King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~魔女復活祭~

 

 

「本日晴天、本日晴天。ロケットの打ち上げまで間もなくです」

 トランシーバーをもった少年は庭のほぼ真ん中に置いてあるテーブルに二つのロケット花火を設置した。ガムテープでぐるぐる巻きにしたバズ・ライトイヤーのおもちゃと、同様にガムテープで固定している丸い耳の少年のフィギュア。ミッキーだ。

 そして新たに持ってきたのは、黒い本と赤いろうそく、くすんだ銅色の大釜、真っ黒に焦げた生き物のおもちゃ。

 そしてヒカリの人形。

「このロケットの打ち上げの煙で天が暗闇に染まり魔女が復活する。復活祭の始まりだ!ハハハ……」

 どちらも接点が無いに等しいが、今それを実行させようとする少年を誰も止めることは出来ない。

 そう、おもちゃである以上。

『やられたゼー汚い手使いやがって!』

「ん?」

 声が聞こえたが、誰もいない。

 少年が周りを見渡すと、そこにいたのはカウボーイのおもちゃだった。

「なんだ、無いと思ったらココにいたのか。次はお前も吹っ飛ばしてやる」

 拾い上げたカウボーイ人形にマッチ棒を差し込んですぐ側に置いた。

「ようし、秒読み開始!」

『ちょーっと待ったー!』

「ん?」

『この街は俺が住むにはには小さいぜ』

『俺のブーツにゃガラガラヘビー!』

「壊れたのか?」

 カウボーイを取り上げる少年。声を止めようとした時。

『何だとーコノヤロウ! 俺は壊れて無いぞ!』

「へっ⁉」

 カウボーイのおもちゃが少年に語りかける。

 よく見ると、人形のスイッチはOFFのままだ。

『俺たちはおもちゃだ、お前にいろいろとイタズラされた……おもちゃだ』

「え、ええぇ⁉」

 すると庭の砂場から人形が姿を現した。

 次々と現れて少年を取り囲むおもちゃ達に、バズとミッキーは驚く。

「これは、ウッディだ」

「ヒカリは?」

 ミッキーがヒカリの方を振り向くと――。

 ヒカリは仁王立ちしていた。

「坊や」

「ひぃい!」

 ヒカリが取り囲まれた少年に声をかけた。

 驚きと焦りと恐怖の顔で少年は人形を見つめる。

「妾の復活祭は……まだ始まったばかりぞ?」

 ニヒルな笑いで黒い本をめくると、黒い影が現れた。それは黒いドレスに黒い長い髪ハートレスだ。

「お前のようなニンゲンにおもちゃを侮辱される筋合いは無いが……妾の贄、感謝する!」

腕を組んでふんぞり返るヒカリは魔女の貫禄があふれていた。

「うっ……わあぁああ~~‼」

 慌ててウッディを放り投げ逃げ出す少年!

