King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
10章 トラヴァースタウン4 短編
Another10~Frend Battle~
トラヴァースタウンを訪れると必ず出会うヒカリの自称ライバル、ユフィ。
出会い頭にいきなり戦いを挑んでくる彼女に今のヒカリはかまっている時間など無かった。
かといって、いつもの目と目が合ったら即バトルというお決まりの行動を今日の気分だけで無効試合にするのも自分が許せない。
しょうがない。ユフィにだけは急いでいる理由を打ち明けよう。
ヒカリは観念して両手を広げ頭の上まであげて攻撃をしない意思を見せた。もちろん今日は目を合わせないように地面に目を伏せて。
「誰にも言わないって約束するなら……話す」
「いいわよ、トクベツにタダでね☆」
「ええっ⁉」
思わずユフィへ顔を上げるヒカリ。
「なっ、何よ? そんなに驚いて」
「だ、だってユフィの事だから何か条件付きだって思ったから」
「モッチロン♪」
「やっぱり……」
即答だった。
そして、ユフィの顔はいつものヒカリとの戦闘以上に楽しそうな表情でこう言った。
「次のコロシアムでの大会、ヒカリも出て!」
「……なんで⁉」
ユフィの脅迫まがいな注文に数秒の時間をおいて何も言い出せなかったヒカリが始めに出した言葉が、これだった。
「もう~~質問を質問で返さないでよ!」
「し、質問じゃないって、ユフィのは『ヒカリも出て!』だって、疑問系じゃなかったもん!」
「じゃもう一回言うよ。次のコロシアムでの大会、ヒカリも出てくれるわよね?」
「……だから、なんで?」
「あ~もう~。アンタがそんなんじゃ話が進まないじゃないの!」
「だ、だって――」
(出来ない出来ない! そんなのぜぇ~ったい無い!)
と、心の中では叫びたいのだが。なにせ断る理由が見つからない。
いいや、見つけられない。
そんな心の葛藤など知ることが無い目の前の自称ライバルに本当は初めての試合で男装した自分が勝利していたなんて言えるはずがない。
そういえば――。
「ねぇユフィ。たしか、大会は予選で勝ち進んだ人しかエントリー出来ないんじゃなかった?」
たしかソラは初めてエントリーしたとき「おまえはヒーローじゃない!」と追い返されたほどだ。
「ふっふっふ、ところがどっこい! ユフィちゃんの情報によるとあまりにも参加者が少なかったために次の試合から特別枠として新たに挑戦者枠が設けられたのよ!」
「ちょ、挑戦者わくって??」
あまりにいやな予感がして聞き慣れない言葉を繰り返す。
「あ~ら? あくまでも知らを切るつもりねヒカリ?」
にんまりと笑みを浮かべるユフィ。
ヒカリの額からどっとイヤな汗が流れる。
「優勝者ミッキーがアンタ達と別れて戦おうってコンタンよ!」
「………へっ?」
あまりにも予想に反していたため思わず口をぽかーんと開ける。
「何アホズラしてんの?」
「え、ああ……それで?」
「要するに、アンタにミッキーからの挑戦状が来てるって事よ!」
「なんでそうなるのかさっぱりなんですけど」
ユフィの言ってるミッキーとは、間違いなく男装したヒカリのことだ。自分の発した言葉なら忘れるはずがない。
難しい顔をするヒカリにユフィは簡単なことだと腰に両手を当ててヒカリに言い聞かせる。
「だ・か・ら! 今回の挑戦者枠があるってことは
言わずとも外部からの強者を募集してるってことなの!」
「はぁ……」
自分はそんなこと言った覚えもないし、そんな気すらない。
ヒカリは納得いかないような顔で空返事するも、ユフィは難事件を推理するようにヒカリの前で歩きながらつらつらと解説する。
「ミッキーはこの前優勝してるから新たな参加登録者が無い限り出てこないってこと。また同じ参加者でトーナメントなんて組むわけ無いでしょ? 練習試合なんかじゃないんだから」
「う、うん」
「ちなみに先日のトーナメント戦、私とレオンは初参加だったわけ。ソラ達はこの前のフィルカップが初本戦だったみたいだけどハートレスしか居なかったからね、きっとそのせいで私とレオンが呼ばれたのよ」
この前の初出場の大会は、たしかペガサスカップって名前だった。そういえば試合の合間に中庭の垂れ幕見て気づいたけど、私はフィルカップやってなかったんだ。
どうりでソラ達の名前がてっぺんに書いていたわけだ。
「ねぇヒカリ! アンタと私ならきっとレオンとクラウドには負けないよ!」
いま、ユフィは―――何って言った?
