【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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ガチバトルトーナメント決勝戦 アウルム・ミダスティアVS轟焦凍

 準決勝を制したアウルム・ミダスティアは決勝戦へと駒を進めたが最後の対戦相手は轟焦凍、緑谷出久との時に何か言われ炎を発露させていたが……決勝戦でも見れるだろうか……そう控え室内で思案しているとドアがノックされる。

 思案していたアウルム・ミダスティアは一度思考の海から上がるとノックに対してクエスチョンマークを浮かべながら声を掛ける。

 

「……? はいどうぞ」

 

 そう告げると入室してきたのは轟焦凍の父親でありNo.2ヒーロー、エンデヴァーであった。

 アウルム・ミダスティアは考える、エンデヴァーが何故ここに? と……轟焦凍の控え室ならば反対の方向だ……扉に名前を記載したプレートが掛けられていた事から知ってて入室してきた、息子である焦凍の方ではなくわざわざ対戦相手であるアウルム・ミダスティアの方へと。

 重苦しい空気を察してか……エンデヴァーの方から口を開いて言の葉を紡いできた、こちらを一瞥すらする事もなく。

 

「準決勝……試合を見てたよ、素晴らしい『個性』だね……日常生活を送る上で苦労しそうな物だが……あれ程の大質量攻撃と精緻な黄金のコントロール……ウチの焦凍の試金石としては最高だ、焦凍にはオールマイトを超えるという義務がある、君との試合はテストベッドとして非常に有益なものだ……くれぐれもみっともない試合だけはしないでくれたまえ……直前に失礼した、話しはそれだけだ」

 

 こちらを一切見ずにそう告げるとエンデヴァーはアウルム・ミダスティアの控え室を出ようとしたがアウルム・ミダスティアのため息と共に放った一言でピタッと足を止める。

 

「日常生活を送る上ではそれ以上黄金に変わることの無い『黄金の手袋』によって暴発を防いでいるのでご心配なく……それよりも、実に詰まらないですね……まるで駄々っ子です……自分で叶える事が出来なかった夢を子供に叶えさせようなんて……醜い欲望もここまで来ると一周回って哀れみしか湧いてこないですね」

 

 その言葉が耳に届いたエンデヴァーは振り返り憤怒の声音で言の葉を紡ぐ。

 

「……何だと?」

 

 そうエンデヴァーより紡がれた言の葉を完全に無視してアウルム・ミダスティアはエンデヴァーを見る事なく言の葉を紡ぐ。

 

「子供の人生はその子供の物です……産まれた瞬間からね、決して親が操作していい物じゃないですよ、自分の息子の事を最高傑作ですか……私には貴方が人の親としてのナニカが欠落してるとしか思えませんね……哀れすぎる……轟焦凍は貴方を写す鏡では無いのですよ?」

 

 そう紡がれた言の葉に対してエンデヴァーは静かに呟く。

 

「ふん……他人に偉そうな事を宣う前に親から目上の者に対する礼儀の一つでも学んだらどうだ?」

 

 それを聞いたアウルム・ミダスティアは椅子にもたれかかったまま言の葉の応酬を繰り出す。

 

「親ですか……そうですね、死者に会える個性か死者と対話できる個性があったら喜んで学びに行きますよ? 貴方の言う目上の者に対する礼儀とやらを」

 

 その言葉に対してエンデヴァーは部屋から出ようとした際に言の葉を紡ぐ。

 

「実に……無礼だな」

 

 それを聞いたアウルム・ミダスティアも即座にエンデヴァーに対して言の葉を紡ぐ。

 

「……其方ほどではないと思いますよ? まさか実の子供の人生を自分の第二の人生と思い込んでコントロールしようとして……あまつさえ醜く哀れにもそれを初対面の人間に喧伝する程……私は厚顔無恥ではないもので……これ以上話しがないのならばとっとと出て行ってもらえると私としても非常に助かります……もう時間なので」

 

 エンデヴァーより睨まれるがそんなのはどこ吹く風と言った表情のアウルム・ミダスティアは時計を指し示して暗にこちらから話す事はもう無いと氷の如き冷たい笑顔を浮かべながら告げる……。

 舌打ちをしながら出て行ったエンデヴァーを興味なさげに見終わるとアウルム・ミダスティアは立ち上がって会場へと出向く。

 

 そして始まる決勝戦。

 今日執り行われたガチバトルトーナメント戦の中でも大注目の2人による決勝戦と言う事で観客の沸き具合はこの日最も白熱していた。

 アウルム・ミダスティアと轟焦凍がフィールドに登場すると会場が割れんばかりの大歓声で出迎えられる。

 

