローズ。いいえ、この星のプリンセスを」
「どうか助けてちょうだい!」
フローラ、フォーナ、メリーウェザーが順番にヒカリに言って丁寧にお辞儀をした。
「分かった。オーロラ姫、プリンセス達を必ず助け出すわ!」
さっきまでの戸惑いはなく、いつもの不敵な笑みでヒカリが誓う。
「私も出来る事があればなんでもお力添えします」
マフも意気込んだ。
「まぁ! 小さいのに頼もしいわね」
「マフちゃんでしたっけ、あなたも、くれぐれも気を付けてね」
「ヒカリを頼んだわよ、マフ」
「はい!」
三人の妖精にマフが笑顔で言った。
「さあて、ヒカリが欲しいのは呪いを解く方法だったわね」
「そう! 呪い……ええと風邪みたいな――」
「大丈夫、病気とは似ていても呪いの症状には全く関係ないわ」
「マーリン様がここへ来るようにしたのなら私たちの力できっとなんとかなるはずよ」
「きっとあの呪いしかないはずだから……」
「あの呪いって?」
「私がオーロラ姫の誕生日に贈った魔法。ヒカリに教えてあげる」
メリーウェザーがヒカリに言った。