「ねぇ、レオンが、誰と出るって?」
「だから、クラウド。ほら、この前試合に出てた金髪でツンツン頭の男!」
「うん、知ってる――って、ええ~⁉」
クラウドとレオンが、タッグだって!
「アイツったら性格までツンツンしてんだから!」
「ね、ねぇ……いったい全体、どっちが始めに言い出したのよ?」
どちらもクールな分類に値する二人がタッグですって!
そのイキサツ。非常に気になる
ユフィは複雑な表情でこう言った。
「それが……私にもよくわからないのよ!」
☆
レオンは観客が優勝者に声援を送る声を背にコロシアムロビーを後にした。
「ちょっと待ってよレオン~! もう少しだけ見て、こう……よ?」
レオンの歩みが止まった。
ユフィはレオンの前方をのぞき見る。
前方には。金髪。碧眼。揺らめくマント。
そう、クラウドが居た。
☆
「そんで?」
何気なく聞き返すヒカリにユフィは、
「……聞きたい?」
「え? うん、聞きたい」
「その後はね……」
☆
観客の声援がいまだ鳴り止まぬコロシアム。
そこから壁一枚挟んだこの場所はユフィ、レオンと目の前のクラウド以外、誰もいない。
レオンとクラウドの二人はただ見つめあい。
突如。剣を構えた!
☆
「ほんっと~うに、あり得なくない⁉ いきなり剣よ? 刃物よ! 二人ともどうかしてるって!」
「ユ、ユフィ……それで、どうなったの?」
☆
(ギンッ!)
「ちょ、ちょっとちょっと~レオン! いきなり場外乱闘はマズいって!」
ユフィが叫ぶが二人は戦いながら何かを話しているようだ。
(ガキィィイン!)
二人の渾身の一撃!
力と力は反発し、やがて双方は飛び退いた。
そして――。
「よし、成立だ」
クラウドがさっきまでの剣の打ち合いから一転し涼しい顔に戻りこう言った。
「次の試合、力を貸そう」
続けてレオンも同様にそう言って二人は剣をしまい、何事も無かったように別々の方へ。
「と、いうことでユフィ、すまないが今度の試合はアイツと組む」
レオンはユフィにこう言った。
「ええ~~っ⁉」
☆
「ほんっと、男ってよくわかんない!」
腕を組んで頬を膨らませるユフィ。それを聞いたヒカリは真剣な顔でぽつりと声を漏らした。
「それはきっと、二人とも……なにか同じ決意があったんだよ」
「ナニそのわかりきったような言葉! もしかしてアンタもそう言う……」
「ご、誤解しないでよユフィ! 誰があんな無口で陰気な……根暗野郎!!」
思わず口が滑って口を押さえるヒカリ。
ユフィをおそるおそる見ると――目を丸くしてこちらを見ている。
「ユ、ユフィ? 今のは、聞かない事に、ね?」
手を垂直に会わせて出来るだけ可愛らしく小首をかしげるヒカリ。
「ぶっ、あっははは……アタシも同感!! あはは、無口で陰気、ねくら……ひぃひひ……あ~おなか痛い」
「だ、だから、あ~もう! 二人には内緒だよ!」
本気でバカ笑いするユフィ。
なんだか赤くなるヒカリ。
(さっきの言葉は男装ミッキーの気持ちになって言ったなんて事、誤摩化しているなんて、気づかれて、ないよね?)
それよりもさっきのヒカリに戻った言葉の方がツボにハマったらしい。
「ヒカリが、そ、そこまで……言うってことはアイツらと戦うしかないわよね!」
笑いがまだ止まらないユフィが楽しそうにヒカリを誘う。
こうなってしまったからには、試合出場は取り消しようがない。
「……そうね、もう言ってしまったもんね!」
ヒカリは観念して参戦を承諾した。
「じゃチーム名は『ヒカリ&ユフィ』ってことで☆」
「何言ってるのよ、名前は『ユフィちゃん』の方が初めでしょ? ヒカリは未経験なんだから」
「だ~って……」
(ミッキーで出ていたのに……)
ここまで出掛かった言葉を飲み込むヒカリはすこし冷静になる。
どうしよう男装の方。
1位になったから前みたいにシード枠とかにはならないのかなぁ?
むしろ、不参加ってことでもいいのかな?
「ま、どうでもいっか語呂いいし」
「……うん!」
ユフィのこの言葉に一周回って同意した。
まぁいいか。
どうにもこうにも、楽しそうだし!
始めのきっかけなんて理由のないモノでいいじゃないの。始める動機なんて、理想でも、野望でも、不純でもいいじゃない☆
困った事は始めから分かる物なんかじゃない。
だから、
たまには、行き当たりばったりの人生もイイ!
「ヒカリ&ユフィ結成☆」
がっしりと手をつかむ二人にトラヴァースタウンの夜空が輝いた。