演習試験が全員終了し試験の終わりが告げられる。
そして後日、教室にて切島君、砂藤君、上鳴君、芦戸さんの4人は試験脱落した為に自分達でももはや赤点で補習地獄だと既に諦めているのか林間合宿の土産話しを楽しみにしてるねと、エグッエグッと嗚咽混じりで泣きながら告げてくる芦戸三奈に対してアウルム・ミダスティアは試験が始まる前の相澤先生の言葉を思い出しながら芦戸三奈の髪を撫でながらよしよしと言の葉を紡ぐ。
「まだ分からないですよ、最後の最後に起きるどんでん返しを期待しましょう」
アウルム・ミダスティアの背後にいた瀬呂範太から突っ込まれる。
「いやいや……それ口にしたら無くなるパターンのやつだよアウルムさん」
眼前で天を見上げている上鳴さんもいつもの明るい性格が消え失せ幽鬼の様な表情を浮かべて諦めた声音で呟いてくる。
「アウルム……実技試験で赤点とったら補習地獄……そして俺たちは実技試験クリアならず、これで林間合宿に行けたらまさに奇跡だよ」
そう泣きながら語りかけてくる上鳴電気に対して瀬呂範太がまぁ落ち着けよと前置きして語る。
「分からねえのは俺もさ……峰田のお陰でクリア出来たけど最序盤から眠ってしまってたし……とにかく採点基準が分からない以上はまだ可能性がある」
そう瀬呂範太が語り終えるとちょうど予鈴が鳴り響いた為に皆、席に着く。
そして相澤先生が入室してきて朝の挨拶ともに期末テストの結果が出たと告げられる。
「残念ながら……赤点が出た、従って……林間合宿には全員行きます」
その言葉が発せられて2〜3秒は微動だにしなかった切島、砂藤、上鳴、芦戸は歓喜の叫びをあげていた。
アウルムもそんな4人の表情を見てホッとした表情で胸を撫で下ろしていた。
相澤先生の言葉は続く。
「筆記試験の方は赤点0、実技試験の方で実技試験をクリア出来なかった切島、砂藤、上鳴、芦戸の4人と最序盤でミッドナイト先生の個性を喰らって寝てしまった瀬呂が赤点だ」
そう告げられて瀬呂があぁやっぱり……しかもこれクリア出来てない人より恥ずかしい……といった感じで噴出する恥ずかしさから両手で顔を覆い隠し呟く。
「確かにクリアしたら合格とは一言も言ってなかったからなぁ」
相澤先生はそのまま言の葉を紡いでいく。
「今回の試験、我々
そう言ってテスト結果の発表と通達事項の連絡が終わった。
アウルム・ミダスティアは4人に向けて安堵した表情で告げる。
「何はともあれ……全員で行けて良かったです、1週間の合宿、とても楽しみです……」
そう明るい表情から誰にも見えない様に俯いてほんの一瞬暗い顔をして誰にも聞こえない声量でボソリと呟く。
「結構な大荷物になりますね……色々足りない物品買い揃えないと……お金足りるかな……はぁ」
家計簿の残りの金額を脳内で確認してそう思案していたアウルム、そんな折……葉隠透よりある提案が為される。
「じゃあさじゃあさ……明日休みだしテスト明けって事で‼︎ 皆で買い物行かない? 木柳区ショッピングモール‼︎」
そう提案される。
切島が爆豪勝己を誘うも爆豪は拒否し、葉隠透が轟焦凍に問いかけると少し迷った末に行くと言ってくれた。
「アウルムさんはー? 行こうよー」
そう葉隠透がニッコリとしている様な雰囲気を作りながら聞いてきた。
アウルムは使える金の残りを計算する……どのみち買わなければならない物があった為に笑顔で了承する。
そして翌日、黒ワイシャツに黒のジーパン、そしてその手にはいつもの様に絹の様に薄い黄金の手袋といった服装で現れたアウルム。
172cmの身長とIカップという発育の暴力、膝裏まで伸ばしているロングヘアの金髪、透き通るような美しさを見せる純白の肌、そして極め付けは本物のサファイアの様に美しいコーンフラワーブルーの色彩を発している青紫色の碧眼、その美麗な容姿も相まって道ゆく人が老若男女問わず、カップルだろうと何だろうと必ず振り返っている。
