King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

86 / 167
~敵対~

 

 アグラバーは中を探しても人の気配が無かった。ハートレス一匹さえ出てこない静かになった街での捜索は大変はかどった。さっきまでここでハートレス対峙をしていたあろうソラ達に感謝しなくてはいけない。奥まで行くと城まで後一歩の所で王宮の扉へ続く道が閉ざされていた。

「行き止まりか……」

「向こうへは行けませんね」

 マフが王宮への扉を眺める。迷宮のように高々と連なる建物もそうだが目の前にそびえる大きな扉は開くのが困難だろう。

 そんな中。

「ハ~イとうちゃーく☆」

「もう着いちゃった!」

「うわぁ~速いっ!」

「あっという間だったね~」

「さすが魔法の絨毯だよ」

 賑やかな一行が再びやって来た。砂漠からやってきたソラ達だ。

「皆さんと……?」

 マフがソラ達以外の人物。ターバンを巻いた青年、足のない青い魔人と、浮遊する敷物を見る。

「やぁ僕はアラジン。この浮かんでいるのが空飛ぶ絨毯。それと……」

「僕ちゃんはジーニー。無敵の魔人ジーニーさ! あ、それとこっちは魔法の絨毯ね。はい自己紹介終わり☆」

「僕はマスター」

「マフです」

 続いて微笑むマスターことミッキー。ぺこりとお辞儀するマフ。

「ジーニーはランプの魔人なんだ」

 ソラはアラジンが持っている古びた黄金のランプを指差した。

「持ち主はなんでも願いを三つだけ叶えてくれるんだって」

 ドナルドがなぜか小声で言う。

「三つ叶えたら誰かがまた見つけてくれるまで出て来れないんだって~」

 グーフィが気の毒そうに引き継ぐ。

 マフとマスターは感心してジーニーを見る。

「ヤッハー☆ここが王都? ダーレも居ないじゃないか~もしかして陰謀の予感? これからさらわれたお姫様を救い出しにいくのだな! よぅ~し行くぞ!待っててお姫様~ってな展開?」

 なんだか、当人に気の毒と言ってしまうにはかなり陽気で、よくも悪くも苦笑にしかならなかった。

「君たち、ジャスミンをみたかい? この国のお姫様なんだけど」

 アラジンが気を取り直して二人に聞いた。

「この街をくまなく歩き回ったけど、人の気配はどこにもなかったよ」

「ヒカリさんも居ませんでした」

「そうか。やっぱり王宮にいるのかな」

「それがあいにく王宮に行く道は塞がれているみたいです」

 マフが真っ直ぐな道を指差す。大きな入り口には天高く沢山の木箱で塞がれていた。

「それなら問題ない。僕にかかればここの街は行き止まりなんかまったく見当たらないよ」

 アラジンが得意げにマフに言った。

「だって、壁が高くて……」

「コイツに乗れば壁なんか無い」

 アラジンが絨毯を指差す。

「……ああっ!」

 上下に浮遊する絨毯を見て嬉しそうにマフが声を上げた。

「街にはフタがないだろ?」

 そんなマフを見てアラジンがウインクした。

 

 

 始めはソラ、ドナルド、グーフィ。最後にマフ、ミッキー。アラジンが絨毯に乗って王宮前に降り立つ。絨毯に乗って王宮前へ抜けると――。

「ジャスミン!」

「ヒカリ!」

 アラジンとミッキーの声がかぶった

「ヒカリ! なぜキミがこんな所に…?」

 ソラがヒカリに聞こえるように叫ぶが、彼女はまったく聞こえないようだ。

「愚かなる振る舞いはジャスミン姫もお喜びになるまいぞ」

「ごめんなさいアラジン」

 ジャスミン姫が前へ出ようとするのをジャファーが遮る。その間でヒカリは背を向けたまま一歩も動かない。

「ジーニー、ジャスミンを助けてくれよ」

 そんな中アラジンがランプをこすって言った。

「お安いご用だ、これで二つめの願いだぞ」

 いきなりの背後からの声にジャファーが驚き、振り返るとジーニーがジャスミンを抱きかかえる。

 しかし余裕そうにジャファーが振りざまアラジン達に言った。

「申し訳ないが、二つめはそこでキャンセルだ」

 アラジンが驚いて思わず自分の手を見る。その手にはさっきまで手にしていたはずのランプが無い!

「すまんね、アル」

 ランプの所在が分からなくなるととたんにジーニーの姿が煙となってランプの中に消える。抱かれていたジャスミンは悲鳴を上げて地面へと落下。その真下にあった壷にすっぽりとはまってしまった。

「どうして、ランプが無い⁉」

 アラジンが慌ててあたりを見渡すが――。

 

「ああ、ありがとうヒカリ」

 

「!」

 ジャファーの声に全員がヒカリに注目する。

 ヒカリの手にはさっきまでアラジンが持っていたランプを持っている。

「なんで僕のランプが?」

「あれは……ヒカリのタイムの魔法か」

「魔法⁉」

 マスターの声にソラ達が驚く。

「タイムの魔法は全ての空間を止めて彼女だけが行動できるんだ。言うなれば、ストップの逆法則の魔法だね」

「なんて魔法だ」

 知らない魔法にドナルドがうなだれた。

ヒカリはソラ達に背を向けたままジャファーにランプを渡した。

「それでは。ドブネズミの諸君。ごきげんよう」

 ジャファーがランプを持って消えると合図があったようにタルが連結し、ハートレスが出現!

 ジャスミンの入ったタルもハートレスの一部と化す。そして王宮前から街の方へと向かっていった。

「たすけてアラジン!」

 ジャスミンのくぐもった声が遠くで聞こえる。

「助けにいくぞグーフィ!」

「待ってよドナルド~」

 二人はハートレスを追いかけて行った。

 ドナルドとグーフィに続かなかったソラが納得いかないようにヒカリに叫ぶ。

「なんでだよ! なんでヒカリがアイツらの見方になってるんだ!」

 彼女は背を向けたまま無言だ。

 ソラはヒカリへ向かって駆け出したが――。

(シャン)

 ヒカリはロックセプターの先端をソラへ向ける。

 今にも魔法がすぐに放たれる構え、彼女は明らかに戦闘態勢だ。

「ソラ! ジャスミンを助けないと!」

 アラジンがソラをせかす。

「分かってるって……」

 悔しそうに睨みつけるソラ。ヒカリは冷めた目でソラを見据える。

「ソラ、ヒカリは僕とマフがなんとかするからキミはジャスミン姫を助け出してくれ」

「っ……わかった!」

 マスターもといミッキーの言葉にうなずき、ソラはジャスミンの救出に駆け出した。

「ありがとう、ソラ」

 そうつぶやいてソラを見送るミッキー。その横にはマフがさっきまでのソラのような表情でヒカリに対峙する。

 

「お姉さんの記憶が無くても……ヒカリさんが心配なんですね」

「さっきのソラはどう思ったかい? ヒカリ」

ミッキーがヒカリに言う。

 ヒカリはロックセプターを構えマフとミッキーを無言で見据えていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。