King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
二階の階段を難なく上がり恐怖の部屋へと渋々戻ったヒカリ達。妙に落ち込んでいるバズを所定位置に降ろすウッディ。
ミッキーは初めて入った少年の部屋を妙な笑みが入り交じる引きつった表情で――しかし、興味深げに見渡している。
「今の自分がおもちゃである以上、この部屋はなんともいえない気分になるね」
「ミッキーまずはこっち!」
ヒカリはハートレスから取り戻したパーツを机の上にポイポイと放り投げた。
「あ、ヒカリ! おもちゃをそんなに乱暴に扱わないでくれよ……ってうわわっ!」
ヒカリがミッキーも一緒に放り投げた。
「あ、ゴメンつい……今のミッキーおもちゃだったから」
「なんでも乱暴に扱わないでくれよ」
乾いた笑いと共にヒカリは軽やかに机の上に登りミッキーに散らばっているおもちゃのパーツを見せた。
「見てよミッキーこの私たちの船!」
「これはまた、派手にやられたね」
丸い突起のついたブロックのおもちゃと化したカレイドスターは、数個のブロックの繋がった塊になっていてもはや船の原型をとどめてはいなかった。
「バラバラにしたのは男の子なんだけどその後ハートレスがおっきいパーツをいくつか持って行っちゃったの」
ミッキーはヒカリが取り戻した主要パーツを眺める。
「うーん、おそらくおもちゃになったのが幸いして多分無事だよ」
「本当に? こんなのでも動ける?」
「大丈夫、くっつければ直りそうだ。シンプルなパーツが残っていれば動かすことは出来るかもしれないよ」
「ホントに?」
不安そうにヒカリが聞いた。
「僕が乗ってた船とヒカリにウソ言ってどうするんだよ? 帰れなかったら困るだろ?」
ミッキーはそんな表情をいつもの微笑みで打ち消す。彼の答えにヒカリの不安は一気に消え失せた。
「それもそうね。でもこんなにバラバラなんじゃ組み立てられるか心配でさ~」
「それは問題ないよ、そもそもグミシップはシンプルな作りだから実際、組み立てに時間はそんなにかからないよ」
「よかった~」
「ココに散らばっているほとんどのパーツは空気抵抗と装甲対処のパーツだから問題はないよ。おもちゃになったおかげで複雑なパーツが無くなったのが幸いだね」
「さっきのハートレスからはエンジンブーストを取り返したんだけど」
カレイドスターを眺める。
「あと重要なものは、ショットガンと……」
「コックピット!」
「やったぜ~ついに来た!」
バタバタと階段を駆け上がる音と少年の声が部屋の奥からこだまする。その音に飛び上がったヒカリとウッディはバッグの中へ。
バズとミッキーは遅れを取ってしまい、その場で動かなくなった。
ヒカリが手招きするが――。
(ミッキー!)
ミッキーは首を振った。その表情は一緒にいてはマズいと言いたそうだった。
(でも……)
不安そうな表情のヒカリにミッキーは励ますように微笑み、普通のおもちゃのままに身を投じた。
それはちょうど少年がドアを開ける瞬間と同じだった。
☆
部屋に入ってきた少年は何やら贈られてきた小包を持っていた。
「はは……ついに来たぞ!」
そういって少年は小包の包装紙をバリバリとむしり取る。その光景をウッディとヒカリはバックの隙間から眺めていた。ガタガタと震えるウッディの動きを少しでも押さえようとヒカリは彼の手を強く握りしめる。
が、一向に効果がないので握手をするように無造作に上下に揺する。それでもおさまらなかったので最終手段とばかりに。
(ガツン!)
ロックセプターをお見舞い。
ウッディは後ろに倒れてそのまま動かなくなった(おもちゃは丁寧に扱いましょう)
「これだこれだ!」
少年が強引に引き出したそれは。
ロケット花火!
『ロケット花火→花火→火薬→爆薬!!』
今おもちゃであるヒカリ達にとって花火は驚異の爆薬だっ!
「なになに……このロケット花火はとても危険なため保護者の方と一緒にご使用ください……だってさ~はははっ」
少年の笑いはもはや注意書きも恐るるに足りぬ代物だった。
「さぁ~て、何を吹っ飛ばそうか?」
(良い子は真似しちゃいけませんっ!)
(うわぁああ!)
今にも叫び出してミッキーとバズを助け出したい衝動を、今おもちゃである自分が必死に動かないことを強制している!
(おもちゃのオキテなんて私には皆無だわ!)
それでも動かないのはこの状況こそが自分でさえ逃げ場の無いどうしようもない場所であるためだ。
「そうだ! この前とったカウボーイのボロ人形があったな~」
側に居たウッディがビクリと飛び跳ねた。
少年がバッグに手をかけようとした時…
(ガチャ)
少年が何かを踏んだ。
「あぁ、これがあったな」
そう言って拾ったのは。
(バズ!)
「ロケットの打ち上げには丁度良いな……ん?」
バズの横のおもちゃを拾い上げる少年。
「変な丸い耳。こんなのこの部屋にあったか?」
(ミッキー!)
「まぁいい……ちょうど花火は二個あるんだ。コイツも打ち上げてみるか」
あまりの光景に、ヒカリは目の前が真っ白になった。
「おおっと……忘れちゃいけない所だった」
少年はバックを開けて頭が真っ白になったヒカリを取り出し、別の机の上に置く。ウッディはバックからちゃっかり脱出していた。
「この生け贄で魔女様の復活祭を始めることにしよう……ははは!」
☆
気絶ではないが動かないおもちゃから何かの表紙ではっと気がついたヒカリ。
そこはバッグの中ではなく机やイスよりも少し高い棚の上だった。
あたりを見るとふと目についたものがあった。黒魔術っぽい祭壇に禍々しいアイテムがぎっしり。
牛骨や赤文字の魔法陣、金文字のお札までもが陳列している。
そして、祭壇の横の壁にヒカリと似ても似つかない魔女のポスターが貼られていた。よくみるとニヒルに笑うその表情は今の自分の不敵な笑みに何となく似ている……?
「パーツが良いってこのコトだったのね」
自分で言うのもなんだけど、可愛いおもちゃに変身しているのに、よりにもよって魔女の表情と似ているなんて、なんだか心外だ。
突如頭上から影が落ちてきた、
「……え?」
棚の端に、誰かが立っている。
(あそこ、今まで誰もいなかった!)
その出で立ちは暗がりのでうっすら分かった。
(え、えっ? あの服装って……)
ヒカリは先ほどの記憶に鮮明に写るポスターを思い出し、思わずがたがたと震えだした。
(先ほどのウッディほどではないが)
目の前の人物のそれは、漆黒のドレスに長い髪。
(まさか、ポスターから実体化した、魔女⁉)