「もしかして……待たせちゃいましたか、申し訳ありません」
そう呟くも即座に飯田天哉が言葉を返す。
「いいや違うぞアウルム君、僕達が集合時間よりも速く着きすぎたんだ……」
そう告げると最後に葉隠透が到着し皆集まったので買い物をする事になったが皆見事に買う物が異なる為にとりあえず集合場所と時間を決めてそれまでの間は自由行動となった。
さて……と何を買うかなぁ、そう思案していると皆各々の買い物をする為に異なる店に入って行った。
アウルムは財布を取り出して使える金を数える。
数えていると背後から声をかけられた為に財布を仕舞い込みそちらを向く。
声をかけてきたのは見た感じフードを被った男……その男はアウルムの背後から近づいて真横に立つと軽快な、まるで何十年来の親しい友人であるかの様に語りかけてきた。
「雄英体育祭見てたよ、確か1位になってた人だよな⁉︎」
アウルムは何か強烈な違和感を感じつつ笑顔で対応する、何処かで聞いた声音だ……何処だったか思い出せないが男の続く言葉で有難い事にすぐさま思い出す事が出来た。
「それで……初めて会った時は俺の仲間の両足首を黄金にして、しかもオールマイト専用のサンドバッグだった脳無を一切動かない黄金の彫像に変えて俺の計画の一端をめちゃくちゃにしてくれたっけ? なぁ? アウルム・ミダスティア、お茶でもしようか?」
その刹那、アウルムが自身のその手に宿る個性を用いて死柄木弔の手を黄金化しようとしたがそれよりも速く左手の中指以外の指を使いアウルム・ミダスティアの腕を捻って抑え込みそのまま、残る片方の右手でアウルム・ミダスティアの首に中指以外の指で触れる。
そして、ベンチに座るとゆっくりと死柄木弔が口を開く。
「ま、座ってゆっくり話そう……言わなくても理解してると思うが、自然に旧知の友人と会ったかの様に振る舞うべきだ……決して騒ぐな? 俺はお前と話しがしたいだけだ……因みに、先に言っておくと狙って来た訳じゃない、会えたのは本当に偶然さ……話しを戻そう、騒いだ瞬間に触れていない中指で触れる、USJで見たと思うが俺の五指が全てこの首に触れたら喉の皮膚から順に崩壊して……大体30秒位でお前は文字通り崩壊してチリになる」
そう告げるとアウルムはただ一言、そうかと告げてから顔色一つ変える事なく死柄木弔をしっかりと見据えて言葉を紡ぐ。
「……そんな脅迫じみた前置きはどうでもいいから貴方の話しを聞きたい、自分から話し合いたいって今言ったろう? あぁ互いの時間が許す限りゆっくりと話しをしよう、2度目があるかも分からない実に貴重な機会だ」
決して物怖じしないその態度を見て死柄木弔はクツクツと喉を鳴らして話し始める。
「俺はさ大体何でも気に入らないんだけどさ……今1番腹が立ってるのはヒーロー殺しさ」
そう聞いたアウルム・ミダスティアは自身の髪を弄りながら興味なさげに返答を行う。
「あら……てっきりヒーロー殺しステインと
そう答えると死柄木弔は小さく大爆笑する事2分、ようやく笑いが収まり話しが再開される。
「俺は認めちゃいないが世間では何でか仲間扱い、そうなってる……問題は其処なんだよ、アウルム・ミダスティア……殆ど全ての人間がヒーロ殺しの思想と行いに目が行って……お前達に行った雄英襲撃も、保須で放った脳無もヒーロー殺しに全部掻っ攫われた、喰われた……なぁ? 何でだぁ? 誰も俺を見ないんだよ、なぁアウルム・ミダスティア……何故だ? いくらヒーロー殺しステインが能書き垂れようともさ、奴だって気に入らないモノを壊していただけだろう? 俺とアイツの何が違うんだ? なぁ? アウルム・ミダスティア」
