King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~ごめんなさい~

 

 魔法の洞窟の最新部にたどり着いた私と王様ことマスター。そしてアグラバーで出逢ったアラジンさん、ソラさん達。

 そこに待ち受けていたのはハートレスを操るアグラバーの宰相ジャファー。ランプの所有しているジャファーに逆らえず、嫌々ながら命令を聞いている魔人のジーニーさん。

 そして、ヒカリさんが居ました!

 アグラバーの世界で出会ってから私たちに敵意を向けているヒカリさんは、なんと闇の魔法『ダークネス・バースト』の魔法を繰り出したのです!

 しかも事もあろうことか先ほどまで一緒に居ましたジャファーへ!

 そして理由も分からぬまま、ヒカリさんは倒れてしまいました。

 ヒカリさんに裏切られたであろうジャファーは切り札としてジーニーさんにこう言いました。

 

『私を無敵の魔人ジャファーにしてくれ!』

 

 部屋の底が崩れ落ちジャファーは真っ赤なマグマの流れる地の底へ。アラジンさんとソラさん達はジャファー討伐のために飛び出して行きました。

 そして王様も――。

 

「ヒカリに何をしたのか詳しく知りたい」

 そう言って真っ赤に輝く地底へと飛び降りて行きました。私は固く目をつむるヒカリさんを見つめ、ただ祈るだけです。

 何かを探し求めていたヒカリさん。私にも王様にも言えない何かを抱えていたヒカリさん。

 どうか必ず突き止めてください。

 ヒカリさんの心の闇を取り払うすべを――。

 

 

「ふぅ……とりあえずひと安心です」

 マフは魔法の絨毯と一緒にヒカリを鍵穴の目の前、ジャスミン姫の場所まで移動させた。

「絨毯さんもおつかれさまです」

 深々と頭を垂れるマフに絨毯はそれに習うようにぺこりとお辞儀する。

 息は荒くはないがぴくりとも動かずまぶたを閉じているヒカリにマフは心配がつのる。

(いったい、どうしてこんな事に?)

 しばらく経つと洞窟全体が呼応するように大きな地響きが聞こえ、時おりパラパラと砂埃が部屋のスミに舞い上がる。

 マフは心配になって大きくうがたれた穴をのぞいた。

「御武運を王様――」

 祈るようにマフがつぶやく。

 普段は顔を合わせれば心ない言葉を投げかけてしまうが本心ではヒカリよりも心配に思っている。

(だって……似ているんですもんーー)

 それは自分でさえも分からない。

 心の隅っこでそう思っているだけ。

 思い出せない憤りが普段の王様に対しての態度になってしまう。

(コレって八つ当たりなんでしょうかね?)

「!」

 マフの後ろ。入り口から人の気配を感じた。

 それが誰なのかを予測したように、振り返りマフはハンマーを出現させる。

 小さな少女は大きな決意がこもったまなざしで相手を見据えた。

 そこにはリクが居た。マフはマレフィセントと一緒に居た少年をトラヴァースタウンで見かけたことがある。それがヒカリの言っていたリクだとすぐにわかったのは偶然にもヒカリとリクのいつかの決闘を影で見ていたからだった。それにあの時の……リクの記憶を消すヒカリにマフは自分が見ていたなんて言える状況じゃなかった。

