これはむかしむかしに、とある森で眠っていた『僕』の話
その日はとっても天気がよくて
チチチチ…チチッ
鳥が鳴いていて
ザワザワザワ
風が吹いて、木の葉が揺れていて、その心地よい音を耳にしながら微睡んでいると
「今日もいい天気だねビオラ~…?あれ」
トットットッ
誰かがかけてくる音がして、身体が浮き上がって、それを合図に閉じられていた瞳が開く
開くと共に視界に広がったのは綺麗で優しい金色
「あ、赤ちゃん~!!?しかも今度は確実に人間の子だぁ!?」
これが僕の母さん、それから姉さんとの出会いだった
そしてその時に僕の脳内に電流が走ったんだ
「(あれ?これ○ixivでみたことある)」
…ってね?
そして、月日は流れ十五年後に話は進む
「ん…」パチッ
ムクッ、目覚めてベットから起き上がる
おっと自己紹介が遅れました
俺…じゃなくて僕の名前は田中…じゃなかった、今世の僕の名前はステルク
母さんに強く生きてほしいって願いを込められてつけられた名前です
うん、うん、分かってるなに言ってんだコイツとか、文章力ないせいで読んでて気持ち悪くなってると思うがまぁ聞いてほしい
そしてできれば行間を読んでくれるとありがたいねぇ?(狭間の王様風)
さて、お気づきのとおり私は転生者です
決して推しの子どもにはなってないし、
コンビニ帰りに転生したわけではないし、
通り魔に刺されて転生したわけではない
じゃあどうしたかと言われると古きよきトラック転生で2023年に死んで享年は25歳
はぁ~今日も仕事終わった一日頑張ったぞい☆なーんて言いながら帰っていたら前方不注意のトラックにいっけなーいトラ転トラ転されたのだ
近年では珍しく転生特典はなく、むしろめっちゃ虚弱体質でこのファンタジーな世界で生まれ直し、ゼロから始まって数日で産みの母に森に捨てられ、育ての親のアリッサこと我が母さんに拾われたというわけだ
ここまでならよくある話だろう、『俺』も昔この手の二次小説は読みまくったさ、特にファンタジーものとか好きだった
リリカルマジカルで奇跡も魔法もある世界で踏み台転生者が跋扈していた時代からこころぴょんぴょんする時代を経て、僕、最強だからと監獄に閉じ込められてサッカーする時代に生き、死んだ
当然この世界のことだって知っている
ってゆーか、○女集会で会いましょうから知ってる
連載始まってめっちゃ喜んだし、アニメ化でめっちゃ喜んで毎週楽しみにしてたよ
そう、これ「でこぼこ魔女の親子事情」の世界だって…母さんに拾われて数年で『僕』は思い出した
「ゲホッゴホッ」
昔を思い出していると、不意に咳き込んでしまった
特に風邪をひいてるからとかではなく、さっきも言ったけど僕は虚弱体質で生まれ直した、そのせいで度々体調を崩すし、常に弱い
そもそも拾われた時点で死にかけてたらしく、お世話になっている道具屋の女将さん曰く、生きてるのが奇跡とのこと
母さんは魔法使い、薬師として様々な治療や投薬を行ってくれて、知り合いにも頼んでくれて、まだ物心もついていなかった姉も自分より小さい存在である僕を弟と認識したらしく、極度のマザコンでありながら僕のことを世話する母さんに妬いたりせず、むしろ世話をしたがったらしい
流石にこの頃はまだ自意識がはっきりしておらず、朧気にしか覚えていないので人伝で聞いた話ではあるのだが…「ゴホッゴホッ…」
また咳き込む、うーん、これはまずい
あ、身体のことではないので心配ご無用
枕元に常備されてる水差しから水を飲み、一息つく
話を戻そう、これも先程言ったが『俺』は二次小説が好きだった、夢小説も夢絵も好きだった
けど、俺にはあまり好まないパターンが三つある☆!カンコーン!