怨嗟が濃縮された様な声音で、絶望が圧縮された様な声音で、悪意が圧搾された様な声音で、邪気が凝縮された様な声音で、呪詛が凝集した様な声音で、それら全てが泥の様に纏わり付く様な声音で……アウルム・ミダスティアにそう問いかける死柄木弔。
そう問いかけられてアウルム・ミダスティアは脚を組み直して……しばしの間、俯いて考え10数秒後に言の葉を紡ぐ。
「さぁな……考えてみたが何一つ分からないな……私はお前の事を名前以外何一つ知らない、故に理解も出来ないし共感も出来ない、当然……掲げる思想に納得も出来ない……ヒーロー殺しステインの場合はね、今でもその思想に納得は出来ないが理解はできるんだよ……彼は良くも悪くもオールマイトという理想に殉じて生きていたからね……少なくとも、君が今行っている様に、駄々を捏ねて玩具を買って貰えないガキみたいに……買って貰えないからだったら壊そうって、壊したいから壊していた訳じゃなかったろう? ……そしていたずらに投げ出したりもしなかったろう? まぁステインのやり方は決して褒められたモノじゃなかったが」
そうアウルム・ミダスティアが答えると死柄木弔は先程の様に怨嗟が濃縮された様な声音で、絶望が圧縮された様な声音で、悪意が圧搾された様な声音で、邪気が凝縮された様な声音で、呪詛が凝集した様な声音で、それら全てが泥の様に纏わり付く様な声音でアウルム・ミダスティアの耳元で小さく言の葉を紡ぎながら目の前の買い物客を見る。
「あぁ、ありがとう……アウルム・ミダスティア、とてもすっきりしたよ、点だけだったものが全部繋がった気がするよ、何で俺がお前にこんなに苛立ちを憶えるのか……分かった気がするよ……全部オールマイトだぁ、そうだよな、結局は其処に行き着くんだ、其処に辿り着くんだ……何を悶々と考え込んでいたんだろうな、目の前に居るこいつらがヘラヘラ笑って過ごしてるのも……オールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ? 救えなかった人間など誰1人として居なかったかの様に……ヘラヘラしてるからだよなぁ? あぁ話せて良かったよアウルム・ミダスティア、良いんだ‼︎ 俺は何ら曲がる事はない」
そう納得したかの声でそう締め括るとアウルム・ミダスティアと死柄木弔の眼前に現れたのは轟焦凍であった、焦凍はアウルムの置かれた状態を見て不審に思ったのか最大限に警戒しながらこちらに近づいて震えた声音で喋りかけてきた。
「なぁアウルム……そいつ誰だ? 知り合いって感じじゃなさそうだが……何でそんなに……恐怖に歪んだ顔を……怯えた表情をしている?」
死柄木弔は轟焦凍からは見えない様にアウルム・ミダスティアの首ではない別の位置に指を添えて暗に告げる、分かってるよな? と。
焦凍を見たアウルムは告げられた言葉を反芻して表情に出ていたか……と思案し表情を作ると可能な限り自然体で、焦凍へと笑顔を作り手を軽く振って言の葉を紡ぐ。
「やぁやぁ焦凍、もう買い物は終わったのかい? 私は今10年来の友人にたまたま会えたから互いに過去の思い出話しをしていてね……その時の懐かしい怖い思い出話しをしていた所なんだ、今はちょっと……話し相手が出来ないから、もうちょっとだけ店を見て来てくれないかい? あぁそうだ店を回る時に、用事を1つ頼まれて欲しい……私の必要な買い物の1つを代わりに買って来て欲しいんだ、芦戸さんにも同じ事を伝えているから聞けば買う物はすぐに分かるよ……後で金は渡すからさ」
こちらに近づいている焦凍に軽い口調でそう告げると焦凍は何か言いたげな表情を浮かべたもののそれ以上詮索する様な事はせずに「分かった」と呟いて芦戸三奈を探しに行った。