King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
それと原作にはないミニゲーム。ユフィちゃんとバトル回。トラヴァースタウンに降り立つといつもいきなり開催される。
「やっぱりあんたね! こここら辺のハートレスを全滅させたの!」
「ああ、こんな時に、限って……」
頭上からの元気な声に思わずヒカリは悩まし気に頭を押さえる。
「久々ね、ヒカリ! ユフィちゃん参上!」
飛び出し、ヒカリの目の前に着地するユフィ。
「あのさ、私お取り込み中なので、できればそこをどけてくださいな?」
ありったけの丁寧口調でユフィに語りかけた。
「忘れたの? あんたとあたしはライバルなのよ、それなら私を倒してから進みなさい!」
ユフィの気持ちは揺るぎない。それはもうついさっきヒカリがムーシューに見せた頑固な面とかぶる。
ヒカリはふと思う。この状況をもし、自分に置き換えてみたら?
答えはおのずと分かった。
「……わかったよユフィ。再戦、待たせちゃったもんね!」
こうなってしまったら、やるか、やられるか。白黒はっきり付けないと、私自身もおさまらない!
ヒカリはロックセプターを出現させて戦闘態勢。
「どこからでもいいよ、ユフィ!」
「アンタが通りたいって言ったんだからそっちから来なよ!」
「うん、それじゃ!」
ヒカリはロックセプターで攻撃する!
物理攻撃特化の杖。ロック・イン・ロック・ブレードが適しているのだが、それはもう一人の自分の武器だからあえてユフィにはそれを隠していた。
「ねぇ、言ったっけか?」
「なに?」
「この前、私とレオンが修行がてらに行ってたコロシアムのことだよ、あんたと似てるヒーロー。ペガサスカップ優勝者の話」
「いいや、聞いてない」
攻撃の手を緩めずにユフィは話し出す。
ユフィの手裏剣攻撃は普段は遠距離なのでヒカリは間合いを保ったまま打ち返すのみ。大手裏剣を取り出す間、会話は普通に成立する。
「なんかキザっていうか。ううん、違うナルシスト? これも違う! ツンツン金髪男」
「金髪の男……クラウド?」
「アイツの技を真似てソラと戦ってるのよ!」
「ソラも同じ技じゃなかったっけ?」
そう言ってヒカリはユフィの放った手裏剣を打ち返した。ユフィは大きな手裏剣で自分へ迫りくる手裏剣を叩き落とす。
「あ、言われてみればおんなじ。でも、なんでアンタ知ってんの?」
「えっ、えっと……決勝だけ見たのよ!」
「なぁーんだ! 来てたの?」
ホッと一息つくヒカリ。
その間、ユフィは大手裏剣をヒカリへ投げた。渾身の一撃だったがヒカリはタイムの魔法で投げられた手裏剣とユフィの間に瞬間移動した。
「ユフィはその子と戦ったとき、どう思った?」
「えっ……な、なに? べっつに~私、何とも思ってないよ! だいたい、まだガキのくせに優勝するんだから、なによ、生意気よ!」
真っ赤な顔で叫ぶユフィ。
「いいや、そうじゃなくって、どこがすごかったとかさ、なにかあるでしょ?」
(ガキって、そんなに……?)
手裏剣は空振りしたが心にダメージを受けた。
「ん~」
ユフィは考える。その間、何げなく空振りした大手裏剣がユフィの手に戻った。
「技かな~」
「ワザ?」
「うん! ヒカリみたいで……はっ!」
「ユフィ?」
「あんた、もしかして⁉」
(も、もしかしてバレた!)
ユフィの表情は驚愕の色を作っていた!
ユフィがもう一度、口を開く前に――。
(ガツン☆)
渾身の一撃がユフィに炸裂。ユフィが倒れた。
「お、思わず……無我夢中で殴ってしまった。ゴメン、ユフィ」
やりすぎたとばかりにヒカリはロックセプターを新しいロケットに付け替える。
マフが作ってくれた新しいロケット。
『フォレスト・ブランチ』
取り出したのはバンビの世界をかたどった雄鹿のロケットだった。
(私の望んでいたものだったらアレになるはず)
ロックセプターを出現させると――。
(フワリ)
手にした時。森の香りがした。
これが癒しの武器『フォレスト・ブランチ』
柔らかな風をまとうような木の流線上のフォルム。杖の先端付近にはところどころ突起物があって牡鹿の角を思わせる。その角のまわりにはいつも健在している金属の鍵が牡鹿の角を飾る。
いつもはチャリンとうるさい金属音を奏でるあの鍵の音が、この杖では。
(コロン♪)
木琴のようなきれいな音色を奏でる。
その音色によって、ヒカリのⅯPがゆっくりと回復してくるのが分かった。これが振るたびに癒される杖。新しい武器の能力だ。
「これなら癒しの魔法も!」
ヒカリは踊るようにフォレストブランチをゆっくりと振り回す。柔らかな風がヒカリをまとい優しい音色が包む。その風はいつか感じた故郷から吹く風のにおい。ヒカリの口から魔法の呪文がこぼれてきた。
「風をまといし海の輝き、我は癒しを求める。まろびいでよ、オーシャン・ケアル!」
ユフィの頭上から陽光とともに舞い降りるのは甘い匂いの混じる青く輝く潮の香り。
その色は空の色を反射したオーシャンブルー。
南国の香りをまといユフィの傷が癒えた。
柔らかな光に目を開けるユフィ。
「気分はどうユフィ?」
「潮の、香りかな? なんかさっき真っ青な、海が見えた」
「ふぅん……」
ヒカリは懐かしむように目を細めて微笑んだ。
ミッキーのケアルは森の陽光が見えた。きっとあれはミッキーの一番大切な場所なのかな?
「そう、さっき言い忘れたの!」
「えっ⁉」
「アンタ、なんで始めっから言わなかったのよ!」
「へっ?」
「しょ・う・か・ん!」
「?」
ヒカリはまだ分からない。
「さっき耳のおおきいゾウと赤いトカゲが居たの見たのよ!」
「うん、私が召還したもん」
不思議な動物を見たと言い張るユフィに仕掛け人だと言わんばかりにヒカリがさらりと答えた。
ユフィはきょとんとした顔を見せたが咳払い。何事もなかったように気をとりなおして両腕を腰に当ててヒカリへ説教するようにずばり叫んだ。
「やっぱりね! アンタ、魔法の威力がいつもよりも弱いもん!」
「う、ウン……」
後ろめたい気分でヒカリがうなずいた。
それを見たユフィは不満そうに口を膨らませる。
「まぁた~手加減した!」
「ご、ゴメン……」
(だって、バンビ探さないといけなかったし)
無言で視線をユフィへと向けて抗議するとユフィはため息をついた。
「はぁ……何か事情があるようね?」
ユフィの言葉に潔くコクリと頷くヒカリ。
「誰にも言わないって約束するなら……話す」
口をとがらせ伏し目がちにユフィへ視線を向けるとユフィはなぜかにっこりと笑いかけた。
「いいわよ~トクベツにタダでね☆」
「ええっ⁉」
「なっ、何よ。そんなに驚いて」
「だ、だってユフィの事だから何か条件付きだって思ったから」
「モッチロン♪」
即答だった。
「やっぱりそうか……」
その後ユフィはとんでもない事を口にするのだがこれはずっと先の話となる。