King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~砂漠の王都~

 

 ヒカリは見たこともない衣装をまとっていた。

 フワリとたなびく薄い絹のストールに真っ黒いトップス。スカイブルーのアラビアンパンツがオアシスのように爽やかな雰囲気だ。

 先の尖ったオレンジ色の靴が異国の衣装を明るく飾り、ところどころはねている髪にぐるぐる巻きにした真っ白なターバン。片方にはいつもの真っ赤なリボンがアクセント程度に結んでいる。

 コレでプロポーションが良かったら申し分無いのだが……。暑いんだからこの際スタイルはどうだっていいや。

 ふと、窓を眺めるとブロックを積み上げたような家々の向こう側に黄金の砂漠が広がっていた。

(やはりここは別の世界なのか)

 ミッキーに黙って出て行ってしまったことに少し心細さを感じた。

「お似合いですよ、ヒカリ。砂漠に可憐に咲き誇る花のようで――」

 赤い魔術師が自分に向かって社交辞令的なお世辞をつらつらと言っているがヒカリは無視した。

「名前、聞いてなかった」

「おやおや失礼しました。私の名はジャファー。このアグラバーの宰相です」

「ジャファー、アナタ達が欲しいのは私のロックセプターじゃないの?」

「アナタ達とは? もしやマレフィセントですな」

「……そうよ」

 ジャファーが絨毯にヒカリをもてなしたのでヒカリは腕を組みどっかりと胡座をして言った。

 どこからとも無く給仕がやって来て金のお盆に食事が運び込まれた。ヒカリの横にジャファーが座り、給仕により差し出された葡萄酒を片手に言った。

「マレフィセントではなく私の個人の興味です」

「なぜ、私にそんなに興味があるのかしら?」

 なんとなく対抗して社交辞令的に聞き返す。

「あなたは魔法を使う。それも誰も知りえない強力な力だと」

「……リクから聞いたの?」

「リクをご存知でしたか。彼は他の場所にでも居るのでしょう」

「え、無関係なの?」

「さっきも言ったでしょう、マレフィセントではなく私の個人の興味だと」

「そんな……」

 コレには少しショックだった。少しでもリクの同行が把握できたら大きな収穫だったのに。

 押し黙るヒカリにジャファーは話を続ける。

「アナタの魔法は他には類を見ないほどとても強大です。じゃぁ、なぜそんなにも強い力があるのだとアナタは疑問に思った事はありますか?」

 リクの事からいきなり我にかえるヒカリ。

「無い、とは言い切れないわ」

 今まで考えなかったと言えばウソになる。

 しかし、気にならないとは言いがたい。

 まだ魔法については未知な自分には、知る権利は無いのだと自分でタカをくくってきた。でも、ガセとかウソ偽りでも、いろんな可能性として知っておく必要はあるのかもしれない。

「そこでです、ヒカリ」

 ジャファーがヒカリの目線にあわせてささやくように言った。

 

 

 ヒカリがアグラバーの王宮で目覚め着替えをしていた頃――。

「着いたよ、マフ」

ミッキーがドアを開けてマフに言った。

「これが……砂漠」

 マフの目にした物は一面、乾いた匂いの広がる砂丘だった。乾いている上に焼けるように暑い。どこの星でも唯一変わらない真っ青な空は砂埃で白っぽく見えた。

「あった、あそこがアグラバー」

 マフがミッキーの指差している場所に目を凝らしてみると、緑の小さな点が見えた。

「……ちょっと、遠くないですか?」

「いつもの事さ、それに船が夜盗に襲われでもしたらどうやって帰るんだい?」

 マフの不平不満にミッキーがさらりと言葉を返すとマフは少しだけムッとした。

「ほら、早く行こう! ヒカリが待ってる」

 ミッキーはそう言ってグミシップから降りてマフに手を差し伸べた。

マフは自分で降り立とうとして下を見ると、ある程度の段差がある事に気づき――。無言でその手をとった。

 焼けるような太陽の下。乾いた砂丘を二人は地道にある一点へと歩んで行く。

「本当にあそこにヒカリさんが?」

「うん、間違いない」

「……なんで分かるんです?」

「彫金術ってさ、マフ」

「へ?」

「なぜマフは不完全な力をどうやって強化できたのだろうな? と思って」

「それは、ロックセプターの特性を判断して」

「そう、セプターの特性。マフはその特性を見極めてセプターの強化できるロケットを作ってくれただろう?」

「はい」

「彫金術って金属に彫刻する前に金属を溶かして形を作るだろ?」

「ええ、まぁ……ヒカリさんのセプターに付いている鍵の型を取って……って、もしかして!」

「そう、『鍵の形』から『錠に合う武器』を作り出したのだから『錠に合う鍵』は惹かれあうと思ってね」

 ミッキーがキーブレードを出現させ、指を一本立ててキーブレードをバランスよく水平に保つ。

 するとゆっくりと左右に揺れるキーブレードが動きだし、ぴったりと大きな建物の方に鍵の刃先が止まった。

「名付けて『ヒカリ・レーダー』ってそのまんまだけど」

 にっこりと秘密道具を名付けたように言う王様にマフはあきれて何も言葉が返せなかった。

 ミッキーは気をとりなおしてにっこりと解説。

「コレを考えたのはマフが初めて彫金術の説明をしていた時だったかな。同じアクセサリーが惹かれあうペンダントを見せてくれただろう? あれを思い出して考えたんだ」

「そのとおりです、彫金術は形を掘り出す事で金属に宿る力を強める術です。含有量や魔法的になにか同一のある金属は絆があります。しかし、これほどまでの絆がミッキーさんのキーブレードとロックセプターにあったなんて……」

「僕とヒカリのはじめてキーブレードとロックセプターが出現した時期は、おそらくほぼ同じなんだ」

「星を抜け出してまでも一つの物だけを指し示す金属。いくら素材が良い物だとしてもそれだけでは理屈は通りません。ですが、それならば、私が考えられる事は――」

「マフ、待って」

 マフが彫金術についてあれこれ考えているうちに気がつくとアグラバーがすぐ目の前だった。

「街が賑やかじゃない。ここからはハートレスが出るようだ」

「目指すは敵の本拠地ですね」

「そのようだ……準備はいいかい?」

「はい!」

 二人は街の中を突っ切るように走り出す。

 四方八方から砂漠にふさわしい異国風のハートレスが飛び出した!

 そこに突如。向こう側から走ってくる――。

 見慣れた三人のシルエットをとらえた。

 

「あっ!」

 マフが声を出すのと同時にミッキーはソラと目が合った。

 

 その瞬間。

 

「うっ……」

ミッキーは渋々。キーブレードを消失した。

 囲まれるミッキー。

(こんな時に、何やってるんですかっ!)

 マフはミッキーを助けるために駆け出した。

 

 

 




 マフの言いかけたキーブレードとロックセプターの絆。完結でフラグ回収忘れていたのでここだけの話で書くならば

「星を抜け出してまでも一つの物だけを指し示す金属。いくら素材が良い物だとしてもそれだけでは理屈は通りません。ですが、それならば、私が考えられる事は――星よりも強い絆がロックセプターにはあるのでしょう。ヒカリさんが鍵穴を見つけることができるのも、あながち本当のようですね」

となります。
言わずもがな。今回は色々と、どえらいことやってくれますので、それ以上の考察は言わなくても大丈夫になってしまったのでこの話の続きは書かなくていいかと至ったわけです。
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