ねこ「なーん」 作:ねこのともだち
「なんなーん」
意味:いってらっしゃーいを表す。もしくは機嫌のいい時につかう。一説によると『どんえ~ん』という呪文と関連性があるらしい。
これは蛇足だが、ねこ語に行ってきますという意味の単語はない。
やぁ、こんにちは。
突然だが、今日もねこの話をしようと思う。
あるけみすとの世界でなーんと鳴く、一匹のねこの話だ。
あるけみすとの住民は自身の名前が必要だ。名前がないと、住民として認められないのだ。しかし、このねこには名前がなかった。
そのまま【ねこ】としての名前を使う方法もあったが、それは普遍的すぎた。
ねこは個性を大切にしており、自分らしい名前を用意したかった。
「なーん」
こうして、ねこは自分の特徴的な鳴き声を名前にする事にした。
普通の猫はにゃーと鳴く。だが、ねこはなーんと鳴く。ならば、この鳴き声が自分の名前にふさわしいと思ったのだ。ねこはクールな考えを持っていた。
結果【なーん】という名前が産まれたわけだが、案外ねこはこの名前を気に入っている。普通にあっねこだ。ネコチャンと声をかけられるだけだと考えていたが、【なんちゃん】や【なーんさん】それに【なーん様】と呼ばれるのも嫌いじゃなかった。
――ん? なーん様? 君に様付けで呼ぶ人もいるんだ……
「なーぁん」
――まぁ確かに威厳っぽいのもなくはないのかな?
勿論、ねこと呼ばれるのも嫌いではない。そこはねこも猫と同じような思考を持っていた。皆さんも心当たりがあるのではないだろうか? 野良猫が歩いていると、小さな子供たちが「ねこだー!」と嬉しそうに叫ぶあの光景を。あれ、猫にとって得意気に感じてしまうのだ。
追いかけられるのは嫌なのですぐに逃げてしまうが、偶に駐車場付近で顔を出すのはそんな理由である。目立ちたがり屋なくせに目立ちすぎるのは嫌な面倒な性格をしているのが猫ってことだ。
勿論、あるけみすとの世界にも沢山の猫が居る。喫茶店、酒場、宿泊施設を営む幸運を司る店長さんや、自称ねこの着ぐるみを着たちょっと不思議なねこ。オッドアイをしたねこと同期の猫や、人間になる事が出来るが、何だかんだで猫の姿を気に入っている優しい猫、魔王軍に所属したねこの弟子の猫……獣人を含めると更に沢山の猫が存在するが、書ききれないのでそこは許してもらえるとありがたい。
ちなみに兎と魚、それに植物の住民の数も結構な割合であるけみすとの住民として生活している。草が生活しているというのは私もよくわからないが、魔王軍の近くの領土に定期的に表れるリリオール産の草が様々な住民を吹き飛ばしているのは事実である。最近はもうあの草は魔王軍なんじゃないかなとも言われるようにもなってきた。
「なーん……」
――あ、ごめん。話ずれちゃったね。戻そうか。
あるけみすとの世界で、ねこも色々なことがあった。右も左も分からなかったねこは、いつの間にか師匠となり、先輩となった。奇襲攻撃が何とかなっても、追撃のメテオがあるせいでなーん先輩は厄介なんですよ! と話を聞いて内心喜んだりもしていた。何とか粘れば倒せるけどちょっと辛いというポジションが個人的に好きなんだそうだ。手が届く強者になることをねこは望んでいた。そう、ドラゴンボールでいうクリリンみたいなそんな感じがよかった。
あるけみすとの住人になったばかりのねこは、戦闘力4000を超えることを目標としていたが、今ではもうその目標も達成しようとしつつある。次は6層のボスを倒すことが目標だと、日々ポチポチしているそうだ。
困った人を助けたいと気まぐれにポイポイ物を投げつけている習慣は治りそうになかった。
また、ねこ自身も寝て起きたらアイテムが届いているという、無限サンタ状態になっていたりする。
