King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
わざわざあの世界に行ったのですから呪いの解き方と言えばアレしか無いでしょうね。
ワープドライブで一気にトラヴァースタウンへ帰還したヒカリとマフ。
シドが一番街と二番街の扉の前で二人を迎えた。
「無事に帰って来たなヒカリ……マフもいたのか、きなりいなくなっちまうから探したんだぜ」
「私も探したわよ! なんでアクセサリーショップ辞めちゃったのよ~」
「わりいなヒカリ、一応これが本業なもんでな」
シドはそう言って奥にあるグミを指差した。
「お前さん達が持ってきたグミがあまりにも大量でな~オレのグミシップへの情熱ってか、本来のあるべき姿ってか何かが沸々とわき上がって来たもんでな!」
「もうっ! 勝手なんなんだから~」
「それより、大将ならマーリン様ん所に置いている。人が滅多に来ないしあそこが一番静かだからな」
「うん……わかった」
「そうそう、それとソラ御一行様がナビグミを使って新しい世界へ行ったぜ」
「……ふ~ん」
「なんだ? 興味ないのかよ」
「今はそれどころじゃないんですけど」
「おおっと、すまねぇ。で、どうだ、呪いの件は?」
「……一応解決策は教えてもらったんだけど」
顔がこわばり、次第に涙目になるヒカリ。
「なっ、なんだ? そんな変な顔しやがって」
いきなりがっしりとシドの両腕をつかむヒカリ。
「……っどうしよう! 私、出来ないよ~」
叫ぶヒカリにシドがオロオロする。
「ま、マフ。ヒカリの奴、どうしちまったんだ?」
「実は、ですね……」
マフは耳が足れた猫のようにうつむき加減にシドに話し始めた。
「愛する奴からのキスだと⁉」
「なによりも大事なのは人を思う心。だそうです」
一部始終を聞いたシドは複雑そうな表情でヒカリを見た。
「その……まぁ、なんというか……勢いだ!」
「シドさん。それ、乙女の心理を完全に無視しています」
「ならなんて言えばいいんだ? マフは何か言えるのか?」
「ううっ」
「とにかく、ヒカリ。マーリン様に話してこい! 何かいい解決策があるのかもしれないだろ?」
「う、うん」
☆
「来よったなヒカリ」
「はい……」
顔が微妙に赤いヒカリ。
「して、呪いの解き方を教えてくれたのじゃろ?」
「あの……本当にこれでなんとかなるのでしょうか?」
「まぁ、聞こうじゃないか」
「愛する人からの、きっ……キス、です!」
自分で言ってて真っ赤になるヒカリ。
「ふむ……やはりそれしか無いみたいじゃな」
「な、なんでこんな呪いの解き方しか無いのよ!」
「心当たりは無いのかヒカリ。思い出すのじゃ」
「え?」
「お前さん自身が以前このような症状があったじゃろ?」
「……あ」
ヒカリは思い出した。
ミッキーと初めて出逢った時だ。
「お前さんはどうやってこのトラヴァースタウンへ来たのじゃ? ヒカリよ」
トラヴァースタウンの前。
曖昧な記憶しかない。薄ぼんやりとした記憶。
カイリが私をかばって、闇の中に落ちて、ソラとリクが真っ暗になって――。
ゆっくりと落ちていく感覚。
真っ暗な世界が続いていく。
そして目が覚めたんだ。
「真っ暗な闇の中にいた……かも」
「それじゃな」
「ってことは、ミッキーも私みたいに闇の中にいたって事?」
「……」
「私と同じってことは……私、ミッキーに出逢ってからいきなり呪いが消えたんだよ!」
「その事をもっと詳しく思い出すのじゃヒカリ」
「え~と」
目が覚めたらこの部屋のベッドで。
いや、実はあの時はもう元気になってた。
きっとその前だ。
プルートに出逢って、具合が悪くなって、ピンチなときにミッキーに会って。
その後。記憶が無い。
ミッキーは、私にいったい何をした?
