比企谷君と朝吹さんの高校生活 作:クヨーマン
Dクラス、それが俺のこれから1年間お世話になる教室だ。しかし、早く到着しすぎたのだろう。廊下には全く人の気配と言うやつがない。まるで音が無くなったように静かだ。
歩を進めるごとに入学前からの胡散臭さが輪をかけて濃くなっていく。
やはり普通の学校とは大きく異なる部分があるらしい。存外自分が実は全くの世間知らずで知らなかっただけなんてことがあるのではないかなんて考えてしまうほどに……なんてな。
地元の高校は2校程調べたがそんな情報はない。それに、ここは完全に寮制であり、これ自体少数派なものだろうにそのうえで外部との連絡等の行為が一切禁止されているのだから笑えない。これで普通だなんて言えば頭がおかしいか筋金入りの箱入りっ子だろう。
そんなこんなで1-Dへと着いた。まだ、誰もいないだろう……そんな考えの甘さを見直すべきだった。流れのままに扉に手をかけて横にスライドする。さすが国がバックにいる高校と言うべきか小中学校では馴染み深かったガラガラという音も少なにすんなりと開いた。
しかし、掃除が行き届いていたとかそんなのは今にして思えば関係なかっただろう。それにこれはただ感触でわかっただけだ。耳は全く別の音を拾った。
「私と!! お、お友達に、なって下さい!」
元気の良い。いっそうるさいと素直に伝えた方が良いのではないかと思う声量が飛んできた。朝早く起きたことが原因の眠気も吹っ飛びまるで爽快な朝にニワトリが耳元で鳴いたような気分だ。つまり最悪である。
「無理」
「ガーン!」
自分で言う珍しいタイプだった。更には彼女の背後に落雷が見えた気がした。
「な、なぜ……」
「え……うるさいから?」
初手であんなことを言うあたり不器用なのだろうがこいつはメンタルの図太さだけで生きて行けそうだ。
「ガガガガーン!」
やはり自分で言う。今度はザブーンと津波を被った。バリエーションが豊かなようだが、残念なことに使い所は少なそうだ。
彼女はしょんぼりと項垂れて自分の席へと帰っていった。日頃の行いだろうか、朝からエネルギー使いすぎな気もするがまだ先は長い。自分の席を確認、廊下側の前から1、2、3……さて、どうしたものか。気づかせないようにそーっと怪しまれないように自分の席に着く。バックを机の横にかけてきっちり前を向く。途端、後ろからガタンと勢いの良い音が響く。
「……あなたそこの席なの?」
「まあ……そうだな」
「運命よ、やっぱり星座占いは間違ってなかったわ!」
いったいなんのことなのか。気になったが聞かないが吉。俺は今日の星座占いは見れなかったのだ。情報は力、今は圧倒的に不利だといえる。別に戦ってはいないが。
「やっぱりお友達になりましょう」
「無理」
今度は無言でヒューっと寂しく吹く風の音が聞こえた。振り向けば葉っぱが舞うかもしくは西部劇のあれことダンブルウィードが転がっていたりするのだろうか。
「……即答はないじゃない。せっかく勇気を出したのに」
ブツブツと文句をいう彼女、しかしなぜ俺なんだろうか。名前も知らない女だが見るに容姿は良い。それに今見せてる姿も明るくどちらかと言えば友好的、俺でなければ容易く友達を作れるだろうに。チラリと後ろを盗みみれば机の上で小さいダンブルウィードのようなものを転がしていた。こいつの芸の細さはいったいなんなんだろうか。
「なあ」
「なに!?」
やめろ、しっぽを振るな喜色を振りまくな。
「なんだってあんなことしたんだよ」
「あんなこと……?」
可愛らしく首を傾げるのはこいつだから様になっているといえる。しかし、ほんとに分からないのか、わかっててこんな仕草をしているのか俺には判断がつかなかった。妹の小町を見ていると女性は小学校上がりで既にある程度の強かさと演技力を獲得しているようだから油断ならない。
どちらにせよこのままじゃ埒が明かないから話を進めよう。
「あのお友達になってください宣言のことだよ」
「あれのこと? そりゃぁ……占いよ」
思い返して自信がなくなったのか語尾はしりすぼみになっていた。どうやらまだ自覚できるくらいの常識はあるようだ。だがしかし意地があるのかこいつは説明を続けるようだった。
「占いで……その、一位だったのよ。それで初めての……一生の友達が見つかるかもって言ってたから」
「あんな博打に出たのか」
「博打って、そりゃ根拠もないのはわかってるけど……舞い上がってたのよ」
律儀にもそんなことを報告してくる。恥ずかしいのか頬は赤く染っているが花も恥じらう乙女と言うよりもさっきの奇行と今の説明で完全に友達を欲しがるボッチって感じだ。
「それでその、ダメ……かな」
「……根性あるな」
「う、うるさい! 良いの? 悪いの!?」
「……」
友達……。そういえばそんなことを本気で言ってくるやつは今まで一人もいなかったっけか。
「繋ぎなら、お前に友達ができるまでの繋ぎなら良いぞ」
「え、ど、どういうこと……?」
「要は……友達(仮)ってことだな」
「何よそれぇ!」
「友達には変わりないだろ。仮だけど」
「えー……うーん」
悩む彼女を置いて俺はさっさと黒板へと向き直る。後ろではしばらくうんうんと唸っていたが結論が出たのか「よし」と声に出していた。そして肩を遠慮がちに叩かれる。
「よろしくね、友達(仮)さん?」
「お、おう」
後ろを振り返れば彼女が至近距離にいて思わず固まる。そんな俺を彼女はお構い無しに耳元で囁いた。
……これで幾多の男子を落としてきたのだろうか。しかし、一瞬垣間見えた魔性の女は複数でやってきたクラスメイト達の登場と同時に引っ込んだ。というか、ガタンって音が鳴るくらいびっくりするのはどうかと思うんだがこれから先こいつはほんとに大丈夫なのか。仮とはいえ初の友人といえる彼女に俺は心配だけが募っていった。
そんな心配を他所に彼女から小声で声をかけられる。
「ねぇ、名前教えて?」
「
「そう、私は
心配事は増えていく。彼女、そして俺もまた友達初心者なのだ。