King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~世界で唯一の武器~

 

「マーリン様。ここって本当に特別な部屋なんですね」

「分かるかね」

「ええ、なんとなくですけど」

 魔法の部屋は不思議な力があふれている。覚える魔法が多くなるにつれて、魔力の開放感がこれほどまでに肌で感じることが出来るなんて――。

 正直、今の自分自身に驚いた。

 一言で言えば大魔法を繰り出すときの爽快感。

例えるなら魔力が高まると天にも昇る満天の星空を眺めるような、そんな気分になるのだ。

 ふと、両手を眺めるヒカリ。今までは感じることしかできなかったが、この部屋に入って気が付く。自分の魔力が優しくヒカリの身体を包んでいるのが目で見える。

 色で例えることはできないが夜道で影ができないぐらいの月光のような淡い輝きだ。

 マーリンを見るとヒカリとは違う。オレンジ色に近いランタンの強い輝きのようだった。きっと強い光にはリスクと言う色濃い影ができるはずだ。

 体力の消耗を可視化できるライブラと呼ばれる魔法をヒカリは前から習得していたが、それとも少し違う。こんなにも魔力の差が見られるのはこの部屋のおかげなのだろう。

 ヒカリは今のこの現象を『マジックリアライズ』と名付けた。この部屋以外ではきっと使わないが。

 

「それでは、期末試験を始めようではないか!」

 マーリンが何か呪文を唱えると、ヒカリの目の前に影が現れた。

「う、うそ……⁉」

 そこにいたのはハートレス……ではなく。

 

『自分』

 

「今までの戦いを見てきて一番手強い者を呼び寄せただけじゃ」

 マーリンの言葉にがっくりと肩を落とすヒカリ。

「それで……ヒカリなのね」

 今、自分は鏡を見ていると言い聞かせてみるが、やはり何度見ても自分が目の前にいることはあまり良い気分ではない。マジックリアライズも全く同等の正真正銘ドッペルゲンガーだった。

「まぁ、いいでしょう」

 気だるそうに頭を上げると。

 

「なに? 私で不満なの……ヒカリ?」

「……」

「黙ってないで何か言ってくれないと面白くないじゃない!」

 目の前に居るヒカリは自分に向かって頬を膨らませる。なんだか自分で見ててちょっと恥ずかしい。

「ほら、なにか言ってよ。それとも私じゃなくってリクと戦いたいの?」

「なっ……⁉」

「さ・て・は……図星ね☆」

 自分の挑発にこらえることも、もう一つの試験なのだろう(汗)

「いえ、ヒカリで……いいです」

 こらえるように両手を握りしめ平然を装う。

「それじゃあ、始めよっか」

 不敵に前方のヒカリが自分の武器を出現させた。

 こうして見ると我ながらやる気満々だ。

「……うん、そうだね!」

 自分もロックセプターを取り出すが。

(カツンッ)

「あっ……ととっ!」

もう少しで取り落とす所だった。

「……それでは、お手柔らかに」

「REDY」

「GO!!」

 二人はタイミングよく交互に叫び走り出し、ロックセプターを振り上げ――。

 

(ガキィィン!)

 至近距離で振り下ろした!

 

「ふふっ魔法の詠唱中に叩こうと思ったのに」

「やるじゃない!」

にやりと笑うヒカリ×2。

「お二人さん魔法の試験と言うことをお忘れなく」

マーリンの控えめな忠告が脇から聞こえた。

 

 

 静けさが支配する二番街の広間。側で流れる噴水の水音だけが二人の間で響き渡る。

「ま、マフ? 少し僕にもわかるように話してくれないかい?」

 ミッキーがマフに動揺しきった様子で聞いた。

「それ、そのまんま私のお師匠が言っていた言葉と同じなのです!」

「師匠……って彫金術の?」

「なんでお師匠が居ないのにお師匠みたいなこと言う人に出会わないと行けなかったんでしょう!」

 

 独り言なのか、なんだかマフはご立腹のようだ。

「もう! 王様に会ったら助けて欲しいとは言われましたけど、これは私のほうが助けてほしいくらいです!」

 

「なんだって?」

 

 