 ウッディは叩き付けられたが少年の逃げて行く姿を見て大満足だ。

「彼女はいったい何者なんだ?」

 驚きをかくせないバズにミッキーは苦笑い。

「そうだな……僕もヒカリのことはすべて知っていないけど。しいて言えば、いつも根拠の無い自信にあふれているんだよ」

「……なんとも、頼もしい相棒だな」

 バズがため息交じりに微笑んだ。

「いーやったぁ! みんなーサイッコーだ!」

 我々の勝利におもちゃ達がウッディに群がる。

「おおーっとこうしちゃいられない」

 ウッディがロケット花火の発射台に向かった。

「すごいだろバズ! あの砂場からザザーってのとかヒカリのその……影」

 ウッディは影と目があった。

「なんだよ? ヒカリ……その影は⁉」

 あの影、つい最近どこかで見たことある。

「えーっと一言で言えば……おもちゃの怨念?」

 ウッディの質問に先ほどの魔女の貫禄はなく可愛く返答。

「もしかして、あれか? それが、その……」

「うん、最終手段ハートレス。みんな逃げて!」

 ヒカリの声で退散するおもちゃ達。

 影は竜巻のように渦を巻いて何かを取り込む。

「ヒカリ、あれはもしかして」

 ミッキーが見覚えのあるブロックを見て聞いた。

「そう、私が探していたカレイドスターのブロック。あの本ハートレス降臨の魔術書だったみたい」

 カレイドスターのパーツとどこかに潜んでいたであろう魚と馬のブロックハートレスが合体。ロボットの形となった。

「あんなおもちゃ見たこと無い!」

 ウッディが叫ぶ。

「僕たちが打ち上げられた後に出てきたら……本当に危ない所だったんだね」

 ミッキーが分析する。

「どうしよう~。ガムテープがキツくておもちゃの力じゃ外せない!」

 バズとミッキーの救助にヒカリが音を上げる。

「しょうがない、このまま戦うよ!」

 ロケット花火を身につけたままのミッキーはヒカリに手伝ってもらってキーブレードを取り出した。

「つまり、シドの部屋で暴れていたおもちゃの大きなヤツなんだな?」

 ウッディはめずらしく逃げ腰じゃない。

「昨日の夜にあの魔術書読んでたんだけど、合体したらもっと強いハズ!」

 やる気なウッディがカッコよくて笑顔でヒカリが助言。

「合体したのならばきっと分裂出来るようになっているはずだ、ブロックなのだから分解もできるかもしれないよ」

 ミッキーがロボットに目を向けたまま分析。

「待ってくれ! 君たちは……この状況で戦えるのか?」

 バズがヒカリ、ミッキー、そしてウッディに聞いた。

「魔法は使えないけど、なんとかなるわよ」

 ヒカリが根拠の無い自信で言う。

「ヒカリに付き合っている以上、なんとかするよ」

 ミッキーは終始、苦笑い。

「なぁに、脱出まで後少しなんだ。ちょっとぐらい寄り道しても問題ないさ」

 ウッディもやる気。

「じゃ、そういうわけで、先手必勝!」

ヒカリが駆け出した。

続いてミッキーも迎え撃つ。

「なんと言う、無謀」

「なぁ、スペースヒーローさんよ?」

 ウッディがバズに背をむけて語り出した。

「俺たちおもちゃは……ヒーローみたいにカッコいい技なんて何も無い。なんでもない、ただ光って音がするおもちゃだ」

 ハートレスと戦うヒカリのロックセプターは叩くたびに光って音がしている。

「だがな、カッコいいと言う相棒がいればな」

 ミッキーはヒカリの後ろから迫るブロックを弾いた。ハートレスはバラバラのブロックになった。

「俺たちはヒーローなんだぜ!」

 ウッディはハートレスに向かって走り出した。

 そのまま体当たり。ロボットの腕が取れた。

「どうせただの浮かぶブロックなんだろ⁉ バラバラにすればどうってことないさ、このこの!」

 ブロックを一ピースずつ取り外す地道な攻撃だが効果はある。腕の再生には時間がかかるようだ。

「それにしてもカッテーなこのブロック……ん?」

「貸してくれ」

 ウッディがブロックの分解に苦戦しているとバズがひょいとブロックを取った。

「ブロックを押さえていてくれないか?」

「……おうよ!」

「いくぞ、アチョー!」

 バズの空手チョップがブロックにあたる!

 とても正確に溝にあたりブロックがぽろりと分かれた。

「次!」

ウッディがセット。

「はいよ!」

バズがチョップ。

「まだまだ!」

ウッディがセット。

「おりゃ!」

バズがチョップ。

「へいお待ち! スシ食いねぇ!」

ウッディが一言多めに叫びセット(笑)

「くらえっ!」

バズがチョップ。

 息の合ったコンビネーションと少しのボケでブロックが次々と分解されていく!

「わぁ……私たちより息ぴったりだわ!」

「仲が悪そうでも、良いコンビなんだね」

 ヒカリとミッキーはそう言って、ほぼバラバラになって浮遊するブロックを見渡した。

「こんなに壊しても、きりがないわ」

「もしかしたら本体がこのロボットではないのかもしれない」

「よし、ミッキーは防御を頼むわ!」

 ヒカリがセプターをかざしで目を閉じる。

 集中するヒカリ。

 ウッディとバズの威勢のいい声が完全に消え、空を切る音がする。

 それはハートレスのブロックの気配。

 そして数十個のブロックのなかにそれはあった!

「心の想いの強さが、武器になる!」

 そう唱え、走り出すヒカリ。

 ミッキーもそれに続く。

 ブロックをかわし、凪ぎ払いヒカリが目指すのは――その向こうの黒い本!

「くらえ!乱れ打ち。バトン・トワリニシュ!」

 斜め横に数回斬りつけ、回転斬り!

 回りきった後に下から上にバトンのようにセプターを振り回す。その後、息つく間も無く飛び上がり振り下ろしてフィニッシュ!

 黒い本が攻撃されると周りに飛び交うブロックがヒカリめがけて反撃を始めたが――。

「よっ、はっ! それっ! まだまだっ!」

 ミッキーが全て打ち返した。

「ナーイス! ミッキー」

「コレぐらいはまかせてくれよ!」

 手をパンと打ち鳴らすと黒い本から輝くハートが現れて、消えた。

 同時に周りで飛び交っていたブロックが消える。

「俺たち、やったのか?」

 ブロックを押さえていたウッディ。

「その、ようだな」

 チョップを振りかざそうとするバズ。

 さっきまでの不可解な事象からいつもどおり閑静な景色へ一変すると、バズとウッディに向かってヒカリの声が聞こえた。

「二人とも! 隣の家の車が出ちゃった!」

「僕たちはもう大丈夫! 二人とも早く!」

 ヒカリとミッキーの声で我にかえった二人は走り出す。

「ヒカリ、ミッキー。お前らに会えて良かった! じゃぁな!」

「さらば友よ! 君たちも元の場所に帰れることを願っている!」

 ウッディは壊れた柵を見つけてくぐり抜け、バズもそこへロケット花火をくくり付けたままだったがなんとか通過して行った。

 ヒカリはにっこりしながらその柵を眺めているとその柵の穴がきらめき、鍵穴のカタチになる。

「ミッキー」

「うん」

 ミッキーがその場で数歩飛び退きキーブレードを軽く振りかざす。キーブレードの先から光線が放たれ鍵穴に吸い込まれた。

 そしてガチャリと言う音が聞こえると輝きながら鍵穴が消えていった。

「さて、この粉々のカレイドスターどうしよう?」

「もちろん組み立てる」

「だよね~」

「と、言いたい所だけど……」

「?」

 ミッキーはくるりとヒカリに向き直って言った。

「実は、カレイドスターと別にもう一つ船を作っておいたんだ!」

「探しましたよ~ヒカリさんミッキーさん!」

 どこからか声が聞こえた。

「ちょうど救護に駆けつけてくれたみたいだ」

「その声は、マフ!」

 嬉しそうにヒカリがあたりを見る。

「そうですよ!」

 声と共にピョンと飛び出したのは。

「うさぎの、マスコット?」

「マフです。ココに降りたとたん、なんだか体中ふわふわで気持ちがいいです~」

 顔が見えないぐらい埋もれているウサギのかぶり物姿でぴょんぴょん飛び跳ねる姿は、おもちゃの世界でとてもお似合いだった。

 

 

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