 それを無言で手を振って答えるアウルム・ミダスティアと対面の轟焦凍。

 アウルム・ミダスティアは焦凍に対して言の葉を紡ぐ。

 

「……焦凍、先の見えない霧の中で歩いていて迷いは晴れましたか? 遠い過去に込められた願いを、込められた思いを、忘却したまま歩いていて答えは出ましたか? 先の緑谷出久君との戦いである程度迷いは吹っ切れていた様ですが……答えはまだなのでしょう? この戦いで見つかる事を、思い出す事を私は祈っています……」

 

 その言葉に対して轟焦凍はポツリと一言呟く。

 

「まだ迷ってる、まだ忘れてる……だからこの戦いで必ず思い出すさ」

 

 ゆっくりと目を瞑った焦凍の脳裏に浮かぶのは遠い日の母親との記憶。

 

『いいのよ……おまえは……』

 

 いつの間にかこの先に続いていた筈の母の言葉を忘れてしまった……思い出そうにも、記憶にもやがかかったかの様に思い出せずに、今の今まで歩いて来た。

 だけれど……アウルム・ミダスティアと戦えば何かが晴れる気がする、何かが思い出せる様な気がする。

 そう考えたあと……轟焦凍もアウルム・ミダスティアも臨戦体勢を取りその直後……試合開始を告げる声が響き渡った。

 

 試合開始が告げられた直後、焦凍は自身の個性を一切使う事なくダッシュでアウルム・ミダスティアの眼前へと接近しアウルム・ミダスティアが何かに触れる前に顔面に向けた拳打にてそれを阻止した。

 対するアウルム・ミダスティアは轟焦凍より放たれた拳打を己が手で触れつつ対処しようとしたが直前に猛烈に嫌な気配を感じとり、ギリギリの所で身体を捻って回避を行う。

 轟焦凍は先程の爆豪勝己とアウルム・ミダスティアの試合を観戦している最中……一つだけ確信し理解した事があった。

 アウルム・ミダスティアと戦闘を行う際には必ず勝てる場面以外ではナニカを生み出す個性を使うのは控えないとそれを起点にされて敗北してしまうと。

 故に……基本的には勝てると判断出来るまで『個性』は使用できない。

 使用するのはエンデヴァーより骨の髄まで叩き込まれた近接格闘術である。

 何たる皮肉か……クソ親父であるエンデヴァーより幼少期から虐待と言われても全く可笑しくなかった『訓練』でその身に叩き込まれた近接格闘術を主軸に用いてアウルム・ミダスティアと戦闘を行う、動き方は不思議な事に今でも身体が憶えていた。

 その事実に嫌悪が増して、憎悪の眼をついエンデヴァーへと向ける……エンデヴァーが居る場所を睨みつける、いや睨みつけてしまった……まだ眼前のアウルム・ミダスティアは気絶も場外にも追いやられていないと言うのに。

 被りを振って眼前の相手に集中するがその一瞬の刹那は余りにも大きすぎた一瞬の刹那であった。

 背後よりブリザードよりも冷たい声音で言の葉が紡がれる。

 

「どこを見ている……愚か者」

 

 いつの間にか背後に回っていたアウルム・ミダスティアから蹴りが放たれるが焦凍は持ち前の反射神経でギリギリ避けて返しとして回し蹴りを行うが当たらない。

 アウルム・ミダスティアがほんの少し、数センチ距離を取り截拳道(ジークンドー)の構えをしながら怒気を孕んだ言の葉を紡ぐ。

 

「さっきは何処を見ていた愚か者……眼前の相手に視線を向けず自身の憎悪の対象を見てたのか? 何故? 貴方の相手は今はこの私です、私だけを見てれば良いんです……そんな事で過去を思い出すなどよくもまぁ……全力を出しなさい、全力を尽くしなさい……左を使わず……半分の力で私に勝とうなど片腹痛い……本気(・・)を出しなさい轟焦凍」

 

 そう告げながらアウルム・ミダスティアは焦凍の近接格闘術の間合いに入る。

 焦凍は言の葉を紡ぎながらアウルム・ミダスティアへと殴打を繰り返すが悉くが空を切る。

 

「ざっけんな‼︎ 俺は左側の力を使わずに……あのクソ親父を見返して‼︎」

 

 そう叫びサバットによる蹴り技を繰り出した刹那……アウルム・ミダスティアから言の葉が紡がれる。

 

「……貴方の炎と氷、それはどちらも紛れもなく貴方の個性です……貴方の力です……思い出してください、原点を、貴方が志した夢のスタート地点を」

 