一つ「いきすぎた俺TUEEEE系」
いや全然構わないんだけど主人公が強すぎるせいで原作がおざなりになったりするのが本当にたまにあって…オリ主には限りなく苦しんでほしい派なのだ
二つ「曇らせ系」
ハッピーエンドなら全然オッケーなんだけどとりあえず曇らせるだけ曇らせてアンハッピーエンドなのはあまり好ましくなかった
そして三つ「原作カップリングに挟まるやつ」
原作で設定されてるカップリングには挟まっちゃいけないと思うのです
で、今の僕もそこにあたるわけで…
まず一つ目、これは大丈夫、虚弱体質抜きにしても姉を含めこの世界の人に勝てる気がしない(だってエルフとかオークとか普通にいるんだよ?)
そして二つ目と三つ目…
「…はぁ「ステルクっ!咳き込んでなかった!?大丈夫ッ!!?」!?、おはようございます、ビオラさん」
ドアがバァンッ!と開かれていかにも魔女ですッ!といった格好をしたボンッ!キュッボンッ!な褐色美女…年齢的には少女が部屋に入ってきた
さっき話した今世での僕の姉さん「ビオラ」だ
「!、またビオラさんって言ったぁ!!」
「いや、だって」
「だってもなにもないもん!!」ビェーン
耳に幸せなウォーターウッドセブンボイスで泣き出す姉
そしてそのまま…
「ママァーー!!またステルクがぁぁ!!」
そう叫んだ、そうすると当然
「ほらビオラ落ち着いて?」
耳だけでなく心も幸せになる声色…これは育ての親の声だからだと思う
「ステルクおはよう、咳き込んでたけど体調は大丈夫?」
体つきもあまりよくない僕よりも小さい身体、そしてあの日視界に広がった綺麗で優しい金色の髪
これが今の僕の母さん、「アリッサ」だ
「…うん、大丈夫だよ…アリッサさん」
体調は問題ないのでできれば安心してほしいのでそう答えたのたが…
「…そっか、ならよかった」
「ママ…ッ!ステルクッ!!」
僕の呼び方に一瞬表情を曇らせてからそう返してくれた
一方姉は流石マザコン、母さんにそんな顔をさせたことに激怒したが
「ビオラ、いいよ」
「ママっ、でも…」
「大丈夫、ありがとうね」
「…うん」
「ステルク、朝御飯できてるから着替えたらきてね?」
「ありがとうございます」
そういって母さんはリビングに向かい、姉さんは一度僕の顔を見てからその後をついていく
バタンと、今度は優しくドアが閉じられた
………
ンァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
やってしまったぁぁぁぁぁ!!!!
曇らせは、曇らせるのは地雷なのにぃぃぃぃぃ!!!!
だけど、だけど仕方ないんだよぉぉぉぉぉ!!!
心のなかでなら好き勝手思えるのにこの身体!!
十五歳のこの身体が!!
素直になれない年頃の精神が!
自動であんな態度をとるんだよぉぉぉぉぉ!!!!
それに…カップリングには挟まるのも地雷だ…そう平たく言えば
「(百合に挟まりたくないぃぃぃ!!!!)」
そう、母さんと姉さん…つまりアリッサとビオラの間に挟まる自分こそが地雷なのだ
…
「…はぁ」
朝食を終えて、茶会の買い物に出掛けた母さんと姉さんを見送り誰もいない家で一人ため息をつく、母さんの手伝いの畑の世話も終わってしまったのでやることはないのだ
「うぅ、眺められるならそれだけでよかったのに…」メソメソ
母さんと姉さんのことは好きなんだ、間違いなく
推しとしても…家族としてもね
あの二人が仲良くしてるのが好きだ
そしてそんな光景を見ているのが好き…だった
今はその光景に入りたい!母さんって呼びたいし姉さんって呼びたい!という願望もある
つまりあの二人の輪に入ってはいけないという前世からの理性と、あの二人と一緒にいたいと願う今を生きる本能がせめぎあっているのだ
なにを言ってるんだと思うかもしれないけど
前世で過ごして培った精神と今世であの二人と過ごして培った精神がごちゃ混ぜになのに精神年齢は十五歳絶賛思春期真っ只中となってしまったため今の状態になった
あんな美人な母と姉に対して素直になれるわけがない、虚弱でも溜まるものは溜まるしたまらんものはたまらんのだ!!
