King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~分かれたパーツ~

 

「へっへへ……今日は大収穫だ。まずは何を解体してやろうか~~」

 少年は自分の部屋に入るなりカレイドスター、ヒカリ、バズ、ウッディの入ったバックを手探りで荒らし始めた。

 その手から必死に(あくまでも静かに)逃げ回るヒカリ。

(いっやぁ~~‼ 解体なんてまっぴらゴメン!)

 なにが『パーツがいい』なのよ!

 おもちゃにも人権があるって!

 いつか訴えるわ!

 訴えて法廷で意義あり! なんて言って振り付けとカッコまで付けてキメテやる~!

 かなり現実離れした仕返しを思いながら少年の手から逃げ惑う中。少年が観念してつかんだ獲物は。

「よし、これにするか」

 そう言ってバッグから引き出したのは、

 おもちゃの飛行船(カレイドスター)

(かっ、カレイドスタ~~!)

 自分じゃない事にほっとしたのもつかの間、アレがないと後が困る!

「何だこの飛行船~ダッセー」

(余計なお世話! おもちゃになっちゃったんだから仕方ないでしょ!)

「俺様が新しく造り変えてやるよハハハッ!」

 高らかに笑う少年はカレイドスターのパーツをむしるように取り外した!

「あ~~ムグ……」

 ヒカリの叫び声を必死で止めるカウボーイ。

「今は押さえろ、ヒカリ!」

「敵にかんづかれては困る。今は耐えるんだ」

 ウッディとバズに押さえられるヒカリ。

 禍々しい少年の後ろ姿しか見る事が出来ない今。その背中で何がなされているのか想像したくない。

 そんな少年が織りなすこの世の最後のような光景の中、部屋の向こうで声が聞こえた。

「シド~ご飯よー」

「ハーイ、ママ」

 一階からの声にすぐに答えた少年は世にも恐ろしい作業を中断しバタバタと部屋から出て行った。

 しかも扉を半開きにして。

「か、カレイドスター……」

 少年が消えた瞬間、ヒカリはふらふらとおもちゃの飛行船の元へ駆け寄った。

 涙顔でかなりの萌え度満点な人形にしか見えないヒカリのギャップが何とも言えないが。

「なにがダッセーよ! おっきいと結構快適なんですからね!」

「それはぜひとも私も乗せてほしいな」

 ヒカリにバズが慰める。

「オイオイ、そんな事より一刻も早くこんな不気味な所逃げるぞ」

「切実にそう思うけどそれはだめ! カレイドスターを直さないと帰れないもの!」

 泣き顔のまま顔を赤くして無惨に散ったカレイドスターをゆび指すヒカリ。

「ははぁ~ヒカリもアレか? そこのヒーローと同じように正義のヒーロー気取りなんだろ?」

「そ、そうじゃないよ。話せば長くなるけど」

「私も同じ意見だ。しかし、私の宇宙での任務について口外は出来ない」

 泣き顔をさらに歪ませるヒカリの発言にバズがよけいな口を挟む。

「この際だから行っておく。いいか二人とも、よーく聞け!」

 ウッディはそう言ってヒカリとバズを交互に見て言った。

「俺たちは『おもちゃ』だ。ちゃんと現実を見ろ!」

(ボボンッ!)

 その声と共にまわりから音もなく黒いおもちゃのブロックが出現!

 ブロックはいくつか重なってヘリコプター、馬、魚の形に変化した!

「な、なな……なんだ? この黒いおもちゃ!」

 さっきまで大口だったウッディが後ずさる。

「キミのその大きな声に出てきたようだな」

 バズが呆れたように言った。

「ハートレス!」

 ヒカリはすかさず背中につり下げていたロックセプターをつかんだ。

「現実を見ろとか言う前に、これは戦わないといけないみたいね、ウッディ!」

「なんだか知らないがコイツらいったいなんなんだ?」

 思わずヒカリの後ろに回るウッディ。

「簡単に言えば……おもちゃの敵!」

「攻撃するならばしょうがないな。迎え撃つ!」

 ヒカリとバズは戦闘態勢。対するウッディは。

「ちょっと待ってくれって、オイ!」

 そんな叫びは即却下され、戦闘開始!