最近毎日をクリスマスにしようとする住民が現れたため、その影響じゃないかと推測しているらしい。多分気のせいだと思う。
ねことしてもお返しできるように心がけてはいるが、最近A装備を付けている方が多く、返礼品が集まらないため中々お礼することが出来ず困ることもあったり。
投げられてる人はこんな気持ちなんだろうなとは思っていたが、ねこは投げるのをやめようとは一切考えていなかった。ねこはある意味豪胆だった。
さて、そんなねこも成長する中で、大きな実績を達成することとなった。
個人戦、未勝利戦での優勝だ。
――うん、これは本当に苦労したよね。
「なぁーん……」
ねこの個人戦出場経験は6回ある。最初の一回目は住民となって始めたての際に、オッドアイの猫と共に出場し、よくわからないうちに吹き飛ばされた。二回目もまだまだ弱く、決勝戦で同じ魔王軍の金庫番に負ける事となった。
ここから、ねこの苦行が始まった。
個人戦に選出されるのも運が必要であるし、勝利するのも一苦労であった。
ねこの戦闘スタイルは奇襲攻撃とメテオを組み合わせた物理・魔法両方のバランスタイプ。しかし、奇襲攻撃の発動はかなり運が絡んでおり、元々HPが低いことで相手のクリティカルが絡むと吹き飛ばされる……等々の問題を孕んでいたのも事実だ。
ただ、ねこはこのスタイルを貫き通したい思いは変わらず、転生を重ねて強くなることを目指した。
先ほども説明したが、ねこは手が届く強者になるのが好きであった。これは近い戦闘力の人が敵となる、この考えが個人戦ではかなり苦戦する要因であったのだ。
そうして迎えた六回目。ねこは魔王軍で自身の弟子である暗闇の刺客使いの猫と初戦で対面し、負けられない試合となってしまった。今までの試合は繋がりが薄い方々だったが、今回は違う。自身を師匠と慕ってくれた猫であり、プライド的にも負けたくなかった。
状況的に暗闇の刺客をまともに喰らい負けてしまう可能性もある。奇襲攻撃が成功するか失敗するか、相手の暗闇の刺客が成功するか失敗するか。さながら居合の達人同士の睨み合いに近い勝負であった。
先手を取られ、奇襲攻撃は失敗した。刺客を二回回避し、相手にメテオを叩きこむ。返しの刺客を喰らってしまったものの、急所に入らず何とか持ちこたえる。その後、ねこが疾風迅雷の攻撃で何とか勝利を収めた。ねこが負ける可能性も充分あった。
その後の準決勝と決勝に関しては、一瞬で終わった。ねこの奇襲攻撃がクリーンヒットし、一撃で戦闘が終わったのだ。
「な、なぁあああああぅううぉおおおおおおおおおん!!!」
こうして、ねこの未勝利戦は幕を閉じた。
――よく頑張ったよね、ねこ。
「なーん!」
あるけみすとの世界は時間の進みが早い。あっという間に時間が進み、あれだけ弱かったねこが一つの節目を乗り越えた。
普通の歩みでのんびりと成長していく。
これが、あるけみすとの住民であるねこの生活であることは変わらなかった。
「なーん。なーぁん?」
――待って、もう少しで書き終わるから! 私のチラ裏より、魔王城図書館に置いてある読むたびに内容が変わる本の方が需要あると思うんだけど! ってか私も住民の皆と一緒に内容考えたい!
今日も あるけみすとの世界は 平和だ!
◇◆◇
~とある一幕~
「入る時のセリフどうしようウサ」
『税務局の方から来たウサ。こちらで違法制服ビジネスをしているとの通報を受けて調査に来たウサ』
『違法な制服は没収デス!!!!』
『差し押さえさせてもらうウサ』
「こちら、女学院上空に到達したデス!」
「メンテ後突入ウサ!」
「それでは行くデスよ!」
「「せーの!!」」
「入国制限中って言われたウサ……」
「ほんとデスね……どうしよ……」
「正直に言うしかないウサか……かっこ悪いウサ~」
「デスね……お嬢寝ちゃったしまた明日……」
「なーん……」
~fin~