King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~闇の魔法~

「どうだい、魔法の絨毯の乗り心地は?」

 得意げにアラジンが言う。

「アッヒョこれならひとっ飛びだね☆」

 グーフィが耳をはためかせながら爽快に言う。

「ありがとう、これで砂漠を渡らずに済んだよ」

 すまなそうに苦笑するマスターはまだヒカリとの戦闘を引きずっているようだ。

「ひゃっほ~♪」

 その隣では上機嫌にソラが叫ぶ。

「こんなに乗っても大丈夫だなんて……」

 マフはこの状況に言葉が出ない。

「グワワ! は、速いぃ~」

 マフの長耳帽子にしがみつ居ているのは今にも飛ばされそうなドナルド。

 

 魔法の洞窟は魔法の絨毯が知っている。

 魔法の絨毯はまさに魔法だった。

 重量順に言うなら。アラジン、グーフィ、マスター、ソラ、マフ、ドナルド。総勢六名が絨毯にしがみついているのだが、飛行速度はかなり速い。

 

「マスターはさ、ヒカリとはどこで知り合ったの?」

 ふと、ソラが隣に居たミッキーに聞いた。

「トラヴァースタウンだよ。倒れている所をたまたま通りかかって助けたんだ。行くあてが無いようだったから一緒に付き合ってもらってる」

 思いはせるようにミッキーが言った。

「そっか、オレと一緒か」

「……そうだね」

「それじゃぁさ、あのミッキーは?」

 唐突なソラの質問にマフがあっと驚くが、ミッキーは眉一つ動かさずにヒカリの男装の彼のことについて答えた。

「僕が初めて出逢ったのはオリンポスかな? 彼はヒカリの方の付き合いが長いからね、僕が言えるのはそれぐらいかな」

「ヒカリの知り合いなのか?」

「そう言えるね」

「ふうん」

 マフがミッキーの表情を眺める。いつもだと自分の名前に少し動揺するはずなのに、今はそれがなかった。いたって冷静に答えているように見えるが、実は逆。ヒカリが心配で心ここにあらずのようだ。

 

「たしかこの辺に……あった、あそこだ。タイガーヘッドの入り口は――」

 アラジンが指差した場所にそびえる大きな虎の像。そこの入り口は閉ざされていた。

「いったいどうしたんだ?」

 アラジンが怪訝な顔でタイガーヘッドを見つめている。

「ハートレスの仕業だね」

 皆がいち早く気が付いたミッキーの方を見る。

「マスター、どう言う事ですか?」

 マフが顔を突きつけるようにミッキーとソラの間に割り込む。マフが動いたので後ろで落ちそうになっていたドナルドがグーフィに抱き着いた。

「俺たちにも分かるように話してくれよ?」

 さらにソラがマフの後ろで彼に聞く。

「闇の力に取り付かれているようだ。ほら、あの両目を見てごらん」

 タイガーヘッドの両目はゆらゆらと真っ黒い影がまとわりついていた。

「正気に戻してあげないと先へは進めないようだ」

「でも、どうやって?」

 ソラがさらに質問。ミッキーがズバリ先生のように微笑みながら答える。

「衝撃を与えて正気に戻すんだ、ちょっと粗治療だけどね――それと闇には光の魔法が効果的だ」

「光の魔法って俺、持ってないよ!」

 ソラが頭を抱える。

「いいや、君にもちゃんとあるさ」

 マスターは難しい式の答えを導き出す先生のように得意げに言った。

「ファイア、ブリザド、サンダー……みんな放つ時、輝くだろう? それが光の魔法さ」

「……ようは、いつものように叩けってこと?」

「そうなるね」

 きょとんとした生徒に、簡単だろと言いたげに先生が言った。

「なるほど~」

 納得するグーフィ。

「これならソラでも簡単だね」

 頷くドナルド。

「なんだよドナルド。俺以外なら誰でも出来るのかよ~」

 ドナルドに反論するソラ。

「さすがにハートレスを一人で倒すのは簡単ではありませんよ」

 委員長のように皆の意見をフォローするマフ。

「逆に、誰でも出来るってことは……みんなで出来る!」

 アラジンが先制で絨毯から降りたって走り出す!

