King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
丸い大柄のハートレス達がミッキーを取り囲む。
その後ろでは駆け出してくるソラ達。
(マフが僕の目の前にいるハートレスへ到達するまでにはまだ遠い――かといって僕のキーブレードはソラ達の前では使えない!)
「こんな時にかぎって『鍵』が使えないなんて!」
ミッキーは小声で言葉をもらした。こんなピンチの時でもなんて余裕あふれる言葉だろうと我ながら楽観視する。
「とりあえず、ファイア!」
ミッキーが魔法を唱えると、炎の球がハートレスの身体に当たった――が。当たって砕けた。
「えっ?」
ミッキーはヒットしたのかガードされたのかまったく分からなかった。
ハートレスは、ただきょろきょろしている。そして大柄の丸いハートレスが思い出したようにお腹を叩き――。
(ゴオォオオ~!)
炎を吹き出した!
「いっ……⁉」
驚いた表情を引きつらせ駆け出すミッキー。
(しまった。ここのハートレスの属性は炎だった)
炎の後は体当たりにかかるハートレス。
「ちょっ! ごめん、タイム、ターイム!」
ミッキーが叫んで目をぎゅっとつむると――。
「あ、あれ?」
ハートレスが固まっていた。
その上では時計が逆にクルクルと回っている。
「たっ、タイムの呪文、ストプラか……」
思わず叫んだスペルに助けられたミッキー。そして、ほっとしたミッキーの目の前でハートレスが消えた。
「よかった~無事?」
ミッキーの目の前からソラが参上した!
「ありがとう、助かったよ」
「そんなのおやすい御用!」
ヒカリに似た明るい少年がミッキーとは色違いのキーブレードを振るっていた。
「もう~戦うの? 逃げるの? 戦うならちょっとは自分で頑張ってよ!」
その後ろではドナルドがミッキーの後ろを狙っていたハートレスを撃破。
「ドナルド~この人は武器らしきものを持ってないからきっと戦う気は無かったんだよ」
さらに加勢しに来たグーフィはハートレスへ突進し退路を確保。ミッキーをかばうように盾をハートレスへ向ける。
「グワッ?」
ドナルドは不思議そうにミッキーを見る。
ソラよりは高い身長の黒髪の青年は今、武器らしきものは手にしていない。
腰から下のポーチにはいくつかのアイテムがおさまっているようだがすぐに取り出せるようなものではなさそうだ。
「ホントに武器、持ってないんだ?」
率直な質問を投げかけるソラ。
ミッキーはそんなソラの顔を直視できずに言った
「……うん」
「ええっ~⁉」
驚く三人。声もきれいに三重奏。
「何やっているんですかっ!」
あり得ないとばかりに叫ぶ三人の間からハートレスを片付けたマフが飛び出してきた。
「ごめんマフ……」
「まったく! 武器ぐらい私に言ってください!」
マフがミッキーを叱る。
小さな少女に叱られる青年に三人は思わず目を見合われた。
「ゴメン」
ミッキーはこの上なく落ち込で、それしか言えなかった。
マフはあきれたように深いため息をついて、ズイと剣のモチーフの付いた金色の鎖をミッキーに差し出した。
「上に……放り投げてください」
怒っているがちゃんと説明をするマフ。
ミッキーが軽く放り投げると――。
(シュビン☆)
鎖の絡まる曲り刃の剣になった!
「わぁお!」
鎖の変貌にソラが驚く。
「剣になっちゃった!」
ドナルドが仰天。
「持ち運びに便利そうだね~」
グーフィがのんびりと評価。
「三人とも、驚かせてごめんよ……」
困ったように笑うミッキーの表情が一変する。
ミッキーは三人の背後で、襲いかかろうとしていた黒い影へ金色の軌跡を描いて倒した。
(バシュ!)
「おお~!」
ミッキーの攻撃を見た三人は、思わず感嘆した。
☆
「え~と、前にヒカリと居た……」
「ミッキーのお師匠様!」
「お久しぶりです~」
ソラ、ドナルド、グーフィ―の順で答えを導く。
「僕も、覚えているよ。ソラ、ドナルド、グーフィあの時はトロフィーありがとうってミッキーが言っていたよ」
「そういえば、あんたの名前聞いてなかったな」
ソラが率直にミッキーに聞いた。
「僕はマスター」
ミッキーが名乗った。
「マスターか……よろしくな」
ソラが何も疑問なく答える。
「この前ヒカリが師匠って言ってたのはマスターさんって名前だったからなんだね~」
グーフィ―がズバリ言い当てる。
「師匠って言うと僕のお師匠様のことも思い出すんだよ……」
ドナルドがぽつりと言葉をもらす。
「マーリン様のこと? あっちはマスターっていうか先生って感じなんだよな~」
ソラが腕を頭に組んで言った。
ミッキー改め、マスターは憂いの満ちた表情で、しかしなにか言いたげな表情で三人を見ていた。
「そんでさ、早速だけど……お願い! もう一回その武器見せて」
そんな表情などつゆ知らず。ソラがマスターにせがむように言った。
「うん、いいよ」
マスターは鎖を放り上げる。
(シュビン☆)
金色に鈍く光る刀身。柄から刀身に絡まる鎖の曲り刃は剣舞に使われるような見事な装飾品だった。
「すっごい!武器になっちゃった!」
ソラがはしゃぐ。
「カッコイイ武器!」
ドナルドが背伸びして武器を眺める。
「この子もトラヴァースタウンで見たことあるよ」
グーフィの言葉で二人はマスターの剣から少女に視線を移動した。
マフはあわててぺこりとお辞儀をする。
「申し遅れました。マフです。アクセサリーショップの上にある合成屋さんで働いています!」
「合成屋って? そんなお店があったんだ」
ソラがマフの長耳帽子を眺めて言った。彼女のおでこの上付近にちょこんとつぶらな瞳が二つ輝いている。大きく垂れた二つの耳のような飾りは少女の背中まで伸びている。たぶんピンクのウサギだ。
「はい、今度立ち寄るときにはぜひ見に来てくださいね!」
愛想良くマフがソラに言った。
(この子、なんだか癒されるなぁ)
ソラもにっこりとマフに笑いかけた。
そんな二人の表情の後ろでマスターは……。
(なんで僕だけ?)
いつもはしない失敗で見誤ってしまったし、ソラ達に助けられるし、マフは僕だけ態度が違うし。
いつもの調子が出ない状態に誰も見ていない所で、思わず肩を落とした。