これからもよろしくお願いします
演習試験場へと着いてコスチュームを着ている轟焦凍とアウルム・ミダスティア。
対するは相澤消太、イレイザー・ヘッド。
試験会場は市街地であり相当広い、スタート地点より轟焦凍とアウルム・ミダスティアは走りながら会話を行う。
「さてと……焦凍、どうしましょうか、相手は相澤先生です個性が消されるのはいただけない……常に発動確認をしましょうか」
そう告げると走りながら焦凍は手から氷結を、アウルム・ミダスティアはコンクリート壁に常にその手で触れて黄金化を確認する。
走りながら焦凍より作戦についての詳細を告げられる。
「相手は個性消して1人ずつ捕縛する腹づもりだろう、どちらが先に捕縛されるかは分からねえが……どちらが捕縛されてもやる事は変わらないどちらかがゲートを潜るか、相澤先生にカフスを掛けるか」
そう告げられた刹那、焦凍がその手に発露させていた氷結が消失する。
それを認識した刹那、アウルム・ミダスティアが相澤先生の居場所を察する。
「焦凍‼︎ 上です‼︎」
アウルム・ミダスティアがそう叫ぶと相澤先生が静かに怒鳴る。
「そう認識したなら先ずは真っ先に回避行動を優先するべきだ‼︎ 先手取られたんだから‼︎」
速攻で接近した相澤先生により両手両足を操縛布で縛られ一瞬動きが止まった焦凍は鳩尾を殴られて一瞬仰け反り炎熱と氷結を放とうとするが相澤先生の真後ろにアウルム・ミダスティアが居る為にほんの一瞬躊躇ってしまった。
アウルム・ミダスティアも同様に眼前の相澤先生に対して攻撃を仕掛けようとしたが周囲に何も触れられる物がない為に咄嗟に臀部に装着している投げナイフを掴もうとするもそれよりも速く相澤先生が操縛布を操作してアウルム・ミダスティアのその手が何にも触れぬ様に束縛しそのまま動けない状態のアウルム・ミダスティアと轟焦凍を捕縛し電柱に操縛布をくくりつけて吊り下げる。
互いに正面から抱き合う形で捕縛されており互いの身体がキツく密着した状態で吊り下げられる。
そして……その状態の轟焦凍とアウルム・ミダスティアを相澤先生はアウルム・ミダスティアが自身の正面に来る様にしていた、即ち焦凍の正面に立つ事を嫌った、まばたきによる一瞬で個性が復活し大氷壁を生み出す轟焦凍により起こり得るイレギュラーを少しでも回避する為に離れた位置から常にコチラを視認して個性を抹消している。
それを確認したアウルム・ミダスティアは相澤先生に聞こえないように、そして万が一にも読唇術で会話を読まれない様にアウルム・ミダスティアは何とか首を動かして口元だけ隠すと可能な限り自身の胸に顔が埋まっている焦凍の耳元に近づいてから小声で呟く。
「クッ……焦凍、私の臀部に……失礼、お尻に触れる事が出来ますか? もっと具体的に言うならば、お尻をまさぐる事ができますか? 私の手は焦凍の背中の方に回ってしまっていてどうあっても届かないのです……」
「なぜ言い直した……何故そんな具体的な言い方をした……届くけど……成程な」
その意図を察した焦凍は顔を赤くしながら操縛布でギチギチに締め上げられ両手を束縛されている状態でなんとか手を動かしてアウルム・ミダスティアの臀部へと触れる。
そして……アウルム・ミダスティアの臀部に近い左右の腰に2本ずつ装着されている、合計4本の投げナイフを掴み呼吸を合わせて動く。
操縛布に吊られている状態ではあるが両手両足が縛られている焦凍と違い足が自由となっているアウルム・ミダスティアが鍵となる、焦凍とアウルムはその後の流れを言葉で語らずに視線のみで会話を交わしあい無言で頷く2人。
刹那、焦凍がその手に持った投げナイフをどうにかしてアウルムの手に移動させる。
「ありがとうございます、焦凍……セイッ‼︎」
アウルム・ミダスティアはそう告げると捕縛されている状態で投げナイフを足元へと落下させて勢いをつけてナイフを相澤先生の顔に向けて蹴り飛ばす。
束縛されている為に威力は余り出ていないが牽制としては充分である。