「なっんですって~⁉」

 マーリンの館では、ぜぁはぁと息も絶え絶えな双方のヒカリがマーリンに向かってこう叫んでいた。

目の前のもう一人のヒカリと戦っていて分かったこと。攻撃のタイミング、かけ声、仕草、さらにはクセまでもが自分とまったく同じなのだ。

 あまりの物真似ぶりに本当に本物なのか。もしかしたら自分が偽物なのではないかとさえ思った。

 自分で言っててなんだが不思議だけどまったくのウリフタツぶりに、これでは私が負けたとしてもマーリン様は分からないんじゃないのか? 同時にこう思った二人のヒカリがタイミングを計ることなくマーリンへ質問した。

「ところでマーリン様?」

「私が勝ったら、目の前のヒカリはどうなるの?」

疑問に思ったヒカリたちにマーリンは言った。

「う~む……正直、お前さんのどちらが本物か――わしも分からん」

「なっ」「ななっ……」

 

『なっんですって~⁉』

 

――で、今に至る。

「それって」「戦って勝っても」

『ダメじゃない!』

 同時に叫ぶヒカリ×2。

「ほら、だって……」

「いちおうマーリン様の魔法なんだしね?」

 なんだか同意するヒカリ×2。

「魔法って魔力を消費するものなんだから」

「あ、もしかしたらどちらかが消えるんじゃないの?」

『ああ~なるほど~☆』

(ポン☆)

 同時に両手を叩き叫ぶヒカリ×2。

 仲良く意見を交換した瞬間。

「スキありっ!」

「なんの見切ってる!」

 両の手を叩く時にセプターが一瞬だけ消え、チャンスとばかりにまったく同時に攻撃を開始する。

 会話の間もヒカリ達のこそくな騙しあいが続く。

(そしていまだに魔法を使っていない)

 そんなやり取りの中。マーリンは唸るように考え込みしばらくしてついに重く閉ざした口を開いた。

 

「完璧すぎる魔法使いは、時には取り返しがつかない過ちもするもんじゃー―それにワシの魔力はそう簡単に尽きんよ☆」

 

『そんな完璧いらない‼』

 同時に叫ぶツッコミもウリフタツな二人だった。

 

「こうなったら」

「どちらかが本物だってことを――」

『証明させるまでね!』

 

 

「キミのお師匠の名前を教えてくれないかい?」

「お師匠はお師匠です。名乗るほどのモノではありません」

 モノというあたり、かなり嫌っているようだ。

「そうか、言えないのであればしかたないな。ありがとうマフ」

 ミッキーは再び広間のベンチに座った。質問をちゃんと返してくれたことに少しほっとする。このまま何も話さずに見つめられるよりかはだいぶ良い。

「僕がヒカリと初めて出逢ったのはこの街、トラヴァースタウンっだったよ。そして、君と出逢ったのも、この街だった。これも何かの縁だと思っているし、実際こうやってマフが僕や――いいや、ほぼヒカリの手助けをしてくれているね。はははっ」

 最後の言葉からはもうこれ以上話が続かないことが分かった。お手上げだと笑うミッキー。

 するとマフが口を開いた。

 

「お師匠は……消えてしまったのです」

 

「マフ?」

 さっきまでの憤った表情がみじんもないマフにミッキーは目を丸くする。

「私は、お師匠と過ごしていた前の記憶が無いのです。私はどこで生まれたのか、何をしていたのかさえも忘れてしまっているのです」

 

 

『でりゃぁーー!』

 いつの間にやら男装して戦っているヒカリ達。

 相手がロックブレードを振りかざすともう一方は体制を低くし居合のような構えをとる。振りかざした相手はそれがフェイント。バックステップで一歩下がり居合切りをガードする。

 全くの隙のない一触即発の乱舞のようだった。

(ギイィン!)

 力比べをする二人。比べても同じ力量なので意味がないと思っているが――。

「お前達。言っておくが、これは『魔法』の期末試験なのじゃぞ」

 連続攻撃を華麗に繰り出す二人にマーリンがしびれを切らして言った。

「魔法……ってことは」

「魔法で勝負すればいい、の……か」

 納得して二人はパタリと倒れる。

 真っ白い粉が弾け変身が解けた。

 

『…疲れちゃった☆』

 