 でも、今はそのことはどうだっていい。

「誰であろうと今のヒカリさんには指一本触れさせません」

 マフは落ち着いた声で言った。

「小さいのに恐れないんだな」

 マフの大きな瞳には、冷めた表情で彼女を見下ろすリクが映っている。

「恐怖は大きさの関係ではないです。それよりは今は――」

 マフはヒカリを見る。

「守りたい人がいるから、恐怖なんて問題ありません!」

 そう言ってリクへと視線を向けた。

「それに、今は勝つ事なんて考えていません……『守り抜く』それだけのみ!」

 さっきまでの不安の表情は微塵も感じさせない。年齢とは関係のない毅然とした態度。今のマフの表情は揺るぎない。

「それは勝てない相手でもか?」

「ずいぶんと自信がおありですね、リクさん」

 すねたような表情のマフ。

 だが、今のマフはあなどってはいけない。

 大きな瞳はターゲットを真っ直ぐに見据え、いつでも武器を振りかざす絶好の位置に構え。しかしながら不意の攻撃に備え腰を低くしている。

 目の前の少女。戦闘の経験は十分にそなわっているだろう。

「何を言っても決意は変わらない事は分かった」

「……一つ、聞いても良いですか?」

「なんだ」

 いつでも動ける状態のマフはためらいがちにリクに聞く。

「ヒカリさんは……いいえ、なんでもないです」

「中途半端だと気になるだろ?」

「……ヒカリさんはアナタの事をどう想っていると思いますか?」

 リクはマフの側にいるヒカリを見る。

「コイツは俺の事をライバルと言ってきた」

「本当にそれだけだと思いますか?」

 マフの言葉にリクは顔をしかめ、少し時間を置いて言った。

「俺の知っている事と知らない事をコイツは知っている……不公平極まり無いヤツだ」

 そこまでリクは言うと、ふぅと肩を落としてこう続けた。

「おまけに敵意むき出しだ。コイツは、いつか俺に話してくれるのか?」

 その発言にマフは目を丸くしてリクを見る。

「あなたがそう思ってらっしゃるのなら、きっと……きっと話していただけると思います」

 思わずくすっと笑うマフ。記憶がなくてもヒカリの幼馴染の彼のままなのがうれしくなった。

「そうか」

 マフの笑顔に微笑してつぶやくリク。

「しかし、俺は急いでいる」

「ぇ……」

(ギィイン!)

 金属と金属が合わさる澄んだ音が響くと、リクは素早い太刀使いでマフがとっさに構えたハンマーを凪ぎ払う!

「きゃっ!」

 リクの攻撃にマフはハンマーもろとも飛ばされヒカリの側を離れてしまった!

「し、しまった……あぐっ!」

 気を緩めてしまいリクの不意打ちに受け身が取れず転がるマフ。

(ズザザーー)

「ヒカリ……さん!」

 起き上がろうとするが、体が言う事を聞かない。

(どうして⁉)

 何かの力が……マフの自由を奪っている!

 おしつけられたような頭を上げるので精一杯だ。

 上が向けられない視界の中でリクが抱き上げるのが見えた。

「待って……」

 地下で響く轟音にその声は負ける。

「待ってぇーー‼」

 もう一度、誠心誠意声を張り上げるマフ。

その声もむなしく、リクは闇の中に消えた。

 今この部屋には、地下で暴れる魔人の声が低く響くのみ。

「守るって……言ったのに」

 薄れゆく意識の中、真下の魔人の大きなうなり声が遠くで聞こえた。

 

 

「ランプに戻れ! ジャファー」

 ソラがランプを持ってジャファーに叫ぶと小さなランプの中に大きな魔人がすっぽりと吸い込まれていった。

 ソラ達が鍵穴の前にたどり着くと、そこにはマフが倒れていた。

 周りを見渡しても少女しか見つけられない。

「あれれ? この子だけ⁉」

 ドナルドが驚く。

「ジャスミンとヒカリと……あと、さっきまで一緒に戦っていたマスターが、いない?」

ソラがあちこち眺める。

「さっきまで一緒に戦ってくれてたのに……どこに行ったんだろ?」

 グーフィーがさっきまで乗っていた魔法の絨毯をめくる。

「ジャスミン! ジャスミーン!」

 ジャスミンを探すアラジン。

 ソラがアラジン同様、洞窟の至る所を見渡すがやはり見つける事が出来なかった。

 そんな中、鍵穴が輝く!

 ソラがそれに気づきキーブレードを差し出した。

 キーブレードから一筋の光が鍵穴に吸い込まれひときわ輝き、それが消えると鍵穴からガチャリと音がして――やがて消えた。

「ねぇマフ起きて! 何があったのか教えてよ~」

 ドナルドがマフをゆするが顔を歪ませるマフ。

「もうっ! ケアル使いたいんだけどこんな時に限ってエーテル少ないんだから!」

 ドラルドが秘蔵のエーテルを取り出そうとしたとき、魔法の洞窟から地響きが聞こえる!

