ねこ「なーん」 作:ねこのともだち
「なぁーん」
意味:基本的に返事を表す。「気にするなー」や「大丈夫だよー」といった意味が多い。
※今回の話は人によって不快に感じる可能性がございます。読む際はお気を付けください。
「なーん……」
ねこは寂しそうに、写真付きの絵日記を眺めていた。
隣には謎のケチャップが地面に転がっている。
――おや、ねこ。どうしたんだい?
「なーぁん」
ねこは一枚の絵が描かれた箇所を指さす。
そこには自由意志を表す一種の思想・象徴である黒色のカラスの絵が描かれていた。彼らは自由を愛し、己の意思の赴くままに行動をする。自身の恩師から託された思いを引き継ぐか、旅の途中で出会った相棒の願いを叶えるか。それとも新たな取引を結び、戦乱に賽を投げるのか。
何を選んでもいい、何をしてもいい。そんな住民達の生きた証であった。
――そっか、ミーティアが移動してから色々あったもんね。複数の戦争、別れと新しい出会い。
ねこにとっても色々驚きの連続だったか。
「なーん」
――まぁ、何がなんだかわからないうちに始まって、終わったもんねぇ……二分間戦争に、模擬戦に、きみの知らないうちにリュックも出来ちゃったしね。まぁたくさん売れて良かったじゃん。
「なーん!」
――もっと売れて欲しい? 全くきみは強欲だねぇ……と、まぁそれは一旦置いといて。ねこが見てきた今までの事を語っていこうか。あれから時間も結構経ったしね。
◇◆◇
『聖ミーティア学院が消滅することを選択しました』
ミーティア女学院が属国として誕生し、僅か数カ月で校舎をメテオでぶっ壊した。リリオールの税金と、魔王軍周辺の領土が一部欠損する大事件が起きたが、彼らは次の策があるとばかりに南に旅立って行った。
「安心してみているのだわ!」
そんな一言を住民に投げかけて、彼女は直ぐに両国リキシーランドと協力し、新しく煋ミーティア女学院として再建し、国家規模の学院となった。
全体チャットで阿鼻叫喚が産まれており、ねこ達魔王軍はよく分からなかったので、全員魔王城に籠っていた。
その後、それすたるびいんぐの模擬戦もあったが、相変わらず魔王軍は波風を立てないように魔王城に籠っていた。
……そう、ねこも含め、彼らは何が起こったのかあまり理解していなかった。
ただ、戦乱やピリピリした雰囲気は怖いなぁと籠っていたのである。
そもそも立地として、戦乱の場所と彼らの住処は遠く、関わることは殆どなかったのも理由ではあるが。こればっかりは仕方ない。
勿論、彼らが本領発揮することもあった。名産品システムが誕生し、魔王軍はそれぞれの得意分野を活かし、猫王軍リュックと魔んじゅうが発売された。
お風呂で有名でもあるため、行商人が魔王城で寝泊まりする程度には活気がある場所となった。
宿泊施設が整っている魔王城は魔王城と呼んで良いのか疑問ではあるが、そこは置いておこう。
ねこにとっても、知り合った人たちが様々な事件に巻き込まれていくのは心苦しかったし、なにより皆が気ままにポチポチしている生活が好きだった。しかし、戦争というシステムがある以上。起きるものは仕方ないという考えもあった。想いと想いがぶつかり合ったときに戦いは起きるもの。ただ、皆が笑って肩を組んで、勝利を称えるような、そんな理想を持っていたのは否めなかった。
だが、ねこが願うように世界はそんな綺麗には回っていない。タイミングが悪かった、自分の理想や想いに共感してくれる人が居なかった。そんな些細なすれ違いで大きく物事は変化していく。それは「あるけみすと」の世界でも変わらないのだ。
ねこはお世話になった人や、若干鬱陶しくは思っていたものの、何だかんだ嫌いにはなれなかった人。彼らに対して言葉を出して想いを伝えることは出来ず、ねこはなーんと鳴くしかなかった。
「なーぁん」
彼が残した絵日記を手に、ねこはペタペタと肉球でスタンプを押していく。それがねこに出来る唯一の手向けであり、思い出を残すための手段であった。
ねこは何が起きたのかを知らない、何が起こったのかも知らない。だからこそ、そんな思いを持つことが出来たのかもしれない。
それに、数日後には全部忘れて、いつものように「あるけみすと」の世界をお散歩しているだろう。
これが、物語に関わらなかったねこの日常であった。ただ、大きなイベントに絡むことが出来なかったとはいえ、それが大事というわけではない。
名産品を巡って巡回する行商人が主人公として活動することもあれば、銀のペンダントを巡って夫婦漫才を繰り広げる聖女と従者が主人公となることもある。それに、宵越しの銭を持つことがないねこはいつだってしゅじんこ――待て待て待て。それはない。
「なーん!」
――君はもうちょっとお金の使い方を覚えたほうが良いと思うんだ。とりあえずお金を貯めるということを覚えてだね……
「なーぁん!」
――だめだこりゃ。
ただ、誰かの視線を受けるということは誰だって主役になり得る。それを眺めるのがねこは大好きだし、応援するのも大好きだ。もちろん自分が目立つのも大好きだ。だからこそ、ねこは今日もなーんと鳴くのであった。決してカレーと一緒に食べるパンの事ではないと付け加えておこうかな。
――あ、そうそう。
ずっと前から気になってたんだけどさ。
「なーん?」
――君、なんか太ってない?
「なーん!?」
――いや、確かに運動してるのは分かるよ? でも色々な人に物貰ってる上に、イベントでご飯だけ食べにいってるよね。明らかに肉付きが良くなってる気がするんだけど……
「な、なーぁん! なーん! なーん! なぁああああああん!!」
――あ、逃げた。全く、変にプライドばっかり強いんだから。
さて、まじめな話は一旦これでおしまい。色々な物語が発生する「あるけみすと」の世界。ねこが見ていないところでも、物語は進んでいる。だからこそ、こういう視点も需要があるかもしれないし、ないかもしれない。