これからも頑張ります
アウルム・ミダスティアが職場体験先のラビットヒーローミルコの職場体験に来て5日目パトロールに向かう前にミルコより告げられる。
「さて……私は君に問いたい、君の個性は何なのか、と」
そう告げられてアウルム・ミダスティアは言ってなかったっけ? そう思案するがまぁ隠す程のものでは無い、自身の個性について語り出す。
「私の個性は『黄金』ですよ」
そう前置きして語るがミルコより待ったがかかる。
「それは知っている……というより大まかな所は大体察したし、ある程度雄英体育祭で見た……そうじゃない、そうじゃないよアウルム・ミダスティア、私が聞きたいのはその個性の詳細についてクラスメイトや担任にすら説明を省いて言わずに隠し通している部分を聞きたい」
そうミルコから告げられてアウルム・ミダスティアは眼に見えて動揺しているが少しすると落ち着いて語る。
「一体……どうやって気づいたのですか?」
そう逆に問われたミルコはケタケタと笑いながら答える。
「あぁ? そりゃあ心拍数とか発汗の具合、あとは音だな、ウサギや動物系の個性は総じて何かしらその動物の特徴が顕著に出る、虚偽を看破するのは得意だ……それで隠してる部分を聞きたいんだが?」
再度そう告げられてアウルム・ミダスティアは髪を乱雑に掻きむしりながら言の葉を紡ぐ。
「別に……隠してるって程のもんじゃありません……黄金になったモノの扱いに関して少しぼかした説明をしただけです……正確に言うと私の個性で黄金化が為されたモノは黄金では有りますが黄金ではありません……調べれば確かに元素記号Au……組成構造上は100%で金と鑑定されますがね……強いて言うならば塩の形をした砂粒とでも言いましょうか、完全なる別物で、私ですらよく分からない謎の物質です……あとはそうですね敵にせよ味方にせよ黄金化の解除を目論むなら相手は絶対に私を殺すことはできないという人質じみたアドバンテージすら生み出すくらいですか、この程度ですよ……隠していたのは、別にクラスメイトや先生達に喧伝する様な話しでもないのです、だから言わずに黙っていたのですよ……ミルコさん」
それを聞いたミルコは髪を掻いて言葉を紡ぐ。
「いや、私が聞きたかったのはそっちじゃなくて……まぁ良いや、話したくなったら話してくれな、さてとパトロールだ、気を引き締めていけよ? 殻も取れていない卵ちゃん」
ケタケタとそう笑いながらアウルム・ミダスティアを連れてパトロールを行いつつアウルム・ミダスティアに復習がてらクイズ形式での質問を行うミルコ。
パトロールをしながら質問を出すが突如として爆音が響き渡り15m程先に見えるコンビニから火災による黒煙が上がり、中からは腕が火炎放射器に変形し背中に火炎放射器の燃料タンクと思しきバックパックを背負った
それを見たミルコは即座に跳躍し火炎放射器を使用している
ミルコは急いでプロヒーローとして、またバイスタンダーとして火傷した人達の救護に当たるがいかんせん重度の火傷は専門的な医療機関でもない限り対症療法すらままならない。
ミルコは可能な限りの応急処置を行うも気道熱傷とⅢ度熱傷を同時に起こしている被害者が大多数であり専門の入院施設へと入院が急務である、そして何より……この日に限ってヒーロー達が別の場所へと出払っており救援としてきたのはたった4人のプロヒーローのみであった。
既に警察と救急車を要請してはいるものの最短でも3分、救急隊が受け入れ先の病院を探すのに10分はかかるであろう事は想像に難くない。
そんな中、アウルム・ミダスティアは救護をしながらミルコへと叫ぶ。
「ミルコさん‼︎ 許可を出せますか⁉︎ 個性の使用許諾を‼︎ 私の個性ならば病院に搬送されるまでの時間が稼げます‼︎」
それを聞いた刹那、ミルコは一切迷う事なくアウルム・ミダスティアへと叫ぶ。
「プロヒーロー‼︎ ミルコの名においてアウルム・ミダスティアの個性の使用を許可する‼︎」
それを聞いた刹那、アウルム・ミダスティアは己が手で地面に触れ黄金化を行い、まだ息があり重度の火傷ではあるが死んではいない被害者及び病院に着いて直ぐに死なないであろう人達を纏めて黄金化していく。
アウルム・ミダスティアの個性によって黄金化した物はアウルム・ミダスティアがその意思を持って解除しない限りその状態を永遠に維持する、例えば出来立ての温かい料理を黄金化した場合、例えそれを50年後に解除しようと出来立ての温かいままである。
今の火傷を負った被害者達も同じだ、何もしなければ病院に着いて緊急手術を行い治療を行う間に100%何人かが死んでしまうだろう、しかし黄金化すれば病院に着くまではその命が確実に保障される。
それが重度の火傷を負った人間であってもそれ以上深刻な状態にはならない、即死かほぼ即死の状態でもない限りは病院に着くまでの時間稼ぎが可能。
「ミルコさん、警察の方に……誰が何処の病院に搬送されたか聞いてもらっても良いでしょうか……病院に着き手術の準備が出来次第、被害者達の黄金化の解除を行います、黄金化した物の全ての情報は私の元に流れ込んできますが……その被害者達が今何処にいて何処の病院に着いたかまでは情報として流れては来ないので不明なのです」
そうお願いしてアウルム・ミダスティアは全てのリソースを流れ込んでくる情報の整理に注ぎ込む。
被害者の名前から現在の火傷の状態、被害者の顔も映像として一気に流れ込んでくる。
1時間後、アウルム・ミダスティアが黄金化した全ての被害者達が病院に搬送され全員助かったとの報告をミルコさんから告げられる。
アウルム・ミダスティアがそれを受け取るとミルコより言葉をかけられる。
「黄金、良い個性じゃないか、人を救えた……職場体験の初日に、その手をお前は呪いと言ったな? 触れるもの全てを強制的に黄金に変換する呪われた手だと」
ココアを飲み干して缶をゴミ箱へ入れると目を合わせながらミルコの言葉に頷くアウルム・ミダスティア。
ミルコの続く言葉を聞いてアウルム・ミダスティアの眼から自然と大粒の涙が零れ落ちる。
「けどな私はそうは思わない、その手は……少なくともあの時、あの場面あの局面ではお前のその手は確かに誰かを救う手だったよ、そして、これから先もその手は誰かを救える手だよ、良いか? これだけは覚えておいてくれ、お前の個性が無かったら確実に、間違いなく死人が出ていた……誇って良いんだよ、その手は……決して呪われてなんかない」
そう優しく告げるとミルコは泣きじゃくるアウルム・ミダスティアを抱きしめて頭を撫でる、その言葉だけで……アウルム・ミダスティアは確かに救われた。