「逃げた方が良さそうな感じ!」

 グーフィが縦を構えながら言うと、その不安は本物となる。

 洞窟が崩れはじめた! そこへ絨毯が飛び出し滑るようにソラ達を乗せる。

「ジャスミーン!」

 取り乱すアラジンを押さえながら残る一行はタイガーヘッドの入口まで帰還した。

 

 

 真っ暗な空間。

 高く天井に小さな光が差し込むのが見える。

 そこは先ほどジャファーが封じ込められたランプの中。

 金色に輝くキーブレードを待ったマスターことミッキーがそこにいた。

 しかし真っ暗で姿がほとんど見えない。

「こんな狭い空間に早々にお客様とは……私としても話し相手が来てくださりとても光栄に思いますよ、王様」

「なにっなんだ王様? 王様ってマレフィセントの言ってたあの……とにかく今はここから出してくれよ~」

 ジャファーの横でしゃべるオウム、イアーゴの声も聞こえたがミッキーは単刀直入に言った。

「なぜヒカリをアグラバーに連れてきたんだ?」

「ひとつの仮定にあったのだよ……彼女には力があるのだと」

「ヒカリはただの一人の女の子だ」

「そうでしょうか? 彼女には力と表すにはあたいする素質を持っている……あなたもそれはお分かりでしょう? それとも彼女の力はその道具に頼ったものだとお思いですかね?」

「それは――」

「私はただ確かめたかったのですよ彼女について」

「確かめる?」

「彼女が闇に適応するのか――ちょっとした好奇心ですよ」

「なんて事を!」

「結果は、見てのとおりです。私の敗北には変わりありませんが」

「……ヒカリはこの中にいる」

「なんと?」

「彼女無くして、僕の『闇のキーブレード』の鍵穴は見つけられない。でも鍵穴が閉じられてしまった今、ヒカリが闇に溶け込んでしまっているとするならここしか無い」

「それは私としても好都合……彼女とも、どうやってここから出るおつもりですかね?」

「うっそ⁉ 出られんのかよ!」

「それなら心配はいらない。僕の力を使えばね」

「力?」

「それに、わざわざここに来たのは彼女を助け出すためだけさ」

 ミッキーの言葉と共に一筋の光がミッキーのキーブレードから放たれた!

「なぜなら僕の『本体』はここにはないから」

 

 

「ジャファーの奴いいとこまで行ったのにな、あっさり見捨てるのかよ」

 真っ暗な広間。青白い顔の冥界の王ハデスが軽い口調でリクに言った。

「俺は計画通りプリンセスを連れてきただけだ」

「ハートレスに取り込まれた者を救う術は無い。哀れなジャファー」

 マレフィセントの言葉にうろたえるハデス。

「よせよ、縁起でもない! それにジャファーなんてオレの知った事か! ところで、あれはもう見てもらえたかな?」

 話題を変えようとリクを見て言うハデス。

 リクは何の事かわかからない。

「約束しただろう? 我々に手をかしてくれればお前の望みを叶えてやると」

 マレフィセントがそう言うと部屋の中央に横たわったカイリの姿が浮かび上がる。

「カイリ!」

 さっきまでのクールな表情が一変したリク。

「行っておやり」

 マレフィセントは妖艶に微笑みリクに言った。

 

 

 マフが目覚めるとアラジンが第一声。

「ジャスミンは⁉」

 必死の形相のアラジンにマフはたじろぐ。

「僕たちがジャファーを倒した後、鍵穴のあった部屋にマフしか居なかったんだ。いったい何があったの?」

 グーフィはマフに説明。

「私は……ここは?」

「魔法の洞窟が崩れて僕たち逃げて来たんだよ」

 ドナルドが目覚めたマフを覗き込む。

「そっちはキミが居るから安心だと思たんだけどなぁ~マスターも一緒に戦っていたのにいきなりどこいっちゃったんだよ?」

 ソラが補足。

(だとするとリクさんはジャスミンさんとヒカリさんを連れて行ってしまった? いいえ、私が見たのはたしかに一人だけでした)

 マフはうつむき考える。

 アラジンが彼女の肩に手を乗せて聞いた。

「教えてくれ! 君はなぜ倒れていたのか」

「え、え~と……」

 リクが連れ去ったと真実を言っていいのか、言えないとするのならどう誤摩化せば良いのか……アラジンのひたむきな想いに負けそうなマフは必死に考えていた。

 すると砂漠の一点がへこみ大きな波紋が現れる。

「グワワ!」

「みんな絨毯に乗って!」

 アラジンの合図に絨毯はソラ、ドナルド、グーフィ、マフを乗せて飛び出した!