「バースト!」

「レーザー照射!」

 ピコン☆

 ビビビ~~~

「……あれ?」

「おかしい……」

 二人は顔を見合わせ、武器を眺める。

 武器は音が鳴ってキラッと光るだけだった。

「二人とも! それが本気か~~⁉」

 渾身の力でウッディが叫んだ。

「ああ~もう見ていられない!」

 ウッディはそう言うなりバズを捕まえた。

「ウッディなっ、ナニをする!」

「空手チョップでもくらえっ! チョップチョップ!」

 なにか凄みのある攻撃にハートレスが怯む!

「さ、さっすがウッディ!」

 ヒカリが思わず関心。

「そ、そうでもないさ~アチョ! アチョ!」

「これは私の技なのだが……」

 しかし、ハートレスの数が多い。ヒカリはあたりを見渡した。

「だめ、物理攻撃だけじゃキリがないよ!なにか一網打尽に出来るものが……って」

 今まで気がつかなかったけど、グミシップの取り外されたパーツが消えている。

 周りをもう一度見渡していると、ちょうど見えたのは半開きのドアから逃げ去るハートレス。

 しかもパーツを持っている。

「ウッディ、バズ。部屋の外に行くわよ!」

 ヒカリが走り出す。

「当然! 今やろうとしていたんだよ!」

「同感だ、ひとまず敵陣から引く事も大事だ」

 

 

「さっき、外からパーツを持ち出したハートレスが居たの。お願い、探してちょうだい!」

「俺たちが? なんでだよ、俺たちは早い所この家から出て向こうの、隣の家に帰りたいんだ!」

「困っているお嬢さんに対して何を言うんだねキミは」

「困っているのはこっちもだ! だいたいオマエがあんな所に飛び込むからこんな事になったんだ!」

「お互い困っているのならみんなで一緒に一つずつ解決して行けば良いじゃない……あれ?」

 困っている、みんなって……そう言えば!

「あっ、ミッキー助けなきゃ」

「どこに居るのか調べてみよう……こちらバズ・ライトイヤー。スター警察応答を――」

 バズが通信機のフタを開いてどこかの交信を試みる。それを見たウッディは呆れてうなだれた。

「あぁ~そんなの無理だって。だいたいオマエはアンディのおもちゃだって何度言ったら――」

「とにかく、ミッキーを探しましょ。今は足で調べるしかないわね、あっ!」

 ウッディのぼやきを聞き流しながら、ヒカリはグミシップのパーツを乗せた先ほどのヘリコプターハートレスを見つけた。ちょうど見えなくなってしまったので一目散に走り出す。

「あっ、待てよヒカリって、あぁ~っ!」

 ウッディはヒカリがハートレスの方へ駆け出すのを見送りながら、階段下の恐ろしい形相でこちらを睨みつける獣(注・イヌ)を目撃した。

「バズ、隠れろ!」

 渾身の力でバズを押し出すウッディ。

「なんだ、もう少しで電波が受信できるはずだが」

「下を見ろ大きな怪物がこちらにくるんだよ! とにかく隠れろ」

 ウッディはそう言いながらも、ちゃっかり自分だけ物置の扉を締めた。狂犬は階段を駆け上りバズめがけて襲いかかる。バズは左右を素早く確認し一番奥の部屋の扉が空いている事に気づき一目散にそこを目指す。スルリと滑るように隙間に入ったバズ。

 狂犬は隙間をこじ開けてその部屋へと入ろうとしたが、部屋の間取りを見るなりシュンとおとなしくなって引き返した。この部屋は自分より上である主人の場所だからだ。

「危ない所だった」

 バズが大きな獣が立ち去るのを確認し顔を出す。

(バズ・ライトイヤー!)

「?」

 どこからか自分を呼ぶ声を聞いた。

 振り向くと、それは自分の呼ぶ声ではなかった。

 薄暗い部屋で輝く、四角い箱の中に映し出された自分だった。

 

 

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