 みんながそれに続いた。

「みんな! まだ先は長い、ケガには十分気をつけてね!」

 駆け出す生徒たちにミッキー先生が叫んだ。

 

「楽しそうですねマスター」

「……何か言ったかいマフ?」

「いいえ、なにも――私も行きます!」

 一瞬ミッキーにほほ笑み彼女は駆けていった。

 アラジンとソラはタイガーヘッドへ、ドナルドとグーフィは周囲のハートレスの駆除。マフはその援護に入る。

 マスターはマフの作ってくれた武器を取り出して軽く構えた。

 

「――ああ、楽しいよ。もしも、この場所にヒカリが居てくれれば、尚更ね――」

 一瞬だけ、眉間にしわを寄せたミッキーの表情は誰も見る事が無かった。

 

 

 なんとか洞窟に入る事が出来たソラ達。

 アラジンの助けもあって宝物庫までたどり着く事が出来た。

 目もくらむほどの金銀財宝の輝く部屋の向こう。

そこには――。

「おや、ドブネズミの皆さんが揃いもそろってお出ましですかな?」

「そこまでだジャファー。ジーニーとジャスミンを返してもらおうか!」

 アラジンがジャファーの横に居る意識の無いジャスミンと元気の無いジーニーを見て叫ぶ。

「ヒカリさんはどこに居るのですか!」

 マフがきょろきょろと回りを見渡したがヒカリの姿は見つからなかった。

「どのみち、ここからは出口しか無い、追いつめたぞ!」

 ソラがキーブレードを突きつけてジャファーに言った。ジャファーは余裕な表情でソラ達を眺めランプを掲げる。

「さてそれはどうかな? ジーニー奴らをやっつけろ!」

「ごめんよアル~ランプを手にしている人の言う事には絶対に逆らえないんだ~」

「だったら、ランプを取り返せば良いんだよな、まかせろ!」

 戦闘を嫌々始めるジーニー。アラジンがジャファーをにらみつける。

 

「ジーニーは僕がなんとかするからそのうちにアラジン、ソラ達はジャファーを!」

「わかった」

 この中では一番危なげなく戦うミッキーがランプの魔人の相手を引き受けた。

 

 

「くっ……次はどこだ!」

 ジャファーがどこから現れるのか周りを見渡すソラ。その背後から、

「ここだ」

「うわっ!」

 飛び跳ねるソラ。真っ黒な玉が足下スレスレを通過する。

「あっぶね~な!」

 キーブレードを振り下ろすがまたもやジャファーが消える。

 しかし、地味ながらも一番厄介なのはジーニーだった。

「あでっ!」

 頭上から光る星のかけらがソラの頭に直撃するがあまりダメージは無かった。

 マスター、マフ、ドナルド、グーフィ―がジーニーの相手でも、さすがにすべての魔法を防ぐのはランプの魔人にはかなわない。

「ごっめんよ~みんなお願いだから当たらないでくれよ!」

「当たるなって言われても、これじゃ集中できないじゃん!」

 ドナルドが魔法を唱えようとするがジーニーに邪魔をされていた。

「まかせて~」

「防御は私が!」

 グーフィーがジーニーを引きつけマフがハンマーを変形、銀のパラソルに変化。ジーニーの魔法からドナルドを守る!

 この三人の連携ぶりはなんだか……可愛い。

 見とれてる場合ではない!

 こっちはジャファーをなんとかしなくては。

 作戦支持を変更し、マスターがソラとアラジンのもとへやってきた。

「ソラ、ジャファーの行動を見切るんだ」

「見切る?」

「僕とアラジンが気を引きつける。そのうちにジャファーの次の行動を予測するんだ」

「分かった!」

 黒い球が移動するがアラジンとマスターとで挟み撃ち。ソラへ向かって黒い人影へと姿が変わる。

「ソラ!」

 アラジンとマスターが叫ぶ。

「くらえ、ソニック!」

 ソラが影へ向かって四方から目に見えない速さで何度も突きを繰り返す!

