【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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発露する思いと認識した思い

 泣きながらアウルムの胸を弱々しい力で叩き続ける焦凍の頭を撫でながらアウルムはゆっくりと言葉を紡ぐ。

 その眼に一筋の涙を流しながら。

 

「……すみませんでした焦凍、私はあの時、死柄木弔と対面していたあの時、私は他の誰よりも何よりも貴方を危険に晒したくないと真っ先に考えてしまった……あそこに、ショッピングモールに居た全ての人間の中で、私自身すらも含めて誰よりも真っ先に……貴方を危険に晒したくないと……だから嘘をついてまで真っ先に貴方を遠ざけた……しかし浅慮でした……その私の浅慮が貴方を追い込んでしまった……貴方の気持ちを考えずに踏み躙ってしまった……本当に申し訳なかったです」

 

 そうアウルムが涙を流しながら告げしばらくするとアウルムの胸に顔を埋めて泣きながらアウルムの胸を叩き続けていた焦凍は涙を拭いアウルムの顔を見て告げる。

 

「いや……俺の方こそすまなかった、激情に任せて怒鳴りつけてしまって……て」

 

 焦凍は遅まきながら何かに気づいたかの様に、壊れたラジカセの様に……ててててて……と繰り返し呟いており、何故か顔が紅潮しておりこちらを真っ直ぐ見ようとしない。

 アウルムはその理由を何かと思案していたが……アウルムも少しして察した。

 焦凍は泣きながら私の胸に顔を埋めていたのだった……と激情に任せて泣き叫んでいた時は我を忘れていたのだろうが……正気に返ってようやく自分が何をしていたかを察したらしい。

 それを認識した瞬間、2人とも顔から火が出る程紅く染まるのを感じてほぼ同時に何も言わずに互いに180°回転し互いに後ろを向いた状態になり……その状態で言葉を交わす。

 

「……この気持ちは……なんて言うんでしょうね、焦凍……いや、恥ずかしいという気持ちも確かにあるんですが……何でしょう上手く口に出来ないですが悪い感じではありませんね」

 

 紅潮した頬を冷ます様にパタパタと手で扇ぐがアウルムの火照った顔の熱は一向に冷めない。

 焦凍も同じであり恥ずかしさが振り切っている為に思考が回らずにもはや自身の個性が何であるかを完全に忘れているのか、アウルムと同じくわざわざ手でパタパタと扇いでおりその状態で言葉を語る。

 

「……何だろうな、ただ……確かに悪い気はしないな……何だこの感情」

 

 そんな感じに、纏まらない思考と言葉を交わし合いながら数分……いまだに引く事の無い顔の熱さ。

 アウルムが手で扇いでいると焦凍から肩をトントンっと軽く触れられ振り向くと思い出したかの様に焦凍の手が差し出されてボールペン程の大きさの単結晶形状に創られた氷片を自身の掌から生み出す。

 

「手で扇ぐよりかは幾分かマシだろ……」

 

 そう言いながら焦凍は氷片を手渡してくる……。

 アウルムはフフッと笑みを溢すと有り難く受け取り自身の頬や首筋に当て言葉を溢す。

 

「ひんやりとして気持ちいいですねぇ……それにしても分からない感情ってあるものなんですねぇ」

 

 アウルム・ミダスティアのその言葉に対してアウルム・ミダスティアの背後より返答が為される。

 

「君達が思ってるそれは多分、恋心ってやつだね‼︎ 若しくは恋愛感情と言い換えても良いよ? お姉さん最初から最後までずっと見てたけど……甘酸っぱい良い雰囲気だったね‼︎ ご馳走様‼︎」

 

 明らかに女性の声音のそれに対して目を瞑り頬や首筋を冷やしているアウルム・ミダスティアは気づく事なく言葉を紡ぐ。

 

「そうですかー……これが恋心……若しくは恋愛感情と言うものですか……抱いた事のない感情ですのでかなーり困惑してます、現在進行形で……ん? 最初っから(・・・・・)……見ていた(・・・・)? え? は? な……な……なぁ⁉︎」

 

 違和感を感じたアウルム・ミダスティアが眼を開け振り向くとアウルムの眼の前にいたのは焦凍の姉であり、アウルムの恩師である轟冬美であった。

 冬美さんの告げた言葉を脳が理解したその途端に熱かった筈の顔の火照りは焦凍より手渡された氷片のお陰で殆ど冷えていた筈なのに、突如として火照りが再燃しマグマの如き熱さになるのを実感し恥ずかしさが先に立ち……しどろもどろになりうわずった声音で、両手で顔を隠して声にならない声で叫ぶアウルム・ミダスティア。

 焦凍も完全に同じであり火照りが再燃した顔を両手で覆いながら声にならない叫びを上げていた。

 少しして声にならない声で叫んでいた2人がようやく落ち着いた為に轟冬美が話し始める。

 

「いやさ……焦凍の迎えを頼まれたから車で待ってたんだけどいくら待っても来ないしそろそろ21時過ぎるから近くの駐車場に車預けて近くまで戻ったら……甘酸っぱい雰囲気になってたんだもの、そりゃあ最初から最後まで観ないと損でしょ」

 

 焦凍とアウルムは共に思い出していた……あぁこの人は恋愛ドラマの様な甘酸っぱい雰囲気のシーンが大好物だったんだっけ……と。

 そんでもって、2人は実感した、させられた。

 アウルム・ミダスティアは轟焦凍の事を好いており……轟焦凍はアウルム・ミダスティアの事を好いているのだと。

 焦凍からすれば他ならぬ実姉から……アウルム・ミダスティアからすれば恩師から……言葉一つで互いに好意を抱いてると理解させられた。

 顔が紅潮し、いまだに火照りが収まらない2人は顔を見合わせるもパクパクと口を開くだけで恥ずかしさや初めて恋愛感情を抱いてそれを認識させられたという事実に緊張の糸が最高潮に高まる。

 その為……2人とも気恥ずかしさや言葉にできない謎の想い、そして互いに互いを好いていたという事実から、2人ともそれを認識するまでは普通に出来ていた事が急にできなくなる。

 互いに俯いてしまい全くもって会話にならない……。

 

「あ……えっと……また、今度……学校で会おうね……焦凍……じ……じゃあ、もう遅いし……私は帰るね……ありがとね、こんな遅くまで」

 

 いつもならスラスラと出てくるたったそれだけ告げるのに数分掛けて何とか、アウルムがうわずった声音を何とか抑えて、いつもの声音で喋ろうとするも……上手く言葉が出てこないのか当たり障りのない平々凡々な言葉を口にして焦凍と冬美に対して手を小さく振りながら帰路に着こうとした。

 それを見聞きした焦凍はアウルムの姿が見えなくなる前に上擦った声音で返事を返す。

 

「あ……あぁ‼︎ また今度、学校で‼︎」




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