King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~SOS~

 

 ヒカリは水晶玉に映し出されている映像に目を奪われる。そこは松明が揺らめく薄暗くて狭い部屋。所せましと積まれている金銀財宝。

 これが非常事態でなければお宝のありかを聞き出して宝探しだ、ダンジョンだとワクワクしていただろう。そんなことよりもヒカリの目にとまった物。 金銀財宝の部屋に見覚えのある石を見つけた。

「バンビ?」

「やはり、これをお探しのようでしたか」

「どこにあるの⁉」

「これはこの世界にはありません外の世界です」

「外でもいい、場所を教えて!」

 ヒカリがわれを忘れて占い師に聞いた。

「さぁて?」

 占い師はあいまいに言ってヒカリと距離を置く。

 すると――。

(ボボン!)

 ハートレスが現れた!

「こうなったら力ずくでも聞き出すから!」

 ヒカリはロックセプターを出現させて、ハートレスめがけて走り出した。

(このハートレス達、見た事無い格好してる)

 ヒカリが杖を振り回すと冷気がヒカリの周りをまとい周りに居た赤箒たちが一瞬にして消えた。

(今の私ならきっと大丈夫!)

 共通点はターバンを巻いていること。あとはいつもの奴と強さはなんら変わらない。

「あとの残りは!」

 大きくて丸い体格のラージボディに似たハートレス二体。銀色に輝く曲がり刃を輝かす細身のハートレス数対。

「巨体はきっと後ろが弱点ね!」

 そう思い魔法を撃つ体制に入ったが。

(ゴオォオオ!)

「うっそ、火ぃ⁉」

 前後から炎を吹き出す丸い巨体たち。

「プラン変更!」

 一瞬の判断でガードをとったヒカリに炎が襲う。

 真っ赤な炎の中ターバンの占い師はヒカリの方向をじっと眺めていた。しばらくして炎がおさまると、そこから真っ黒い球体が現れはじけた。

(よ、よかったバリアで~)

 バリアはこの前の戦闘で威力が格段に上がり攻撃を全て無効にする!

(逆に攻撃はまったく出来ないけど)

 もしフリーズ(氷)の魔法だったら数秒であまりの強火にきっと溶けていただろう。

「お返し!」

 ヒカリは高い所に上がりロックセプターを構える。残りのハートレスは巨体だけのため上がって来れないのだった。

「豪雨、強風、雷鳴……業火を打ち砕くべく轟け」

 ヒカリの中にイメージがわいてくる。

 荒れ狂う豪雨。吹き荒れる強風。それらに従って雷鳴が後を追う。魔法の言葉が浮かび上がる!

「テンペストー!」

 天に向かって両手を広げるようにセプターを横に凪ぐとヒカリの周りから三角形の魔方陣が浮かび上がった!

 そして雨、風、雷のトライアングルが多くのハートレスを打ち負かす。

 

 

 バンビを捜すためトラヴァースタウンの上空を飛行している二匹。

「ん? どうしたダンボ?」

 ダンボの帽子にしがみついているムーシューがダンボの異変に気づいた。

 真っ暗な闇の中に溶け込んでいきそうなぐらい、ダンボが消えかかっていた。

 

 

(カシャン!)

「どう? 降参する?」

 ハートレスを全て倒したヒカリがターバンの占い師にロックセプターを構える。

 占い師はヒカリの魔法には驚かず、じっとヒカリを眺めていた。

「魔法、驚かないのね?」

「私も、同じ魔法使いですから」

 そう言って占い師は金の蛇の杖を取り出した。

「それに、コレはただの挨拶です」

(やっぱりこの占い師マレフィセントの仲間ね!)

 ヒカリは確信した。根拠は無いが、いつも何となくで分かってしまう。はじめは自分のカンの良さはあまり気にはしていなかったが魔法が上達するに従って自分のカンの鋭さが逆に不安になってきた。

 島から追い出された時から薄々感じていた何かがどんどん膨らんでいく。今の自分が真実に近付くにつれて、何かが、変わってしまうような気がして。

(今はそんな不安、考えてる場合じゃない!)

 

 未来よりも今が肝心!

 まずは目の前の事、片付けないと、走り出す前からすぐにつまずいてしまうよ!

 

 思わずロックセプターを握る手が強くなった。

「それにしても、勇ましいですな」

「褒め言葉なんていらないから、さっさと石のありかを教えなさい!」

「しかしながら実を言うと私めは他の星は初めてですから一緒に来ていただかないとどうにも……」

 コレは罠? うん、きっとそう。

 最悪、もしかしたらバンビ自体あそこに居ないのかもしれない。でも、それでも……。

 

 葛藤の末、ヒカリは占い死に突きつけたセプターを渋々おろした。

「わかった。一緒に、行くわ」

 噛み締めるようにヒカリが言った。

「そうしてくだされば丁重におもてなしをいたしましょう。と、その前に……」

 占い師はヒカリの目の前に杖を突きつけた。

 その瞬間――。

 

 

「たいへんだ大変だタイヘンダ~!」

 丁度良い所に赤いほうき星と丸い物体がアクセサリーショップのドアをぶち明けた。

 言わずもがなムーシューとダンボだ。

「どうしたんだい⁉ ヒカリは……まさか置いていったのかい?」

 戦闘中にヒカリと別れるなんて前代未聞。むしろそこまで遠くまで召喚獣を飛ばすことができるなんてありえないと驚くミッキー。

「だからだから~大変だってことさ!」

「何が大変なんです?」

 マフが作業台に乗り出してムーシューを見る。

「俺もこの目で拝む事が出来なかったんだが、ヒカリが――」

(バシュ!)

 突如。何かに吸い込まれるように二匹の召還獣達は元の輝く石の中におさまった。

「何でいきなり消えてしまったのでしょう?」

 マフが石をつついてみるがまったく意味がない。

「強制送還……いくら独学でもヒカリがそんなこと出来るわけ――」

 ミッキーはハッとしてムーシューとダンボの開け放ったドアから夜空の彼方を見上げる。

 

 

(魔力が切れ、た……)

 

 すぐにヒカリの視界がゆらいだ。

 視点が定まらない。まぶたが……重い。

 今までの集中が途切れ遠くのどこかで召還魔法が消えたのが分かった。

 それとともに今までかろうじてつなぎ止めていた気力の糸も、途切れた。

(バタリ)

 その場で力尽きるヒカリ。

 それを見下ろす占い師。

「召還など下手な小細工はよろしくありませんな」

 そう言って厚く巻いたターバンを取る占い師。

「では、行きましょうかヒカリ」

 名前を呼んだのは占い師――ではなく占い師の格好をした邪悪な魔法使いジャファー。

 ヒカリは固く目を閉ざしたまま。

真っ暗な闇へと落ちていく。

 

 

 空のとある一点を見てミッキーは振り絞るようにこう言った。

「ヒカリが……さらわれた」

「ええっ⁉ どうしてそんな事が?」

 マフはミッキーの顔を見上げて驚いた。

 歯を食いしばり、拳を作るミッキーは今までの彼とは想像がつかない。

 

「ついに、ヒカリに手を伸ばしてきたか!」

 

 ミッキーの双眸が鈍く輝いている。

 それは、例えるのならば。

 

『怒り』

 

 そうとしか呼ぶことが出来ない。

 

(これは、まさしく一大事です!)

 マフは何かに怯えるようにこう思った。

 

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