蹴り飛ばされた1本のナイフが相澤先生の顔面に飛来し操縛布で叩き落とした刹那、2本目のナイフが1本目のナイフと全く同じ軌道で飛来してくる。
咄嗟に上体を逸らしてナイフを避けるがその際に瞬きをしてしまいアウルム・ミダスティアと轟焦凍の消えていた個性が復活する。
その一瞬の刹那で、轟焦凍の個性である半冷半燃から雄英体育祭で見せたあの大氷壁が相澤先生へと放たれる。
操縛布を用いた立体機動で回避するもまばたきをした直後に大氷壁により視界から完全に2人が消えてしまう、個性を消すにはもう一度視界に収めなければならない相澤先生。
しかし相澤先生はフッと笑いながら……微笑を浮かべて呟く。
「そうだ……痛い所は突いていけ」
個性が復活した瞬間に大氷壁を放ち体勢を立て直すアウルム・ミダスティアと轟焦凍。
しかしながら2人ともガチガチに拘束されて吊り下げられている為に早く縄抜けしなければ今度こそ試験の脱落が確定する。
轟焦凍はアウルム・ミダスティアの胸に顔を埋めたまま呟く。
「アウルム……この後の策あるか?」
そう問いかけられたアウルム・ミダスティアは個性発動確認の為に自身が触れていたコンクリート壁を見ながら告げる。
「えぇあります……相澤先生の個性『抹消』は相手の個性は消しますが個性で生み出した物まで消せる訳ではありません……故にこうすればいいのです」
黄金化したコンクリートブロックを遠隔操作してアウルム・ミダスティアと轟焦凍を吊り下げている操縛布に接触させる。
操縛布が一瞬で黄金化しアウルム・ミダスティアのモノとなった。
即座に束縛を解いて地面に着地すると互いに顔を見ると一言も語らずに無言でフィスト・バンプを行い眼と眼で会話を行う。
轟焦凍が次々と氷塊を生み出してその氷塊をアウルム・ミダスティアが触れる事により続々と黄金化した物質が発生する、黄金化した氷塊が20を超えた辺りで氷塊を黄金化する事を辞めると次なる行動に移る。
そして相澤先生に見られても即座に視線を切れる様にアウルム自身と轟焦凍の付近に黄金化した氷壁を薄く引き延ばしてブカブカのローブの様にすると同じ物をもう一つ作り焦凍へと渡して告げる。
「次で決めましょう……ハンドカフスを掛ける方針で行きます」
それを聞いた轟焦凍はコクリと頷き相澤先生が居るであろう場所を確認する。
恐らくは、いや……十中八九確実にゲート前で待ち構えているであろう事は想像に難くない。
大氷壁を生み出した際に見えたゲートに位置と今自身がいる場所の位置関係からおおよその位置を割り出すとゲート方向へと空中に黄金で形成された道を轟焦凍と共に滑走し向かう。
1分後、ゲート前に待ち構える相澤先生を視認すると黄金で作ったブカブカのローブを着込んだ姿で現れる轟焦凍とアウルム・ミダスティア。
それを見て一瞬、ほんの一瞬ではあるが相澤先生が苦い表情を浮かべた。
姿が見えなければ個性を消す事が出来ない、そしてローブの素材になっているのはアウルム・ミダスティアの黄金である。
相澤先生は操縛布を用いて拘束しようとするが操縛布が即座に黄金化して使い物にならなくなる。
そして黄金の壁や2人が着込んでいる黄金のローブで身体全体を可能な限り覆い隠していた。
移動の瞬間にローブが捲れる為、一瞬見えた身体の一部を視認することで即座に『個性』を抹消するが轟焦凍もアウルム・ミダスティアも、まばたきの瞬間を狙って個性を発動させつつ2人とも息を合わせて視界の限界範囲となる位置まで縦横無尽に疾駆する事で視認する対象を絞らせる事なく、また黄金化、氷結、そして炎熱で相澤先生の取れる選択肢をどんどん削り切っていく。
相澤先生が一旦跳躍し態勢を立て直そうとした刹那、自身の脚が氷結と黄金化で地面と固着し跳べずに跳躍しかけた体勢故に地面に転倒してそのまま轟焦凍とアウルム・ミダスティアの2人に全体重をかけてのし掛かられ動けなくなった瞬間に腕にカフスを掛けられる。
この瞬間、2人の演習試験クリアが確定した。