ごめんなさい、自分でも最近本気で色々と処理できてないんです…あ、下の方ではないですよ?
「でもまぁ…きっかけは間違いなくあれだよなぁ…」
僕がこうして二人に対して壁を作るようになったのは一年前、あの頃はまだ母さんと姉さんと付かず離れず時々仲睦まじい二人を眺めては尊味を感じつつ暮らしていた、家族と推しの線引きが上手くできていた
母さんは拾った子である姉と僕の身辺を調べてくれていた、姉の方は空振りだったが僕は当たったらしく、母さんの知り合いのエルフの兄さんが調べて見つけてくれた
そしてエルフの兄さんからその事を聞いた母さんが真剣な顔で「ステルク、貴方のお母さんのことがわかったかもしれないの…ステルクは知りたい?」と聞いてくれた、僕も興味はあったので知りたいと答えた
そうしてエルフの兄さんに会わせてくれて、自分の両親のことを聞いた
僕の両親はとんでもないクズで殺された
僕を捨てたのも邪魔だったからだろう…とのこと
告げられたのは耳を塞ぎたくなるようなことだった
エルフの兄さんも最初は言い淀んでいたけど、聞きたいと僕が迫ったので話してくれたのだから罪はない
だから最後までごめんなと謝らせてしまったことが申し訳なかった
そして…となりに座っていたいつも優しい母さんが怒りを剥き出しにしていたことをよく覚えている
きっと前世のように大人の精神なら数日は凹むだろうけど割りきって前に進めると思う
だけど多感な時期にこの話はダメだったようだ、それ以来僕は二人のことを家族とは呼べなくなり、呼んではいけないと思うようになってしまった
…
もちろん母さんもそして母さんから聞いたであろう姉さんも変わらず僕と接してくれた
姉さんは暫く死後も苦しめる魔法を編み出すとかなんとか言って呪詛を吐き続けてたけど…とにかくいつも通りに、だ
その優しさがかえって辛いとも感じる
自分の気持ちに押し潰されそうな自分と自分の気持ちを客観的に見る自分
少し考えるだけでも気が重くなる
「家族になりたいけどなりたくないよ…母さん、姉さん…」
机に突っ伏してそのまま寝てしまった
…そして夕方
「ルク…ステルク」
「ん、んん…」
優しい声が聞こえてきて眠りから覚め始める、どうやら母さんが帰ってきたらしい、僕を起こしてくれている
そうだ、初めて会ったあの時から僕はこうして母さんに起こされるのが好きだ
優しい声で名前を呼んでくれて、優しい手で撫でてもらうのが好きだ
「ほら起きて、こんなところで寝たら風邪引いちゃう」
「ん、うん…母さん…ッ!」
そして思わず口から溢れてしまった一言
もう言うことはないと思っていたのに、自分でも言ってしまってハッとしてしまう
「ふふっ、久しぶりに呼んでくれた」
「あ、ご、ごめんなさ「謝らなくていいの」!」
そうしてギュッと僕の手を握る母さん
「ステルクが呼びたいならアリッサでもいい、だけど私はなにがあったって絶対にステルクのお母さんだからね」
「ッ!」ガタッ
「あっ」
優しくて真っ直ぐな言葉が胸に突き刺さってくる
それに耐えきれなくて立ち上がって自室に向かい、そのままドアの近くに座り込む
ドックンドックン
少し早歩きしただけなのにうるさい心臓
「ゲホッゴホッッ!」
込み上げてくる咳
あぁ喜びでもこんなに苦しくなるこの虚弱な身体が恨めしい
「どうすればいい?どうしたいんだ?…僕/俺は」
溢れる涙は見ないフリして、頭を抱え込んだ
ステルクですっ♪
次回!
母さんの知り合いに普通の人はいない