「おおぉー‼︎ お肉がいっぱい‼︎」
模擬戦が終わり夕食となりアウルムがテーブルに並んだ料理を目の前にして狂喜する。
アウルムの普段の食生活は節約の為に肉なんて高級品はそうそう買える物ではない……。
わいわいと女子陣と歓談しながら食事を楽しんで……続くは温泉。
膝裏まで伸びている髪が湯に浸からない様にヘアゴムで結えながら湯船に入り1日の疲れを癒していく。
「はぁぁ……落ち着く、1日の疲れが吹き飛ぶ……」
アウルムがそう呟くと八百万さんが微妙な面持ちで語りかけてきた。
「まるでお年寄りみたいな口調ですわね……それにしても綺麗な肌ですわねアウルムさん、何かスキンケアとかなさっているのですか?」
そう言われたアウルムは照れながら八百万との歓談に興じる。
それがひと段落すると耳郎さんから、何故皆、そんなに胸があるのかと、何かやっていたのかとちょっと怖い表情で問いかけられるが……特に何もやってないと耳郎響香に告げると耳郎響香は自身とアウルム、八百万百、芦戸三奈についているスイカかメロンと見間違えるそれと、自身のそれを見比べて羨望の眼を向けてくる。
それを見た一同は皆それぞれ思い思いの言葉をもって、耳郎響香に慰めの言葉をかける。
「じ……耳郎さん、諦めないで‼︎ まだ成長期、そう‼︎ 成長期が来てないだけだから‼︎ あとファッションも結構制限されるから‼︎ あ……あと肩凝りも酷いから‼︎」
そう告げるアウルム……しかし成長期と呼ばれる時期は一般的に10〜15歳が1番でありそこから先は個人差は多少あれど止まる……すなわち耳郎響香の胸は……もう。
そして、何とかしてファッションや肩凝りなどといったデメリットを叫ぶがそれらは基本的に持つものだけが理解している、持たざる者には羨望と嫉妬しか産み出さない。
八百万百や他の女子陣も何かしらの言葉をかけるが持つものからかけられる慰めの言葉ほどタチの悪い物はない。
耳郎さんの表情は暗く歪んでいく。
その時、苛立ちを一切隠さない表情を浮かべ突如としてアウルムが湯船から立ち上がった、他の女性陣は何が? どうしたのか? と言った感じでアウルムを見ており、アウルムは男性陣が浸かっている隣の湯船と女性陣との湯船を仕切っている仕切りに近づいてその手で仕切りに触れ黄金化させる。
その瞬間、峰田実の絶叫が響き渡った……そして女子陣一同、先程のアウルムの表情に納得した。
「な⁉︎ なんじゃこりゃぁぁぁぁ⁉︎ 手が‼︎ 手がぁぁぁ‼︎」
その絶叫を聞いたアウルムはしっとりと濡れている髪を摘んでいじりながら仕切り越しに峰田実へと聞こえる声量でブリザードよりも冷たい声音で告げる。
「覗くのを止めるというなら黄金化は解除しますが……ずっとそのまま朝まで過ごしますか? ねぇ峰田さん?」
静かに怒気を発散させながらそう呟くと峰田実が半泣きになりながら謝ってきた為に呆れた面持ちで解除し湯船に戻ろうとした刹那……それを間違いだったと悟った。
「いよっしゃぁぁぁぁぁ‼︎ 目指せ夢の世界‼︎ オイラの黄金郷‼︎ オイラの追い求める理想郷‼︎ オイラが探し求めてるエルドラドはこの壁の向こうにいいいいい‼︎ うおおおおおおお超えろ限界いいい‼︎ Plus Ultraァァァァァァ‼︎」
女性陣一同頭を抱えため息を吐いて全く同じ事を考えた……。
よく除籍されないなこの変態……と。
だが……女性陣の湯船が見える瞬間、ハシゴを登って監視していた洸太君が峰田実の手を弾き叩き落とすと峰田実へと告げる。
「ヒーローを目指す以前に人としての常識からもう一度学び直せ」
峰田実の絶叫が響き渡るが心配する女性陣は誰1人として居ない。
それ程までに女性陣一同から峰田実の信頼は無くなっていた、地の底まで堕ちきっていると言っても良い。
芦戸三奈が湯船に浸かりながら峰田実の手を弾いた洸太君へとお礼を告げる。
「ありがとー洸太くーん」
名前を呼ばれてつい反射的に振り返ってしまった洸太君は心の中で叫ぶ。
『お前ら女性同士とはいえ少しは隠せよ‼︎』
そう心の中で叫ぶがしっかりと女性陣の裸体を見てしまい顔を両手で隠そうとした動揺からか足がもつれてハシゴが外れて5m程ある高さの仕切りから女性陣が入浴している方の地面へと落下する。
露天風呂の地面はある程度舗装されてはいるが露天風呂という性質上、岩がゴツゴツとしている箇所もある為に5m程の高さから落下して、もしも身体をぶつけた場合、かなりの大怪我をしてしまうだろう。
しかも落下の恐怖で洸太君は失神してしまっている。
蛙吹さんが舌で巻き取って助けようとしたが位置が悪い。
そもそも女性陣が全員、峰田実の覗きを警戒して仕切り板から1番遠い箇所に固まっていた……故に今1番近くにいるのは峰田を脅す為に湯船から出たアウルムのみ。
アウルムは自身の裸体を隠しているタオルに触れて黄金化すると形状を変化させて落下してくる洸太君を包み込んで落下速度を殺すと怪我をしない様にゆっくりと地面に降ろす。
地面に降ろして数秒、失神から覚醒して洸太君が起き上がるとタオルで隠してすらいないアウルムの裸体や湯船に浸かっている八百万や芦戸三奈、麗日お茶子に耳郎響香らの裸体がその視界に入る。
数秒硬直していた洸太君だが事態を察した瞬間に洸太君は恥ずかしさのあまり顔を赤くし両手で顔を覆い謝罪の言葉をあげながら脱衣所へと走り抜けて行く。
それを見ながらアウルムは頬を掻きながら呟く。
「濡れてるから走ると危ない……て早いな……」
なんだかんだ一悶着あったが入浴も終わり……男性陣と別れ女性陣一同部屋へと戻り就寝となる。
まぁ初の合宿、皆わいわいと歓談が続き、寝る事なくトランプで遊んだりをしているうちにタンブラーを持って水を飲んでいたアウルム・ミダスティアに対して問いかける。
「ねえねえアウルム‼︎ そういえばさそういえば‼︎ 轟くんとはどのくらい進展したの⁉︎ もうキスとかしたの⁉︎」
その言葉がアウルムの耳に届いた刹那、アウルムの動きがピシッと音を立てて止まりその手に持っていたタンブラーが畳に落下する、中身を全て飲み干していたのが不幸中の幸いか畳が濡れる事は無かったがアウルムの顔は気恥ずかしさからか純白の肌が真っ赤に染まり声にならない叫びをあげていた。
「な……な……な……な」
壊れたラジカセの如くそう呟くアウルム。
その反応を見た芦戸三奈は口元に手を当てて驚いていた。
「……まさか本当に!?」
芦戸三奈の一言で自身の失態を呪うアウルム。
その手の話題になって皆良い笑顔でこちらへとにじり寄って質問してきた。
アウルムはどうやら就寝するのはだいぶ遅くなりそうだと思いながら……口を開く。