 次第に穴は大きく、あっというまにアリ地獄のような大きなへこみが出来上がり……。

 

 

(バサアッ!)

「……ぶはっ!」

 砂底から現れた人物は口に入った砂にむせた。

 無理も無い。さっきまで魔法の洞窟だった場所が崩れ落ち必死で砂の中から生還したのだから。

 そんな安堵もつかぬまま、荒い息と共に砂まみれで起き上がるミッキー。頭と肩からサラサラと砂漠の暑い砂が流れ落ちる。

 そして必死で砂をかき分ける。しかしうまくいかず苦戦する。

「っく……砂を追い払え、エアロ!」

(バサァッ!)

 渾身の魔法で一瞬記憶が飛びそうになる。

「……しっかりしろ!」

 あらがうように目を見開き、砂をかき分ける。

「マスター!」

 上から声が聞こえた。ソラ達だ。

「今助ける!」

「ソラ、降りて行ったら僕たちも危ないよ~」

「グーフィ、じゃあどうすれば……」

「あそこでなにか魔法が使いたいようですが魔法の力が弱いようですね……」

 マフが砂嵐の威力と彼の行動で分析する。

「ここからじゃエーテルが……そうだ、いくぞドナルド、グーフィ!」

「いつでもいいよ!」

ソラがキーブレードを振り回し、空で鍵を開ける。

 

 

 ミッキーはソラ達に気づき頭上を見上げる。

 そこから輝くなにかがこちらに近付いて来る。

 それを見たミッキーは目を疑った。

「いったいこれは、どういうことだい?」

空から舞い降りたのは、いつか自分がヒカリに預けた――子鹿のバンビ。

 バンビが飛び跳ねると力が湧いてくる。

「これならもう一度……エアロ!」

 ミッキーが叫ぶと。

(ドンッ!)

 砂の柱が上がる!

「うわぁ‼」

 絨毯の上のギャラリーは砂嵐に空中で回避!

 そして……。

「見つけた!」

 必死の形相で抱きかかえ、渾身の力で持ち上げたのは。

(ザザッ……!)

 さらさらと砂が落ちる中。いまだ固く目を閉ざしている少女。彼女の周りには不自然にも砂の一粒の欠片も無い。まるで誰かが彼女を守っているかのようだ。

 抱きかかえたヒカリに子鹿がその頬にすり寄ると、いままでかたくなに目を閉ざしていたまぶたがぴくりと動き――。

「ん……バン、ビ?」

 明るい空のような真っ青な瞳が開かれた。

 そしてぼんやりとしたまなざしで子鹿を見つめ目をパチパチとしばたかせた。

 子鹿はミッキーとヒカリを見ても首をかしげるばかり、まるで今までの二人と居たときの記憶が無いようだ。でも、そんな疑問は今どうでもいい。

「よかった……ヒカリ」

「え? ミッキーが居る。ちょ……待って、なんで私この子探してて。そんで私――それよりなにこの格好? ちょっと、自分で立てる!」

 オロオロして真っ赤になるヒカリにミッキーは。

「バカ! 勝手に出て行って心配したんだぞ‼」

「‼」

 いきなりの怒声にヒカリよりも降りてこようとした絨毯の上のギャラリーが驚いた。ビックリして絨毯はヒカリ達の頭上高く浮上する。

「え、えと……」

 ヒカリは目を泳がすが、ミッキーの顔が近い。

「えっと、その……」

「ごめんなさいと言うまで、降ろさない」

 怖い顔がヒカリをじっと見つめる。

 消え入るようなか細い声でヒカリが言った。

「ご、ごめん、な……さい」

「本当に……そう思っている?」

 ミッキーの肩をつかむ力が強くなる。

 

「……ごめんなさいっ!」

 

 瞬間。砂へ放り出されるかと思ったヒカリ。

 

「……え?」

「本当に、よかった……ヒカリ」

 大きく目を見開くヒカリ。

 

 放り出されなかった。

 ひざを折ったミッキーに強く抱かれていた。

 

 ミッキーの後ろでバンビが跳ね回っている。

 ヒカリは思わず涙があふれ顔がこわばる。

 

「ごめんなさい‼」

 もう一度叫んだ言葉は砂漠の大空まで響いた。

 

 

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