乾いた笑いを向けて二人がその場でダウン。

「なんと! 不器用じゃなぁ~はっはっは」

 そのまま動かなくなる二人のヒカリにマーリンはおかしくなって声を出して笑い出した。

「あの~笑ってる場合じゃなくて、マーリン様」

「ポーションとかでいいから~ちょうだい?」

 マーリンは素知らぬ顔でこう言った。

「この部屋で力尽きるなんて前代未聞、ありえん話じゃよ」

「そ、そんなぁ~」

「ひどい話!」

「こういう時は気ぃ使って下さいよ、マーリン様」

「ダメな者はダメじゃ」

「え~ケチ!」

「レッスン終わったら紅茶くれるじゃない~」

 抗議の二人にマーリン師匠はずばりこう言った。

「まだわからんのか。始めおぬしが言ったであろう? この部屋には何かを感じるのじゃと」

「そう言えば、ここは魔法の部屋」

「そして、これって魔法の試験」

「あ、もしかして」

「ううん。もしかしなくても」

 

『ケアルか!』

 

 ひらめいたとばかりに二人のヒカリは手を会わせて叫んだ。ここでまた小競り合いと思ったが、もう戦わないようだ。

「うむ」

 マーリン師匠はそれを見て納得したようにうなずいた。

 

「私が魔法考えるのってさ、まずは雰囲気から始まるよね」

「うん。で……ケアルってどんな魔法だったっけ」

「木漏れ日のような優しい光」

「そう、あったかい感じで緑が見える」

「おまけにミッキーのケアルは風がそよいでるんだよね」

「うんうん。あれってなんかリゾート地に行ったみたいな!」

「なんだかあの状況がすっごいピンチなのに対して」

「それがなんか一瞬で気持ちよくなるっていうか」

「ハラハラが突然」

「ワクワクになる!」

『そう、それ』

 うなずく二人。同じ性質なだけあってお互い理解は早い。

「それじゃぁ」

「どちらかが始めに癒した方の勝ち!」

 二人のヒカリがロック・せプターを掲げ相手に向かって優しく振り下ろした。

 

 

 目を丸くするミッキーにマフが言う。

「お師匠は突然消えてしまった……私の今思い出す限りでは、お師匠は私に一度も名前を教えてくれませんでした」

 ミッキーが口を開く前にマフは話を続けた。

「そして、ふと思い出したのです。初めての記憶を。お師匠が私に王様の手助けをしてほしいと言われていたことを」

「王様の手助けって……僕の?」

 困惑するミッキーをよそにマフはさらに話をする。質問は終わってからのほうがいいようだ。

「私の出来ること、それは武器を強化することです。モーグリがキーブレードを強化できるように、私はロックセプターを強化できます。私の存在と知識と経験はこのためだけにあるのです。おそらくセプターの起源や力を一番よく分かっているのは、記憶が戻った私しかいません」

 

 マフの話が終わり、静寂があったのでミッキーはあらためてマフに問う。

「それは……答えられる範囲でいい。君はいったい何者なんだい?」

 マフは難しい顔をしてゆっくりと左右に頭を動かした。今の心中で言葉に出すには複雑すぎて答えられないようだ。

「そうか、質問を変えよう。マフはロックセプターについてどこまでわかるんだい?」

「私は彫金術での経験上、この武器は作れるとしか記憶しているにすぎません」

「君の記憶がもとに戻らないと答えられないのか」

「ハートレスに立ち向かえる武器であるキーブレードが世界で一番強い武器だとしたら、ロックセプターは世界で唯一の武器だと思えます。ヒカリさんの持つそれは二つとして無いと思います」

「僕はヒカリを介してだけどロックセプターを使えたよ?」

「それは私にはわかりませんが、普段はただの杖でしかありません。しかし、ヒカリさんはセプターの本当の力が引き出せる」

「ロックセプターの力……あの強い魔法か」

「唯一の武器に、唯一の魔法。あの杖はヒカリさんにしか扱えないのです」

 

 

『ケアル』

(カチン☆)

 交差するセプターが優しく鳴り響き二人のヒカリの頭上から輝く陽光が降り注いだ。

 南国独特の潮の香りと真夏のあたたかな風。最後に爽やかなマリンブルーの輝きがヒカリの頬を流れた。

「ま、負けたぁ~~」

 一方のヒカリがぺたりと足をついた。

 ケアルのかかったヒカリが光とともに消えたのを見守ると、魔法を習得したもう一方のヒカリはにっこりと微笑んだ。

 マーリンは満足そうにそれを眺めている。

「やったぁ! ケアル習得☆」

 ぴょんぴょん飛び跳ねロックセプターを振り上げて叫んだ。

 

 

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