 そう問いかけられて轟焦凍の脳裏に浮かぶのは在りし日の母との記憶。

 遠い日の思い出……もやがかかったかの様に思い出す事が出来なかった記憶。

 ようやく思い出せた、焦凍の脳裏に浮かぶ朧げな記憶の全てが繋がった……

 

『でもヒーローにはなりたいんでしょう? 『私が来た』ってね……良いのよ焦凍、お前は血に囚われる事なんかない……なりたい自分になって良いんだよ』

 

 そうだ俺は……優しく微笑む母の姿を見て……ヒーローを志したんだ……。

 何故忘れてしまっていたのだろうか……自分自身の原点、オリジン……大切な、黄金に輝く母親との記憶……焦凍の眼から一筋の涙が零れ落ち未だ全てとは言わずとも少なくとも自身の原点は思い出せた……。

 

「……ありがとうな、アウルム……お陰で大切な事が思い出せた、そうだ俺は……」

 

 眼前の相手に焦凍はそう呟く。

 アウルム・ミダスティアは構えを解かずに軽快な口調で言の葉を紡ぐ。

 

「私は何もしてませんよ、貴方が自分自身で思い出した貴方の原点……オリジンです、どうかそれを忘れずに大切に憶えてくださいね」

 

「あぁ……それと……悪かった、遅すぎるかもしれないが……ここからは、今からは本気で行くぞ……俺だってヒーローに……」

 

 そう告げると焦凍は己が左側の個性を発現させる、即ち……父親から受け継がれた『炎』……戦闘では頑なに使わないと決めていたソレを解放した。

 焦凍の身体の右半分が氷に覆われて、左半分が炎に覆われ焦凍の猛攻が始まった。

 すなわち、凍結と炎熱の同時使用。

 アウルム・ミダスティアはジャージを脱いで黄金化を行うと形状を変化させて先の爆豪勝己戦でみせた大質量の黄金の渦を生み出しながら笑みを浮かべて焦凍に返事を行う。

 

「全く……遅すぎですよ?」

 

 そう告げた刹那、アウルム・ミダスティアに大氷壁と炎熱による大熱波の両方が襲いかかる。

 普通ならば大氷壁と大熱波のどちらかだけでも決定打となり得たであろう、しかし焦凍は一切油断せずに突如として、本能に従って空中へと大氷壁を再度繰り出す……観客も、審判であるミッドナイトも、解説の相澤先生も、実況のプレゼント・マイク先生も、焦凍が何をしているのか理解できずにいた。

 そして……訪れたのは静寂、誰もがアウルム・ミダスティアの敗北を幻視した。

 誰もが轟焦凍の勝ちを幻視した。

 しかし、それは空中で鈴の様に響く声音と共に幻視であったのだと理解させられた。

 

「全く……凄まじい本能ですね……危うく凍らされる所でした」

 

 凛と響く声音に注目が一斉に集まり皆の視線が一点に注がれ実況のプレゼントマイクの声が響き渡った。

 

『……な、何とあの大氷壁と大熱波を躱し切っていた‼︎ 恐るべき身体能力‼︎』

 

 アウルム・ミダスティアは空中で自身に繭の様に黄金を重ねて吹き飛ばされない様にジャージの繊維をフィールドへと固着させて大氷壁も大熱波も回避していた。

 とはいえ……アウルム・ミダスティアの左手の甲に見えるほんの少しの火傷と凍傷。

 それを一瞥した焦凍は油断なく個性を発露させながら言の葉を紡ぐ。

 

「その左手の甲……回避が間に合わずに熱波にやられたな? それはつまりその手が炎と氷に一瞬でも触れたと言う事だろう? つまり……大氷壁も大熱波も……チッ」

 

 焦凍はそう呟くと刹那のうちに3度目となる大氷壁を生み出して迎撃に当たる。

 空より降り注ぐ、津波の如き勢いが生じている大質量の黄金と化した大氷壁と大熱波の迎撃に。

 在らん限りの炎熱と大氷壁を生み出して黄金が自身に到達するのを0.1秒でも遅らせようとする轟焦凍。

 ギリギリの所で間に合わずに咄嗟の判断でアイススケートの要領で凍結を用いて範囲外への回避を行うが激しい土煙が生じた為にアウルム・ミダスティアの位置を一瞬見失ってしまう。

 炎熱で土煙を払おうとした刹那、アウルム・ミダスティアの声音が自身の背後より聞こえ焦凍の首筋にアウルム・ミダスティアの手がかけられる。

 

「アレをよく見破り回避しましたね……ですがこれでチェックメイトです」

 

 首筋にアウルム・ミダスティアの手が添えられ周囲には最早避けるなど想像も出来ないほど大量の黄金。

 焦凍は目を瞑り……敗北の言の葉を宣言した。




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