 そして――。

「――おのれ、ドブネズミの分際で!」

 よろけるジャファー。しかしランプはまだ手の中にある。

「勝負あったって所だな?」

「観念しろジャファー!」

「ヒカリはどこに居る!」

 ソラ、アラジン、マスターに詰め寄られるがジャファーはある人物を見つけ、余裕のある態度へ変わった。

「丁度良い所にお出ましですな……ヒカリ!」

「⁉」

 皆が一斉にジャファーの視線へ部屋の中心に彼女がいた。

「ヒカリ、元気そうじゃん!」

 ソラが駆け寄ろうとしたが、マスターがそれを制した。

「……なにか様子がおかしい」

「なにが?」

 ソラは訳が分からずマスターの表情を見る。

「さっきのタイガーヘッドのように……ヒカリが今は正気じゃない」

「こんな事があろうかと……ちょっと細工をしてましてな」

「⁉」

 皆が一斉にジャファーを睨みつける。

「いったいヒカリに何をしたんだジャファー!」

 ソラが叫ぶ。

 

「闇の力だよ――」

 

「今、なんて……⁉」

 マフが息をのむ。

「彼女、ヒカリに闇の力を授けたのだよ‼」

 ジャファーが腕を広げて高らかに笑う。

「そんな、まさか、ヒカリが……?」

 ソラが目を見開き思わず一歩後ずさる。

 

 信じられない気持ちと恐ろしい予感。

 今から彼女が何をするのか分からない。

 分かりたくない気持ちに、気圧されるように後ずさるソラ。

 その横のマスターが、その気持ちに反するように、一歩前に出る。

 

「僕はヒカリを信じる」

 

 ソラは近くにいたから分かった。

 マスターが少し震えているのが見えた。

 ヒカリはソラ達とジャファーを見る。ゆっくりと腕を上げるとロックセプターが現れた。

 

 真っ黒な闇が彼女の周りをゆっくりとまとう。

 その空気がロックセプターの出現とともにゆらりとその気を揺らした。

 彼女の口が開き、囁きに近い呪文が唱えられる。

 今まで使ってきた魔法とは根本的に違う。

 これはなんと言えばいい?

 それは言い表すのであれば、全ての万物に宿る活気にみちた光とは正反対。

 全てを呑み込む、漆黒の光。

 

「ダークネス・バースト!」

 

「なっ……っ⁉」

 意表を突いた声が誰かから聞こえた。

「なぜっ……ヒカリ!」

そう言って倒れたのは、ジャファーだった。

「魔法対決……じゃなかったの?」

 そう答えたヒカリの声は、とても冷ややかで抑揚の無い言葉だった。

「どうしてお前は、なぜっ闇に、とらわれない⁉」

「とらわれ、ない……?」

 不思議そうな表情から一変。

 いつもの彼女の強気な顔に豹変した。

「冗談! 私は闇の魔法使いこれしきの事で自我は、崩壊……しな、い」

(バタッ)

「ヒカリ!」

 彼女が倒れると皆は一斉に叫んだ。

「おのれ、こうなってしまったのなら……ジーニー最後の願いだ! 私を、最高の魔人ジーニーにしてくれ‼」

 さっきまでの魔法の嵐が途切れ、マフ、ドナルド、グーフィが不思議そうにジーニーを見る。

 ジーニーはおしまいだとばかりに目を多い、自分の指先から放たれた魔法がジャファーに当たると大きな力とともに地面が崩れた!

「グワァ⁉」「アッヒョ!」「きゃっ」

 三人は崩れる床から避難。

 おそるおそるその下を眺めると、真っ赤な溶岩の見える地底洞窟だった。

 その溶岩からも強い力が発せられ人の形となる。

 無敵の力を得た『魔人ジャファー』が現れた!

 

 

「俺たちはジャファーの所に行くよ!」

 そう言ってソラ達は先ほど出現したマグマが流れている最新部へ飛び込んだ。

「僕も行く」

 ミッキーはヒカリを見つめ立ち上がった。

「マスター。わたしも!」

「だめだ、ヒカリを一人にしてはいけない」

「でも!」

「今、ヒカリを一人にしてはいけない。でも、それよりも今は、ジャファーがヒカリに何をしたのか詳しく知りたい」

「……わかりました」

「頼んだよ、マフ」

 かたく目を閉ざしているヒカリをミッキーはちらりと眺め、決意のこもったまなざしで走り出した。

 

 

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