(呪いをとく方法は真に愛する人のキスよ)
もしかして……。
(クラリ)
真っ赤になってよろけるヒカリ。
「いや! まだ決まったわけじゃないっ!」
苦悩するヒカリ。
「うっ……あ……」
突如ミッキーの声が聞こえビクリと飛び跳ねるヒカリ。
「やはり、押さえるのはもう無理のようじゃ」
「ミッキー!」
駆け寄るヒカリ。
「急ぐのじゃヒカリ」
「だ、だって……」
「もう、いいんだ、ヒカリ」
「そんなこと言わないでよ、ミッキー!」
「いろいろ迷惑かけてゴメン、よ」
「そんな……!」
「カレイドスターキミの名付けた船だったね、君の物だよ」
「そんな、ミッキー!」
どうしよう。
ミッキーが以前の私みたくなってる!
こうなったら……。
「みんなお願い。少しだけ、出てって」
ヒカリが真剣な表情でマーリンとマフに言った。
「ミッキー。私、愛する人ってどんな人なのか自分でもよくわからない。けどね、好きな人って言ったら何となくミッキーの事も当てはまると思うの」
目を瞑り決心する。
「だから、ちょっと我慢してよね」
ミッキーの荒い息がかかる。
「っ~」
真っ赤になって思わず顔を引っ込めるヒカリ。
(い、いやっ……頑張るんだヒカリ。じゃないとミッキーが!)
ミッキーが――。
「なぁに! 一人で船操縦した時よりも簡単じゃない! そ、そうだよ……だ、だから」
「ヒカリ……?」
「ミッキー! 気が付いたの⁉」
「顔が赤い……大丈夫かい?」
「な、何言ってるのよ!」
さらに真っ赤になるヒカリ。
「ねぇ、ミッキーは私の事どう思っているの?」
「……何も知らない女の子だったね」
「なっ……!」
熱にうかされているためか言葉に容赦がない。
「それなのになぜか余裕そうな顔でいつも前しか向いていなくって……かと思ったらいきなり後ろ向きになるし」
「……うん」
「でも、不思議とそれが悪くは思わないよ」
「……え?」
「始めキミの行動は本当にビックリしたよ。でも、悪い気はしないんだ……不思議だね」
ほほ笑むミッキーは弱々しく。
でも、凛々しかった。
(ドキン)
胸が……キツく締め付けられた。
「もういい、よくわかったから寝てなよミッキー」
「……安眠できる状態ではないんだけどね」
「じゃぁ、目つむってて」
ぶっきらぼうなヒカリの声。
耳から、自分の鼓動が聞こえる。
唇が震える。吐息が――近い。
触れ合う瞬間。
「わうっ」
「わぁっ~~⁉ なっ……なな、何?」
がばっと身体を起こすヒカリ。
人影……いや。犬。
「プ、プルート⁉」
ヒカリの言葉に構わずプルートはミッキーの前まで飛び出して来た。
ミッキーの荒い息よりも速い息づかいの黄色い犬にヒカリは度肝を抜かれる。
そればかりか、いままで顔を出す事が無かったプルートの出現に混乱するヒカリ。
プルートはミッキーの頬をベロッっとなめる。
「えっ?」
拍子抜けた声を漏らすヒカリ。
ミッキーの身体が輝き、黒いもやが身体から逃げていく。そしてしばらくしてミッキーの息づかいがゆっくりになっていく。
「ぷ、プルート。もしかしてアンタが、呪いを?」
「わうっ!」
得意げに吠えるプルート。
「そういえば……」
私が覚えている最後の記憶。
誰かが頬をなめてた。
「そ、そんなぁ~~」
気の抜けたヒカリががっくりと首を下げた。
ヒカリの髪がミッキーの顔にかかる、むずむずしてくるミッキー。
「……は、ハックション!」
ミッキーがいきなり顔を上げた。
目の前には、ヒカリの顔が。
「⁉」
ヒカリは、頭が真っ白になる
(ドタッ)
ヒカリはそのまま倒れ、記憶が飛んだ。
King And Hearts~鍵を待つ者~ 3巻へ続く
もう3巻に移動です。徐々に文字数長いんですって。製本するとA42段構成で200ページ行きましたから。文庫本サイズなら1章1冊ペースです。製本した後ですが挿絵付きでラノベっぽく出してみたいですね。
今回本で読んだ場合かなりヤバい場所で区切ってます。気になるよね……次回はどうなる!